↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/173

第142話:どちらの神に

 朝までに、済ませておかねばならぬことが三つある。


 一つ。触れの文。陛下は昨夜、急に身罷られた。そして戻られた。それだけを書かせる。


 二つ。医師を呼ばぬこと。呼べば、瓶を知る者が一人増える。


 三つ。王女である。


 三つ目が、いちばん難しい。


 紙は書けばよい。医師は呼ばねばよい。人は、そうはいかぬ。


     *


 王女は、廊下に立っておられた。


 壁に手をついておられる。手をついて、動かれない。


「ファティマ様」


「司祭」


「お加減は」


「悪くは、ありません」


 悪くない者は、壁に手をつかぬ。


     *


 こういう夜を過ごした者は、二つに分かれる。


 誰かに言う者と、言わぬ者である。言えば軽くなるので、たいていは言う。


 言わぬ者のほうが、あとで重くなる。そして、あとで重くなった者は、扱いやすい。


「一つ、伺います」


「どうぞ」


     *


「真実を、皆にお伝えになりますか」


     *


 この方は、何の真実か、とは聞かれなかった。


 聞き返さぬというのは、心当たりがあるということである。


 私はそれを確かめに来た。確かめ終えた。


 王女は、壁から手を離された。


「セフォー王国、そして、レーヌの平和が優先です」


     *


 優先、と仰った。隠す、とは仰らなかった。


 優先という語には、順が要る。順があるということは、二つとも見えておられるということである。


 見えていて、下に置かれた。それは、いつでも上へ戻せるということでもある。


 もう一つ、確かめたいことがあった。


「先ほど、成功を神に祈る、と仰いましたな」


「申しました」


     *


「どちらの神に」


     *


 王女は、しばらく答えられなかった。


 考えておられるのではない。言葉を選んでおられるのでもない。


 問われて初めて、そういう問いがあることに気づかれた顔である。


     *


「大地に帰るのを、留めてくださる神に」


     *


 私は、頭を下げた。


 長らくこの城へ通った。この方には、十のときから教典の内容を説いてきた。説いたのは私である。


 今回この方は、私が説く前に答えを導き出した。


 説く手間が省けた、とは思わなかった。


 ただ、この方は、大いに役に立つ、と。


     *


 部屋へ戻って、綴りを開いた。


 触れの文は、あとでよい。


 書いたのは、一行である。この一行から始まる。


     *


 大地に帰るのを、留めてくださる神。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。