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約束(エンゲージ)  作者: 千歳瑠璃
幻獣創造
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協定

「〝幻獣創造モンスタークリエイト〟……それは本当に確かな情報なの?何かの罠を、違う情報を掴まされたんじゃ……」


 白雪はジャックが言った言葉が信じられないようだった。世界の本当に救いたいと願っている〝正義者ヒーロー〟の言葉だとしても、信じられない情報なのだろうか?あるいは、そこまで〝正義者〟は信用に値する召喚者ではないということなのだろうか?


「それは俺にもわからない……」


「分からない情報を抱えて俺達に会いに来たのか?」


 俺は少し呆れながら言ってしまった。そんなつもりは無かったのだが、目の前に居る召喚者の行動が俺には全く理解出来なかったためだ。不確かな情報のために〝第三次開放〟に至った召喚者の前に姿を現すなど、呆れてしまったのだ。


 普通であればそのような行動は絶対にしてはならない行動だ。〝戦争〟に参加していながら、不確かな情報を抱えて、敵である俺達の前に姿を現す行動など……少なくとも俺なら絶対にしない。


 〝第三次開放〟に至ったことで並の召喚者には負けないことは理解しているが、相手も〝第三次開放〟に至っているのに、そこまでの自信は持つことは出来ないし、持たない方がいいだろう。いつ、死ぬかも分からない戦いで、そのような自信や慢心は絶対に大きな傷になる。


「馬鹿だと思うだろ?でも、相手が相手だから不確かな情報でも信じるしかないんだよ」


「そうね……私でも、まずは本当の話として仮定して行動するわ」


予想外なのは、〝正義者〟の行動に白雪も賛同したことだった。不確かな情報には基本的に食いつかないような性格をしている白雪なのだが、今回はその不確かな情報を信じることにしたのだ。


 白雪は〝正義者〟のことを信頼しているようだった。いや、信頼じゃないな……〝正義者〟の行動が理解出来ているのだろう。


「〝幻獣創造〟の情報はここ数十年一回も外に漏れていないんだ。生きている事以外は何一つ分かっていない状態だった」


「けどね、海人。数十年情報が出ていない相手だからこそ、慎重の行動しなければならない……疑って行動しなくてはならない……だけど、それじゃ、遅いのよ」


「何も準備なしで、〝幻獣創造〟にぶつかるのは問題だ。確かに、お前達二人であれば勝てる可能性は存在している。だけど、〝幻獣創造〟はそんなに簡単な相手じゃない……なんて、数十年間全く外に情報が漏れないような召喚者だ。弱い訳がない」


「それにね、能力もかなり厄介な敵ね。だから、準備をして、来るという仮定で行動した方がいいのよ」


 二人の言葉から察するに、〝幻獣創造〟はかなり強いらしい。万全の準備をして、戦いに望まないと〝第三次開放〟に至った召喚者二人でも倒せないほどに。


「だから、俺は不確かな情報を抱えて、二人に話をしにきたんだ。まともに話しを聞いて貰えそうな〝第三次開放〟の使い手は君たちしか居ないから……協力を仰いで、良い返事を貰えそうな相手は二人だけだからさ」


 確かに、〝正義者〟の言う通りかもしれない。例え不確かな情報でも、万が一の可能性が存在しているのであれば、行動する他ない。それが、自分の願いの妨げになるのであれば、行動する以外の選択肢は出てこないだろう。


 俺もつい最近までは似たような願いを叶えようとしていたからこそ、理解出来る部分も存在している。世界を平和にする事など、普通に考えれば一人が頑張ってどうこうなる問題では決して無い。


 世界中の全員が努力しても、決して出来る物ではないだろう。違う思いや願い、感情を抱えている人という生物が存在している限り、決して平和な世界など創ることは出来ない。


 だからこそ、この〝戦争〟という願いを叶えるための戦い選ばれ、殺し合いをしているのだろう。絶対に叶える事が出来ないと理解しているからこそだ。

少し前の俺であれば、真っ先に手伝っていただろうが……今は違う。


「だけど、俺は協力しない」


 その言葉に、〝正義者〟だけではく、白雪すらも驚いた表情をした。だが、それでも俺には関係なかった。


「……理由を教えて貰おうか」


「俺達はもう、誰かを手伝っている暇なんてないんだよ……自分達の事で精一杯なんだよ。これから、〝世界融合〟を使う召喚者と渡り合うためには、少しでも強くならないと、俺はまた失うから……願いを叶えないとまた、失うから……」


