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約束(エンゲージ)  作者: 千歳瑠璃
呪縛歌
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目的

部屋に帰ると、凜奈が再び料理をしてくれる。帰宅途中に買って来たのを使い、簡単な料理を作ってくれるのだ。


 俺と凜奈は既に食べたが、白雪は朝から事件が起こった舞踏館に足を運んでいたため、何を食べていないので、凜奈が白雪のために作るのだ。けれど、一人で食べるのはあまり楽しいことではないので、それに付き添う形で俺達も少し食べるのだ。


 先ほど凜奈が言っていた通り、料理は一人で食べるよりも数人で食べたほうが絶対においしいからだ。孤独で食べるよりも、同じ料理を食べながら話しをした方が絶対に良いに決まっている。戦争に参加している俺達はもっと絆を深めていかなくては強敵と戦えないからだ。


 戦争に参加している召喚者の中では格段に弱い俺達は、練習で強くなりながら、仲間として戦っていけるようにしなくてはならない。戦争にルールなど存在せず、ただ相手を倒せばいいのだから協力して戦っていったほうが危険は少ない。そのため、絆は絶対に必要な物なのだ。


 テレビの電源を入れるとニュースのことが流れているが、先ほど見に行ったので関係ないと思い、チャンネルを変えるとそこには俺達の住んでいる街が写っていた。


「また事件のニュースか……」


 人が大勢死ぬという事件なのだから、何度も放送させても仕方ないが、地元の人達からすれば良い迷惑だろう。召喚者が関与していると知らない一般人の人達は普通に事件だと思っているはずだ。大勢同じ場所で死ぬという不快な事件なのだからニュースで何度も放送すると、恐怖を覚える人も中には居るかもしれない。


 マスコミからしたらネタになるかもしれないが、近くに住んでいる市民からすれば恐怖を煽るだけになる可能性が非常に高いので、あまり大きくして欲しくないのだが……この人達もこれが仕事なので仕方ないか。


「事件のニュースはあまり放送して欲しくないのだけど、仕方ないわ」


 白雪もベットに寝転びながらテレビに目を向けている。その目は少し鋭くなっており、何かを観察しているように見える。


「どうしたんだ?」


 少しでも気になることがあれば情報として持っておきたいので、聞くことにした。それに白雪が気になることとなれば、大きな情報である確率が高いからだ。


「いえ……何もないわ。けれど、この事件を犯した召喚者は一体何をしたかったのか考えていたのよ」


「何がしたかった……」


 確かに目的がまるで見えない。人間を殺すだけであれば大勢殺すことなどせずに一人づつ殺せばいいのに、一つの場所で大勢殺すなどという行為は大きな事件を招くだけでいい事など何もない。


 こうしてニュースには取り上げられ、全国に知れ渡るのだ。さらに、外傷も無しに殺すということは人間には不可能なことで、召喚者の存在を知っている人ならすぐに気が付くはずだ。


 人間より格段に数が少ない召喚者は、今まで一部の人間以外には知られないように魔術閉鎖空間という召喚者の空間だけで活動してきたのだろう。世界に知れ渡れば面倒なことになるのを避けるためにそうしてきたのだろうに、どうして大勢の人間を殺すことをしたのだろうか?


 仮に目立つことが目的だとしても別の方法があるはずだ。それは外傷をつけずに殺すという本来であれば毒などを使わなくては不可能な殺し方をする必要はなく、普通に爆弾など、殺傷効果がある物を使えばいいだけの話。だが、今回事件を起した召喚者はそれをしなかった。


 思い当たらなかった訳ではないだろう。大勢の人を殺すという条件で初めに浮かび上がってくるのは殺傷能力がある爆弾などだろう。それは例え子供だとしても同じで、大人だろうが同じあろう。


 召喚者を殺すのであれば召喚者本人が殺す以外に方法はないが、普通の人間と召喚者では体のつくりが違うし、体の耐久力も比べ物にならないレベルで違う。それは召喚者である俺達が一番理解していることだろう。


 普通の人間では爆弾といった火薬を使った物に耐える耐久力など皆無。助かるとすれば奇跡の部類で、数万人の中の何人かのレベルでの話しだ。しかし召喚者は傷すらも付かない。人間と召喚者はあきらかに違うのだ。


 だが、事件を起した召喚者は人間を自身の力で殺したのだ。どんな能力なのかは今のところ理解出来ては居ないが、それでも一度に大勢の人間を殺すことが出来るだけでも危険には違いない。


 召喚者を認知している人間が世界にどれほど居るのかなどは理解出来ないが、決して多くは無い。その人間に不思議な存在が居ると印象付けるのは一体どんな理由が……。


「召喚者が気が付くためか?」


 俺が呟いた言葉に白雪が視線を向ける。


「なるほどね……その可能性は充分に考えられるわ」


 召喚者がもし、大勢の人を爆弾など殺傷能力がある物で殺さなかったのかは、この街に居る召喚者に自分の存在を知らせるためではないだろうか。舞踏館に足を運んだときに白雪が言っていたが、大勢の人を外傷無しで殺すなど並の召喚者では出来る芸当ではない。


