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約束(エンゲージ)  作者: 千歳瑠璃
幻獣創造
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一日経過すると、俺達は学園には行かずに、街にあるショッピングモールに足を運んでいた。


 勿論、学園には連絡は入れていない。最近学園に行かない事が多くなったので、先生からも何も言われなくなってきたためだ。それに、連絡を入れたとしても何を言えばいいか……当然本当の事は言えない。


 〝幻獣創造(モンスタークリエイト)〟がこの一帯に来るという情報があるのに、呑気に学園に通って居る場合ではない、ジャックの話では〝魔術閉鎖空間〟を無効化する可能性があるらしい。


 全く関係のない人間も、そうなれば召喚者という未知の存在に関わるしかない。そして、関わると、普通の人間では生きて生活に戻ることは決して容易ではないだろう。仮に生きていたとしても、怪我や大きな外傷を残す可能性がある。決して召喚者に人間を関わらしてはいけないだろう。


 人がさほど多くない開店時間と同時に店内に入ると、一番上から見て回ることにした。俺と白雪は何度も来ているので、大体の地理は理解しているつもりだが、ジャックは始めて来るため、俺達が教えながら行くのだ。


 それと同時に、俺達ももう一度地理の確認だ。大体の事や、どこに何があるかなどは把握しているが、非常階段や非常口……他にも職員しか通れない場所などの場所を把握しておきたい。


 〝幻獣創造〟が現われる時にはきっと、大勢の人間がこのショッピングモールに居るだろう。全員救うことが出来るのが理想だが、大勢の〝幻獣〟と戦いながら人間を全員守る事など不可能に近い。


 それに相手の力を全く確認していない俺達には、相当不利な戦いになる事を見越すと、救える人数にも限界があるだろう……だから人間を一人でも多く救うためにも、非常口などの場所は必要不可欠になってくるだろう。


 外に逃しても安全かどうかなどは全く理解出来ないが、ショッピングモール内に居るよりかはずっと安全になるはずだ。そう信じるしかない……。


「先に二人に案内してもらおうと思ったけど、一通り一人で見て回るよ。いいかい?」


 ショッピングモールの最上階に到着すると同時にジャックは、予定を変更してきた。一緒に居るとジャックが変な行動すると直ぐに分かると思って居たのだが、ジャックもそんな事当然理解しているだろう。


 〝戦争〟という願いをかなえる戦いに参加している俺達がこうして、一緒に歩いているだけでも異常な光景だ。他の召喚者が目撃したらきっと目を疑うだろう……俺達はそれほどに可笑しな事をしている。


 それにジャックは〝正義者ヒーロー〟という〝第三次開放〟に至っている召喚者だ。例え、世界を救いたいと思っていても、簡単に信用することは出来ない。


 もし仮に、〝幻獣創造〟の話し自体が嘘で、俺達に接近してくるための罠だったとしたら、俺達は完全に騙されているという事になる。数十年、一切情報が出ていない〝幻獣創造〟の話しは出ていないと言っていた。そうなれば、嘘である可能性の方が高くなるかも知れない。


 だが、白雪は〝正義者〟だと知ったとたんに話しを聞くと言い出した。つまり、このジャックという召喚者は、〝戦争〟に参加していてもなお、世界を守りたいという願いを持ち付続けている……信用できるという事なのだろう。


 だが、俺はまだ召喚者として短いが〝第三次開放〟という高みに上った召喚者だ。それは決して嘘ではないし、これから戦うであろう召喚者は皆知っている事実となっている。


 しかし、俺は今まで〝幻獣創造〟と〝正義者〟の話しは一切聞いたことがない。有名な召喚者だというのに一度も存在しないのだ。単純に俺の情報が少ないというのが原因だろうが、それでも個人的には信頼する事が出来ない。


