伝える番
学園に来て早々、先生に抱えられて保健室に連れてきてもらった。教室に勢い良く入り、そして崩れ落ちたのだから当然だが、風邪で休んでいたということにしていたのが幸いしたのか、詳しく聞かれることが無かった。
正直に言うと、俺はいつ保健室に運ばれたかは覚えていない。いつの間にか保健室に居たという表現の方が正しい。保健の先生に運んできて貰ったということだけ聞いたのだ。
それまでの俺は誰が話しかけても反応を見せなかったらしい。瞳ははっきりとしていたらしいので、大丈夫と直ぐに判断されたが、全く反応を見せない俺にまともに授業を受けれないという判断により、保健室に運ばれたらしい。これも先生から聞いたことなので、本当のことかは知らない。
全く反応を見せなかった俺は何か小さく呟いていたということも聞いた。何を呟いていたかは小さくて聞こえなかったと話していたが、悪い夢などでうなされたかのように呟いていたらしい。俺自身も覚えていないので、何を呟いていたかは知らない。それほど、みんなが凜奈の事を覚えていないという事実がショックだったのだろう。
凜奈はみんなと仲良く学園生活を送っていた。友達も多く、遊んだり、笑ったりしていたはずなのに……だが、その事実を覚えているクラスメイトは存在しない。いや、人間は全員凜奈のことを覚えていない。凜奈が確かに生きていたという事実を知らないのだ。
召喚者……それも凜奈と関わりのある召喚者などあまり多くない。水瀬先生は覚えているだろうが、今は完全な敵。それを場外すると、実質覚えているのは俺と白雪だけになる。
この世界に凜奈との思い出があるのは二人しか存在していないのだ。
「いや、谷崎も居たなぁ……」
学園に居る不思議な生徒。召喚者ではないにも関わらずに召喚者の存在を知っている谷崎は普通の人間ではない。だから凜奈のことを覚えているかもしれないが、確認を取ったことがないので、確実に覚えているのかは谷崎に聞かなければ分からない。
召喚者の存在を知っている谷崎は確実に普通の人間ではないだろう。中には普通の人間も存在しているかもしれないが、魔力も感じる事が出来る人間など本来はあり得ない存在だ。なぜなら、人間には魔力が存在しないからだ。
「まぁ。なんでもいいけどな。深く詮索しようとは思ってないし」
一回、何かを俺に伝えようとして、頭に頭痛が襲いった事があった。谷崎は大丈夫だと言っていたが、かなりの痛みが走っただろう。それは、人間ではない谷崎と何か関係があるかもしれないが、聞かない。谷崎が、痛がる所など見たくはない。
「時期に何かを教えてくれるかもしれない。一度教えようとしてくれたから」
谷崎が何を抱えているかは理解出来ないが、一度言おうとしてくれたという事実は大切だ。特定の召喚者以外、凜奈のことを覚えていないとしても、凜奈は俺の中に居る。思い出の中に居るのと同じだ。事実は決して覆らない。
「時間が経って少し落ち着いたか……さすがにみんなの中に記憶が無いと知った時は絶望したが……」
たが、まだ癒えた訳では決して無い。みんなの中に凜奈との思い出が存在しないという事実は心に痛みを与えてくる。楽しそうにしていた凜奈の記憶がないという事実は俺にとって大きな傷になった。
なんで覚えていないんだ、という言葉は決して言えない。それをクラスメイトに言い、攻めるのは凜奈も望んではいないし、間違いだと気が付いている。クラスメイトは一切悪くは無い。俺達に関係すらしていないのだから、攻めるのは問題外だ。
「攻めるなら自分自身を攻める……どうして忘れて居たんだと……」
俺を面倒見てくれた水瀬先生を覚えているのは白雪と俺……それと谷崎だけだ。世界最強レベルの召喚者であった水瀬先生の事を覚えている人は人間では一人として存在していない。死んだ訳ではないが、それでも召喚者というのは人間の記憶から簡単に消えることが出来るのだ。