 ずっと白雪を守ると決意したからこそ、俺は協力しない。余計な危険は全て避けるべきだ。俺達は、全ての敵を倒さなければならないのだから……勿論それは目の前に居る〝正義者〟だって同じだ。


「海人……」


少し嬉しそうに呟く白雪だが、〝正義者〟は冷ややかな目をしていた。俺達の姿をまるで、可哀想な奴を見るような目……そんな目をしていた。


「はっきりと言うが、悪気があるわけじゃないから、聞いてくれ」


 真剣な顔で言う〝正義者〟の瞳に吸い込まれ、黙って言葉を待つ俺達。予感だが、決していい事をいう訳ではないということだけは理解出来る。雰囲気が重過ぎるためだ。


「現状のお前達に〝世界融合〟の使い手相手に勝てる見込みは無いに等しい。勿論、俺も全く同じ状態だがな」


 全く嘘を言っているようには見えなかった……いや、そんなことは俺も白雪も充分に理解していることだった。〝第三次開放〟に至ったからといって、〝世界融合〟の使い手に勝てる道理など存在しない。


 自分が渇望した世界を取り込む召喚者の中でも最も高みに登った者のみが使える領域のもの……〝第三次開放〟程度で勝てる敵ではない。まともに戦ったら死ぬことは確定している。同じ領域に達することがない限り、決して倒すことは不可能だ。限りなく少ない軌跡が起きもしない限り。


「それどころか、〝幻獣創造〟にすら勝てるかどうか怪しい……一人で戦えば間違いなく殺される。俺も一人では五分五分といった所だろう……だが、三人で戦えば勝つ可能性が高くなる。いや、必ず勝てるはずだ」


 自信を持って言っている〝正義者〟の言葉はどこか説得力があった。自分の力を過信しているだけなのか、それとも、三人で掛かれば確実に勝てるという自信があるのかは理解出来ない。


 召喚者になって数ヶ月しか経過していない事もあって、俺は他の召喚者のことなど皆無といっていいほど情報を持っていない。白雪が居るからこそ、なんとか話しに付いていける状況だ。


 何も知らない俺は〝幻獣創造〟について何ひとつ知らない。二人は知っているようだが、どんな能力を使うのか、どれほど強いかなど、一切の情報を持ちえていない。だから、〝幻獣創造〟が来て、どのような事が起きるのかも理解できていない。


「海人……気持ちは嬉しいけど、私は協力すべきだと思うわ。〝正義者〟が協力してくれるなら、勝てる可能性が高くなるわ。厄介な敵であることは間違いないから、ここは協力してでも倒すべきよ」


 理解していたが、白雪も俺の考えには反対なのだろう。それは、単純に〝幻獣創造〟という召喚者の強さを理解しているからだろう。


「仮に、〝幻獣創造〟が現われて、俺達が戦わなかったらこの辺りはどうなるんだ?」


 素朴ば疑問だった。二人の発する言葉から強いといのは容易に想像することが出来た。であれば、どれほど強いのかということを聞きたかった。


「まず、〝幻獣創造〟の能力から話すわ。〝正義者〟もいい?私もそんなに詳しくないから、間違っている場所とかあれば、付け加えて欲しいわ」


「俺もそこまで詳しくないけど……わかった。知っている事があれば付け加える」


「ありがと」


 白雪は近くにあった椅子に腰を下ろした。それに合わせて俺も近くにある椅子に腰を下ろし、話を聞く体勢に入る。


「まず、初めに〝幻獣創造〟は、普通の召喚者と違って、〝幻獣〟を召喚することが出来るのよ。本体も弱くはないけど、基本的には召喚した〝幻獣〟が厄介ね」


「〝幻獣〟というのは、太古に居たされている伝説上の生き物のことだ……分かりやすく言えば龍などを創造することが出来る能力だ」


「架空の生き物を創造して、自分の操り人形のように出来る能力ね。しかも、召喚出来る〝幻獣〟の数には限界が無いと言われているわ」


「それは、無限に架空の生物を創造出来るってことか?」


 だとすれば、かなり厄介な敵になるのは間違いない。倒しても、倒しても創造されてしまったら、永遠に倒すことが出来なくなってしまう。


「そいうことね。それに、〝幻獣〟には元々魔力が備え付けられているの。だから、創造する時に〝幻獣創造〟が消費する魔力はゼロになるのよ」


「だが、さすがに大型の〝幻獣〟などになると魔力を消費しなければならない。魔力ゼロで無限に創造されたら倒すことは不可能な敵になる。〝第三次開放〟という同じ舞台の召喚者に勝ち目はなくなる。その辺のバランスは取れているはずだ」