「ええ、大丈夫よ。一人で見たほうが覚えると思うわ。あなたは〝正義者〟なんだから私は何も心配していないわ」


 だが、白雪は俺とは違い、一定の信頼はしている。同じ〝戦争〟という願いを叶える戦争に参加しているにも関わらず、一人で行動させるぐらいには信頼している……俺とは間逆だ。


「ありがとう。海人もそれでいいかい?」


 俺の顔を見てくるジャック。たぶんだが、俺が信頼していないのは初めから見破られているに違いない……だから俺に確認を取るのだろう。勝手に動いたら俺の信頼は決して得られないから。


「ああ……俺も別に問題ない」


 この場合、そうとしか言えない。白雪は〝正義者〟の事を信頼している……だが、俺だけ信頼していない。これは、もう直ぐ現われるとされている〝幻獣創造〟との戦い中に何かしらに影響する可能性があるためだ。


「ありがと、それじゃ言って来る」


 そういいながら背中を向けて、歩き出した。俺それを黙っ見ているままで、ジャックの姿が見えなくなるまでそうしていた。


「私たちも行きましょ」


「そうだな。とりあえず、中を隈なく見回るか」


 ジャックとは反対方向に歩き始める。もし、ジャックが何もしなかったらどうせ、後でどの辺に注意が必要などという話合いをするに違いない。そうなれば、反対方向は見なくても聞けば理解できるはずだ。


 まだ、開店して間もないショッピングモールにはあまり人は居ない。特に最上階はいつもあまり人が居ないので、開店間のない時間には俺達二人しか居ないようにも感じなれる。実際は気配もしているので数人は居るだろうが、見えている部分だけでは俺達しか居ない。


「三階なんて来たの初めてじゃない?」


 歩きながら白雪はそう言ってきた。


「俺は小さい頃に何度か来たことあるぞ。でも、白雪と出会ってから来るのは初めてだと思う。特に用事もなかれば来る場所じゃないからな」


 三階は、薬などが売っているコーナーが多い。絆創膏や包帯……他にも目薬など、そういった系統の物が売っているのだ。怪我や病気になれば来る機会が多いかもしれないが、怪我など大きな怪我以外はしばらくすれば治るし、ショッピングモールよりも近くに薬局があるため、基本的に皆薬局に行く人が多いのではないだろうか。


「確かにね。それに召喚者だから怪我とかしても関係ないから余計にね。病気はどうする事も出来ないけど、病気になったら病院に行くわね」


「そうだな。わざわざショッピングモールまでは来ない」


「ホントにね……ここなくして他作ればいいのにね」


 白雪は会話をしながらも周りの光景を忘れないようにしっかりと目に焼き付けている。一度も来たことがない場所だけに余計に真剣に見ているのだろう。俺もあまり来た事がない場所だからしっかりと見ている。


「それだと、困る人も居るだろ?例えば、近くに薬局が無い人はショッピングモールに無かったら、遠くに買いに行かなきゃ駄目になる……俺達の方面は近くにあるから問題ないけど、反対側の人達が困るから絶対に無くならないと思うぞ」


 反対側にも薬局のが出来れば話しは別だが、それも絶対にないだろう。出来ればショッピングモールの三階が不要になる。新しく作り直せば工事など色々しなくては行けなくなるためだ。その辺はバランスが取れているはずだ。