水瀬先生は意図的に記憶を消したのはか本人に聞かなければ知る由も無いが、ローネの場合は完全に違う。少しの間クラスメイトだったローネの事を覚えているのも召喚者と人間では無い者だけだ。
ローネは死んだ。いや、俺達が殺したのだ。意図的に記憶を消すことなど不可能なのだ。だとすれば、事実として残るのは召喚者は死んだら、人間の記憶から完全に消えるという事だ。
「どうして召喚者だけ記憶が……人間が死ぬと召喚者は記憶するのに、人間は召喚者の死を記憶することが出来ない……全然違う存在だから仕方ないのか?」
仕方ないと割り切れる事はできないが、する以外の方法はない。事実としてそうなのだから……。
「仕方ないよ。召喚者は人間の上に居る存在だけど、この世界は召喚者の物ではない。召喚者は完全にこの世界ではありえない存在。他の例えをすると、人間界に突然現われた魔族のような者だから……」
突然、入ってきた声の方向を向くと、そこには谷崎が立っていた。俺の視線に気が付くと、いつもより少し元気が無い笑顔を向けた。そして、ゆっくりと近づいてくる。
「谷崎……どうしたんだ?今は授業中だぞ」」
時計を見ると、今は完全に授業中だった。普通ならここには居ては行けない時間だ。
「大丈夫ですって、私は一度授業をサボった程度でどうにかなる成績ではないですから!先輩こそ大丈夫ですか?落ち着いたなら教室に戻らなくて。先輩は遅刻も多い……最近はあまり見かけないですけど、成績はあまり良くないじゃないですか。そのせいで、水瀬先生に迷惑かけたの忘れました?」
「忘れる訳ないだろ。それだけお世話になったことか……」
今は魔術蒼石を奪い合う敵同士かもしれないが、先生にお世話になったという事実は決して消えない。俺のことを考えて行動してくれたことには感謝している。凜奈と同じ学年で学園生活を送れたのは間違いなく、水瀬先生のおかげだ。
「だったら、こんな所に居る暇なんてないですよ。先輩は遅刻も……最近はあまり聞きませんが、回数が多いです。それに、先輩って、それほど頭が良くないじゃないですか、悪くもないと思いますけど……。落ち着いたのなら早く教室に戻らないと、ダメですよ?水瀬先生や、勉強を教えてくれていた夏目先輩にも悪いですよ?」
「やっぱり、覚えているんだな……凜奈の事を」
俺は谷崎を見つめる。水瀬先生の事を覚えている時点で、大体予想は付いていたが、やはり谷崎は凜奈の事を覚えている。人間が皆、凜奈の事を忘れているというのに谷崎は覚えている……つまり。
「谷崎はやっぱり普通の人間じゃないんだな……分かってはいたけど」
人間であれば忘れていなければ可笑しい存在の事を覚えているということはそういうことだ。白雪が凜奈を殺そうとしている時に、その事実を教えてくれたのは谷崎だ。もし、谷崎が居なければ、凜奈と過ごす時間はさらに短くなって居ただろう。
まだ、覚醒したてだったが、召喚者でも気が付かない魔力に谷崎は気が付いたのだ。その時点で人間ではないということを理解していたが、もう一度本人の口から聞いて置きたかった。
「そうですね……私は人間ではないです。けれど、先輩達と同じ召喚者でもない……中途半端な存在?といえばいいのでしょうか……詳しくは言えないですけど」
「分かっている。深くは詮索しない。また、頭が痛くなるんだろ?」
「そうですね……それだけで済めば良いです」
谷崎は笑顔で笑う。俺は本当に悲しそうにしている谷崎を見たことが無い。悲しそうな顔というのは何度も見たことがあるが、それは何か違うような気がする。もっと、心の奥から悲しんでいる姿……見たくはないが、全く見たことが無いというのも問題だ。何か溜め込んでいる可能性があるから……。
「何考えているんだ俺は……溜め込んでいない訳ないじゃないか……」
「?先輩何か言いました?人間ではないとしても、身体能力とかは人間と同じなので、小さい声では聞き取れないですよ」
