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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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第144話:まだ足りない

 怪我で置いてきてしまった人たちがいる、とファティマさんに相談をされた。


 間に合うかもしれないなら行きましょう、と返事をした。


 歩いて二日の距離だという。


 ファティマさんが先頭で、ベルナールさんが私の横にいた。エイブラムさんとロランさんは後ろを見張ってくれていた。


 ライアンさんは都でお留守番だった。


 一人でも多くの人を助けたい。


 そう思いながら早足で目的地を目指した。


     *


 着いたのは、広い野原のようなところだった。


 至るところの草が踏み倒されて、たくさんの人たちがここを行き来したのが分かる。


 そして、たくさん人が倒れていた。十や二十ではない。


 近くの人から順に見て回ることにした。


 たくさんの血を流した様子があって、誰も彼もが傷ついていた。


 一人も動いていなかった。


「陛下。何卒、お力をお貸しください」


 ファティマさんはとても悲しそうな顔をして言った。ベルナールさんも無言で頷いている。


 私は近くで倒れている人に手を当てて、こう願った。


     *


 起きて。


     *


 すると、その人はゆっくりと起き上がった。きょろきょろと周りを見回している。


 他の人たちも次々に起き上がってきた。


 よかった、今回も間に合ったみたいだ。


 少し時間がかかったけれども、野原に倒れていた人たちが全員起き上がった。


 ファティマさんが一人ずつ、顔を見ながら人数を数えていた。


「陛下」


「はい、間に合いましたね」


「三百四十三名が起き上がりました」


 私は、その数をうまく思い描けなかった。私はファティマさんに質問をした。


「知っている人は全員無事ですか」


「はい、二百五十七名、全員が起き上がっております」


「数が合わないということですか」


 数を数えるのは苦手だけれども、そのくらいは分かる。


「八十六名が多いです。恐らくは相手方の兵士でしょう」


 言われてみれば、鎧の形や刻んでる印がちょっと違う。


「もしかして、起こしたら駄目でしたか」


 失敗をしてしまったのかと少し心配になった。でも倒れているなら、できれば皆助けてあげたい。


 するとファティマさんは優しく微笑んで言った。


「いいえ、そのようなことはございません。皆、陛下に感謝をしていると思います」


 そう言ってもらえて私は安心した。


 鎧の形が少し違う人たちも、ファティマさんの知り合いの人たちと一緒に集まって、互いに声を掛けあっていた。


 もうここでの争いは終わっているのだ。


 そう言えば、村の子供たちもそうだった。取っ組み合いの喧嘩をして絶交だ、といっても翌日にはまた一緒に遊んでいた。


 喧嘩をしても仲直りをすればいい。


     *


 都へ戻る途中、夕方になったので私たちは野宿をすることにした。


 行きと比べて人数がとても多くなったので、全員が休めるような広い場所を探すのに少し苦労したけれども、ロランさんが見つけてくれた。


 軽い食事を済ませた後、ファティマさんとエイブラムさん、そしてベルナールさんの三人が何かを相談し始めた。


 地図を広げながら相手の数と場所、どこから来るのか、こちらの配置は、といった言葉が聞こえてくるけれど、内容が難しい。


 また争いが起こるかもしれない、ということは分かった。


「あの」


「はい陛下。どうなさいましたか」


「今は皆で、何の話をしているのですか」


 ファティマさんは会話を止めて、丁寧に教えてくれた。私が質問をすると、同じことでも繰り返し説明をしてくれた。


 それでも難しい。分かったのは、一つだけだった。


     *


 起きた人を足しても、まだ足りない。


     *


 朝目覚めると、ロランさんが見張りの人と一緒にやってきた。ヴィタリスから、人が来ているという。


 朝霧の中、遠くに人の列が見えた。


 馬に乗っている人がいる。歩いている人が、そのずっと後ろまで続いていた。


 近づいたところで列が止まり、先頭の人がやってきた。


     *


「久しぶりだな」


 ヴォルフさんだった。山の中に仲間の人たちと一緒に隠れていて、それから私に雇われた人だ。


 雇いますと言っておきながらお仕事を用意できず、結局はヴァレリーさんに仕事を用意してもらった。


「あんたを守りにきたぞ。存分に使え」


「こんなに沢山の人たちと一緒に来たんですか」


「宰相を始め、皆、あんたを心配している」


     *


「ただそれ以上に、俺達は、あんたと一緒にいたいんだ」


     *


「ヴォルフさん、嬉しいです。お願いします」


 明け方はまだ肌寒いけれども、私の心は嬉しさと喜びで温かくなった。

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