第134話(幕間):二年ぶんの名
綴りに、七つ書いた。
書いてから、順を入れ替えた。順を変えると、見えるものが変わる。
*
一つ。荷車の五人。数日である。起きた。
二つ。焼け跡の骨。年を経ている。起きぬ。
三つ。隊長と、その部下四名。眼前。速やかに起きた。
四つ。エイブラム殿。眼前。速やかに起きた。
五つ。ヴェルジュ。十日ばかりである。起きた。
六つ。あの麦の下の者たち。起きぬ。
七つ。二十年前、火を入れる前に五人やられた。あれは倒れてすぐであった。
*
六つ目を書くのに、いちばん時間がかかった。
あの麦の下に誰がいるかを、私は知っている。
*
この領へは、年に七日入る。七日のあいだに、その年に埋めた者の名を呼ぶ。名簿は持たぬ。二十年、間違えたことがない。
去年は来られなかった。道が塞がっていた。
だから今年は、二年ぶんである。
一昨年が二十六。去年が三十一。
五十七人の上に、麦が生えている。
*
立ったのは、一人であった。
*
限りがある。
十日は起きた。年を越した者は起きぬ。限りは、そのあいだにある。
*
そして、日で計るのではないと思う。
四十年、死者のそばにいた。夏の骸と冬の骸では、三日目の姿が違う。同じ日を数えても、進み具合は同じではない。
荷車の五人は野に転がっていた。ヴェルジュは土の下で、三月の土は冷たい。深く埋められ、上に麦を蒔かれていた。それに、あの老人は痩せていた。
日ではない。どこまで進んだかである。
*
この領で、私は一度、ライアン殿に問われたことがある。
なぜ人が亡くなったら焼かずに埋めるのか、と。
火は大地に帰してくれぬからです、と私は答えた。どこへも行かぬのです、行けぬのです、と。
あのとき私は、教義を言った。
*
同じ言葉が、いま別の意味で立つ。
あの方がなさっているのは、帰る途中の者を、途中で留めることである。
まだ道の入口にいる者は、引き戻せる。
奥まで行った者には、手が届かぬ。
火が届かぬのと、同じ理由でだ。
*
目安は、一週で見ておく。
夏は短い。冬は長い。土の下は長く、野は短い。肥えた者は短く、痩せた者は長い。
書きながら、これは規則にならぬと思った。
規則にするには、数えた数が足りぬ。
*
だが、先に知らねばならぬ。
戻ると説いて、戻らねば、次がない。
あの領民たちは、明日にはこう言うだろう。母を呼んでいただけぬか、と。
*
呼べぬ。
*
分からぬことを、分けて書いた。
一つ。なぜ一週なのか。数は取れる。理由が取れぬ。
二つ。焼かれた者が戻らぬのはなぜか。戻らぬことだけは、二十年前に確かめている。
三つ。あの方が歩かれた跡は、どこまで及ぶのか。幅を測る手がない。
四つ。戻ったものたちは考え語る。では首を落とされた者はどうなるか。まだ見ていない。
*
三十一年前の子も、二十年前のあれも、同じことをしていた。留めて、使っていた。
*
力は、同じである。
同じ力を持って、一人だけが、違うことをしている。
*
綴りを閉じて、それから、もう一度開いて書いた。
あの方は、ご自分が何をなさっているかを、ご存じなのだろうか。
*
伺えばよい。
答えはすぐに出たが、それが良策であるかは分からない。