誰にも聞こえない声で呟いたはずなのだが、谷崎には聞こえたらしい。内容までは聞き取れなかったようだが、耳がいいのだろうか。
「いや、どうでもいい内容だから気にするな」
本人に言ってもいい事なのだが、言っても必ず否定されそうなので言わないでおく。俺には理解出来ない色々な秘密を抱えているということだけ頭に置いておけば問題ないだろう。
「そうですか……」
ここで会話が途切れる。谷崎も凜奈が死んだという事実を知っているからこそ、俺に何も聞いてこないのだろう。視線を左右に動かしているので、何か言いたいことがあるは理解出来るが、落ち着いたとはいえ、あまり余裕はない。
「谷崎……ありがとな。でも、いいよ。凜奈は死んだ、俺達が弱かったから死んだ。守ると決めたのに守れなかったんだよ。失いたくないと思っていたのに失ってしまったんだよ。それは変えられない出来事だから……」
「先輩……」
「だけど、前に進むためには乗り越えなければ行けない。初めは凜奈が死んだという事を否定ばかりしていたけど、死んだ人が戻ってくることなんて本来ありえないんだ。戦争の勝者は全てを叶えることが出来るけど、俺は凜奈を蘇生させない。だって、本来はありえないことだから、凜奈も俺が願いを諦めて蘇生させることなんて望んでいないだろうしな……」
すっと、小さい頃から一緒に居たからこそ理解出来る。凜奈はいつでも俺の味方なのだ。自分を犠牲にしてまでも俺に色々してくれる凜奈だからこそ理解出来る。俺が願いを諦める事を望んでいないと。自分の事なんてほとんど考えていないと、ということが理解出来るのだ。立場が逆であれば全く俺も同じ事を思うだろう。
自分の命を掛けてまで、一緒に戦争で戦ってくれた凜奈であれば絶対にそういう想いだと確信を持って言うことが出来る。
「そうですね……いつまでも止まっている暇はないです。夏目先輩はずっと霧沢先輩の事を見ていました。自分の事よりもずっと先輩の事を心配していました。夏目先輩はそういう人ですから、自分の蘇生よりも先輩の願いを選ぶでしょう……」
谷崎は凜奈とさほど関わりは無かったはずだが、なぜか谷崎の言葉には納得してしまう……本当にそう思っているのだと、思わせるような能力がある。まるで、凜奈の気持ちを理解しているかのように、幼馴染である俺も納得してしまう。
「ああ、立ち直るまでには少し時間が掛かるとおもうけど、前に進んでみるよ。俺にはパートナーも居るしな」
今は教室で授業を受けているであろう白雪。白雪は決して失いたくない。優劣を付ける物ではないと理解しているが、凜奈よりも死んでほしくない、守りたいという想いが強い。
凜奈が死んだ影響で、そう想っているのかもしれない。もう、大切な人達を失いたくないという想いが優劣を付けさせているのかもしれないが、この想いに嘘は混じっていない。
失いたくない、守りたいと想っていた凜奈を失ってしまった、守ることが出来なかった。だから今度は絶対に失わない、守る。二度と辛い思いはしたくないのだ。
少しだけ俺と谷崎の間に間が開くと、授業終了を告げる鐘が鳴り響く。それと同時に谷崎は俺に背を向けて歩き出してしまう。
「それじゃ、私教室に戻りますね。お邪魔になりそうですしね。あ、人払いの結界は少しだけ張っておくので、心配しないでください」
それだけを言い終わると、谷崎はトビラを開けて保健室から出て行く。それと数秒の間が開いてから再びトビラが開く。谷崎の口ぶりからして誰が来たのかは容易に想像できる。
「海人?大丈夫??」
保健室だということを理解しているのか、それとも俺が居ることを知っていてなのかは知らないが、ゆっくりとトビラを開ける白雪と視線が合う。俺は出来るだけ笑顔で手を振ると、トビラを閉めてゆっくりと近寄ってくる。
