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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第三章 神々と行く!B級グルメ東海道の旅

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第39話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

まずは長居へ。


出汁の効いた王道のたこ焼きをダース単位で次々とトランクへ詰め込みます。


続いて西成のたこ焼きのルーツ店へ、醤油味の牛すじ焼きの芳ばしい香りに、アリアドネは目が釘付けです。


さらに難波のたこ焼き屋さんで網掛けマヨネーズの見事な職人技を目の当たりにし、心斎橋では巨大なタコが入ったたこ焼きと、上品なアゴだしが醸し出す極上のたこ焼き、その香りに全員が恍惚の表情を浮かべます。


仕上げは西中島の天かすがびっしりとまぶされた、サクサクの独特な食感のたこ焼きをこれまた大量に買い上げました。


車内は、様々な名店の出汁、ソース、マヨネーズ、そして炭火の芳ばしい香りが完璧に混ざり合い、それだけで気絶しそうなほどの至高の空間へと変わっていきます。


トランクと後部座席の一部を埋め尽くすほどの大量のたこ焼きを抱え、車はついに最後の直線、京都へと向けて滑らかに走り出しました。


やがて、夕暮れ時の美しい街並みを抜け、鴨川のせせらぎが優しく響く一角へ。


そこには、歴史の重みを静かに湛える、かつての旧藩邸の屯所が、堂々たる姿で佇んでいました。


門前で長旅の主たちを待ち侘びていた守護の神々や武士たちの姿が見えてきます。


「おう!皆元気か!」


車のドアが開き、素戔嗚尊様が京都の旧藩邸の門内へと足を踏み入れました。


「素戔嗚尊様! お帰りなさいませ!」


魑魅魍魎が跋扈する古都・京都の守護を一手に引き受けるこの屯所。


日々、闇の勢力と対峙する屈強な神々や守護の武士たちにとって、実質的な総大将である闘神・素戔嗚尊様の帰還は、何よりも心強いものでした。


素戔嗚尊様はトランクいっぱいの大阪たこ焼きを抱えながら、背後の三柱の美女たちを皆の前に紹介します。


主神である天照大神様の姿に、守護の皆は一瞬にしてハッと直立不動になります。


しかし、天照大神様はそんな皆の緊張などどこ吹く風で、すぐに悪戯っぽい瞳を輝かせ始めました。


「皆のものご苦労である。さて、妾のことは姿が変わろうともすぐにわかるであろう?! では、この二柱の女神を誰だか当ててみよ!」


お転婆な主神からの、唐突にしてあまりにも難解なクイズ。


守護の面々は、


「天照大神様のお隣にいる、あの妖艶な気品を放つ絶世の美女は一体……?」


「その横の、プラチナブロンドの髪とブリリアントブルーの瞳を持つ高貴な異国の王女様は……?」


と、完全に首を傾げて戸惑ってしまいました。


黄泉の呪いが消え去り、瑞々しさを取り戻した大母神イザナミ様の本来の美しさに、誰も気づくことができません。


そんな戸惑う神々の人だかりの中から、少し戸惑い気味に、おずおずと一本の美しい手が挙がりました。


「あなた、おかえりなさい」


そこに佇んでいたのは、清楚で凛とした美しさをまとう、素戔嗚尊様の最愛の妻――奇稲田姫(クシナダヒメ)その人でした。


その瞬間、素戔嗚尊様の背中にドクンと冷や汗が走ります。


この旅の間、お姉様たちからの全方位ハグやコブラツイスト、そして白浜での「抱かれてみたいものよのう」というあまりにも妖艶な混浴ハプニングの数々。


愛妻への義理立てを胸に必死に耐え抜いてきた闘神の心臓が、別の意味で限界突破のバクバクを始めました。


奇稲田姫は、車内から漂う大阪たこ焼きの香ばしい匂いに目をパチクリさせながら、じっと一行を見つめています。


清楚な佇まいに深い愛を湛えた奇稲田姫が一歩前へ出て夫へ向けて優しく微笑みかけました。


その穏やかな声を聞いた瞬間、素戔嗚尊様はまるで子供のように肩の力を抜き、ホッとした顔を見せます。


奇稲田姫はそのまま、絶世の美女たちへと視線を向け、深々と一礼しました。


「大国主よりことのあらましは伺っておりますよ。私がお答えしても良いのか分かりませぬが……伊邪那美(いざなみ)様、ご復活おめでとうございます。同じ女として、心より嬉しく思います」


その曇りのない祝福の言葉に、八百万の神々が再びギョッとして固まります。


目の前のあまりに美しい女神が、かつて誰もが恐れた大母神イザナミその人であると、奇稲田姫は見事に見抜いていたのです。


「そして貴女がアリアドネ様ね。天棚機姫(たなばた)さんより伺ってましたが……イザナミ様と天照大神様の神気を浴びて、まこと美しくなられたのですね。夫はしっかりと貴女をエスコートしてくれましたか?」


奇稲田姫のどこまでも温かく、すべてを包み込むような大人の余裕に、アリアドネは顔を真っ赤にしながら、瞳を丸くして「は、はい……! 素戔嗚尊様は世界一の紳士で、本当に、本当に素敵にエスコートしてくださいましたわ……!」と、健気に一生懸命答えています。


「流石、素戔の自慢の嫁じゃのう。まことできた妻を持ったものじゃ」


イザナミ様が心からの感嘆を込めて艶やかに微笑まれます。


「うむ! 妾がどれだけ弄り倒しても、素戔が奇稲田ちゃん一筋な理由がよく分かるというものじゃ!」


天照大神様もお転婆に笑い、弟の肩をポンポンと叩きます。


日の本をひっくり返すほどの力を持つ三柱の美女たちに全方位から誘惑され、ハグされ、コブラツイストをかけられながらも、素戔嗚尊様がただ一人、魂を捧げて教育されてきた理由がここにありました。


奇稲田姫の佇まいは、まさに最愛の夫から途方もない愛を注ぎ込まれ続けてきた、絶対的な信頼に満ちた妻そのものだったのです。


「さぁ、皆の衆! 最高の土産があるんだ! 大阪の名だたる店のたこ焼きを姉貴のおごりでダース買ってきたぜ! 晩飯は全員でたこ焼きパーティーだ!」


固まっていた素戔嗚尊様が、ようやく男らしい、いつもの頼もしい大将の顔を取り戻しました。


溢れ出すソースと出汁の香ばしい香りに、屯所の守護神たちから「おおおっ!」と大きな歓声が上がります。


鎌倉から、平塚、湯河原、浜松、豊橋、名古屋、亀山、那智勝浦、白浜、和歌山、大阪を経て、ついに辿り着いた京都の藩邸。


夕暮れの鴨川沿いに、かしましくもどこまでも温かい、至高のたこ焼きパーティーの灯りがぽつぽつと灯り始めました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

大阪で名店のたこ焼きを爆買いし、ついに最終目的地の京都旧藩邸へと到着した一行。東海道B級グルメツアーは女神達にとって大満足だったようです。


「ここのたこ焼きは絶品!」、「スサノオ様紳士を貫いてよかったね」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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