「けど、大型でなければ、無限に創造できるってことだろ??しかも、魔力を消費せずに」


「そうね。だけど、そこまで強いのは創造できないって話よ。聞いた話だけど……けど、大型になると魔力も上がって強くなるのよ」


「だけど、〝幻獣創造〟が厄介なのはそこじゃない。一番厄介なのは、創造した〝幻獣〟は、〝魔術閉鎖空間イージス〟を無視出来る……いや、厳密には〝魔術閉鎖空間〟が発動出来なくなる……現実で〝幻獣〟が出現するってことだ」


「なっ……!」


 厄介とかいうレベルではない……〝魔術閉鎖空間〟が使えないとなると、現実にそのまま被害が出てしまう。壊れた物は元には戻らないし、召喚者という未知の怪物が世間に明るみになってしまう。


 それに、〝魔術閉鎖空間〟が使えないとなると一番の問題は、普通の人間が居るということだ。死んだ人間は決して生き返らない。それは、世界の中では常識の話で、召喚者の中では一つの事柄を置いて、生き返ることは決して無い。


 それも無限のように〝幻獣〟を創造出来る〝幻獣創造〟であれば、死者が出ることは決して回避出来ない。少なくとも、数百人単位の人が死ぬことになるだろう。


「それで、海人の最初の質問に戻る。〝幻獣創造〟がこの辺り現われたらどうなるんだ?って、言う質問だが……この辺周囲の街は壊滅、何百万単位の人間が数日で死ぬっていう結論になる」


 ここで、ようやく俺が質問にたどり着く。結論は最悪の結果だった。俺が想像していたよりも、もっと最悪の結果だった。


「…………」


 仮に俺達が協力しなくても、〝正義者〟は一人で戦うだろう。だが、犠牲者が何人出るかは想像も付かない。きっと、俺達三人で戦う時より遥かに犠牲者が出るに違いない。


 その時、俺は後悔しないだろうか?確かに、白雪を守るため、何よりも最優先するのであれば協力しないのが打倒だろう。大勢の人間は死ぬが、俺達に危険は無い。どちからを判断するのであれば、後者の方が確実に良いに決まっているのだが……。


 ここで、大勢の人間が死に、〝戦争〟の勝者なれても、素直に喜ぶことが出来るのだろうか?ずっと、この時、こうすれば良かったなどという、一番くだらない後悔をする事になるだろう。


自分の勝手な都合で、関係の無い人間を大勢皆殺しにしてしまう……そのような結果は絶対に避けたい。俺達が協力する事によって、例え一人でも助けることが出来るのなら……。


「結論は決まったようだな」


 不意に〝正義者〟は笑顔でそう発した。まるで心の中を読まれているような感覚に陥る。


「海人、顔に書いてるよ。協力するって」


 白雪は可愛らしい笑みを浮かべながら、そう言った。なるほど、顔に出ていたのか……。


「もし、ここで危険を回避して、全く関係の無い人が大勢死ぬことになるなら、俺は〝戦争〟の勝者になっても絶対に後悔すると思う……」


「だろうね。君達はそういう人だからこそ、こうして話し合いに来たんだ」


「ええ、私もきっと後悔するわ」


「そしてなにより……」


 俺の幼馴染であった凜奈は決して俺の事を許さないだろう。あいつはそいう奴だ。この場に居たら、俺と白雪は猛反対しても、一人で〝正義者〟に協力していただろう。


 あいつはもう前に姿を現すことは決してない。召喚者も、〝戦争〟の願い以外で蘇生させる事など決して出来ない。そして、俺達の願いは凜奈を蘇生させる事ではない……それに、凜奈自身もそれを許さないだろう。


「俺はお前に協力するよ」


「そういうと思ってたよ……ありがとな」


 〝正義者〟は手を伸ばしてきた。そして、俺も手を伸ばす


「〝幻獣創造〟を倒すまでだが、俺達は仲間だ」


「ああ」


 こうして、俺達は〝正義者〟……ジャックと協定を結ぶことになった。〝幻獣創造〟を倒すという協定を結んだ。

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