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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第九章 ハデス様の北風と太陽

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第122話

「皆様、私の愛するアリアドネの門出を祝うため、我が誇りである最高の一雫をお受け取りください!」


ディオニュソス様がその両腕を天へと掲げ、偉大なる豊穣の権能を解放されました。


刹那、大理石の地面や重厚なテーブルの隙間から、瑞々しい深緑の蔓が「パチパチ」と小気味よい音を立てて一斉に這い伸びました。


見る間に大粒の紫の葡萄が実り、神殿の広間を芳醇な果実の香りで満たしていきます。


それだけに留まりません。


ディオニュソス様は自らが手塩にかけた至高のワインを、各テーブルに用意されていたクリスタルのデキャンタへと注ぎ始めました。


その手つきはどこまでも慎重であり、注がれる液体はまるで磨き上げられたルビーのように、美しい一条の輝きを放ちながら滑らかに吸い込まれていきます。


そして、すべてのテーブルに極上のワインが行き渡ると、新郎新婦は日の本の三柱が座るメインテーブルへと歩み寄りました。


「イザナミ様、天照大御神様、そして素戔嗚尊様。あなた方からいただいた理が、この酒に最後の輝きを与えてくれました」


ディオニュソス様と、その隣で幸せそうに微笑むアリアドネ。二柱は呼吸を合わせるようにして、渾身の力を込めてデキャンタージュされたワインのボトルを傾けました。


スゥーッ……と、静かで気品のある音が響きます。


イザナミ様、天照大御神様、素戔嗚尊様のグラスへと、寸分の狂いもなく注がれていく深く澄んだ紅色の液体。


それは、かつて七里ヶ浜の別荘で天照大御神様の涙腺を崩壊させたあの優しさを遥かに超える、飲む者すべてを祝福し、その心を温かく包み込むような、神話史上最高峰のワインの完成を告げていました。


グラスを満たしたルビーの光が、日の本の神々の瞳を美しく照らし出しています。


新郎新婦の二柱がそれぞれの席につくと、お互いの手を優しく重ね合わせ、テーブルを囲むすべての神々へ向けて、溢れんばかりの幸せそうな笑顔を向けました。


その温かな空気を受け、最高神ゼウス様がずしりと重みのある足取りで立ち上がり、神殿の広間全体へと響き渡る声で宣言します。


「皆のもの、聞くが良い!


この度、我が息子ディオニュソスと、日の本の神々に愛を注がれ、我がギリシャの気高き女神となったアリアドネ――


この二人が結ばれる。


アリアドネは、自らの糸でこの素晴らしい運命を自ら引き寄せたのだ。


私はこの二人を誠に誇りに思う。


そして、永遠に結ばれた二人を心より祝福したい。


それでは乾杯を」


ヤマス!(Στην υγειά μας)


「ヤマス!」という力強い地鳴りのような復唱がオリュンポス全体に轟き、神々が一斉にグラスを掲げました。


そして、ディオニュソス様とアリアドネが魂を込めて注いだワインを、皆で一斉に口に含みました。


「おおっ……なんと……。なんと言う慈しみよ……」


イザナミ様がワインを口にした瞬間、かつてディオニュソスを凍りつかせたあの日の鋭さは完全に消え去り、その全身を、すべてを許し全肯定するような圧倒的な愛の理が駆け巡りました。


あまりの優しさに瞳を潤ませたイザナミ様は、隣の天照大御神様と共に、席を立ってアリアドネちゃんを優しく、深く抱擁しました。


「これが……そなたの、アリアドネちゃんへの答えなのじゃな……」


喉を通るワインの、どこまでも澄んだ、しかし力強い味わい。


それは、かつて人を支配しようとしていた若き神が、一人の女性の心を何よりも大切に想うようになったという、何よりの証明でした。


イザナミ様も、天照大御神様も、その魂の雫を前にして、ディオニュソス様のアリアドネへの愛が本物であることを、もう完全に認めざるを得ませんでした。


「ふふ、よくぞここまでアリアドネちゃんを幸せにしてくれたのう」と天照大御神様が涙を拭います。


ヘラ様やアンピトリテ様も「素晴らしいわ」とうっとりとグラスを見つめる中、オリュンポスの神殿は、二つの世界の神々が紡いだ美しい祝福に包まれていくのでした。


そして、婚礼の盛大な宴が終わり、オリュンポスの神々が次々と席を立って見送られていく中 ――


新婦のアリアドネがガシッとイザナミ様と天照大御神様の手を掴んだまま、どうしても離そうとしませんでした。


「イザナミお姉様! 天照大御神様! 私達のお家に遊びにいらしてください!」


「良いのか? 新婚のそなた達の邪魔をしてしまうのではないかえ?」


イザナミ様が少し困ったように、しかし愛おしそうに首を傾げました。


「いいえっ! 是非見てもらいたいんです!」


アリアドネは「フンス!」と可愛らしく鼻を鳴らし、胸を張って言い切りました。


日の本で学んだ理(ことわり)と、ディオニュソス様と共に築き上げた新しい愛の形。


そのすべての結晶である自分たちの城を、日本の大好きな家族に一番に自慢したかったのです。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

至高のワインとゼウス様の音頭で婚礼が大団円を迎えた直後、アリアドネちゃんが「新居を見て!」と日本の女神たちの手をガッチリ掴んで離しません。


「新婚初夜そっちのけで実家(日本の女神陣)を新居へ連行しようとする花嫁、アマテラス様にいじられる覚悟はできてるのか?」と思った方は【評価(★)、ブックマーク登録】をお願いします。

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