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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第七章 ゼウス様の侵攻とヘラ様の予定調和

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第88話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

(ふむ、わしの分身である鳥を先に飛ばして、鎌倉の家とやらの様子を偵察しに行かせるとしよう)


ゼウス様は大国主様へ「鎌倉とはどのようなところなのじゃ?」とそれとなく場所を聞き出し、鳥を放ちました。


しかし次の瞬間、時速285キロで激走する新幹線の風圧と速度の前に、放ったはずの分身の鳥は一瞬で遥か後方へと置き去りにされてしまいました。


「ぬあああっ!? わしの鳥が機能せぬだと! なんという韋駄天の箱だ!」


疲れるがしょうがないと判断したゼウス様は、今度は空間を直接見通す「千里眼」を遥か東の鎌倉へと飛ばしました。


すると、その視線の先に映し出されたのは、まさに天国のような光景でした。


邸宅のキッチンでは大男が美味そうな料理をせっせと作っており、リビングでは天照大御神様、イザナミ様、アリアドネ。


そして完璧にプロデュースされてアフロディーテ様をも超える美のオーラを放つ謎の美女(ヘラ様)の四柱の女神が、キャッキャとまばゆい笑顔で楽しそうに歓待の支度をしています。


「フハ…… フハハハハ! おおっ! おお!!

何という目の保養! 素晴らしい!


4人の絶世の美女たちがこの私を温かく迎えるために楽しそうに話しておるではないか!」


その光景を見たゼウス様は、先ほどまで胸を支配していた「わし、ヤバいかも」という重大な直観を、新幹線の窓の外を流れる東海道の景色と一緒に遥か彼方へと置き去りにしてしまいました。


ゼウス様の脳内は、4人の絶世の美女たちが自分を囲んで奏でる、最高に不埒で都合のいい妄想の世界へと完全に連れ去られていくのでした。


新幹線のグリーン車で、鼻の下を限界まで伸ばしてニヤニヤと妄想に耽る全能の神ゼウス様。


彼を乗せた列車は、破滅の罠が待つ七里ヶ浜に猛烈なスピードで近づいていきます。


新幹線は、新横浜駅に停車しました。


「さあ、参りましょうゼウス様。ここからお車が待っております」


「う、うむ……」


大国主様の誘いに従い、ゼウス様は新幹線の重厚なドアをくぐって改札ロビーへと出ました。


光り輝く美しいコンコースの広大さに目を見張りつつ、自動で動く魔法の階段に足を乗せると、「おお、これは乗っておるだけで進むのか!」と二日酔いも忘れて子供のように楽しみます。


しかし、駅の出口へと一歩踏み出した瞬間、ゼウス様の笑顔が凍りつきました。


そこには、先ほど千里眼で「せっせと料理を作っていた」はずの、大男、素戔嗚尊様が高級スーツをスマートに着こなした非の打ち所がない完璧な立ち姿で出迎えにきていたのです。


「お待ちしておりました。ゼウス様。日の本の旅はいかがでしたか?」


素戔嗚尊様が一礼を捧げます。


先ほどは千里眼の不埒な妄想に目が眩んでいて気づかなかったゼウス様でしたが、こうして至近距離で正面から対峙した瞬間、その大男の身体の奥底から静かに脈打つ、地球を支えるアトラスの如き恐るべき闘神の神気を察知してしまいました。


(な、なんだこの大男は……!?


ただの料理人かと思えば、尋常ならざる武のオーラを秘めておるぞ……。


わ、わし、やはりヤバい……?)


再び冷たい汗が背中を駆け巡り、脳内に強烈な警戒警報が鳴り響きます。


しかし、そこは百戦錬磨のナビゲーター素戔嗚尊様。


「さあ、どうぞこちらへ」


と高級車の重厚なドアを開け、ゼウス様を最高級のレザーシートが迎える後部座席へと案内しました。


さらに、車内のミニバーからコニャックをグラスに注ぎ差し出します。


「ほう……! この琥珀色の酒、なんという高貴な香りと深みだ。素晴らしい!」


現世の洗練された極上のブランデーを一口煽った瞬間、ゼウス様はあまりの心地よさに一瞬で恐怖を忘れ、再び「フハハハ!」とすっかり気を良くしてリラックスモードへと戻ってしまいました。


車は滑らかに新横浜を離れ、最終決戦の地である七里ヶ浜の邸宅へと走り出します。


一方、大国主様は助手席に腰掛け、窓の外を流れる景色を眺めながら、完全にすべてを悟った諦観の面持ちで佇んでいました。


(あのご機嫌な好色親父、七里ヶ浜に着いた瞬間に、現世の洗練を極めた女神様達に、文字通り灰にされるんだろうなぁ……。


もう私にはどうすることもできん……)


これから起こるであろうあまりにも凄惨で爆笑の地獄絵図を思い浮かべ、極力己の心が乱れないように、大国主様は静かに目を閉じて心を無にしています。


ミラー越しに、そんな息子の疲れ切った顔を見た素戔嗚尊様は、ハンドルを握りながら、心の中で「ふー……」と深いため息をひとつつきました。


(……大国主よ、俺も同じ気持ちだよ。分かったか?


毎度毎度、このカオスすぎる女神たちの不埒な大騒ぎに巻き込まれる、この父の苦労が。


今回の仕込みは過去最高にエグいぞ……。


ヘラさんの怒りの雷、ボルト数が天元突破してやがるからな……)


素戔嗚尊様も心の中でそう静かに呟き、後部座席でニヤニヤしながらコニャックを傾けて不埒な妄想を再開しているゼウス様を乗せて、運命の七里ヶ浜へと車を滑らせていくのでした。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

新幹線の速度に分身の鳥を置き去りにされ、千里眼で見えた美女四柱に鼻の下を伸ばすゼウス様。新横浜でスサノオ様の威圧感にビビりつつも、極上のお酒で最後の生存確率を手放してしまいました。


「285キロに置いていかれる最高神の鳥可愛い」、「危機察知センサーが酒一杯でバグる全能神草」、「男神ふたりの諦観と胃痛に乾杯」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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