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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第六章 アテナイの英雄、真の凱旋と受難

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第65話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

「アリアドネちゃんにそこまで怯えた顔で言われると、妾もなんだか本気で身の危険を感じてきたぞ……。素戔、本当にあやつが不埒な情熱で妾を押し倒しにきたら、その時は絶対に前に立って防いでくれるのじゃろうな!?」


天照大神様もすっかりそわそわして弟に懇願します。


「姉貴もアリアドネちゃんも、朝から揃って大パニックだな。けど、あいつが本当にそれほどの器になれるかどうか、俺もしっかりみてみたくなったな」


素戔嗚尊様が温かいお茶を二人の前に差し出しながらテセウスを見続けていました。


「しかし、イザナミお姉様も姉貴も、奴のこと良いおのこって言ってたじゃねーか。アリアドネちゃんには過去の野郎かも知れんが、実際に強い男になって戻ってきたらイヤなのかい?」


素戔嗚尊様が天照大神様を真っ直ぐに問いかけました。


「なっ……! 妾がいやなのかと聞いておるのかえ!?」


素戔嗚尊様のツッコミを前に、天照大神様は大きな瞳をさらにパチクリとさせて硬直しました。


いつもは不埒な考えを持つ男など力で叩き伏せるだけの主神が、本気でそわそわと身を縮こまらせます。


「そ、それは……いやというわけでは……


ううむ、最高神たる妾のあの不埒な大募集(?)のセリフを本気にして、妾を支えるほどの本物の『気骨あるおのこ』になって戻ってくるのなら、


一神の戦士としてはまこと天晴れで、興味深いおのこだとは思うが……。


じゃが、本当に蹂躙(ハグ)されにこられたら、さすがに妾もどうして良いか分からぬではないかーーーっ!」


天照大神様は恥ずかしさのあまり慌ててそっぽを向き、赤面して激しくそわそわし始めました。


「ひ、ひぃえぇぇぇ……! ほ、本当にそうですわ、天照大神様……! どうしましょう……!」


その横で、アリアドネも一緒になって瞳を不安と恐怖で潤ませ、天照大神様の方へと身を寄せました。


彼女自身もかつてテセウスに現実の恐怖を植え付けられた被害者であり、主神を心配すると同時に、「もし本当にテセウスが強くなって戻ってきたらどうしよう」と、手を取り合うようにして、ガタガタと一緒になって怯え惑っています。


「テセウス様は一度狙った戦利品を絶対に諦めない、本当に恐ろしい略奪者なのですわよ……!?


現代の日本の素晴らしい叡智と、あの美味しい近江牛や手羽先のパワーを吸収して、これ以上格好よく進化されたら、わたくしたちの心臓が恐怖でバクバクに破裂してしまいますわーーーっ!!


怖いですわ、怖すぎますわ天照様ぁぁぁーーーっ!!」


「ふふ、天照もアリアドネちゃんも、揃ってあやつの真摯な急成長にまこと身の危険を感じておるようじゃのう。天照よ、まこと覚悟をしておかねばならぬな?」


七里ヶ浜のリビングで、自分の急成長を巡って最高神と神子が揃ってブルブルと怯えているなどとは露知らず、テセウスは新幹線を下り、新富士からさらに東の三島の地へと降り立ちました。


「ふむ。ガイドブックによれば、ここ三島は鰻も名物らしいが……『ころっけ』という庶民の肉料理もまた、隠れた傑作であると書いてあるな。


ソフトクリームの腹痛もようやく落ち着き、少々小腹も空いてきた。まずは肉屋の味を試してみるか」


リュックを背負い直したテセウスは、街を歩く前にまず、街の中心にそびえる厳かな古社――三嶋大社へと足を運びました。


大鳥居をくぐり、神聖な境内の前に佇んだ彼は、先日ホテルで知った「神話の真実」を胸に、深く、深く頭を垂れます。


(天照大神様、素戔嗚尊様……。


あの比叡山での私の不埒な無礼、そして己の矮小さを知らぬ傲慢さ、本当に申し訳ございませんでした。


この素晴らしい日の本の地を踏むお許しをいただき、心より感謝いたします。


いつか貴女様方の前に立てる真の漢となるべく、今日もこの国の理を学ばせていただきます……!)


