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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第四章 アテナイからの略奪者~比叡山より愛を込めて~

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第45話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

「あと少しだったのう。アリアドネちゃんの痛みを返してやろうと思うたのじゃ…。


それにこやつをチリにするのに日輪の力なぞ使わぬわ」


そして衣服を整えこう言い放ちます。


「ふむ。テセウスとやら、妾は不埒な考えなど気にはせぬ。


その不埒な情熱を妾に注ぎ込める力があるのなら、妾への冒涜、蹂躙は喜んで受け入れようぞ。


例えばこのように、妾を支えることができるおのこならばのう」


天照大御神様はそう言い放つと、割って入った素戔嗚尊様の広く逞しい肩へと、その質量を宿した腕をふわりと添えられました。


ズン、と凄まじい質量が周囲の地面を沈み込ませます。


そしてその質量による重力で周囲の景色が歪み木々がミシミシと音を立てて軋みます。


しかし、素戔嗚尊様は微動だにせず巨躯を地面にわずかに沈ませただけで、その絶対的な質量を涼しい顔で受け止めてます。


二柱の神々が魅せつける、人間の次元を遥かに超えた絶対的な強者の証明。


地を這うテセウスは、自分の命がいかに容易く消される存在だったのかを思い知り、ただただ絶望の泥をすするしかありません。


天照大御神様は、そんな彼を上から冷然と見下ろしていました。


「そしてアリアドネは妾の可愛い神子じゃ。そなたにはやらぬ。諦めて国に帰るがよかろう」


そのあまりにも圧倒的で、凛とした格好良さに、物陰から飛び出したアリアドネは完全に心を奪われてしまいました。


数日前の恐怖も、テセウスへのわだかまりも全て吹き飛ぶほどの鮮烈な憧れ。


彼女は服をなびかせながら、天照大御神様の細い腰へと全力でしがみつきました。


「お姉様……! 素敵過ぎます! カッコ良すぎます! 大好きですわーーー!!!」


「むっ!さようか! 妾もそなたが大好きじゃぞ! チューーーッ!」


冷徹な太陽の神威をまとっていた天照大御神様は、一瞬にしていつもの笑顔へと戻りました。


可愛い妹分の髪を愛おしそうになでて、その頬に不意打ちのキスを浴びせながらぎゅっと抱きしめます。


「まったく、姉貴は相変わらず極端なんだからよ……。ほらな?アリアドネちゃん、大丈夫だったろ?」


肩をすくめながら、素戔嗚尊様がそう言います。


一方、その場に取り残されたテセウスは、比叡山の冷たい路上の上でガタガタと全身を激しく震わせながら、魂を抜かれたようにただ途方に暮れていました。


「あの……アトラスのような神気を持つ大男でさえ……あの女のただの手下だったと言うのか……


そしてその奥にはハデス様のような冥界の気配を放つ女(イザナミ様)がいた……


これは夢か? ペルセポネが言っていたことがようやくわかった……」


己の武勇を誇り、アリアドネをただの戦利品と見下し、さらに日の本の最高神までも「無力な美女」と侮って略奪しようとしたアテナイの王。


その傲慢な野心は、跡形もなく粉砕され、己がいかに矮小な存在であったかを、絶望のどん底で思い知るばかりでした。


京都の深い緑に包まれた比叡山の山道。


お姉様に抱きしめられて幸せいっぱいの笑顔を取り戻したアリアドネと、やれやれと首を振る素戔嗚尊様。


アテナイからの無謀な略奪者を巡る一幕は、日の本の神々の規格外の力にあっけなくあしらわれ、幕を閉じました。


そして、次の日。


アリアドネは、テセウスの前に一人で現れました。


これは自ら形をつけなければならないという強い意志で独断で行動したのです。


連れ去られれば自分が愚かなだけ、その覚悟で来たのですが、今のテセウスには、もう彼女を連れ去る気など毛頭ありませんでした。


日の本の神々の圧倒的な力の前に、アテナイの王としてのプライドは完全に粉砕され、ただ己の思い上がりと愚かさを、どん底の絶望の中で噛み締めているばかりでした。


「ふふっ滑稽であろう。


王という小さな括りで全てを手に入れた気になっていた哀れな男の末路さ……


アリアドネ……そなたはどうやってあの神々との縁を紡いだのだ?そなたの赤い糸か?


いや、それもあるのだろうが、ペルセポネであろう。あの女も何かを狙っているようだった……」


「アリアドネよ。最後に一つ頼みを聞いてくれぬか…。」


「我と一緒にアテナイに来て… 妃となってくれぬだろうか……」


すべてを失ったどん底で、テセウスの口から絞り出されたのは、策略も野心も混ざらない、本物の告白でした。


かつて自分の都合で彼女を捨てた男が、初めて一人の男として、心から彼女の愛を求めた瞬間。


しかし、アリアドネの心には、彼への恨みも、あの夜に味わった恐怖も、そしてかつて捧げた恋心すら、もはや微塵も残ってはいませんでした。


今の彼女は、日の本の温かい神々に愛され、美味しい食事をして健やかに笑う、この国の美しい神子。


アリアドネは、ただ穏やかな微笑みをその顔に浮かべ、かつてイザナミ様がイザナギ様に突きつけた、あの最高に痛快で無敵な言葉を彼の不格好なプロポーズへの返事として贈りました。


「貴方は、どちら様ですか?」


そう言ってアリアドネはその場を去りました。


そしてその言葉は、テセウスの胸を静かに、しかし決定的に射抜きました。


過去の繋がりすら完全に消し去る、あまりにも完璧な拒絶。


最後の希望を失ったテセウス。


もう何もかもがどうでもいい……


そう呟き、ふらふらと立ち上がった時、彼のマントの隙間から、一通の封筒が冷たい地面へと滑り落ちました。


それは、アリアドネからの手紙でした。


 この日の本の国を旅しなさい


 そして己の矮小さを知りなさい


 さようなら


手紙に記された、かつて愛した男への、最後の最後の慈悲。


テセウスは、今まで自分が這いつくばっていた暗闇の中で、ほんのわずかな「光」を見た気がしました。


ただ絶望して命を絶つのではなく、この広大で規格外な「日の本」という国をその足で歩き、己の小ささを知るという赦しの道。


「己の矮小さを知る旅か……それも一興かも知れぬ」


そう静かに言い残すと、テセウスは朝霧が深く立ち込める比叡山の奥深くへと、静かに、しかし力強く登っていきました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

アマテラス様の圧倒的な力とアリアドネの決別と慈悲。テセウスは手紙を手に己を知る旅へと歩み出しました。


「アマテラス様、特大フラグ作っちゃったよ」、「アリアドネちゃんタイトル回収乙」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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