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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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137/173

第137話:ご返答は

*ファティマのイメージイラストを後書きに追加しました。

 王都へ入った。


 市の立つ通りを抜けた。台は出ていたが、半分は布が掛かったままだった。掛けたままにしておくというのは、明日また出すつもりがあるということだ。


 私は、そう思うことにした。


 城門で、名を告げた。告げる前に、門番が父を見た。見て、槍を下ろして、走っていった。


 私が最後にここへ来たとき、この門には八人が立っていた。数えたから覚えている。


 今日は、二人だった。


     *


 中庭に入って、私たちは足を止めた。


 入れ違いに、一団が入ってくるところだった。


 馬が少ない。歩いている者が多い。歩いている者の大半が何らかの傷を負い、誰かを支えている。


 荷車が三台あって、三台とも人が乗っていた。苦しそうな声が漏れ聞こえてくる。


     *


 先頭は女人だった。


 強さと優しさを兼ね備えた、まさに戦女神というべき姿だ。


「エイブラム殿」


 父よりも先に私の声が出た。


「ファティマ王女殿下!」


 戦いのあとだろう、汚れてはいるが、その太陽のような微笑みは数年ぶりでもまるで変わらない。


「ライアンも、久しぶりですね」


 ファティマ様は、父の前で足を止められた。


 止めてから、しばらく何も仰らなかった。


「お体のご様子は」


「はい、長らくご心配をおかけいたしました」


 ファティマ様は、父の顔を長く見ておられた。


 それから、私のほうを向かれた。


「ライアン」


「はい」


「お返事を出せず申し訳ありませんでした」


 そう仰られると静かに頭を下げられた。


「頭をお上げください!取り次ぎは、何度もしてくださったと伺っております!」


 申し訳なさそうな表情を崩さぬまま、こちらをじっと見つめる。その視線の先にはエリアス王の姿も捉えているはずだ。


「皆さま、ご案内をいたします」


     *


 謁見の間へ通された。


 カルロス王が、座っておられた。


 私が最後にお目にかかったのも、十四のときだ。あのときより、小さく見えた。


「エイブラムか」


「はっ」


「立って、おるのか」


「立っております」


 王は、そこで黙られた。


 黙ってから、身を乗り出された。


     *


「どうやって」


     *


 ベルナール様が、一歩前へ出られた。


「カルロス陛下。奇跡にございます」


 王は、知己があるはずのベルナール様に反応しなかった。


 ただ、父を見ておられた。


「エイブラム」


「はっ」


「痛むか」


「痛みます。ですが戦うことはできます」


「そうか」


     *


 王は、それを聞いて、少し安心されたように見えた。


 それから、エリアス王が引き合わされた。


 カルロス王は、椅子から立たれた。


 立ってから、座り直された。


 どちらが上か、決めかねられたのだと思う。


     *


 その夜、ファティマ様が父のところへ来られた。


 紙は、持っておられなかった。


「エイブラム殿。先に、申し上げておきます」


     *


「ドラント王国とガーレン王国が、手を組みました」


 父は、何も言わなかった。


 私も言えなかった。あの二国は十年、互いを削り合ってきた。組むはずのない二国である。


「向こうの出した条件は、二つです」


「伺います」


     *


「一つ。セフォーの無条件降伏と、父上、カルロス陛下の……」


 ファティマ様は、そこで一度、言葉を切られた。


「ご自裁」


 無法にも程がある。


「二つ。私の輿入れです。どちらかの王子に」


 父が聞いた。


「どちらを、先に断られる」


「一つ目です」


     *


 二つ目を断るとは、仰らなかった。


「カルロス陛下は、なんと」


「王女であるお前は心配しなくていいのだぞ、と。あの弱気な父上が、初めて言い切っておりました」


 ファティマ様は、笑っておられた。


     *


 夜半、荷車で運ばれてきた者のうち、一人が死んだ。


 私は、その報せを聞いて、外へ出た。


 これから何が起こるのかを、知っていたからだ。

ファティマ

挿絵(By みてみん)

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