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どちら様ですか?~無人島に置き去りにされたけど最強の女神たちに溺愛されました~【全話執筆済】  作者: 夜見猫
第二章 海辺の日常と、大母神の華麗なる三行半

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20/23

第20話

本作は情景や心理描写を丁寧に描いているため、長めの文章構成になっています。

お忙しい方は、会話文「  」、キャラクター名、心の声( )を中心に追っていただくだけでも、テンポよくストーリーをお楽しみいただけます。

イザナミ様が颯爽と去り、静まり返った神殿の床で呆然と膝を突くイザナギパパ。

そんな哀れな父神の傍らへと素戔嗚尊様が静かに歩み寄り、肩を優しくポンと叩きました。


「親父……自業自得とはいえ、同情するぜ。俺もあの二人には振り回されっぱなしだからな。……まぁ、お姉様に関しては潔く諦めろ。俺も、奇稲田クシナダに嫌われぬように気をつけるぜ」


息子の口から漏れた、あまりにも重い「嫌われぬように」という現実的な言葉。


それを聞いた瞬間、イザナギパパの心に「ああ……自分はもう、完全に嫌われてしまったのだな……」という事実が容赦なく突き刺さりました。失ったものの大きさに今更ながら気づいた彼は、ただただ深い悔恨の淵へと、静かに落ちていくしかありませんでした。


そんな神殿のどん底の空気とは裏腹に、一歩外へ出た廊下では、三柱の女神たちが「してやったり!」とばかりに大はしゃぎしていました。


「ギャハハハっ! 見た?! パパ上のあの無様な顔?! お姉様を悪様あしざまにして拒絶した罰じゃーーーっ!」


天照大御神様は、お腹を抱えて最高の笑顔を弾けさせています。


「ええっ! 本当に……っ! お姉様、格好良すぎますわーーーっ!!! あんな風に、裏切ったおのこ(男)をエレガントに突き放すなんて、私、本当に感動いたしました……っ!」


アリアドネも、瞳をかつてないほどに輝かせ、これまでの人生で溜め込んできた感情をすべて解き放つように、声を大にして大興奮で絶賛しています。


そんな二人を見つめながら、イザナミ様もまた、長年の胸のつかえが綺麗に消え去ったかのような、晴れやかな声を響かせました。


「ハハハッ! ほんに面白かったのう! すっきりしたわい!」


通路の陰からその様子を見届けていた応神天皇と仁徳天皇の二柱は、無邪気に笑い合う三人の姿にガタガタと恐れ慄いていました。


しかし、それと同時に、日の本の最高神を相手に一歩も退かず、完璧な精神的奇襲を成功させてみせた彼女たちの鮮やかな手腕に対し、戦の神として、心の底から「見事な戦略であらせられる……」と、素直な敬意を抱いて称えていたのでした。


さて、高天原での見事な悪戯を終え、再び現世へと戻ってきた一行。うららかな陽光が降り注ぐ中、三柱の女神たちは、美しい桜並木の参道「段葛だんかずら」を、仲良く歩いていました。


「さあ! イザナミお姉様の痛快な意趣返しは果たした! 次はアリアドネちゃんじゃな!」


天照大御神様が、弾むような声でアリアドネの顔を覗き込みました。


「ふむ。せっかくじゃから、このまま本格的な『B級グルメの旅』に出るとしようか!」


最高神の力強い宣言に、隣を歩くイザナミ様も、漆黒の髪を風に揺らしながら深く、嬉しそうに頷かれました。


「ふむ! 妾もそれを待っておったぞ! 現世の民が愛する美味、もっともっとこの舌で確かめてみたいものじゃ」


二人の言葉を聞いたアリアドネは、その瞳をかつてないほどランランと輝かせ、胸を高鳴らせて身を乗り出しました。


「あの『ぎゅうどん』のような、美味しくて心がじんわり温まるお料理を、これからもっと探求する旅に出るのですか……?! ぜひ、ぜひお供させてください!」


テセウスに裏切られた悲しみなど、この日の本の温かい神々の前ではすっかり過去の出来事のようです。アリアドネは、次に出会う未知の現世の美味への期待に、大興奮を隠せない様子でした。


