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白王と黒王  作者: ブルースライム
第2章:アイゼンヴァルト王国

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第114話(幕間):値がつかぬ

 主計監 ライマー 覚


 二月。教会よりの書状につき、外務長官に問われたるところを左に記す。


     *


【一 問われたること】


 外務長官、当職の部屋へ参らる。


 教会より書状あり。西の民の数を尋ねておる、と。


 答えてよきものか、と。


     *


 イザークが、値を聞きに来おった。


 いつもは、こちらが値をつけたあとに来る。つけた値を、外へ持って出るためにな。


 しかもこの件は卓に出ておる。陛下は、後で聞く、と仰せられた。


 後で聞くと言われたものを、先にこちらへ持ってくる。


 順が違うのぉ。


 違うと知らぬ男ではない。


     *


【二 持ち物の見立て】


 数そのものは、ただの数である。


 ただし、向こうが尋ねてきたということは、向こうが持っておらぬということである。


 持っておらぬものを、こちらは持っておる。


 これは品である。


【三 値】


 品の値は、買い手が何に使うかで決まる。


 教会が何に使うかを、当職は知らぬ。


 知らぬものには、値がつかぬ。


 ゆえに問うた。あちらは、何に使われる、と。


     *


 ここで、考える顔をした。


 わざと見せる顔よ。見飽きたわい。


 わざと見せる者は、たいてい答えを持っておるものでな。


 持っておらぬ者に、顔を作る暇はないものよ。


     *


【四 答えられたること】


 曰く、教会は名を書くところにて、名を書くには数が要る、と。


 曰く、それ以上は書状にございませぬ、と。


     *


 書状にないことを、この男は知っておるな。


 知っておって、書状にはない、と言うた。


 嘘ではない。嘘でないものが、いちばん高くつく。


 教会が、数だけで済ますとも思えぬ。


 数は入口よ。入口を開けさせて、そのあと何を運び込むかは、開けてからのことになる。


 イザークがそれに気づいておらぬはずがない。


 気づいたうえで、値だけを聞きに来おった。


 詐欺師とペテン師の化かし合いというのは、ぞっとせんのぉ。


     *


【五 しからば】


 値はつけられぬ。


 つけられぬものは、渡さぬに限る。


 渡さねば減らぬ。渡せば戻らぬ。


【六 なお】


 二十万という数は、当職の帳面にも載っておる。麦の出入りから引いた数である。


 外の者が同じ数に着くには、同じ帳面を持つほかない。


 南の商人は、持っておる。


     *


 ゆえに、渡さぬと決めても、遅かれ早かれ向こうへ渡るのぉ。


 こちらで決められるのは、こちらから渡すかどうかだけよ。


 値がつくのは、その一点きりである。


     *


【七 買い手の懐】


 教会は国にあらず。ゆえに歳入の綴りがない。


 が、どの国にも礼拝堂がある。礼拝堂には箱がある。


 箱の中身を数えた者を、当職は知らぬ。


 数えられぬ懐を、貧しいと見るのは素人である。


【八 上申せず】


 右は問われて答えたるものにて、命ぜられたるものにあらず。


 教会への返答は外務の役目である。当職の名は出さぬ。


     *


 イザークめ、深々と頭を下げて帰っていったわ。


 値がつかぬ、と申したことに、礼を言うたのである。


 値がつかぬというのは、答えではない。


 それを持って帰る者は稀有よのぉ。

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