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白王と黒王  作者: ブルースライム
第2章:アイゼンヴァルト王国

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113/173

第113話(幕間):命ぜられたるものにあらず

 主計監 ライマー 覚


 二月。焼却に要する費えにつき、算じたるところを左に記す。


     *


 一、実績


 北の練兵場へ入りたる油、十九樽。回収隊の携行分である。


 馬一頭を焼くに、樽の四分の一。


 人一人を焼くに、樽の十分の一。


 右は境よりの報せに拠る。実際に焼きたるものの数字であり、こちらで見積もりたるものにあらず。


 ゆえに、一樽につき十人と置く。


 十九樽で百九十人。隊の携行分にて足る数である。


     *


 ただし、拠りどころは一件のみ。


 馬は練兵場にて一頭、人は境にて一人。それきりである。


 一件より引きたる数は、二件目にて改まる。改まるまでは、これを使うほかない。


     *


 二、いま出しているもの


 十九樽を出したのは当職である。


 何人ぶんかを問われて出したのではない。隊が運べる量で出した。


 結果として百九十人ぶんになった。


 年に百九十を超えれば、足りぬ。


 超えるかどうかを、当職は聞いておらぬ。誰も言うてこぬ。


     *


 三、足りるか


 西部方面は八千から一万四千になった。兵が増えれば、死ぬ者も増える。


 焼く者は、四十名のままである。


     *


 境にて一人を焼くに、隊は一日を使うた。運び、薪を組み、焼き、灰を運ぶ。


 隊は一つ。ゆえに一日に一人である。


     *


 この速さで二十万を焼くとする。


 二十万日。年にして五百四十八年。


     *


 四十名は、試みのための数である。試みには足りる。


     *


 四百名なら、隊にして十。一日に十人。二万日。五十四年。


 四千名なら、二千日。五年半。


 一万名なら、隊にして二百五十。一日に二百五十人。八百日。二年と少し。


     *


 右は、焼く日数のみである。運ぶ日数を入れておらぬ。


     *


 四、外の値


 外務長官に問う。


 曰く、南の油、この半月で二割上がりたり。買い足しておるは連邦にあらず、と。


 こちらが集めたゆえに上がったのではないか、と問う。


 曰く、それもございましょうな、と。


     *


 右は、集めれば上がるということである。


 量が増えれば、一樽あたりの値も増える。二重に増える。


     *


 五、隊を増やす場合


 油は人数に比例する。四百名なら十倍、四千名なら百倍を積むことになる。


 四百名にて、百九十樽。蔵の五分の一ほど。


 四千名にて、千九百樽。一年で蔵が空く。


     *


 ただし、油は小さいほうである。


 大きいのは口である。


     *


 冬に一万二千を出す費えは、既に出してある。往き十六日、戻り十九日、合わせて三十五日ぶんの口と、馬の飼葉と、油。


 隊は出したり戻したりするものではない。置くものである。


 一年は三百六十五日ある。


     *


 四千を一年置くは、一万二千を冬に一度出す費えの、三倍半にあたる。


 一万を一年置くは、八倍半である。


     *


 却下されたのは、その一度ぶんである。


     *


 六、限りまで


 向こうの数、二十万と聞く。


 一樽に十人であるから、二万樽。


 いま王国の蔵にある油の、二十年分にあたる。


 集めれば値は跳ねる。跳ねた値で二万樽を買えば、一年の入りでは足りぬ。


 三年ぶんを要する。


 その三年、ほかに何も買えぬ。


     *


 七、しからば


 焼くは、境にては安い。


 向こうを焼くは、値がつかぬ。


 値がつかぬというのは、高いということではない。買えぬということである。


     *


 八、なお


 薪は数えておらぬ。境の柵を厚くせよとの由につき、そちらへ回っておるゆえ、いまは引けぬ。


 人手も数えておらぬ。焼く者を四千も揃える算段は、金の話ではない。


 何人焼くことになるかも、数えておらぬ。それは当職の見るところにあらず。


 灰の始末も数えておらぬ。境の報せに、集めて杭の内へ運びたる旨あり。命じたる者なし。


 命じておらぬものは、帳面に載らぬ。載らぬものは、増えても気づかぬ。


     *


 右、命ぜられたるものにあらず。


 誰にも見せぬ。綴りにも入れぬ。手元に置く。


     *


 値は、命ぜられてから出すのでは遅い。

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