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どちら様ですか?~ナクソス島に置き去りにされたギリシャ王女、日本の神々に溺愛されました~【第一部完結済】  作者: 夜見猫
第九章 ハデス様の北風と太陽

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第121話

そこに立っていたのは、純白のギリシャ風のドレス(キトン)を身に纏い、神々の一員としての目覚ましい神気をまとった一人の女神がいます。


そして、日の本で培った健やかでチャーミングな笑顔をこれ以上ないほど輝かせた、新婦アリアドネの姿でした。


その隣には、純白の礼服に身を包み、少し緊張しながらも、アリアドネの手を愛おしそうにしっかりと握りしめた新郎ディオニュソス様が並んでいます。


「アリアドネちゃん……!」


天照大神様が席から身を乗り出し、イザナミ様もまた、その瑞々しい瞳を優しく細めて立ち上がりました。


いよいよ婚礼の主役である二柱が、日の本の神々との感動の再会、そしてオリュンポスの新たな神話の幕を開けるために、光り輝く広間へと一歩を踏み出したのです。


アリアドネはドレスの裾が翻るのも構わずに、日の本の神々が座るテーブルへと真っ直ぐに駆け寄ってきました。


そして、ぽろぽろと大粒の涙を溢しながら、イザナミ様と天照大御神様の胸へと勢いよく抱きつきました。


「お姉様……天照様……っ!」


「アリアドネちゃんや……」


二柱の女神も、その小さな背中を包み込むように強く、優しく抱きしめ、その瑞々しい瞳に温かい涙をいっぱいに蓄えていました。


後ろでは、素戔嗚尊様が「まったく、お祝いの席だってのに、みんなして泣かせやがって……」と呟きながら、ポケットからハンカチを取り出し、涙を優しく拭いながらその愛らしい三柱の姿を静かに見つめています。


イザナミ様は、アリアドネの純白のキトンに触れ、その涙で濡れた美しい顔をそっと両手で包み込みました。


「ほんにまぁ……綺麗になって……。そなたが、あやつ(ディオニュソス)に大切にされているのがよう分かるのう」


そこにいたのは、かつて日の本の大衆食堂できゃっきゃと牛丼を頬張り、アニメや動画に目を輝かせていたオタク女子の少女ではありませんでした。


ギリシャの苛烈な神話の理(ことわり)を乗り越え、愛する男神と対等に向き合い、不老不死の命を得たことで、底知れぬ気品と輝きを湛えた「一柱の美しい女神」としての姿が、そこには確かにありました。


アリアドネは涙を拭い、イザナミ様と天照大御神様に向けて、これまでで一番美しく、そしていつもと変わらない笑顔をニカッと咲かせました。


「はい……! 私、今とっても幸せですわ、お姉様!」


その凛とした花のような美しさに、遠巻きに見ていた十二神の神々からも、ため息のような感嘆の囁きが漏れ聞こえていました。


新婦の後を追うようにしてテーブルへと近づいてきた新郎ディオニュソス様は、純白の礼服を端正に揺らしながら、日の本の二柱の女神、そして素戔嗚尊様の前でうやうやしく一礼をされました。


その立ち振る舞いには、かつて七里ヶ浜の別荘で見せたような上から取り仕切る傲慢さは微塵もなく、一人の誠実な漢(おとこ)としての深い敬意が満ち溢れていました。


「お久しぶりです。イザナミ様、天照大神様。そして、素戔嗚尊様。……よくぞ、我らのためにお越しくださいました」


ディオニュソス様は、しっかりとアリアドネの手を包み込みながら、穏やかな、しかし芯の通った声音で言葉を続けました。


「あれから、テセウス、アリアドネ、そして私の三人で、日の本の話をよくしております。


テセウスはあなた方に本当に会いたがっておりましたが、国を預かる身として


『今の俺はまだ天照様に会う資格はねえ!もっと頑張ってアテナイを日の本に負けない国にするんだ!』


と汗を流しております。


そして本日、あなた方がこちらへ来られることを聞き、くれぐれもよろしくお伝えいただきたいとのことでした」


テセウスが比叡山や東海道で泥にまみれて掴み取った「民を慈しむ新しき理(ことわり)」。


それをアテナイの地で実直に広め、国力の向上に邁進している彼の姿が、その伝言から鮮やかに浮かび上がります。


「ふむ……! あの略奪王だったテセウスが、そこまで立派な王になっておるかえ。


まこと、日の本の土を踏んだ甲斐があったというものじゃのう」


天照大御神は、まるで我が子の成長を喜ぶように嬉しそうに目を細めました。


イザナミ様もまた、ディオニュソス様がアリアドネちゃんの手を大切に、優しく握りしめているその指先をじっと見つめ、静かに、深く頷かれました。


「そうか、テセウスも息災で励んでおるか。


……ディオニュソスよ、主(ぬし)のその真っ直ぐな目、そしてアリアドネちゃんを慈しむその手つき。


……フフ、約束通り、しっかりと観察させてもらったぞ。


そなたの想いは、やはり本物じゃったな」


大母神のその温かい許しの言葉に、ディオニュソス様は張り詰めていた緊張が解けたように、ほっとした晴れやかな笑顔を浮かべました。


素戔嗚尊様もハンカチをポケットに仕舞いながら、


「よくぞここまでアリアドネちゃんを立派にエスコートしてくれた。立派な漢になったな」


と言わんばかりに、力強く、静かに頷いていました。


いつもご愛読いただき有難う御座います。

純白の花嫁となったアリアドネちゃんと涙の再会を果たす中、不在のテセウスから届いた「まだ天照様に会う資格はない」という熱血すぎる近況報告に一同ほっこりしてます。


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