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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第三章 神々と行く!B級グルメ東海道の旅

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第34話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

「……は、ははーっ! そのようにーーーっ!」


あまりの豪快な超法規的措置に神々は一瞬呆気にとられつつも、有無を言わせぬ主神の神威に平伏し、魂たちの幸せな転生へと動き出します。


「あっはっはっはっは! さすが天照じゃ! 妾もそうやって救ってくれたのう!」


その様子を横でキョトンと眺めていたイザナミ様が、急に楽しそうに大笑いを響かせました。


妖艶な大人の気品を取り戻した大母神が、かつて自分を恐れて震え上がっていた神々の目の前で、瑞々しく笑っていらっしゃいます。


「い……イザナミ、様……!? 黄泉の呪いが消えて、本来の美しさに……!?」


「それに、あの身にまとっている衣は一体……!?」


イザナミ様を見た八百万の神々は、そのあまりの美しさと変貌ぶりに、今度こそ完全にギョッとして石のように固まってしまいました。


高天原に、何とも言えない驚愕とシュールな静寂が広がっていきます。


「あ、あの……日の本の神々の会議は、とてもダイナミックですのね……」


アリアドネが素戔嗚尊様の袖を掴んだまま瞳を丸くしています。


「はっはっは!まあ姉貴のあの性格だ。いつものことってやつだな!」


素戔嗚尊様がアリアドネの初々しい驚きを優しく受け止めます。


慌ただしい高天原の一幕を終え、時空の歪みを抜けて無事に現世の伊勢へと帰還した四人。


しかし、高天原での神々との問答を経て戻ってきた頃には、周囲はすっかり漆黒の闇に包まれた深夜になっていました。


車のドアを開け車内へと滑り込んだ直後、天照大神様がシートに深く体を預けながらへたり込みます。


「むー…… 妾眠い。疲れた。もう仕事嫌じゃ」


(大した仕事もしてねーのに……)


と素戔嗚尊様は口に出そうとしましたが、いかにもエネルギーを使い果たしました、という顔をしている天照大神様、早々と寝る気満々のようです。


「素戔ちゃん。妾寝るからごはんになったら起こして。明日は…確か生マグロだったよね? おやすみー」


早くも明日のB級グルメである「生マグロ」への期待を寝言のように呟きながら、天照大神様は完全に夢の中へと落ちていかれました。


「あーあ、寝ちまったよ」


素戔嗚尊様はバックミラー越しに姉の無防備な寝顔を見つめ、苦笑します。


「お姉様もアリアドネちゃんも寝てていいよ。現地に着いたら起こすから」


深夜の東海道をエスコートする案内人としての、どこまでも優しい気遣い。


「ふむ。では甘えさせて頂こうかのう。素戔や、体壊すでないぞ?」


イザナミ様が、瞳に労いの色を乗せて微笑まれます。


最愛の弟の優しさが、昨夜の抱擁と同じように、彼女の心を癒やしていくようです。


「素戔嗚尊様…すみません。甘えさせて頂きます。ふわぁ…。。」


アリアドネも小さな欠伸を漏らし、瞳をトロンとさせてシートに身を委ねます。


「おう、ゆっくりおやすみ」


素戔嗚尊様が静かにギアを入れ、車は深夜の静寂に包まれた国道を、滑らかに、そしてどこまでも優しく西へと走り出しました。


静かなエンジン音と、三柱の美女たちの心地よさそうな寝息だけが響く車内。


夜を徹して車を走らせる素戔嗚尊様は、天照大神様が楽しみにしている「生マグロ」が待つ次なる目的地へと、ゆっくりと距離を縮めていきます。


深夜の国道42号線を駆け抜けた車は、和歌山県の那智勝浦へと無事に到着しました。


お目当ての「まぐろ丼屋さん」の開店は11時。


早く着きすぎてしまったため、素戔嗚尊様は運転席のリクライニングを倒し、静かに仮眠を取っていました。


後部座席ではイザナミ様とアリアドネがパチリと目を覚まします。


その時、天照大神様が「むにゃむにゃ……」と寝ぼけ始めました。


「もうご飯? まだ?」と呟きながら指をクイッと上に動かします。


すると次の瞬間、世界が激変しました。


まだ朝の7時だったはずの空から、太陽がにゅっと物凄いスピードで中天へと昇ってしまい、一瞬にして時計の針が11時を指したのです。


外では、仕込みの最中だった店員さんたちが「ヤバいぞ、早く店開かないとーーーっ!」と大パニックになり、港中が騒然となります。


「姉貴ーーー! 早く時間戻せーーー! 何やってるんだーーー!!!」


「天照大神様っ! 空が、お天道様が大変なことになってますわーーーっ!!」


素戔嗚尊様とアリアドネはギョッとして飛び起き、寝ぼけている天照大神様をゆさゆさと激しく揺すり倒します。


「なによもー……」と気怠そうに目をこすりながら、天照大神様が窓の外の騒ぎを見回しました。


そして状況を察した主神は、無言でぽんと手を叩きました。


そのまま指をクイッと下へと下げました。


その瞬間、太陽がすうっと元の位置へと沈んでいき、時計の針も何事もなかったかのように7時へと逆戻りします。


外の人々も「あれっ? なんだ気のせいか……寝ぼけてたのかな」とホッと安堵し、何事もなかったかのように仕事へと戻っていきました。


天照様は自分の可愛い「テヘペロ」でいいだろう?とばかりにテヘペロすると、早々と二度寝してしまいました。


「やれやれ……心臓に悪すぎるぜ、あの姉貴は」と、素戔嗚尊様はため息をついて再びリクライニングに身を預け、一眠りしようとします。


しかし、この超規格外の現実改変を目の当たりにしたアリアドネは、とてもそれどころではありません。


髪を逆立てる勢いで、瞳をこれ以上ないほど丸くし、顔を真っ赤にして一人で身悶えしています。


「なっ、ななな! なんですの今のはーーー?!! 神話の世界の出来事が、指先一つで、こんな、こんなのってアリですのーーーっ!?」


「良いからもう一眠りしようぞ」


そんな大パニックのアリアドネを、イザナミ様が「ふふっ」と艶やかに笑いながら、ぎゅーーーっと優しく抱擁してご自身の胸元へ引き寄せ、そのまま幸せそうに再び眠りについてしまわれました。


「わっ、わたくし、今のを目の前で見て眠るなんて……もうとてもできませんわーーーっ!!!」


静まり返った深夜明けの車の車内で、アリアドネの声にならない絶叫が(心の中で)木霊します。


隣でスヤスヤと眠る最高神。自分を抱きしめて心地よさそうに眠る大母神。


11時の開店までの残り4時間、あまりにも規格外の日の本の神々のパワーに完全にノックアウトされ、一人悶々としてどうしても眠れないアリアドネでした。


時計の針は、アリアドネのドキドキを置き去りにして、ゆっくり、ゆっくりと進んでいきます。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

高天原での騒動を経て那智勝浦へと到着した一行。寝ぼけたアマテラス様が指一本で太陽と時間を動かすという規格外の暴走を繰り出しました。


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