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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第五章 テセウスのB級グルメ旅とアリアドネの受難

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第53話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

「えっ?! すっ素戔嗚尊様!本当ですの?!」


アリアドネが瞳を限界まで見開き、スマートフォンを持った手を小さく震わせながら喜びの声を上げました。


「ふむ。そういえばお姉様もアリアドネちゃんも、まだこの日の本が誇る世界最速で世界一快適な技術の粋を体験しておらぬな。よしっ! 素戔よ!今一度七里ヶ浜の隠れ家に戻るぞよ!」


天照大神様が新たな旅の再開を宣言されます。


「まあっ! あのお家に行かれたのですね!」


京都藩邸の留守を預かる最愛の妻・奇稲田姫様が、大きな目を輝かせて懐かしそうに夫を見つめました。


「ですが、私はこの屯所を預かる身なのでご一緒できませんが、楽しんでいらしてください!

その代わり素戔様、今度北海道でウニを食べたいですわ!」


「おおっいいな! では姉貴に休みをもらったら北海道にウニを食いに行こう」


最愛の妻からのおねだりに、素戔嗚尊様は笑顔で約束を交わします。


しかし、それを見逃すお姉様方ではありません。


「なっ! なんじゃと?! わっ妾達も行きたいのじゃ!

素戔っ! その時は妾達をもちろん呼んでくれるのであろうなっ?!」


天照大神様がすかさず身を乗り出して問い詰め、イザナミお姉様も妖艶な笑みを浮かべて言葉を重ねます。


「ふふふっ。では皆でその時は参いろうぞ!」


楽しげに北海道のウニに思いを馳せる女性陣の会話を背に、素戔嗚尊様は(ああ、奇稲田とのふたりきりの旅が……)と心の中で静かにため息をつくのでした。


「さっ、新幹線のグリーン車を予約した。行くか」


素戔嗚尊様はスマートフォンを操作し、グリーン車を確保します。


「いってらっしゃいませー」


奇稲田姫様は一行を門前で見送り、京都藩邸には再び凛とした静寂が戻っていきました。


京都駅のホームに、滑り込むようにして白く輝く東海道新幹線が姿を現しました。


流線型の独特なロングノーズが目の前にピタリと停まると、アリアドネがその場で小さく飛び跳ねます。


「きゃー! 新幹線ちゃんですわー! 可愛いお鼻ですわー!

わたくし、これにずっと乗ってみたかったのですわ!」


動画サイトの「新幹線動画」で膨らませたバイアスたっぷりの擬人化知識をここぞとばかりに炸裂させ、その可愛いお鼻(ノーズ)をこれでもかと褒めちぎるアリアドネ。


瞳をキラキラと輝かせて新幹線を見つめてます。


「ほんに、飛行機のような轟音もなく、すーっと静かにホームに辿り着いたのう。

日の本の技術の粋、まことに見事なものじゃ」


出雲空港で天駆ける鉄の鳥(飛行機)の恐怖体験をされていたイザナミ様もこの巨大な白銀の列車が寸分の狂いもなく静粛に滑り込んできた様子にいたく感心していらっしゃいます。


「ふははは! そうであろう! これぞ日の本が世界に誇る最速の韋駄天じゃ! さあ、乗り込むぞ!」


天照大神様がお転婆に声を弾ませ、素戔嗚尊様がグリーン車の重厚な自動ドアへと一行をエスコートしました。


車内に足を踏み入れた瞬間、アリアドネはふかふかの絨毯と、包み込まれるような特等席の座り心地に「はわわ、まるでお城の王座のようですわ……」とうっとり。


列車が静かに加速を始めると、時速285キロの超高速域に達しても揺れすらほとんど感じない異次元の快適さに、さらに瞳を輝かせております。


また、素戔嗚尊様は車内販売のワゴンからキンキンに冷えた生ビールとカチカチのアイスを購入し皆に振舞います。


「ぷはぁー! この超高速で流れる景色を見ながら飲むビール、最高じゃな!」


と天照大神様が缶を傾ければ、イザナミお姉様もスプーンが刺さらないほど硬いアイスを見つめ、


「ふふ、これもまた、現世の面白い試練じゃな」


と微笑まれます。


アリアドネも、少し溶け始めた濃厚なバニラを口に含み、


「んんん〜〜っ! 濃厚で冷たくて、最高に美味しいですわーーーっ!」と大感激。


富士山を車窓から一瞬で通り過ぎ、京都を出発してからわずか2時間強。


新幹線は、テセウスが目を輝かせていた世界一巨大な首都圏の玄関口、品川駅へと滑り込みました。


「よし、ここから横須賀線に乗り換えて、鎌倉へ向かうぞ!」


素戔嗚尊様の先導により、一行は快速列車に乗り換えて南下を始めます。


見慣れた古都・鎌倉の潮風が車内に満ちてくると一行の期待は最高潮に達しました。


そして江ノ電に揺られることしばらく。


窓の外に江の島と、キラキラと輝く相模湾の雄大な絶景が広がると、ついに目的地である七里ヶ浜へと帰還を果たしました。


プール付きの贅沢な邸宅へと足を踏み入れたアリアドネは、懐かしい隠れ家の空気に「戻ってきましたわーーーっ!」と大喜び。


かつてここで健気な素戔嗚尊様への自爆悩殺作戦を繰り広げた日々が、昨日のことのように思い出されます。


新幹線と贅沢なグリーン車の旅を完璧に満喫し、七里ヶ浜の隠れ家で極上のリラックスモードに入った天照大神様一行。


一方、同じ頃。


米原駅のホームに降り立ったテセウスは、新幹線への乗車を前にして、己の肉体が送ってくる正直な信号に足を止めていました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

七里ヶ浜の隠れ家へと帰還した一行、米原駅に降り立ったテセウスの次なる展開は?


「とうとう新幹線擬人化し出したか」、「ウニ旅行に便乗するお姉様方、スサノオさまの受難にも気づいてやれよ」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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