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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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130/173

第130話:数は合っていた

 朝から、館の者が走り回っていた。


 四十を超える客があることもそうだが、他国の王を迎える。自国の王すら迎えたことがないのに、だ。


「ライアン様。肉と酒、そしてお泊まりいただく部屋の手配は整いました」


「モーリス、本当にありがとう」


「それから、旦那様のお部屋は、どなたもお通ししないほうが」


「しかし」


「司祭様とヴィタリス王以外は、と申し上げるつもりでございました」


     *


 父は朝から起きていた。水を二度取った。数日ぶりである。


 私が部屋へ入ると、目を開けてこちらを見た。


「いつだ」


「昼までにと」


「そうか」


 それだけ言って、また目を閉じた。閉じたが、眠ってはいない。息の継ぎ方で分かる。


     *


 昼前に、丘の道に土煙が立った。


 私は門の外へ出て、待った。


 数えた。馬が十ほど。歩いている者がその倍。荷車が二台。


 三十と、十。


 数は合っていた。


 遠目でも分かる。ベルナール様だ。


 だが私は、その横を歩いている人物から目を離せなかった。


 若い。私より若い。


 上着は上等なものだが、汚れているようにも見える。


 そして、歩いている。馬は乗る者がいないまま、大人しく引かれている。


     *


「はじめまして、エリアスです」


 私は膝をついた。


 相手は王である。この領の主の子として、そうするのが筋だった。


「あ、そういうのは」


 声が上から降ってきた。


「いいです。立ってください」


 私は顔を上げた。


 困った顔をしていた。照れているようにも見えた。


「ライアンさん、ですね」


「はい。ロロア領主エイブラムの子、ライアンでございます」


「ベルナールさんから聞きました」


 王はそう仰った。


「痛いと言っている人が、こちらにいると」


 まるで相手のことを疑わぬような、澄んだ、素直な瞳だ。


「おります」


 私はそう答えた。


     *


 ベルナール様が前へ出られた。二年で、少しお痩せられたように見えた。


「ライアン殿」


「ベルナール司祭様!」


「間に合いましたか」


「はい」


 その一言で、膝が緩んだ。立っているのが急に難しくなった。


 ベルナール様は、私の肩に手を置かれた。


 心の中で私は、女神テラリーズと、目の前の司祭に感謝の祈りを捧げた。


     *


 ベルナール様とエリアス王、そして五名の教会騎士だけが館に入られた。


 そのなかに昨夜の若い男もいた。ペドロと名乗った男だ。


 私が頭を下げると、向こうも下げる。


 ヴィタリス王国の兵と思われる三十名は、モーリスが村へ案内していった。


 他の五名の教会騎士は、周囲を警戒するためか、門外の少し離れたところに待機をしていた。


     *


 私は父の部屋へ、ベルナール様とエリアス王を案内した。


 扉の前で、エリアス王が足を止められた。


「あの」


「はい」


「先に、ベルナールさんが入られたほうがいいと思います」


「質問をお許しください。なぜでしょうか」


「だって、呼ばれたのは、ベルナールさんですから」


 何かが胸の奥から込み上げてきて、言葉を返すことができない。


     *


 エリアス王に礼の言葉を告げた後、ベルナール様が扉を開けられた。


 開けて、入られる前に、一度こちらを振り返られた。


 振り返った理由が、私には分からなかった。

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