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強化

魔術閉鎖空間イージスを解除して俺の部屋に来た凜奈と白雪の二人を座布団に座らしてお茶を出した。


「あとがと♪」


「……ありがとう」


 上機嫌な白雪に対して凜奈はかなり落ち込んでいる……いや、安心して疲れが一気に来たみたいだった。白雪のと勝負に負け、死を覚悟して戦っていた凜奈は再び日常に返ってきた。そのことにとてつもない安心感が襲い、張り詰めていた糸は緩み、一気に疲れが来たのだろう。


 魔術閉鎖空間の中では横腹に傷を負い、血が出ていた白雪の傷はすでに完治しており、先ほどまで命掛けの戦闘をしていたのにも関わらず疲れている様子などなく、それよりも久しぶりに戦えたことに喜びを抱いているようにも見える。


「それでどういう経緯で戦うことになったんだ?」


 理由など俺でもわかる。だが、凜奈の口から聞きたかった。そうして言いたいことが一つだけあった。


「私は海人のこと守ろうと思って……」


 もちろんそうだとわかっていた。逆なら同じことを俺だってするだろう。しかし、自分がするのとされるのでは全然状況が違うし思っていることも何もかもが異なる。


「それは俺が頼んだのか?」


「……頼んでない」


 意地悪な問いだったのは俺だって理解していた。だが、俺は凜奈に危険な目に合ってほしくなかった。それにこの非現実は俺が心の底から願った願いを叶えるためには必要なことだ。そして、白雪は約束エンゲージで結ばれたパートナーとして絶対に不可欠な存在であり、死なれては困る。


 利用しているみたいで気がひけるが、事実なのだから仕方ない。そして白雪も同じような考えを持っているに違いない。


「なら今度からは絶対に危ないことはしないでくれ。何かするときは俺にも教えてくれ。俺は凜奈が学園に来ていなかった間どれだけ心配したか」


 いつも傍に居た幼馴染が居なくなるということは半身が消えたのと同じような感覚だった。いつも通りの自分なのだが、どこか物足りなさを感じる一週間だった。


「うん……今度からそうする……ありがとうね海人」


 その『ありがとう』とは一体どのことについて言っているのだろう。俺が魔術閉鎖空間の入り口に気が着き、助けに来たことなのか、それとも先ほど一週間心配し続けたことについてなのかは凜奈以外に誰もわからないが、確かに言えることは凜奈が死ななくて本当に良かったということだった。


「それで話は終わった?」


 飲んでいたお茶を机に置き、俺達の話が途切れたところで口を挟んだ白雪。何を話すかはわからないが、よくないことでないことを祈る。


「終わったのね?それなら一件落着ってことね」


 俺のことを襲い、殺そうとした時と同じように軽い白雪。自分が原因の張本人だという事実は気づいていないのか気づいているのに触れていないだけなのかはわからない。


『うむ。それから一つ話しがある』


「いいわ、ロー。そのことはまた今度話すから。それよりも……」


 白雪は凜奈の方に目を向けたが、すぐに視線を俺に戻した。


 俺と同じくそれに気づいた凜奈は何やら不思議そうな顔をと少しだけ恐怖が混じったようなそんな顔をしていた。


「……どうしたんだ?凜奈の方を一瞬みただろ?」


 また凜奈と戦うことにならないように不安点はすぐに聞き出す。今度戦ったりしたら本当に死んでしまう可能性があるからだ。


「別に。ただ一つだけ言っておきたいことがあるわ」


 再び視線を凜奈の方に向けた白雪の目には硬い決心が宿っているように見えた。そうそれは何よりも優先する願いを絶対に叶えると決めた目だった。


「戦っている時にも言ったけど、私と海人は約束エンゲージを結んだわ」


 凜奈の顔が少し強張る。約速……それは二人の強い絆で魔術。召喚者である凜奈が約速の意味を知らないはずがない。そして約速を結んだとは言ったにどれだけ危険な戦いに巻き込まれるかということも。


「今回、私はあなたを殺すつもりはなかったわ。ただ、海人のことをあきらめてくれたら叩きのめすだけで、他は何もしないつもりだった。だけど、あなたは私が想像していたよりも強かった。そして何より諦めようとしなかった。それは海人のことを大切だという思いが強かったから」


