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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第六章 アテナイの英雄、真の凱旋と受難

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第76話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

「はわわ……! に、日輪の、核融合……っ!?」


アリアドネは天照大神様とイザナミ様の恐ろしくも楽しげなやり取りにブルブルと震えつつも超常アーツへのワクワクが止まりません。


テセウスもまた、3000年磨いた神力を身にまといながら、「日の本の主神の、真の絶技……!」と畏敬の眼光をぎらつかせて静かに身構えています。


「姉貴待てっ! あれは絶対使っちゃいけない力だ! 酔っ払って加減を間違えればこの日の本が消滅、いや地球が吹き飛ぶぞ?!」


素戔嗚尊様が天照大神様の前に割って入りました。闘神の額からは滝のような冷や汗が流れてます。


「えっ? 嘘だろ? まさかそこまでは?!


……けど、日輪の『核融合』って言ってたな……。


ってことは、あのツァーリボンバ(史上最強の水爆)がおもちゃ以下になっちまうような……


太陽の核融合クラスの破壊力をぶっぱなすってことかぁ?!」


3000年かけてオリュンポスの真の神へと至り、今や世界中の最先端の書籍を読み漁ってきたテセウス。


彼はその言葉の持つ天文学的な理(ことわり)の真実を瞬時に理解し、一瞬にして顔面を蒼白にしました。


太陽そのものを現世の地球で炸裂させるという、神話の次元すら置き去りにする絶対的な終末の破壊力。


「い、いかぬ……! 泰平の世を願う王として、そのような星を滅ぼす絶技をこの目で見ようなどと、浅はかであった……っ!」


テセウスは全力で首を振り、素戔嗚尊様とがっちり肩を並べて、必死になって天照大神様を止める側へと回りました。


かつての略奪者と闘神が、地球の危機を前にして完璧な共闘体制を敷いています。


「ひ、ひぃえぇぇぇえーーーーっ!!! ち、地球が吹き飛ぶのですわーーーっ!!!」


その凄まじすぎる規模の危険性を聞いたアリアドネは、今度こそイザナミ様の後ろへと全力で隠れました。


「ふふ、素戔もテセウスも、まこと大袈裟じゃのう。天照がそんなに加減の出来ぬ不器用な神に見えるかえ?」


当のイザナミ様は、日本酒の杯を傾けてどこまでも楽しそうにクスクスと微笑んでいらっしゃいます。


「良いではないか、ちょっと海をパチパチと炙るだけじゃ!


素戔もテセウスも、そんなに妾の前に立ちはだかって、まこと気骨のある男たちじゃのう!」


白いワンピース姿の天照大神様は、二人の男たちに全力で進路を塞がれながらも、ますますお転婆な瞳をぎらぎらと輝かせ、楽しそうにステップを踏むようにして腕を伸ばそうとされています。


「ほれ、前を向け。大丈夫じゃからしっかりと見ておれ」


天照大神様は、行く手を阻もうとした素戔嗚尊様とテセウスの肩へ、白くしなやかな両腕をふわりと回し、そのまま逃がさぬようガッチリとホールドしました。


二人の屈強な漢たちは、最高神の宿す「太陽の質量」によって正面を向かされたまま、完全に身動きを封じられてしまいます。


「それとも妾に少しも発散させず、後から大爆発を起こしても良いのかえ?」


天照大神様はお転婆な笑みを浮かべながら、二人の耳元で楽しげに囁かれました。


一見すると酔っ払いの無邪気な甘えのようですが、その実、


「今ここで少しガス抜きをさせておかなければ、後で手が滑ってすべて吹き飛ばしちゃうぞ!」


という、地球を人質に取った過去最大級に苛烈極まりない脅し文句でした。


「ほれ、デモンストレーションじゃ。あの岩を見ておれ」


天照大神様がそう指し示した瞬間、その美しい瞳が一瞬だけ、金色に鋭く光ったかと思うと――。


シュンッ……!


夜の七里ヶ浜の波打ち際に佇む巨大な岩に、音もなく、寸分の狂いもない小さな円形の穴が綺麗にくり抜かれていました。


高熱による爆発も水蒸気爆発の轟音すらなく、ただその空間の物質だけが原子レベルで消滅したかのような静けさ。


現代の科学が誇るいかなる超高出力レーザーやプラズマ兵器をもってしても、絶対に不可能な異次元の超精密狙撃アーツです。


「さて、妾の技の精度は理解したかえ?」


白いワンピースの裾を夜風に揺らしながら、天照大神様が二人の顔を覗き込んでニヤリと男前に微笑まれます。


「…………」


逆らえばあの岩のように消されるという恐怖よりも、コントロールを誤れば本当に世界が終わるという冷や汗が、二人の背中を滝のように伝っていきます。


「はわわわ……っ! 岩に、綺麗に丸い穴が空いていますわーーーっ!!」


イザナミ様の後ろに隠れていたアリアドネは、その恐ろしすぎる「日輪のコントロール」に腰を抜かしかけています。


隣ではイザナミ様が「ふふ、まこと見事な腕前じゃ。これなら安心じゃのう」と日本酒を片手に笑みを浮かべていらっしゃいます。


闘神、そして神となった王、二人の必死の抵抗を脅しと実力で完璧に封じ込め、いよいよ夜の太平洋へとその本物の「日輪の核融合」のガス抜きを放とうと、楽しそうに狙いを定め始める天照大神様。


