第128話:見定めた
*マティアスのイメージイラストを後書きに追加しました。
セフォー王国内のロロア領へ向かう一団は四十名を超えた。
我ら教会騎士団が五、ベルナールとその騎士が六。
ロランという男に率いられたヴィタリス王国の巡察隊が三十。そこにエリアス王が加わる。
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我ら騎士団の任は、見定めることである。
教会より受けた文には二つ書いてあった。
一つ、ベルナール司祭がエリアス王に心酔している様子がある。
二つ、エリアス王の危険性も、慎重に見定める必要あり。
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一つ目については、既に見当がついている。
あの司祭は、危険性を炙り出せる案を自ら出してきた。
結局のところ、上に尻尾を振る類の男だと分かった。
心酔しているならば、我らにエリアス王を計らせる案を出してくるはずがないからな。
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二つ目は、我の仕事だ。
歩き方、食い方、眠り方。人といるときの様子。順に見た。
まず、歩き方だ。
城内城下をよく歩く。
馬はある。用意もされている。それでも降りて歩く。理由は道端にいる。
物を担いだ者がいれば止まり、荷を見て、重くないかと聞く。子供がいれば屈む。
そうしていると一行が止まるので、そのたびにロランという男が黙って隊を止める。止めることに慣れた止め方であった。
とても王の歩みとは言えん。
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次に、食い方である。
食う。それは当たり前だ。
だが少ない。二日見て、椀に半分ほど残す日が二度あった。
残したものを、脇の者に押しやる。押しやり方が慣れている。
平民の食い方だ。気品の欠片もない。
眠り方は、短い。
我らが起きる頃には、既に起きている。火の番の者と話している。話す内容は他愛もない。国のこと、麦のこと、その者の兄のこと。
二晩とも、そうだった。
人といるときの様子。
全員に「さん」をつける。ロランという男にも、荷を担ぐ者にも、我らにも。
我を「マティアスさん」と呼んだ時は、思わず怒鳴るところだった。
一度、本人に伝えた。
「エリアス王」
「はい」
「そのような呼び方は、なさらぬがよろしいかと」
「そうですか」
少し考えていた。
「分かりました」
次の日には元に戻っていた。
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物を知らぬ、王族としての品格を何一つ持ち合わせない、お人好しの小僧。
それが我の見立てだ。
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ヴィタリス王国の境を越えたのは、王都を出て四日目だ。
レーヌ小国群に入って半日進んだところで、焼けた村の跡に出た。
新しい焼け跡ではない。柱が黒いまま雨に叩かれて、白くなりかけている。
人の骨が土に混じっていた。片づける者がいなかったのだろう。
その手前に、荷車が一台あった。
こちらは新しい。積荷が抜かれ、幌が裂かれている。倒れている者が五人。数日というところだ。野盗であろう。
廃村というのは、通る者が死ぬ場所である。
一行は、そこを通り過ぎた。
後ろで音がした。
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立っていた。
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荷車のところから、こちらへ歩いてくる。五人である。
歩き方が揃っていない。だが、向かう先は揃っていた。
村の骨は、動かなかった。
我らは剣に手をかけた。かけたところで、エリアス王が前へ出られた。止める間もなかった。
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「よかった。間に合いました」
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あの小僧は、薄気味悪く笑ってそう言った。
それから、一人ずつに何か話しかけていた。骸もそれに言葉を返す。
剣に手をかけたまま、後方を見た。
我らが今朝を過ごした場所も、昨日を過ごした場所も、小僧が歩いた土地である。
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まさか。
あの小僧は。
踏み入れた地を、自分の領土に変えるのか。
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見定めた!あれは、確かに、そういうものだ!
国外で害をなせば、焼く筋が立つ。これ以上ない光景をこの目で見た。
ベルナールを問いただした。
「これは、由々しきことです」
愚か者め、気がつくのが遅いわ。
ロロアの街に到着したら早々に手紙を出すことに決めた。
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ロロアの丘が見えたのは、六日目の夕方だった。
まだ半日ある。だが日が落ちた。
ベルナールが提案をしてきた。
「隊長。ロロアへ、先に触れを出しに参ります」
「夜にございますが」
「病者の家にございます。夜半に大人数が着けば、驚かせましょう」
もっともなので「よろしいのでは」と返した。
愚鈍なくせに、こういうところだけは、よく気がつくらしい。
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我らは休んだ。
ヴィタリスの兵は少し離れて火を焚いた。我らは我らで固まった。教会の者とヴィタリスの兵が同じ火に当たる決まりはない。
我は五名を見回して、番を割った。
既に小僧の領土になっているならば、追ってくる者はないはず。
気味の悪い小僧だ。さっさと焼いてしまえばいいのだ。
*
夜半を過ぎた。
ベルナールが来た。先触れが戻ってきたのだろうか。
我は火のそばで立ち上がって、頭を下げた。
下げたところに、何者かが後ろから来た。
*
何が起きたのか分からない。
ベルナールとその子飼いがこちらを見ている。
くぐもった声が聞こえて、部下の騎士が次々に倒れる。
なぜか地面が近い。
そうだ。
我は、上への報せをまだ書いていない。
街についたら早々に手紙を。
*
どこかで、鐘が、鳴っている。




