第126話:さて、どうしたものか
二年ぶりのロロアである。
毎年通っていたが、昨年は行けなかった。今年も行けぬものと思っていた。
この手紙を受け取るまでは。
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手紙を受け取る前、私はヴィタリス王都を訪れていた。
一月に発って、ふた月ののちに戻ってきた。
命は教会本部から来たもので、前回の所見を『現地にて改めて検めよ』とあった。
先の報告において私が書いたのは、こうである。
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当地に邪なるものを認めず。危険は認められず。聖別を要する事由、なし。
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それを、私が検め直す。
実に皮肉が効いている。嫌われたものだ。
文には、疑うとは書いていない。書いていないから疑っている。
四十年、そうした文を読んできたし、書いてもきた。
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同行は十名。護衛である、と文にある。
西はヴィタリス王国の他、内戦が続くレーヌ小国群も近い。
万一のことを考えてということになっている。事実ではある。
十名のうち、五名は私が名を知っている。赤子のころに私が洗礼を授けた者や、私が推した者たちだ。
残る五名は帯刀を許されている。名しか知らぬ。
見定めるべきは、名しか知らぬ五名が、私の報告書を読んでいるかどうか。
読まされていれば、私の書いたものと目の前のものを比べる。比べれば黙ってはいないだろう。
反応を見ればそれで分かる。
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ヴィタリス王都に着いた夜、教会騎士の護衛隊長が私のところへ来た。齢は四十前といったところだろう。背が高い。周囲を警戒している。
「司祭様」
「はい」
「街に灯りがございません」
「ございませんな」
「なぜでしょうか」
「私も伺いました。要らぬそうです」
隊長は、それ以上聞かなかった。
聞かずに、頭を下げて下がった。
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翌日、私は陛下に拝謁した。
変わっておられない。
私を覚えておられて、二年ぶりですね、と言われた。正確には二年ではないのだが、訂正はしなかった。あの子の中では、一度会った人は久しぶりになるようだ。
「ベルナールさん」
「はい」
「今度は、何日おられますか」
「決めておりませぬ」
「では、長くいてくださいね」
私は頭を下げた。
下げながら、前に来たときからこの国の何が変わったかを数えていた。
変わっていなかった。
それが、私が検めに来たものである。
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手紙が届いたのは、それから三日の後だった。
教会の道で来た。宛名は私の名で、いまの居場所が書いてある。
本部は、私がどこにいるかを知っている。
封を検めた。開けられた跡はない。跡がないことを確かめる自分を、私は四十年前に想像したことがなかった。
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中は二行だった。
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最後の祈りを頼みたい。
息子を頼む。
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筆はライアン殿のものだ。
二行のあいだが空いている。二つを一度に言われたのではなく、一つ言って、待って、それからもう一つ言われたのだと分かる。
エイブラム殿は、順を決めかねられたのだ。
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私は紙を置いた。
あの領には司祭がいない。私が滞在するのは、年に七日だけである。
その七日のあいだに、私はあの領の一年ぶんの名を呼ぶ。二十年、間違えたことがない。
そこに、エイブラム殿の名が加わることになるのか。
惜しい、と思った。
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窓の外を見た。畑に人が出ている。日は落ちている。
西の小国群へ布教のため、という道を作ればよい。ロロアはその途上にある。
誰にも咎められぬ道を作り、奇跡の二文字を足せば、事を為す足掛かりになる。
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咎められぬ道は、随行者を伴って歩む必要がある。
その際、私は単独でなく十名と共に行かねばならぬ。半数は懸念に非ず。
さて、どうしたものか。