淡々と話す白雪だったが、それは褒めているのだと俺は思う。想いが強ければ強いほど強さが変化する召喚者は、いかに強い想いを持っているかが鍵だ。白雪は想像以上に強かったと言った。それは凜奈の想いの強さを認めている証だろう。


「だから言うわ。私達の邪魔をしないで。あなたが抱えている想いと私が抱えている想いは全く別。だけど、私達にとっては自分の命より大切な物なの。わかるでしょ?命を賭けて戦ったあなたなら」


「……」


 凜奈は落ち込むように下を向いた。白雪が言いたいことを理解出来たから反論もなく黙ったのだろう。

 

 違う想いでも賭ける想いは同じだと。


 それは召喚者になって、自分の命を賭けた戦いの果てに願いを叶えれる戦争に参加する白雪と、負けるとわかっていながらも戦った凜奈。そして約速を結んで白雪と戦争に参加する俺。立場などは全く別でも抱えている想いを叶えたいということだけは同じだと。


 その抱えている想いが重いからこそ、命を賭けれるのだと。


「だから邪魔をしないで……いや、あなたに邪魔をされる筋合いなんてないわ。私だってそう。海人だってあなたと同じで命を賭けてまで叶えたい願いがあったから約速を結んだ。海人は望んで今の立場に居るの。それは誰にも邪魔は出来ないわ」


 自分で望んだ立場なのに他人に邪魔をする権利はない。自分がこうしたいと決断した考えに他人の意見なんて関係ないと。白雪はそれが言いたかったのではないだろうか。


「……わかった。もう邪魔はしない……だけど、海人を絶対に守ってよ」


 顔を上げ、白雪を見る。瞳には強い思い……願いが宿っているように見えた。


「あたりまえじゃない。私達はパートナーよ。助け合うのが当たり前」


 まるで大人に一桁の足し算を問題として出して、正解を導いたかのように当たり前だと言う白雪。そこにも同じく強い思いが宿っているように見える。


「それと私から提案があるんだけど」


 凜奈から視線をはずし、次は俺の方を見た。凜奈ではなく俺に提案があるようだった。


「率直に言うわよ、海人。あたなは物凄く弱いわ。凜奈よりもね」


 もちろんそんなことは理解している。凜奈が張った魔術閉鎖空間だって凜奈より強ければそもそも張ったことに気づき、白雪と戦わずに済んだはずだ。


「だからこのままじゃ足手まといなのよ。だから海人の強化をはかりたいんだけど、いい?」


 それは願ってもない提案だった。俺自身このままでは白雪のパートナーとしてやっていけないことは十分理解していたつもりだった。しかし、覚醒してからまだ時間も経過していないので強くなれるはずがなかった。なので、召喚者でも強い方であろう白雪に色々戦い方を教えてもらえるのなら俺だって物凄く助かる。


「ああ。頼むよ」


「任せなさい!でも、私の特訓は厳しいわよ?海人も引き締まってやってね?自分の命が掛かってると思ってね」


「ああ。俺達には叶えなければならない願いがあるからな」


「ええ。そうよ」


『うむ。いい心掛けじゃな』


「そうね。それじゃあ、さっそく行きましょうか」


 そう言って立ち上がる白雪に合わせて俺も立ち上がった。白雪はさっさと部屋を出てしまい、俺と凜奈だけになってしまった。


「凜奈は行かないのか?」


「うん。考えたいこともあるし、それに今日は疲れたから……」


「そうか……」


 凜奈は俺のために命を賭けて戦ってくれた。勝てないとわかっていながらも白雪と戦い死に掛けた。精神的にも肉体的にも疲れているに決まっている。凜奈がいたら心強かったのだが、疲れているのに俺の気持ちだけで連れまわすのは間違っている。


「いつもありがとうな……俺を守ってくれて」


 凜奈の方に歩み寄り、笑顔を向けながら頭を撫でた。


「うん……」


 少し頬を赤らめながらも頷いた。


「今度は俺が守れるようになるから」


少しの間、さらさらした髪を無言で撫でていると扉が勢いよく開いた。


「海人、遅い!いまさら怖気ついたわけ?」


 白雪すごい眼で俺を睨んでいた。可愛らしい顔が台無しだ。


「そんなわけあるか。今行く!それじゃ凜奈。また明日」


 それだけを言うと急いで部屋を出た。白雪が本気で起こると何をされるかわからないからだ。もしかして一週間ほど立ち上がれなくされるかもしれない。


学園を出て、町の中心部まで徒歩で向かった。人通りが多いので歩きにくく、少しだけ白雪から遅れていた。なぜかわからないが白雪は全く歩くペースが遅くならない。人と人の間を自由自在に潜り抜けて忍者のように歩いている。


「あいつ、どうしてあんなに歩くのが早いんだ?」

 

 誰にも聞こえない声でそっと呟いた。少しでも眼を離したら白雪の小さな背中を見失いそうだった。


(あ!)


