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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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141/173

第141話:戻った

*カルロス王のイメージイラストを後書きに追加しました。

 灯りが、一つ増えていた。


 わしが瓶の中身を飲んだときは、卓に一つだけだった。誰かが足したのだ。


 足すというのは、長くなると思ったということである。どれだけ長かったのかは、聞かぬことにした。


     *


 手を、ずっと握られていた。


 この子は昔から力が強い。母によく似ている。


 わしは、自分の身体を確かめた。


 膝は十年痛んでいた。雨の降る前の日には、特に痛んだ。座るときと立つときに、いちいち息を止める癖がついていた。


 いま、何もない。


 エイブラムは痛むと言っていたが、あれは腿に傷があるからだろう。


 わしには、傷が無い。身体のどこも壊れていない。毒の影響もまったく感じない。


 体にはこれといって変化は感じなかった。そこで試しに一つ、頭の中で決めてみた。


     *


 明朝、二国へ使者を出す。全部断ると書記官に書かせる。


 国は渡さぬ。娘もやらぬ。


 わしは死んだが、それはお前たちのためではない。


     *


 昨日までなら、この一つを『決断しよう』と考えるまでに長い時間がかかった。


 何も、起きなかった。


 あっさりと決まった。


     *


「ファティマ」


「はい」


「わしは、戻ったか」


 この子は、答えなんだ。答えずに、握る手に力を入れた。


 この子は、わしが困ることは言わない。昔からそうだ。まったく、苦労をかけたものだ。


 司祭が、口を開いた。


「カルロス陛下」


「うむ」


「お戻りにございます」


 エイブラムは、立ったままこちらを見ておる。


 あの男は、何も言わぬ。だが、その目がすべてを語っていた。


 扉の外に、人の気配が無い。来たときには、司祭の騎士が立っておった。


 もう要らぬということだ。


 あの若い王のことを考えた。


 捧げると言うたのだから、捧げねばならぬ。考えて、少し妙な気がした。


 捧げねばならぬ、ではない。


     *


 もう、捧げておる。


     *


 良い悪いではない。それは至極当たり前のことに思えた。


 ファティマが、まだわしの手を握っておる。


 温かい。

カルロス王

挿絵(By みてみん)

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