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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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134/173

第134話(幕間):二年ぶんの名

 綴りに、七つ書いた。


 書いてから、順を入れ替えた。順を変えると、見えるものが変わる。


     *


 一つ。荷車の五人。数日である。起きた。


 二つ。焼け跡の骨。年を経ている。起きぬ。


 三つ。隊長と、その部下四名。眼前。速やかに起きた。


 四つ。エイブラム殿。眼前。速やかに起きた。


 五つ。ヴェルジュ。十日ばかりである。起きた。


 六つ。あの麦の下の者たち。起きぬ。


 七つ。二十年前、火を入れる前に五人やられた。あれは倒れてすぐであった。


     *


 六つ目を書くのに、いちばん時間がかかった。


 あの麦の下に誰がいるかを、私は知っている。


     *


 この領へは、年に七日入る。七日のあいだに、その年に埋めた者の名を呼ぶ。名簿は持たぬ。二十年、間違えたことがない。


 去年は来られなかった。道が塞がっていた。


 だから今年は、二年ぶんである。


 一昨年が二十六。去年が三十一。


 五十七人の上に、麦が生えている。


     *


 立ったのは、一人であった。


     *


 限りがある。


 十日は起きた。年を越した者は起きぬ。限りは、そのあいだにある。


     *


 そして、日で計るのではないと思う。


 四十年、死者のそばにいた。夏の骸と冬の骸では、三日目の姿が違う。同じ日を数えても、進み具合は同じではない。


 荷車の五人は野に転がっていた。ヴェルジュは土の下で、三月の土は冷たい。深く埋められ、上に麦を蒔かれていた。それに、あの老人は痩せていた。


 日ではない。どこまで進んだかである。


     *


 この領で、私は一度、ライアン殿に問われたことがある。


 なぜ人が亡くなったら焼かずに埋めるのか、と。


 火は大地に帰してくれぬからです、と私は答えた。どこへも行かぬのです、行けぬのです、と。


 あのとき私は、教義を言った。


     *


 同じ言葉が、いま別の意味で立つ。


 あの方がなさっているのは、帰る途中の者を、途中で留めることである。


 まだ道の入口にいる者は、引き戻せる。


 奥まで行った者には、手が届かぬ。


 火が届かぬのと、同じ理由でだ。


     *


 目安は、一週で見ておく。


 夏は短い。冬は長い。土の下は長く、野は短い。肥えた者は短く、痩せた者は長い。


 書きながら、これは規則にならぬと思った。


 規則にするには、数えた数が足りぬ。


     *


 だが、先に知らねばならぬ。


 戻ると説いて、戻らねば、次がない。


 あの領民たちは、明日にはこう言うだろう。母を呼んでいただけぬか、と。


     *


 呼べぬ。


     *


 分からぬことを、分けて書いた。


 一つ。なぜ一週なのか。数は取れる。理由が取れぬ。


 二つ。焼かれた者が戻らぬのはなぜか。戻らぬことだけは、二十年前に確かめている。


 三つ。あの方が歩かれた跡は、どこまで及ぶのか。幅を測る手がない。


 四つ。戻ったものたちは考え語る。では首を落とされた者はどうなるか。まだ見ていない。


     *


 三十一年前の子も、二十年前のあれも、同じことをしていた。留めて、使っていた。


     *


 力は、同じである。


 同じ力を持って、一人だけが、違うことをしている。


     *


 綴りを閉じて、それから、もう一度開いて書いた。


 あの方は、ご自分が何をなさっているかを、ご存じなのだろうか。


     *


 伺えばよい。


 答えはすぐに出たが、それが良策であるかは分からない。

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