 それは強者である証拠だが、それよりも自分が召喚者であることを伝えるためにやったと考えればなんとなくだが、話は繋がる。


 普通の殺し方ではまず初めに人間がやったのではないか?という疑いが浮上してくる。それは召喚者という存在である俺達だからこそ、思うことで、召喚者が殺すなら爆弾などという面倒なことをしないだろうという考えに至るためだ。


 もし、殺すのであれば能力を使う。それは時間も掛けないし、何より確実に殺すことが可能だからだ。しかし、爆弾など派の何かの偶然で生き残る可能性が出てくる。それならば、殺すなら確実で手で行くだろうと。


 しかし、自分の存在を広めるためというのであればこの殺し方は絶大な効果を与える。第一に毒が検出されずに、大勢の人間を外傷無しに殺すという方法は人間には不可能なことだからだ。


 召喚者を認知している人間や、召喚者本人であれば確実に気が付く。元に俺と凜奈ですら気が付いたんだから頭の回る召喚であれば事件を見た瞬間に気が付く可能性もある。もし、人間がこのような殺したかを出来れば、この話しは全て泡のようになくなるが、可能性として言えばゼロに近い話なのでほぼ確定と言ってもいいだろう。


「私の感覚ではこの周辺に居る召喚者は私達とこの事件を起した召喚者だけだわ」


「だとすると、俺達に存在を知らせるためにやったのか?」


「ええ、その可能性も捨てきれないわ」


 俺はそっと拳を握る。もし、この話があっていれば召喚者は俺達に居ることを知らせるために万という何もしていない、ただ、舞踏を楽しもうとして行った人を殺したということになる。ただ、それだけのためにだ。


「倒すしかないか……」


「ええ。それに私達に用があるということは間違いなく戦争参加者に違うないわ。私達〝魔女狩り〟と〝三日月雷鎌ライトニングムーン〟が戦争に参加していることは大勢の召喚者が知っている情報だから」


「それに俺達は魔術蒼石マテリアルブルーを三つ抱えている」


「狙われる理由でしかない訳よ」


 舞踏館で白雪が感じ取った魔力の感じでは事件を起した召喚者は強い。そもそも、万単位の人を殺したにも関わらず、俺達は全く魔力を感じることが出来なかった。事件をきっかけに気が付いたレベルだ。


 しかし、相手は俺達の存在に気が付いている。それだけの実力差がそこには存在していて、簡単に勝てる相手ではないが、戦う以外に無いだろう。魔術蒼石を持っているとなれば。


 願いを叶えるには絶対必須の石。これを奪い会うのが戦争の目的で、叶わない願いを叶える戦いなのだから。


 召喚者の目的について一段落すると、部屋中においしそうな香りが広がっていることに気が付いた。その香りは先ほど食べたばかりなのに、食欲がそそられる香りで……。


「出来たよーー」


 凜奈が声を出すと同時に俺は皿の準備をし、凜奈が盛り付けると机に並べる。


 そして、手を合わせてから食べ始める。食べている間に事件を引き起こした召喚者の目的について凜奈に話すと、納得した様子で「なるほど」と頷いたのだが、可能性が高いだけで確実ではない。


 他の……当人しか理解出来ないような目的がある可能性も捨てきれないので、決め付けて、危険になるようなことが無いように頭の片隅にはしっかりとそのことを入れておく。


 食べ終わり、食器を洗い終わると、時刻は朝と昼の間ごろで、今日は練習も休みの日なので特にすることがなく、机の前に座りながら仕方なくテレビに目を向ける。


 事件のニュースは終わり、今は街の特集という内容の番組が放送している。だが、ここからは遠い場所なので、暇つぶし程度に見ているつもりだったが、見慣れた風景が広がった。


「あれ?ここって駅前だよね?」


「似ている場所でなければ駅前だな」


 ニュースをやっている訳ではないので、事件のことではないだろうと想いながらテレビに目を向けていると、そこには人が大勢集まっていた。


「何やってるんだろ?」


「わからん……」


 地元だからといって、イベント事などには詳しくないので、正直な話、街でイベントが行われていようが知らない。そもそも行く気もないので、気にもならないが、


「楽しそうだね」


 凜奈は俺と同じではなかった。


「そうか?」


 人が多いだけで楽しそうには全く見えない。何か屋台のような物もやっているが、先ほど食べたので何もいらない。


「そうだよ!海人は今日もどうせ暇でしょ!一緒に行こうよ!」


 暇だと決め付けるのは良くないと思うのだが、実際今日はすることがないので何も言うことは出来ない。けれど、暇だからといって、人が大勢居る場所に行きたいかと問われれば行きたくない。


「一人で行っても楽しくないから行くよ!」


 幼馴染である凜奈は俺の顔色で行きたくないということを理解したようで、少し拗ねた感じを見せながら手を掴み引っ張る。


「わかったから!行くから少しだけ落ち着いてからでいいだろ?」


「うん……わかった。白雪も行くでいしょ?」


 ベットに寝転んでいる白雪はこちらを見ずに、


「私は行かないわ。二人で行ってきて」


「残念……わかった。ということだから二人で行くよ」


「わかったて……」


 こうして急遽決まった午後の予定。凜奈が無理やりすぎるが、仕方ないので行くことにした。


 


 

 

忙しすぎて、なかなか更新できずに遅くなりました。

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