「ああ、とりあえず落ち着いた。みんなの記憶に凜奈の記憶が無いことに絶望に近い何かを感じたけど、今はとりあえず何も無い。ショックではあるけど」
「そう……良かったわ。また、凜奈が死んだ時見たいに三日塞ぎ込んだらどうしようかと思っていたわ」
少し楽しそうに言う白雪。言葉に棘が無いことは理解しているので起こる気力も沸いてこない。それに白雪には迷惑を掛けたという自覚もあるので、棘があったとしても無いも言い返せない。
一度は現実から目を背けた。大切な人を殺されて死ぬほど辛かった。〝みんなが笑顔で入れる世界〟という願いを諦めかけた。けれど、また前に進もうと思えたのは白雪のおかげだ。感謝してもし足りない。
「大丈夫だよ。さすがに死んだ時ほど状況は悪くないから……けど、まだ心の奥に残ってる。前に進もうと決めたのにまだ、足枷見たいにずっと体に付いてきている感覚がある……だから少しだけ時間が掛かるかもしれない……」
一度分かれた恋人を未練がましく想い続けるのとでは訳が違う。死んだ人というのは二度と会えることはない。死後の世界という物があるというので在れば会えるかもしれないが、俺は凜奈の後を追って死ぬつもりは無い。まだ、やらなくては行けないことがある。
「それでいいんだよ……」
「どういうことだ??」
白雪はさらに近づいてくる。そして、笑顔を居一瞬だけ向けると、俺の体は小さな体に包まれた。
「し、白雪?」
一瞬何をされたか理解出来なかった。だが、直ぐに状況を理解して、見ると白雪に抱きしめられているのだと理解した。小さな体は俺とは違い柔らかく、強く抱きしめると壊れてしまうと錯覚してしまうほどに小さい。白雪の体温は心地よく、まるで春の日を浴びているかのような気分になる。
そして、何より甘い匂いがする。お菓子とかではなく、もっと違う甘い匂い。こんな経験は一切ないので、どういう風に表現すればいのか一切分からないけれど、とにかく甘い。脳が痺れそうになるほどに。
「海人はやっぱり私とは違う物を持ってるわ……本当に羨ましいわ」
そういう白雪はさらに俺の体を強く抱きしめる。小さいが確かに感じる女の子の体に頭が可笑しくなりそうだった。けれど、白雪がまじめな話しをしているということを知っているので再び耳を傾ける。
「さっき、海人は足枷見たいって言ったけど、それは違うわ。確かに足枷見たいに付き纏ってくるけど、思い出すと体が重くなって動き難くなるけど、それは前に進むための原動力なの。それを乗り越えることによってさらに前に進める……私には一切ない感覚だわ」
白雪の腕の力が弱まり、離れていく。春の日のような温もりが離れていくのに少し寂しいという感覚を抱きながら白雪の顔を見る。普段の顔とは違い、林檎のように頬を染めている白雪は、そっぽ向いた。
けれど、また俺の方を見た時は既に普段通りの顔だった。
「海人にはそれを大事に持っていて欲しいと私は思っているわ。それは、世界中でもほとんど持つことが出来ない大事な想い……感覚?だから、決して無駄にはならない……海人はそれを乗り越えたら前に進むことができるよ……」
白雪はそういったが、それは俺も感じていたことだ。部屋で白雪の言葉でもう一度前に進むことを始めた俺が思った時確かに感じた。白雪は俺とは違う何かを持っているという事を。そしてそれを持ってる物はほとんど居ないということを。
あの時、俺は誤魔化したけれど白雪は言ってくれた。だったら次は俺の番ではないだろうか?白雪が羨ましいと言ったが、俺だって白雪の事が羨ましいと感じている事を伝えるのは。
「俺だって、白雪が羨ましいよ。さっき、白雪は言ったよね?俺は白雪とは違う物を持ってるって…」
「ええ、事実そうだから……」
「けど、白雪だって俺には無い物を持ってる。覚悟する強さっていう俺には一切無い物を持っている……」
俺は覚悟したと思っていたが、それは勘違いだった。実際に失って見るとまるで子供のように否定した。現実を見なかった。目を背けようとした。俺がしていた覚悟というのは錯覚だと認識させられた。
