↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第五章 テセウスのB級グルメ旅とアリアドネの受難

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/129

第61話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

テセウスはその夜、満喫の個室で一睡もすることなく、ソフトクリームの甘美な誘惑と『幕末剣客物語』の熱い剣撃のコンボに心底酔いしれました。


しかし翌朝、さらなるおかわりを求めてサーバーへ向かった彼の前に立ちはだかったのは、「清掃中」の非情な注意書き。


「なっ……なんという絶望の宣告なのだ。神々のネクタルが、これほど容易く看守されてしまうとは……」


冷たい現実の前に絶望の涙をのんだテセウスは、後ろ髪を引かれる思いでチェックアウトを済ませました。


次なる目的地として彼が選んだのは、一駅東の掛川(かけがわ)。


再び乗り込んだ新幹線の車内で、彼はリュックを抱えながら、「いっぽふみこんでのしんそくのいあい……ここのつのどうじざんげき……」と、覚えたての奥義をボソボソと真剣な顔で連呼しています。


端から見れば、ただの物凄い美形の怪しいオタク旅人でした。


掛川駅に降り立ち、遠くに凛とそびえ立つお城が見えたため、彼は戦士の習性として吸い込まれるように歩みを進めました。


そこに佇んでいたのは、初夏の光を浴びて美しく輝く、白い壁の掛川城。


テセウスが周囲の案内板や人々の話を真摯に聞き込んでみると、その美しい城はかつて一度失われてしまったものの、現代の民たちの熱い有志と知恵が集まり、木造の美しい姿で奇跡の再建を果たしたのだという歴史を知ることになります。


その瞬間、テセウスの脳裏に激しい衝撃が走り、ハッと息を呑みました。


「……民の手によって、城が蘇っただと!?

滅ぼされたわけでもなく、民自らが望んで、かつての象徴をこれほど見事に作り直すなど……!


きっと、この地には、民をどこまでも思い、慈しんだからこそ、国が傾いた時にも民自らが王の心を救おうとするような、素晴らしい王がいたに違いない……!」


古代ギリシャの、力による支配と略奪しか知らなかったテセウスの価値観が、日の本の「民に愛される城」の歴史の前に再びガラガラと音を立てて崩れ去り、本物の為政者としての眼光へと開眼していきます。


「アリアドネ様……。私に、アテナイの民をこのように慈しみ、愛される真の王になれと、この景色を通じて仰せなのですね……」


テセウスは胸元からあの手紙を取り出し、チクリと心に刺さる一文に深く胸を痛めつつも、いつかアテナイへ戻ったときには、真に立派な務めを果たす為政者になるのだと、固く、静かに覚悟を決めるのでした。


その頃、七里ヶ浜の邸宅では――。


天照大神様の細工を通じ、テセウスが口の周りにソフトクリームの痕跡をほんのり残したまま、掛川城の天守閣を見上げて「民を慈しむ王の道……!」


と目に涙を浮かべて本物の大英断を下している高尚な思念が、リアルタイムでリビングへと届いてしまいました。


これを受信したアリアドネの、最高に面白おかしい理不尽な絶望の悲鳴がリビングで再び大爆発します。


「わっ……私、掛川には降りていませんわーーーっ!!」


アリアドネはリビングの絨毯の上で激しくゴロゴロとのたうち回って絶叫しました。


「それに……! わたくし、手紙を書いた時はテセウス様の鼻を明かしてやろうとしか思っていなくて、そんな高尚な王の道なんて1ミリも考えておりませんわーーーっ!!!


なに一人で勝手に素晴らしい解釈をして、見違えるほど立派な為政者の顔をしていますの?!


テセウス様のくせに格好良すぎて生意気ですわーーーっ!! 悔しいですわーーーっ!!」


テセウスが自分の知らない途中下車の駅で、お城の歴史から勝手に「アリアドネの聖なる導き」を感じ取り、一人の真に偉大な男へと急速に成長していく現実に、アリアドネの嫉妬と困惑は完全に限界を迎えています。


そんな彼女の横で、天照大御神様が「ふははは! アリアドネちゃんの意図せぬところで、あやつの魂がどんどんピカピカに炙られていくのう! 実に見ものじゃ!」と大笑いしてます。


イザナミ様も「ふむ、これぞまこと『己の矮小さを知る旅』の真髄じゃな。アリアドネちゃん、そなたの遺した一通の手紙は、まこと偉大な奇跡を起こしておるぞ」と優しく頭をなでていらっしゃいます。


「あいつ、『不殺の誓い』の影響を受けてやがるな。アリアドネちゃん、君のプロデュース力は神がかってきたぜ」と素戔嗚尊様が苦笑してました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

ちょっと短かめなので明日は12:00と18:00に2話アップします。


掛川城で勝手に「真の王の道」へ覚醒するテセウス。一方、ただの当てつけ手紙が奇跡の英才教育と化し、勝手に男を上げていく元婚約者にアリアドネちゃんは絨毯で大発狂してます。


「ソフトクリーム『清掃中』宣告の絶望は激しく同意」、「当てつけで名君を爆誕させるアリアドネPの手腕は草」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。