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白王と黒王  作者: ブルースライム
第2章:アイゼンヴァルト王国

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115/173

第115話:誰が使えぬようにした

 エルヴィーンに上申書をもう一度出させた。


 一枚である。七つの項がある。


 卓が割れたのも、隊を残したのも、境の柵を厚くさせたのも、全部この一枚から出た。半月のあいだに起きたことは、ほとんどこの紙の子である。


 私は四の項で止まった。


     *


 なお、この境につき、当職の判ずるところ、この紙に書き得ざる事柄が一つあり。


 別して口頭にて申し上ぐ。


     *


 まだ聞いておらぬ。


 読んだのは半月前だ。読んで、卓を開いて、決めて、そのままにした。決めることが多い日は、聞くことが後になる。


 後になったものは、たいてい後で高くつく。


     *


「参謀」


「はい」


「書き得ざる事柄とは」


「口頭にて申し上げます」


「言え」


 参謀は一歩前に出た。卓の幅は変わらぬ。それでも一歩出た。


 声を落とす、というのはこういうことである。


「中心なる者にございます」


「続けろ」


「あの境を測るにあたり、当職はその者を数に入れておりませぬ」


「なぜだ」


「使えませぬので」


「何を外した」


「上申の項ではございませぬ」


「では何だ」


「もとの紙の、十一の項にございます」


 落とされた十一行のことである。


 規定が作られたとき、後ろから切られた。私が出させて、書庫から出てきた。二百年で七件の綴りと一緒に。


 参謀は諳んじた。


     *


 待たずに処すべし。中心なる者を先に、然るのちに動く者を。


     *


「読んだ」


「待たずに済む手は、あれ一つにございました」


「そうだな」


「誰が使えぬようにした」


     *


 参謀は答えなかった。


 答えないのが答えである。


 この男は、私の名を言わなかった。


 私は自分の言葉を思い出した。


 『ならば、記録は当てにならぬ』


 あのとき、そう言った。言ったので待機は却下され、却下されて隊が立ち、隊が立ったのでこの紙が上がってきた。


 そして、当てにならぬと裁いた記録の中に、中心なる者は書かれている。


     *


「取り消せば、使えるか」


「使えます」


「そのときは」


「主計監の案が戻ってまいります」


     *


 三日から百日で死ぬ。ならば待てばよい。一銭もかからぬ。


 あれが戻る。


 二百十日を過ぎておる者について、三日から百日の紙を当てるわけにはいかぬ。当てにならぬ、で正しい。


 正しいまま、こちらの手が一つ減っている。


     *


 使えぬと申した項を、この男は諳んじている。


 諳んじるほど読んだということだ。


 私は参謀を見た。


     *


 焼くことにつき、異を唱うる者、見あたらず。


     *


 市中の触れについて集めさせた四行の、三行目だ。


 まだ命じておらぬことに、民が異を唱えていない。その出所をメルダースに追わせている。


 聞こうとして、やめた。


 揃うまでは出さぬ者に、途中を聞くのは筋が違う。


「ほかに、書き得ざることはあるか」


「ございませぬ」


 参謀は紙の端を揃えて、下がった。


 揃っていた紙である。

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