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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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126/173

第126話:さて、どうしたものか

 二年ぶりのロロアである。


 毎年通っていたが、昨年は行けなかった。今年も行けぬものと思っていた。


 この手紙を受け取るまでは。


     *


 手紙を受け取る前、私はヴィタリス王都を訪れていた。


 一月に発って、ふた月ののちに戻ってきた。


 命は教会本部から来たもので、前回の所見を『現地にて改めて検めよ』とあった。


 先の報告において私が書いたのは、こうである。


     *


 当地に邪なるものを認めず。危険は認められず。聖別を要する事由、なし。


     *


 それを、私が検め直す。


 実に皮肉が効いている。嫌われたものだ。


 文には、疑うとは書いていない。書いていないから疑っている。


 四十年、そうした文を読んできたし、書いてもきた。


     *


 同行は十名。護衛である、と文にある。


 西はヴィタリス王国の他、内戦が続くレーヌ小国群も近い。


 万一のことを考えてということになっている。事実ではある。


 十名のうち、五名は私が名を知っている。赤子のころに私が洗礼を授けた者や、私が推した者たちだ。


 残る五名は帯刀を許されている。名しか知らぬ。


 見定めるべきは、名しか知らぬ五名が、私の報告書を読んでいるかどうか。


 読まされていれば、私の書いたものと目の前のものを比べる。比べれば黙ってはいないだろう。


 反応を見ればそれで分かる。


     *


 ヴィタリス王都に着いた夜、教会騎士の護衛隊長が私のところへ来た。齢は四十前といったところだろう。背が高い。周囲を警戒している。


「司祭様」


「はい」


「街に灯りがございません」


「ございませんな」


「なぜでしょうか」


「私も伺いました。要らぬそうです」


 隊長は、それ以上聞かなかった。


 聞かずに、頭を下げて下がった。


     *


 翌日、私は陛下に拝謁した。


 変わっておられない。


 私を覚えておられて、二年ぶりですね、と言われた。正確には二年ではないのだが、訂正はしなかった。あの子の中では、一度会った人は久しぶりになるようだ。


「ベルナールさん」


「はい」


「今度は、何日おられますか」


「決めておりませぬ」


「では、長くいてくださいね」


 私は頭を下げた。


 下げながら、前に来たときからこの国の何が変わったかを数えていた。


 変わっていなかった。


 それが、私が検めに来たものである。


     *


 手紙が届いたのは、それから三日の後だった。


 教会の道で来た。宛名は私の名で、いまの居場所が書いてある。


 本部は、私がどこにいるかを知っている。


 封を検めた。開けられた跡はない。跡がないことを確かめる自分を、私は四十年前に想像したことがなかった。


     *


 中は二行だった。


     *


 最後の祈りを頼みたい。


 息子を頼む。


     *


 筆はライアン殿のものだ。


 二行のあいだが空いている。二つを一度に言われたのではなく、一つ言って、待って、それからもう一つ言われたのだと分かる。


 エイブラム殿は、順を決めかねられたのだ。


     *


 私は紙を置いた。


 あの領には司祭がいない。私が滞在するのは、年に七日だけである。


 その七日のあいだに、私はあの領の一年ぶんの名を呼ぶ。二十年、間違えたことがない。


 そこに、エイブラム殿の名が加わることになるのか。


 惜しい、と思った。


     *


 窓の外を見た。畑に人が出ている。日は落ちている。


 西の小国群へ布教のため、という道を作ればよい。ロロアはその途上にある。


 誰にも咎められぬ道を作り、奇跡の二文字を足せば、事を為す足掛かりになる。


     *


 咎められぬ道は、随行者を伴って歩む必要がある。


 その際、私は単独でなく十名と共に行かねばならぬ。半数は懸念に非ず。


 さて、どうしたものか。

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