これまでの不埒な野心を完全に捨て去り、純粋な敬意と畏怖を込めて二柱へのご挨拶とお参りを済ませたテセウス。


彼の魂は、また一歩、為政者としての気高さを増していきました。


大社を後にした彼が次に向かったのは、すぐ近くにある老舗の「お肉屋さん」。


「すまぬ、この『みしまころっけ』というものを一つ頼む」


彼がICカードをピッとかざして購入すると、店員さんから揚げたて熱々の、黄金色に輝く丸いコロッケが手渡されました。


包み紙越しにも伝わるその温もりと、衣の香ばしい油の香りに、テセウスは目を輝かせます。


フーフーと息を吹きかけ、不器用ながらもホクホクのコロッケへと豪快にかぶりつきました。


サクッ、ふわぁ……!


「なっ……なんなのだこれはーーーっ!! 衣はカリッと軽快な音を立て、中からは厳選されたお芋(ジャガイモ)の、驚くほど濃厚な甘みとホクホクとした大地の旨味が溢れてくるぞ!!」


ひき肉のジューシーな旨味と、お芋のなめらかな食感が口の中で完璧な調和を奏でます。


主役のお肉に負けないお芋の圧倒的な存在感に、テセウスはまたしても大感激。


「昼の贅沢な鰻や近江牛も至高であったが、これほど安価な庶民の買い食いの中にすら、これほどの感動と洗練が詰まっているとは……!


やはり日の本の国力、底が知れぬな……!」


その頃、七里ヶ浜の邸宅では――。


天照大神様の細工を通じ、テセウスが三嶋大社で「無礼をお許しください……!」


と敬虔に二柱へ祈りを捧げ、その直後に「ころっけ美味すぎるーーー!」


と大号泣しながらホクホクのコロッケをハフハフと頬張っている熱い求道者の思念が、リアルタイムでリビングへと届いてしまいました。


これを受信したアリアドネは、天照大神様としっかりと寄り添い、クッションを抱きしめたまま、瞳を限界まで丸くして再びブルブルと肩を震わせます。


「ひ、ひぃえぇぇぇ……っ! た、天照大神様、素戔嗚尊様!


あのカブトムシ野郎、大社で二柱の偉大さに気づいて本気で平伏した後に、わたくしの食べたことのない『三島のコロッケ』を食べて、


また一歩、日の本の庶民の心(B級グルメ)を深く理解してしまっていますわーーーっ!!」


アリアドネは、主神と一緒にソワソワと身を縮こまらせながら、恐怖と焦燥感で声を震わせます。


「テセウス様、お顔がギリシャ彫刻のように美しいくせに、あんなに真摯に社の神前に頭を垂れて、どんどん『気骨あるおのこ』の完成形に近づいていやがりますわよ!?


もし本当に、お姉様のあの『抱かれてやろう!』というセリフを胸に秘めたまま、この旅を終えて七里ヶ浜に突撃してきたら……


わたくしたち、本当に大変なことになってしまいますわーーーっ!!


怖いですわアマテラス様ぁぁぁーーーっ!!」


テセウスがただの略奪者から「敬虔で真摯な、愛される真の王」へと完璧に進化し、自分たちのすぐ近く(三島)まで迫っているという現実。


アリアドネは天照大神様の手をぎゅっと握りしめ、お姉様と一緒にクッションに顔を埋めて面白おかしく怯え惑うのでした。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

スサノオ様のツッコミに赤面し、テセウスのハグ襲来を恐れ始めるアマテラス様。一方テセウスは、みしまコロッケで庶民派名君へのステップを踏んでます。


「アマテラス様、蹂躙(ハグ)されるー!って女子ムーブでキャッキャしたいだけでは?」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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