表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら女の子でした。 〜元ニート、異世界魔法を攻略する〜  作者: あめの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/15

第十一章 新しい仲間?

マルクを出て三日が経った。

次の街、ベルタまでの街道は思ったより長かった。森あり、丘あり、たまに魔物あり。一人旅は孤独だが、魔物が出るたびに実験ができるのでむしろ歓迎だ。

「炎と風を組み合わせると……」

俺は走ってくる狼型の魔物に向かって手を伸ばした。焚き火のイメージ。そこに台風のイメージを重ねる。

炎が渦を巻いた。

魔物が吹き飛んだ。

「よし、炎旋風、成功」

俺はノートに書いた。

『炎+風の複合魔法:焚き火に台風を重ねるイメージ。渦状になって射程が広がる。名前は炎旋風にしよう。かっこいいので』

名前は大事だ。なろう小説でも、技に名前をつけると強くなった気がする。

ノートをしまって歩き出した瞬間——

「危ない!」

背後から声がした。

振り返る暇もなかった。何かが頭の上を飛び越え、俺の後ろにいた魔物に体当たりした。

砂煙が上がった。

煙が晴れると、魔物の上に少女が乗っていた。

赤茶けた短い髪、日焼けした肌、擦り切れた革の服。ナイフを二本構えて、魔物の首元に突きつけている。魔物がビクビクと震えて、ついに白目をむいて気絶した。

少女は立ち上がり、ナイフを腰のベルトに戻した。

「助かったな!」

満面の笑みだった。歳は俺と同じくらい、十四か十五か。全体的に野生動物みたいな雰囲気だ。

「……ありがとうございます」

「いやー、あの魔物は背後から来るタイプだからな!気をつけろよ!」

「気をつけます」

少女はずかずかと俺に近づいてきた。距離感がない。

「あんた、さっきすごい魔法使ってたな!炎が渦巻くやつ!あんなの初めて見たぞ!」

「まあ……自分で考えたので」

「自分で!?すごいな!名前は!?」

「……アリア」

本名を言ってしまった。まずいかな、と思ったが、この子の勢いに押されたのだ。仕方ない。

「俺はルカ!よろしく!」

「……女の子ですよね」

「そうだけど!」

ルカはぐいっと手を差し出した。俺はその手を握った。握力が強い。山で暮らしてるタイプだ、これは。

「どこに行くんだ?」

「ベルタまで」

「奇遇だな!俺も同じ方向だ!一緒に行こうぜ!」

「……どうぞ」

断る理由もなかった。一人より二人の方が魔物対策にもなる。それに——正直、少し寂しかった。

こういう理由で旅の仲間を受け入れるのは、なろう小説の定番だ。わかっていても、抗えない。


ルカはよく喋った。

「あそこの森には大きい魔物がいてな!」「この草は食べると甘いんだぞ!」「昨日は岩の下で寝た!」

俺は相槌を打ちながら、ノートを書き続けた。

「なんか書いてるな、それ」ルカが覗き込んできた。「魔法のやつか?」

「実験の記録。魔法の仕組みをまとめてる」

「仕組み?魔法って感覚でやるもんじゃないのか」

「感覚でできない人間もいる。俺は理屈で考えた」

ルカはしばらく俺の顔を見てから言った。「……変わってるな」

「よく言われます」

ルカは笑った。

こいつ、嫌いじゃないな。と俺は思った。

ベルタに着いたのは夕方だった。


マルクより小さい街だが、宿はある。二人で一番安い部屋を取った。

夕飯を食べながら、ルカが言った。

「なあ、アリア。お前、追われてるだろ」

俺はフォークを止めた。

「なんで」

「マルクで手配書を見た。銀髪の女の子。報奨金、金貨五十枚」ルカはスープを飲みながら、さらっと言った。「かなりの額だよな」

俺は黙った。

「安心しろ。俺には関係ない」ルカは笑った。「金より、お前の魔法の方が面白そうだから一緒にいる」

「……そうですか」

「そうだ!」

俺は警戒を少し解いた。こいつは正直者だ。裏表がなさそうだ。

でも——その夜、俺は気づいた。

寝たふりをしていたら、ルカが部屋を抜け出した。

俺は音もなく後をつけた。風魔法で足音を消すのは、もう朝飯前だ。

ルカが路地裏に入った。そこに誰かが待っていた。黒いフードを深くかぶった人物だ。

「見つけました。アリア・フォン・シルヴェストで間違いないです」

ルカの声だった。

「確かか」フードの人物が低い声で言った。

「はい。銀髪、青い目、魔法の腕は本物です。明日の朝、宿から連れ出します」

俺は路地の影で、その会話を全部聞いた。

胸の中で何かが冷えた。

スパイだった。

最初から、俺を捕まえるために近づいてきたのだ。魔物から助けたのも、わざとだったのかもしれない。

俺はそっと宿に戻った。

ベッドに横になりながら、天井を見つめた。

……悔しいとか、怖いとかより、なんか——すごくがっかりした。

やっぱり一人の方が楽なのかな。誰かを信用するから、こういうことになる。

でも——どうするか。

逃げるか。それとも——。

俺はノートを開いた。新しいページに書く。

『問題:仲間がスパイだった』

『選択肢① 夜のうちに一人で逃げる』

『選択肢② 正面から問いただす』

『選択肢③ 逆に利用する』

俺は少し考えてから、①と②と③全部に丸をつけた。

まだ決めてない。でも——ひとつだけ確かなことがある。

「明日の朝が楽しみだ」

俺は目を閉じた。

今夜くらいは、ちゃんと寝ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