「そっか……なるほどね。そんな発想出てこなかったわ。さすが海人ね」


「いや、俺じゃなくても出てくるはずだ……白雪は召喚者の生活が長いからだろう。俺はまだ覚醒してから一年も経過してないしな」


「それもそっか……けど、本当に海人はすごいよ。私なんかと比べ物にならないぐらい……いや、全世界の召喚者と比べても負けないぐらいにすごいよ」


「……何がだ?」


 俺など全くすごくない。それは本人である俺が一番理解している事だ。俺は何も出来ないし、大切だった幼馴染すら守ることが出来なかった情けない召喚者だ。


 一度は〝みんなが笑顔で入れる世界〟という願いを願ったにも関わらず、結局は願いを偽っていたただの一人の人だ……確かな物など全く持っていないただの人だ。


「海人はたった短期間で〝第二次開放〟に至って、そして一年以内に〝第三次開放〟に至った……これは普通ではありえないことだから」


「そうなのか?」


 実際に聞かなくても理解していた。白雪は十年間召喚者をやって、最近〝第三次開放〟に至ることが出来た。なのに俺は一年を満たない時間で〝第三次開放〟の使い手になった。


 〝第三次開放〟の使い手の数は世界中で十人居るかどうか分からないほどしか居ない。その少なさから〝第三次開放〟に至るにはとてつもない努力と想いが居ることが証明されている。一年以来に至れる域ではないはずだ。


「そうなのよ。自覚がない訳ではないでしょ?今は私も〝第三次開放〟に至ってるけど、海人ぐらいの時なんて〝第二次開放〟ところか、まともに召喚者と戦えるようになった程度だったわ……けど、海人は違う」


 白雪は一度深く深呼吸をしてから、再び口を開く。


「海人は〝第三次開放〟の使い手と戦っても大差ない……もしかすると一人でも勝てるかもしれないわ。私とは大違いよ……ここまで速く成長した召喚者は今まで居ないかもしれないほどにね」


「それはないだろ……俺はそこまで強くない。まだまだ白雪が隣に居てくれないとすぐに殺されるだろう……これは事実だ。少なくとも俺はそう思っている」


 今までの戦いでは俺一人で勝てる戦いなど一つも存在していなかった。確かに俺は短時間で〝第三次開放〟に至ることが出来たが、白雪が長年積み重ねてきた経験には遠く及ばない。


 大きな戦いの場数はあまり変化はないかもしれないが、俺と白雪では戦ってきた召喚者の数が違う。数人、数十人などではなくもっと大勢の召喚者との戦いの経験がある白雪と俺ではやはり差が出てしまう。


 持っている情報などがその差に大きく現われている。例えば今の状況だ。俺一人であれば間違う無くジャックと協定を結ぶような関係にはなっていないはずだ。〝幻獣創造〟の事も知らなければ〝正義者〟の事も知らなかった俺だ。きっと、追い返していたか、戦闘になっていたに違いない。


 ここまで生き残っているのは隣に白雪というパートナーが居てくれたという事実があったからだ。そしてこれからもそこは全く変化しないだろう。俺達hは〝約束〟で結ばれたパートナーであり、恋人同士なのだから。


「それは私も同じよ……今まで一度も他の人だったら……なんて考えた事無いわ。これからもずっと一緒に居るわ。恋人としてもね」


 頬を紅く染める白雪。俺は小さな手を優しく握り、ショッピングモールの中を歩く。地理を覚えるために歩いているにも関わらず、緊張してあまり回りが見えていない状態だった。


 こんな事している余裕など俺達にはないと理解していながらもやめられない……白雪の温もりをずっと感じて居たかった。この温もりは決して離さないと心に決めている。


「……それで何の話だっけ?」


 手を繋いでしばらく歩いていると、緊張のあまりか先ほどまで話していた会話を思い出せなかった。凜奈と手を繋いだことは何度もあったが、こうして本気で好きな人と手を繋ぐ事など経験が無い俺は緊張しまくりだった。


「海人は実はすごいっていう話だったはずだわ」


「そうだ。その話だ……結局何が言いたかったんだ?」


 何も目的が無く急にこんな話をする訳がない。何か他に伝えたいことがあったのだろう。なぜなら、こんな話をしても全く持って意味がないからだ。


「ええ……海人は〝正義者〟の事全く信用してないでしょ?」


「……やっぱりバレてるか」


 結構顔に出やすいタイプだと凜奈に言われたことが何度かあったため、その辺は自覚していた。そして〝正義者〟にも俺が信用してない事は出会った時から理解しているだろう。


「やっぱりも何も、初めから態度に出てたわよ。それと顔にもね」


「すまん……白雪は信用しているのにな……〝正義者〟の事」


 〝世界を救いたい〟という願いを持っている〝正義者〟は白雪にとって信用にあたいする召喚者なのだろう。俺は知らないが、白雪は〝正義者〟の事を知っているようだったから。