まだ、子供のような覚悟……十年前から覚悟していた白雪の覚悟とは比べ物にならないほどの脆い覚悟。覚悟と呼んでいいのかさえ分からない。
けど、白雪は違う。今から十年前……子供の頃にした覚悟を今でも持っている。実際に失っても綻ぶことの無い覚悟を持て居る人はほとんど居ない。白雪はその一人なのだ。
「俺は自分がしていた覚悟の脆さを理解した……けれど、同時に白雪がしていた覚悟の強さも理解した。それは俺には絶対に持つことの出来ない強い覚悟。俺はその覚悟を持っている白雪が羨ましいよ」
「…………」
「だから……前に進むことも大切だけど、俺達は互いに無い物を持っている。だから、一人で前に進むのではなく、俺達は二人で前に進んで行こう。片一方が遅れたら手を引っ張る感じで、だから遅れたら手を引いてくよ?」
驚いた顔をしている白雪だったが、それは一瞬だった。直ぐに笑顔に変わり、手を握ってくる。
「あまり遅れすぎると置いて行くからね?だから、しっかり前に進みましょ」
「ああ、まだ戦争は終わってない。四つ魔術蒼石が在るとしてもまだ願いを叶えることには遠く及ばない」
「ええ、だから私達は強くなるのよ……けど、今日だけはいいわ。休みにする」
白雪らしくない言葉に首を傾げる俺を見ながらなぜか頬を赤く染める。急に汐らしく、手をモジモジさせている。
「どうしたんだ?何か言いたいことがあるなら……」
決心をしたのか、白雪は頬を叩き、顔を見つめてくる。頬は微かに赤いが、先ほどよりはマシになっている。モジモジしていた手も、拳を硬く閉めている。
「海人に付いてきて欲しい場所があるの……今直ぐに……」
「今直ぐ??けど、学園が終わるのはまだ先だぞ?」
時計に目を向けると、今はまだ昼休みだ。時間は半分近く過ぎているが、昼食を取るには充分過ぎる時間がある。だが、他の場所に行くほどの余裕は残されていない。校内であれば問題ないが、わざわざ校内を行きたい場所とは言わないだろう。
「学園が終わってからじゃダメなのか?まだ、五、六時間が残ってるし……」
大分落ち着いたので昼からの授業は出れるはずだ。成績があまり良くない俺は、少しでも出席をしておかないと、後で後悔することになる。一年の時は水瀬先生がどうにかしてくれたが、今は俺のために頑張ってくれる先生は居ない。遅刻は大分しないようになったとはいえ、油断はしない方がいいのだ。
「ダメ!今から行くの!〝呪縛歌〟と戦う前に海人と凜奈と街に行けなかったからその分を取り返しに行くの。本当は三人で行こうと思ってたんだけど、凜奈は居ない。だから二人きりになるけど、行く。今決めたから今すぐ行くわ!」
言い切ると同時に俺の手を掴んできた。柔らかい手で握られ、強い力で俺を引っ張る白雪に合わせてベットから降りる。そして、先に行く白雪に付いて行き、保健室から出る。
「さすがに保健室に居ないと抜け出したの見つかるぞ!」
「大丈夫よ。保健室には人払いの結界張ってるみたいだし!展開している人にもう少しだけ頑張ってもらいましょ!姿を見なれなければ大丈夫よ!」
強く俺の手を握り、駆け出す白雪に俺はいつの間にか笑顔になっていた。白雪が言ってた三人で街に行くということは叶わなかったけれど、二人でなら叶えることが出来る。
殺し合いという過酷な状況に居る俺達にとって日常というのはとても大切だ。ずっと殺し合いをしているなど心が少しずつ壊れてきてしまう。
だから、こういう息抜きはとても大切だ。何気ない日常というのは本当に大切な物で、決して失ってはならない。
たった一日だけかもしれない。けれど、俺達は、街に出る。二人しか居ないが、天国に居る凜奈がこんなイベントに参加しない訳がない。
きっと、天国に居る凜奈も笑顔で俺達の傍に居るだろう。
読んでくださりありがとうござます




