第102話(幕間):待つ理由とはならず
参謀本部 エルヴィーン
陛下に申し上ぐ。西の境につき、判じたるところを左に記す。
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一、観たるもの
夏。西の内にて事の起こる。日を定むる紙なし。南の港に西の麦の入りたる月と、境を越えて参る者の初めて出でたる月より、七月と置く。
右は、こちらの者の見たるものにあらず。逆に引きたる日付である。
一月の末。境の東の森にて、我が兵四名のうち三名死し、三名とも起き上がる。生き残りたる一名の聴取あり。
こちらの者が見たるは、この一件のみ。
同じ月、五つの村の徴税、切る。
境の杭より森まで、近し。杭より見ゆ。
ただし線の東の端は知れず。同じ月に失いたるもののうち最も遠きは五つの村にて、境より東へ馬にて一日ばかり。
遠きを取りて、動きたる距離とす。
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二、導かるること
境は在る。
起き上がる側と、起き上がらぬ側とがある。
起き上がる側は西なり。
我が国の側にては起き上がらず。軍医寮の確認せる八千六百四十一件に該当なし。埋葬の後についても、当該士官の申し立てにより、三十一年で例なし。
ただし、この境は国の境と一つにあらず。
一月末、あの森はいまだ我が国の側にありながら、起き上がる側へ移りたり。
ゆえに、これは病にあらず。病であれば、かくのごとき線を持たぬ。
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三、動きたる速さ
夏より一月末まで、六ヶ月。
動きたる距離、馬にて一日ばかり。
境より我が王都まで、馬にて六日。
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右をもって割れば、三年である。
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四、この推しの弱きところ
点は二つのみ。
二つの点は、必ず線で結ばれる。線となるゆえに速さが出で、速さが出づるゆえに年が出る。この三年は、二つの点が線で結ばれる場合にのみ正しい。
また七月より一月末までの六ヶ月、我らは西の内を見たる者を持たず。
動かざりしとも言えず。動きたりとも言えず。
斥候の越えたるは十一月なれど、王都まで参りて戻りたるのみにて、境を測りには行かず。
なお、この境につき、当職の判ずるところ、この紙に書き得ざる事柄が一つあり。
別して口頭にて申し上ぐ。
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五、しからば
弱きは承知の上にて申し上ぐ。
誤りて、実は速しとせば、待つあいだに境は来る。
誤りて、実は遅しとせば、いま出でても損なうは兵と金のみ。
ゆえに、弱きことは待つ理由とはならず。
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六、いま一つ
境は縮まぬ。
三十一年前の一件も、二百年の七件も、焼きたる後に土地の戻りたる旨、いずれにも書かれておらず。
書かれておらぬのみにて、確かめたる者はなし。
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七、上申
速やかに西へ出でられたし。
焼きて縮まぬ以上、焼くは守りにして攻めにあらず。攻めは兵をもって行うほかなし。
ただし、我が兵の骸を境の内に残すべからず。残せば、そのまま向こうの数となる。
回収隊はこのために設けたるものにて、本隊に随行せしむべし。
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右、申し上ぐ。
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なお四の項につき、王付士官メルダースの調べたる紙に、同じ旨の一行あり。
当職の判ずるところ、その一行は正しい。
正しきまま、三年を動かさず。