「私も信用はしてないわ。ただ、嘘を付くような召喚者では無いと思ってるけど。それは、今まで彼がしてきた事が裏付けているから」


「色々な事件を解決したことか?」


 俺は聞いたことないが、白雪がそういうのであれば事実なのだろう。だが、それだけで信頼するのは少し軽率すぎるのではないだろうか。


「勿論それだけじゃないわ……嘘を付くような召喚者ではないという事も本当だけど、一番の理由は海人が居るからよ」


「俺……がか?」


「ええ、そうよ。海人が居るから……」


 白雪は嘘を言っているようには見えなかった。真剣に瞳を見つめる眼差しは嘘を言っている者に出来る物ではない。それに、照れても居ないので、恋人的な意味で言った訳でもない……他に理由が存在するようだ。


「海人は本当にすごいの?一年以内で〝第三次開放〟に至るなんて普通では不可能な事なの……だからこそよ」


「どいう事だ?」


「他の召喚者にとって海人は恐怖の対象になるの……一年以内で〝第三次開放〟に至る召喚者なんて今まで聞いたことないからね……だから〝正義者〟も絶対に下手な行動は取れない……自分が勝てる確率が低いからよ」


「どうしただ?〝正義者〟は出合った時に「第三次開放であろうと勝つことは出来ない」とか言ってなかったか?それって相当自信があるという証拠じゃないか?」


 俺達二人の前にしても、そのような発言を言えたのだから、相当自信がある召喚者なのは違いない。それと同時に力のある召喚者であるという事実も間違いないだろう。


「そう、第三次開放ならね……でも、海人は一年以内で第三次開放を物にした……ということはいつ、〝世界融合〟に至っても可笑しくないのよ。そして、世界融合になると、もはや〝第三次開放〟の召喚者では太刀打ちできない……海人も水瀬の戦いを見たはずだから理解しているはずよ」


「ああ……確かに今の俺達では〝世界融合〟の使い手に勝つことは出来ない……でも、俺はまだ〝第三次開放〟に至ったばかりだ、世界融合なんて……」


「可能性の話よ。今の〝第三次開放〟に至っている召喚者の中では海人が一番〝世界融合〟に近い……だから〝〟正義者」は手を出せない……だからこそ、私達に協力を仰いだのだと思ってるわ……あくまでも私の仮定だけどね」


白雪は仮定と話しているが、何故確証があるようにも聞こえた……それは長年召喚者をやってきた勘なのかもしれない……。


「とりあえず一通り三階は回ったかな?」


「ああそうだな」


 白雪と話しをしている内にいつの間にか三階を回ってしまったようだ。元々薬局のような感じのお店しかないフロアなので、そこまで広くは無い……だから回るのは簡単だった。


「そうだな。見終わったし……ジャックに合流する……か?」


「どうかしたの海人??」


 俺の様子が可笑しい事に気がついた白雪は、視線を辿って後ろを振り向く。


「何それ?何かの札??」


 普通に歩いていては見えないような場所に札のような物が貼っている。近づいてみると、日本語に見えなくも無い文字が黒い色で書いている……仄かに魔力反応もある。


「怪しすぎるだろこれ……」


 三階を集中的に見たことなど一度もないが、普段からこんな気味の悪い札を貼っている可能性は低いだろう。そして今は〝幻獣創造〟の話しが出ているところ……怪しすぎる。


「一回、ジャックも呼びましょうか。何か知っているかもしれないわ」


「ああ、そうだな……俺達じゃ知らないことも知っている可能性があるからな」


 俺達は少しだけ魔力を高めて、ジャックを俺達の方に呼ぶことにした。







 





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