第64話
本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。
お忙しい方は、会話文「 」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。
「わっ、笑い事ではありませんわ! アマテラス様!」
アリアドネはビール片手にお腹を抱えて大爆笑している天照大御神様に向かって、激しいツッコミを炸裂させました。
やきもちと焦燥感で目がすわってます。
「あのカブトムシ野郎……こともあろうに私だけでなく、アマテラス様もターゲットにしていやがるのですわよ?!
いえ! 私なんかよりアマテラス様の方が余程危険ですわ!! お忘れですか?!
貴女はあの比叡山の山道で、あのカブトムシ野郎に、こんなことをぶちまけましたのよ?!」
アリアドネはスマートフォンのメモ機能をバッと開き、あの恐ろしい夜に主神が放った、あまりにも男前で、かつ刺激的すぎたセリフの数々を全力の音読で告発し始めます。
「『なんじゃ?! ほれ、もう少し力を込めてみい!
これでは妾が楽しめぬではないか……
せっかくそなたが強いおのこならば抱かれてやろうと楽しみにしてきたのじゃぞ?
ほれっ! もっと気骨を見せぬか!』
……こんなことや!」
「『そなた顔は悪くないのに…ほれっ!もう少し頑張ってみい!
気骨を見せれば唇を重ねるくらいは許しやろうぞ?!』
……あんなことや!」
「あまつさえ……
『テセウスとやら、妾は不埒な考えなど気にはせぬ。
その不埒な情熱を妾に注ぎ込める力があるのなら、
妾への冒涜、蹂躙は喜んで受け入れようぞ。』
こんなことをあのカブトムシ野郎にぶち込んだんですのよーーーっ!!!」
アリアドネは顔を真っ赤にして、息をゼェゼェと切らせながらソファのクッションをバシバシと叩き、怒涛の勢いで大絶叫しました。
主神のあまりの「無防備なドM(?)発言」への危機感で、過去最大級に頭の中が激しくショートしています。
「あの時はただ圧倒的な力にひれ伏してガタガタ震えていただけでしたけれど……
今やネットカフェで『幕末剣客物語』を見てオタクになり、お豆腐の味に目覚め、徳川家康様の泰平の世に涙を流すほどの、本物の『気骨あるおのこ』に急速に進化しているのですわよ!?
あの時のアマテラス様の不埒大募集中(?)のセリフを、もし本気にして、地球より重い質量を支えられるほどの漢になって戻ってきたら、一体どうするおつもりですのーーーっ!!」
テセウスが自分より先に主神のあの熱烈な挑発(?)を曲解し、いつか「天照大神様を蹂躙しに」戻ってくるのではないかという理不尽な想像力。
それが、アリアドネのやきもちと面白パニックを天元突破させ、リビングに凄まじい熱気を生み出していました。
「あ、アリアドネちゃん、あの時の妾のセリフをすべて一言一句完璧に記録しておったのかえ…?」
当の天照大御神様は、まさか自分の煽り文句をそんなふうに大真面目に危険視されるとは思っておらず、少々引き気味です。
「お、おいおいアリアドネちゃん、姉貴のあの時の言葉はただの煽りだからな?
まぁ、しかし、もしあいつが姉貴を支えられる漢になったら、その時はあいつを応援してやりたくなるかもなあ」
素戔嗚尊様がパニックになるアリアドネを優しくなだめつつもテセウスに関心してました。
その横で、イザナミ様が
「ふむ……確かに、あのおのこが家康公の如き泰平の王となり、真の気骨を身につけて天照の前に現れたら、まこと面白いことになりそうじゃのう。天照よ、覚悟をしておかねばならぬな?」
と、妖艶な笑みを浮かべて火に油を注ぐようにクススクと微笑んでいらっしゃいます。
「えっ?! イザナミお姉様。妾、覚悟しないとまずいのでしょうか?」
アリアドネの怒涛の音読告発と、イザナミ様の艶やかな一言を前に、さしもの天照大御神様も笑い声をピタリと止め、瞳をパチクリとさせて戸惑いの表情を浮かべました。
いつだって、どんなおのこに対しても「勝てるものならやってみい!」と上から目線で圧倒してきた日の本の最高神。
しかし、テセウスが「己の矮小さを知る旅」の道中で、織田信長や徳川家康の泰平の理に目を開き、本物の『気骨』を急速に磨き上げているという紛れもない事実を突きつけられ、さすがに一瞬、背筋に冷や汗が走ったご様子です。
「ふふ、どうじゃろうな?
あのおのこ、今は富士山を見てそなたとアリアドネちゃんの美しさに涙を流すだけの求道者になっておるが……
元を正せば、己の武勇だけでアテナイの王座を強奪したほどの執念深い略奪者じゃぞ?」
イザナミ様は妖艶な大人の気品を漂わせながら、温かいお茶を一口すすり、さらに悪戯っぽく微笑まれます。
「もし、あやつがこの日の本の旅を終え、本当にそなたを支えるほどの巨大な器(漢)となってそなたの前に現れたとき……
『あの時の約束を果たしに参りました』と真っ直ぐな瞳で蹂躙を仕掛けてきたら…
最高神たるそなたが、
『あれはただの煽りじゃ!』
と無様に逃げ出すわけにはいかぬであろう?」
「うっ……、む、結びの神であるイザナミお姉様にそう言われると、なんだか本当にそんな未来が引き寄せられそうで、急に恐ろしくなってきたのじゃ……っ!」
天照大神様は、珍しくそわそわと身を縮こまらせ、お転婆な主神らしからぬ戸惑いの表情を浮かべました。
その様子を見たアリアドネは、瞳を不安と恐怖で潤ませ、天照大神様の方へと身を寄せました。
「ひ、ひぃえぇぇぇ……! ほ、本当にそうですわ、アマテラス様……!
どうしましょう……! あ、あのカブトムシ野郎、
もし本当に不殺の誓いと泰平の世の理を極めて、お姉様のあの言葉を胸に、地球の質量すら支えるほどの漢になって戻ってきたら……
わたくしたち、本当に蹂躙されてしまいますわーーーっ!!!」
アリアドネは天照大神様と一緒にブルブルと肩を震わせ、すっかり怯えきった様子でクッションを抱きしめます。
「テセウス様は一度狙った戦利品を絶対に諦めない、本当に恐ろしい略奪者なのですわよ……!?
現代の日本の素晴らしい叡智と、あの美味しい近江牛や手羽先のパワーを吸収して、これ以上格好よく進化されたら、わたくしたちの心臓が恐怖でバクバクに破裂してしまいますわーーーっ!!
怖いですわ、怖すぎますわアマテラス様ぁぁぁーーーっ!!」
自分を置いてテセウスが主神のあの熱烈な挑発(?)を胸に抱き、真の英雄へと急速に近づいているという現実に、アリアドネは天照大神様と手を取り合うようにして面白おかしく怯え惑うのでした。
いつもご愛読いただき有難う御座います。
過去の過激な煽りセリフをスマホから完全音読され、ガチビビり始めるアマテラス様。アリアドネちゃんと最高神が手を取り合って「ハグされる!」と怯えて?ます。
「煽りセリフを一言一句メモってるアリアドネ、あの頃からオタクの素質開花させてたんだな」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。