素戔スサ! そうと決まれば、すぐに支度せよ! さあ、妾たちをエレガントにエスコートするのじゃ!」


天照大御神様は、後ろをトボトボと付いてきていた弟を振り返り、ビシッと指を突きつけて、さっそくこき使う気満々で声を張り上げました。


「へいへい、分かったよ……。今度はどこへ向かうか、美味い店を検索してやるから、ちょっと待っててくれよな」


素戔嗚尊様は、自分の財布の心配を胸に抱きつつ、お姉様や異国の王女の弾けるような笑顔を見て、やっぱり嬉しそうに頭を掻きながら、車のキーをポケットの中でカチリと鳴らすのでした。


そんな財布の心配をしている素戔嗚尊様の横顔を、天照大御神様は見逃しませんでした。美しい眉を上げると、実にかっこよく胸を張りました。


「なんじゃお主。律儀な男よのう。金子かねの心配をしていたのかえ。ほれ、妾の『かーど』を使うが良い。10億は入っていよう。妾の現世のお小遣いじゃ」


天照大御神様がポケットからおもむろに取り出し、素戔嗚尊様の手のひらにポンと載せたのは、選ばれし者しか持てない漆黒に輝くブラックカードでした。


「なっ……なんだとーーー?! おい姉貴! 10億ってなんだよ! そもそも、俺が奇稲田クシナダとのデートのためにコツコツ貯めてたへそくりを、プチプラ服屋さんで使い果たさせといてどうしてくれるんだよー!」


手のひらの凄まじい金額のカードに目を剥きながらも、素戔嗚尊様が抗議すると、天照大御神様は豪快に笑い飛ばしました。


「細かいことぬかすな! これまでの見事なエスコートへの、姉からの褒美じゃ! ぬしのデート代も、妾のポケットマネーからさらに色を付けてたっぷり返してやるわい!」


「えっ?! 姉貴……いっ、いや……お姉様……!!」


さっきまで「理不尽だ」と泣きそうになっていた素戔嗚尊様でしたが、あまりにも桁違いで男前?な天照大御神様の太っ腹ぶりに、手のひらを返したようにすっかり態度を軟化させました。ブラックカードを大事そうに胸ポケットにしまい、現金な笑顔を浮かべています。


そして、その一連のやり取りを真横でじっと見ていたアリアドネは、もはや感動の限界を完全に突破していました。


ドレスの袖を激しく握りしめ、顔を真っ赤にして叫びます。


「かっ……格好良すぎますわーーーーっ!!! お姉様方、日の本の女神様方は、どうしてこうも皆さんおのこ(男)より男前でいらっしゃるのですかーーーっ!?」


イザナミ様の痛快な意趣返しに続き、今度は天照大御神様の圧倒的な財力と男気に触れ、アリアドネは本日二度目となる、完全に心が壊れた(大興奮した)淑女の姿を晒していました。


イザナミ様も、そんなアリアドネの壊れっぷりと、弟の分かりやすい喜びように、「ふふっ、ほんに賑やかなことじゃ」と上機嫌で微笑んでおられます。


日の本の最高神の文字通りの「神対応」によって、資金の心配は完全に消え去りました。


これからは10億円の予算を引っ提げた、前代未聞のウルトララグジュアリーなB級グルメツアーの始まりです。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

数千年越しの夫婦喧嘩(?)は女神の完全勝利と、10億円に秒で魂を売った弟の誕生をもって完全決着です。神々の世界も、世知辛い現実と資金力がすべてでした。


「アマテラス様(特にサイフ)に一生ついていきたい」「スサノオ様の現金さは愛嬌」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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