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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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第128話:見定めた

*マティアスのイメージイラストを後書きに追加しました。

 セフォー王国内のロロア領へ向かう一団は四十名を超えた。


 我ら教会騎士団が五、ベルナールとその騎士が六。


 ロランという男に率いられたヴィタリス王国の巡察隊が三十。そこにエリアス王が加わる。


     *


 我ら騎士団の任は、見定めることである。


 教会より受けた文には二つ書いてあった。


 一つ、ベルナール司祭がエリアス王に心酔している様子がある。


 二つ、エリアス王の危険性も、慎重に見定める必要あり。


     *


 一つ目については、既に見当がついている。


 あの司祭は、危険性を炙り出せる案を自ら出してきた。


 結局のところ、上に尻尾を振る類の男だと分かった。


 心酔しているならば、我らにエリアス王を計らせる案を出してくるはずがないからな。


     *


 二つ目は、我の仕事だ。


 歩き方、食い方、眠り方。人といるときの様子。順に見た。


 まず、歩き方だ。


 城内城下をよく歩く。


 馬はある。用意もされている。それでも降りて歩く。理由は道端にいる。


 物を担いだ者がいれば止まり、荷を見て、重くないかと聞く。子供がいれば屈む。


 そうしていると一行が止まるので、そのたびにロランという男が黙って隊を止める。止めることに慣れた止め方であった。


 とても王の歩みとは言えん。


     *


 次に、食い方である。


 食う。それは当たり前だ。


 だが少ない。二日見て、椀に半分ほど残す日が二度あった。


 残したものを、脇の者に押しやる。押しやり方が慣れている。


 平民の食い方だ。気品の欠片もない。


 眠り方は、短い。


 我らが起きる頃には、既に起きている。火の番の者と話している。話す内容は他愛もない。国のこと、麦のこと、その者の兄のこと。


 二晩とも、そうだった。


 人といるときの様子。


 全員に「さん」をつける。ロランという男にも、荷を担ぐ者にも、我らにも。


 我を「マティアスさん」と呼んだ時は、思わず怒鳴るところだった。


 一度、本人に伝えた。


「エリアス王」


「はい」


「そのような呼び方は、なさらぬがよろしいかと」


「そうですか」


 少し考えていた。


「分かりました」


 次の日には元に戻っていた。


     *


 物を知らぬ、王族としての品格を何一つ持ち合わせない、お人好しの小僧。


 それが我の見立てだ。


     *


 ヴィタリス王国の境を越えたのは、王都を出て四日目だ。


 レーヌ小国群に入って半日進んだところで、焼けた村の跡に出た。


 新しい焼け跡ではない。柱が黒いまま雨に叩かれて、白くなりかけている。


 人の骨が土に混じっていた。片づける者がいなかったのだろう。


 その手前に、荷車が一台あった。


 こちらは新しい。積荷が抜かれ、幌が裂かれている。倒れている者が五人。数日というところだ。野盗であろう。


 廃村というのは、通る者が死ぬ場所である。


 一行は、そこを通り過ぎた。


 後ろで音がした。


     *


 立っていた。


     *


 荷車のところから、こちらへ歩いてくる。五人である。


 歩き方が揃っていない。だが、向かう先は揃っていた。


 村の骨は、動かなかった。


 我らは剣に手をかけた。かけたところで、エリアス王が前へ出られた。止める間もなかった。


     *


「よかった。間に合いました」


     *


 あの小僧は、薄気味悪く笑ってそう言った。


 それから、一人ずつに何か話しかけていた。骸もそれに言葉を返す。


 剣に手をかけたまま、後方を見た。


 我らが今朝を過ごした場所も、昨日を過ごした場所も、小僧が歩いた土地である。


     *


 まさか。


 あの小僧は。


 踏み入れた地を、自分の領土に変えるのか。


     *


 見定めた!あれは、確かに、そういうものだ!


 国外で害をなせば、焼く筋が立つ。これ以上ない光景をこの目で見た。


 ベルナールを問いただした。


「これは、由々しきことです」


 愚か者め、気がつくのが遅いわ。


 ロロアの街に到着したら早々に手紙を出すことに決めた。


     *


 ロロアの丘が見えたのは、六日目の夕方だった。


 まだ半日ある。だが日が落ちた。


 ベルナールが提案をしてきた。


「隊長。ロロアへ、先に触れを出しに参ります」


「夜にございますが」


「病者の家にございます。夜半に大人数が着けば、驚かせましょう」


 もっともなので「よろしいのでは」と返した。


 愚鈍なくせに、こういうところだけは、よく気がつくらしい。


     *


 我らは休んだ。


 ヴィタリスの兵は少し離れて火を焚いた。我らは我らで固まった。教会の者とヴィタリスの兵が同じ火に当たる決まりはない。


 我は五名を見回して、番を割った。


 既に小僧の領土になっているならば、追ってくる者はないはず。


 気味の悪い小僧だ。さっさと焼いてしまえばいいのだ。


     *


 夜半を過ぎた。


 ベルナールが来た。先触れが戻ってきたのだろうか。


 我は火のそばで立ち上がって、頭を下げた。


 下げたところに、何者かが後ろから来た。


     *


 何が起きたのか分からない。


 ベルナールとその子飼いがこちらを見ている。


 くぐもった声が聞こえて、部下の騎士が次々に倒れる。


 なぜか地面が近い。


 そうだ。


 我は、上への報せをまだ書いていない。


 街についたら早々に手紙を。


     *


 どこかで、鐘が、鳴っている。

マティアス

挿絵(By みてみん)

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