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23 クヴェルト《報告》

「――以上が、事の顛末です。……申し訳ありませんでした」


 クヴェルト帝国の王城では、王と重鎮が集まって緊急会議が行われていた。

 その内容は数日前にとある島で行われた魔物討伐の報告と確認だ。



「宰相、事前調査との相違は?」

「はっ。防衛大臣が説明した内容は、私どもが手に入れた内容と同じです。兵士達も全員無事なようですし……信じられませんが」

「そうか。謝るな大臣よ。無事で何よりだ」


 王は一応の労いの言葉をかけたが、報告事態は誰にも理解出来ない内容だった。


 それもそうだろう。

 伝説の禁断魔法を発生させてしまったなど簡単には信じられない。



 それでも確かにあの日の夕方、帝都から見る西の空は黄金に輝いた。

 なかには太陽が爆発したという者もいたが、そう思うのも仕方ないほどの光だった。


 それほど危険な魔法を使ったとはいえ、大臣や兵士達を責めるわけにもいかない。


 かつてないほどの魔物の軍勢を倒し、最後にはブラックシーサーペントを相手にしたのだ。

 伝説級の魔物に死力を尽くした結果であれば、むしろ褒めるべきかもしれない。



 その証拠に海に浸かっていた大海蛇の死体は帝都に持ち帰られた。

 残った死体の大きさを見ただけでとれほどの驚異的存在だったか容易に想像がつく。


 そしてその死体には頭がない。

 硬い鱗を持ってしても、禁断魔法を直に受ければ何も残らないということだ。



「それで少年の行方は?」

「兵のほとんどは現地に残り捜索していますが……まだ発見できておりません」

「しかたなかろう。戦いに尊い犠牲はつきものだ。あきらめて兵は引き上げさせろ」



 王は大臣の様子を気にするでもなく、他の重鎮に言葉を続ける。


「それよりもナリキ諸島に伝達を送れ。クヴェルト帝国がブラックシーサーペントを討ち取ったと!」

「「「おぉ〜!」」」

「これから忙しくなりますの」

「ブラックシーサーペントの魔石が消滅したのはもったいなかったな。実は海に落ちていたということはないか?」

「その可能性は大いにあり得ますな。それでは現地にいる兵にそっちを捜索させましょう」




 そのあとの会議に意味はなかった。

 クヴェルト帝国は最強だの。

 ナリキ諸島に恩を売れだの。

 素材で王の鎧を新調しようだの。



 彼らにはわからないのだ。

 真実も。

 その場にいた者達の想いも。



 あの日、少年の背中を見た者だけにしか、わからないのだ。




◇◇◇◇



「以上が会議の内容です。機密ではありますが、貴方達は知る必要があるでしょう」


 応接室には大臣に招かれたリラとギルドマスターがいる。


 しかしアルの話を聞いたギルドマスターは落ち込んでいた。もちろん大臣も元気なんかない。


 リラだけはお菓子をポリポリしている。

 そしてその右手には蒼く大きな魔石が握られていた。



「リラさんは結局何を知っているのですか?」

「何も知りませんよ?」


 大臣の問いにリラは気にする様子もなく答えたが、そんなはずがないと大臣は思っている。


「では、彼はどうなったと?」

「多分生きてますよ。どうやってと言われると知りませんが」


 その返答に嘘はなさそうだった。


 大臣はあの日見たリラの表情を思い出す。

 彼女は何ひとつ不安を感じさせることもなく不敵に笑っていた。


 だが本当は、ただ普通に笑っていただけなのかもしれない。

 今思えば不安どころか期待していたようにも見える。



(わからないな。だが、わからないが彼が生きているというなら、それは喜ばしいことだ。そうであるなら、信じた方がいいのかもしれないな)


 そう考えた大臣は自分に言い聞かせるように明るく語った。


「ではリラさん。アル殿に会ったらお礼を言って頂けませんか? 感謝していると」


 それを聞いたリラは、笑顔で頷いてみせた。




◇◇◇◇



「めっちゃ怒ってたな〜」



 アルは海岸での出来事を思い出して身震いをさせた。



 リラに邪魔だと言われたから最前線で頑張っていたのに、途中からは兵士達に文句を言われたと思っているからだ。


 そして最後は蛇と一緒に魔法で処理された。



(びびるわ〜。弟子殺しで有名な師匠でもあそこまでやらないよ。それにしてもみんなのイライラはすごいエネルギーだったなあ)



 思い出してアルはまた震えた。



 そんなことを考えながらアルはベッドの上で七星の欠片を見つめる。

 それはバランがくれた一対のアクセサリーだが、片方の魔力はすでにない。


(剣鬼の言った結界というのは本当だったな。おかげで一命をとりとめたよ)




 アルは魔法の磁気嵐が発生した時、ためらうことなく七星の欠片の力を引き出した。


 磁気嵐が与える影響も七星の欠片に込められた結界の強さもアルは知らない。



 だがブラックシーサーペントに斬りかかる直前に、ある種の極限状態になったアルにはそれ等の力が気配として認識出来ていた。



 そしてアルは磁気嵐を結界という壁で弾くように受け止めた。


 暴走して破裂した磁気嵐は結界に反射されるようにはるか上空まで届いたが、兵士達は奇跡的に爆発から免れた。



 ただ磁気嵐の中心地にいたアルは深刻なダメージを受けてしまった。

 自分を護るための結界を最小限にし、あえて吹き飛ばされることでダメージを逃がしたのだがかなり無茶な作戦だった。



 だがアルが悪いわけではない。

 あの島にいた鬼が悪いのだ。



 その結果アルは飛んだ。


 彗星の如く遥か遠くまで飛んだ。




 そしてアルの伝説がはじまるのだが、死にかけていた彼はますば保護された。

 この話にてクヴェルト編は終わりですが、リラさんのツンデレのデレがまったく出てきませんでしたね。おかしいな。



 さて、明日から新天地のお話に移りますが、変わらずに平日更新を続けます。


 ブックマークと評価を頂いた皆様の期待に応えれるよう努力しますので、これからもよろしくお願い致します。

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