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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第七章 ゼウス様の侵攻とヘラ様の予定調和

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第93話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

「……ふふっ、しょうのない男じゃのう……」


ヘラ様は照れ隠しのように慌ててそっぽを向き、瞳を少しだけ泳がせながら小さく呟かれました。


王妃としてのエレガントさを保ちつつも、その胸の高鳴りは、物陰で見守る日の本の女神たちにもはっきりと伝わってきます。


「そうじゃのう。……城が建ったら、帰ってやっても良い。


それまでは妾に寄りつくでない。さあ帰れ」


ヘラ様はフンスと胸を張り、恥ずかしさを隠すようにしてゼウス様へぴしゃりと命じました。


「そうそう。浮気を咎めることは、もうせぬ。あとは自分で考えるがよかろう」


私はもう、貴方の後ろを追いかけて金切り声を上げることはない。


これからは一人の女神として、この日の本で美味しいお酒を飲み、アリアドネたちと大いに人生を楽しませてもらう。


だからこそ、貴方がこれからどう生きるか、その浅はかな頭で自分でしっかりと考えなさい、という慈愛が込められたお灸だったのです。


「はっ……はいっ! す、すぐに! 明日には極上の城の件、必ずや履行します!」


ゼウス様は顔を土色から真っ赤に変え、妻のあの「ポッ」となったあまりの美しさに改めて魂を完全に奪われながら、今度こそ一人の敬虔な夫(信者)として、這うようにして黄泉の門へと向かい、オリュンポスへと全力で退散していきました。


「ヒィィエェェェエーーーーっ!!!

な、なんですのその『熟年夫婦の不意打ちの純愛』はーーーっ!!!」


ゼウス様がバタバタと帰っていったリビングで、それまでお酌のフリをして見守っていたアリアドネが大赤面の絶叫を上げました!


「好色な親玉のくせに、最後の最後にヘラ様を本気で赤面させるような、格好いい不意打ちを喰らわせるなんて、本当に、本当に生意気ですわーーーっ!!」


顔を真っ赤にしてパニックになるアリアドネ。


テセウスとの受難を乗り越えた彼女にとってすら、この「神々の本気の夫婦愛」の熱量は、少々刺激が強すぎたようです。


「ふはははは! 見事じゃ、見事じゃヘラ様!


あやつ、ヘラ様のあの美しさに完全にノックアウトされておったな!


妾も見ていてまこと胸がすくようなハメ手じゃったわ!」


天照大御神様が少し照れているヘラ様の背中をぽんぽんと軽く叩いてなだめます。


「ふふ、妻を失う恐怖を前にして、ようやく本当に大切な愛に気づいたのじゃな。


ヘラ様、あやつが城を建てる間、ここでゆっくりと美味しいお料理を囲みましょうぞ」


「ゼウスの親父、最後の最後に一本取っていきやがったか。


だが、これからは浮気をするたびに、世界中の財産が城に化けてヘラさんのものになるわけだな」


「ん? 素戔殿。浮気などしたらジ・エンドじゃ。お互いにの」


「妾にも浮気をする権利があると言うことじゃ。いままでさんざん大目に見てやったのじゃ。


バチは当たらぬであろう。じゃから、どっちかが浮気すればそこで終わりじゃよ」


ヘラ様はニヤリと微笑まれました。


これまではただ一方的に怒り狂うだけだった正妻が、「今度からは妾だって、素敵なおのこと自由に浮気して楽しませてもらうわ」と、最恐宣言を放ったのです。


夫であれ妻であれ、どちらかが一歩でも線を越えたその瞬間に、夫婦の関係は本当の終わりを迎える。


素戔嗚尊様の動きが停止しました。その「ジ・エンド」という現世の響きが持つ絶対的な宣言をかみ砕いてます。


「お、お互いに……って、ヘラさん……」


「ええ、その通りじゃ。今回のことで身に染みて分かりましたわ。


男だけに自制を求めるなど不公平というもの。


これからは、妾もこの美しき日の本で、素晴らしいおのこと出会う自由がある、ということじゃな。


……もし我が夫が不埒な真似を一つでも重ねれば……


その瞬間に、妾は本当の意味で別の『良いおのこ』の元へと飛び立って進ぜよう」


美しいお顔で、フンと気高く胸を張って微笑まれました。


「ひ、ひぃえぇぇぇえーーーーっ!!!

ゼ、ゼウス様、今度こそ本当に、本当のジ・エンドを迎えてしまいますわーーーっ!!!」


アリアドネちゃんはヘラ様から放たれた「最恐の脅し文句」の前に悶絶の絶叫を上げています。


あの好色な親玉が、もし次に浮気をしたら、今度は怒られるどころか、この世界一美しい妻が本当に別の漢の元へ行ってしまうという絶望の未来。


「……ヘラさん、そいつはマジで、ゼウスの親父にとっては死刑宣告以上の代物だな」


素戔嗚尊様は額から冷や汗を流しながら、心の中で


(……よかった、奇稲田への俺の愛は24時間365日完璧に一途だから、俺には1ミリも飛び火しねえ。


あの親父、マジでこれから一生、生きた心地がしねえだろうな)


と、静かに胸をなでおろしていました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

ゼウス様の不意打ちデレに照れつつも、きっちり退散させたヘラ様。しかしその口から飛び出したのは「次に浮気したら即ジ・エンド&妾も別の男の元へ行く」という死刑宣告でした。


「即乗り換える宣言が一番効いてて草」、「熟年夫婦の即死トラップ怖っ」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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