 俺はある確信にたどり着いた。どうして白雪があんなに早く歩けて、人混みを忍者のように歩けるのかということがわかった。それは単純に白雪が中学生のように小さく、俺は高校生なので体が大きいからだ。


 その結論に至った瞬間、白雪は立ち止まり俺の方を見た。その顔は殺気などはまるでこもっていなかったが、覚悟しておけよと伝わってくるほどの笑顔だった。普通に言えば恐ろしく怖いえ笑顔だった。


どうして考えが理解出来たのかはわからないが、白雪が体のことについて思っていることは確かだろう。小さいことなど気にする必要はないと思うが、それは本人ではな俺には何も言えない。


 再び歩き始めた白雪は数分して立ち止まった。そこは町の中心部で人が一番集まる場所だ。そこで近くにいる召喚者にしかわからないほどの微量の魔力を放出した瞬間、体が包まれるような感覚と共に人が居なくなった。


 普通の人では入ることが出来ない空間では召喚者以外の時間が止まる。そこは物など壊しても現実には反映されないので俺の強くするにはもってこいの場所だ。しかし欠点が存在する。


「白雪。こんな普通に魔術閉鎖空間イージスを張っていいのか?他の召喚者にバレたりしないのか?」


 魔術閉鎖空間を張るということは他の召喚者に自分の場所が特定されるということなのだ。しかも、白雪はこの町に自分と同等の召喚者の存在を既に知っているはずだ。時間も掛けずに魔術閉鎖空間を張るのは危険なはずだ。


「大丈夫よ。凜奈との戦いでもう場所は特定されてるわ。今更何をしたって同じよ。だから気にしないでいいわ。それより海人の強化を始めましょうか?」


 瞬間、とても怖い笑みを浮かべた白雪はボクシングをするように構えた。


「早く剣を召喚しなさい。さっき私のことを小さいと言ったこと後悔させてやる」


「……」


 先ほどのことは約速を通じて白雪に伝わっていたようだ。しかも、俺を強化することから仕返しに目的が変ってるし。


 俺は足元に魔法陣を浮べながら詠唱を唱える。


召喚ジェネレート


 錆びた剣を召喚して白雪が居る方に構えた。白雪は三日月雷鎌ライトニングムーンは召喚しないで素手で戦ってくれるようだった。まぁ、俺と白雪の差は凜奈以上に空いているので武器を召喚などされたら一瞬でやられるので、手加減をされても構わない。


 俺は先ほどのことがあったので白雪は本気でめったうちにしてくると思って居たが、俺を強化するという目的は忘れてないようだった。それに素手が相手なら俺だって多少は戦える可能性がある。錆びているといっても召喚して出した武器なので魔力を帯びている。素手では相性が悪いだろう。


「じゃ行くわよ。基本的には攻撃は避けて。わざと隙を作るから反撃してきて」


「ああ。全力で行っていいんだよな?」


「当たり前じゃない。それじゃないと意味がないわ」


 俺と凜奈は対峙をして、俺の強化が始まった。後、白雪が素手なので多少は戦える可能性がある……と戦う始めはそう思っていました。しかし、実際は手も足もでませんでした。


 こうして俺の強化が始まったが、正直頼まなかった方がよかったと心から後悔した。


 



 

読んでくださってありがとうございます!

 私は今、ラブライブがマイブームでして、この前、買い忘れていたタカラモノズのCDを買いました。ニコが大好きなのでニコが居るBグループがほしかったのですが、結局CD六枚かってBが一枚も当たらないという悲劇が起きました。

 誰か私にニコを恵んでください!


 次回は用事のため一週間ほど更新出来ません。すいません。

 そろそろ海人の武器について出したいと思っていますのでこれからもお願いします!

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