素戔嗚尊様もテセウスも、そのあまりにも狂気じみた神業を目の当たりにし、もはや言葉を失ってガタガタと震えながら、ただ無言で何度も頷くしか術はありませんでした。


「……ふむ。理解したようじゃの」


二人の降伏を確認すると、天照大神様は満足そうにふふんと鼻を鳴らし、ようやく素戔嗚尊様とテセウスの肩から腕をすっと離されました。


そして、ワンピースの裾を夜風になびかせながら、一歩、また一歩と波打ち際へ向かって歩みを進めます。


「さて、大島にも、そこを行き交う船にも当たらぬよう、何もない漆黒の水平線の遥か彼方……あの雲の隙間あたりに、ほんの、ほんの一搾りじゃ」


天照大神様が夜の太平洋へと、その白くしなやかな人差し指をすっと向けました。


ゴゴゴゴゴゴ……!!!


まだ何も放たれていないというのに、彼女が視線を向けた方向の海水が、まるで目に見えない巨大な重力に押し潰されるかのように、水平線の彼方までぐにゃりと大きく窪み始めます。


「姉貴、本当に一搾りだぞ……! 本当に頼むからな……!」


素戔嗚尊様が必死の形相で祈るように叫びます。


テセウスも服を冷や汗で濡らしながら、磨き上げた全神力をいつでもアリアドネを庇えるように身構えていました。


そして、主神の金色の瞳が夜闇の中で一瞬、まばゆく明滅したその刹那。


ピシッ……!!!


大気が、ガラスが割れるような鋭い音を立てました。


天照大神様から放たれたのは、光線などという生易しいものではありませんでした。


それは、漆黒の夜の海を信じられない超高熱で一瞬にして一刀両断する、目に見えない「日輪の核融合」の絶対的なエネルギーの波動。


一瞬の静寂の後、遥か数十キロ先の水平線の彼方、空を覆っていた分厚い雨雲が真円を描くように切り取られ、消滅しました。


消し飛ばされた空間の向こうから、現世のものとは思えないほど美しい、神代の満天の星空が少しの間、その深淵を覗かせます。


津波も、轟音も、熱波すらもこの七里ヶ浜には届きません。


ただ、遥か彼方の雲と大気が、しかし成層圏を超え消え去っただけ。


恐怖の破壊力を、ミリ単位の誤差すらなく、完璧にコントロールしてみせた、日の本の最高神の、あまりにも圧倒的で、そして美しすぎる神威の顕現でした。


「ふぅ……。すっきりした、すっきりしたのじゃ! これで後から大爆発を起こす心配もなくなったぞよ!」


天照大神様は指先をふっと吹くと、何事もなかったかのようにいつもの天真爛漫でお転婆な笑顔に戻り、その場にへたり込んでいる男たちの元へと嬉しそうに駆け寄ってきました。


「はわわわわ……っ! く、雲が、大気が消えてしまいましたわーーーっ!!」


イザナミ様の後ろで目を丸くしていたアリアドネが、あまりのスケール違いの神業に目を白黒させて叫びます。


「ふふ、まこと見事な手際じゃ。これでお酒もさらに美味くなるのう」と、イザナミ様が日本酒の杯を干して嬉しそうに微笑んでいらっしゃいました。


「……はぁ、心臓が止まるかと思ったぜ。」


素戔嗚尊様が胸をなでおろし、ため息をつきます。


「日の本の主神の力……真の絶技、とくとこの目に焼き付けました。


……我など、やはりまだまだ矮小な存在に過ぎませぬな」


テセウスもまた、その天文学的なとてつもない力に心の底から平伏し、同時に、これほどの力を持つ神々に許された過去の自分、


そしてこの規格外の神々に愛されているアリアドネの幸福を確信して、冷や汗とともに静かに笑みを浮かべていました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

「ガス抜きさせろ」と地球人質脅迫をかます酔っ払いアマテラス様の圧倒的ワンマンショーでした。


「酔った勢いで地球人質に取るアマテラス様が最悪すぎて草」、「コズミックホラーもインフレし出したか」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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