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約束(エンゲージ)  作者: 千歳瑠璃
炎氷舞
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才能

 フロウの細氷ダイアモンドダストに覆われ、何もかもが氷ついた魔術閉鎖空間イージスの中では、二人の召喚者が戦っていることを三人は理解しながら空間中から出ようとしなかった。それは、魔術閉鎖空間の外に出ると魔力を感じるとこが難しいことと、戦いの結果がいち早く知れないための他にもう一つ理由があった。

 

 それは、世界最強クラスの召喚者の戦いがどれほどのレベルなのか確認するためで、世界には二人と同格か、それ以上の召喚者は少なからず存在するために、対峙した時に耐用出来るように空間中から出ることなく、直接魔力が伝わってくる空間内に居座り、ビルなどの高い建物から三人の様子を一部始終見ていたのだ。


 勿論、水瀬とフロウほどの召喚者が、気配を消していたとしてもその存在を確認できない訳がない。第三次開放トリプルアクセスという召喚者の高みに上った者が使える世界を創造しているため、さらにその存在は確認されやすく、何をしているのかなどといった細かい行動までは全て確認されている状態だ。


 しかし、互いに力が互角な上に強者だ。三人は戦い始めると一瞬で殺せる相手のことなど忘れ去り、駆け引きと読みあいの戦いを初め、そして、決着が付いた。


「さっきの魔力……」


「あ、ああ……」


 遠く離れたビルの上で見ていた二人は、空間内に漂う魔力にうまく言葉が出てこなかった。今まで見てきた戦いでは間違いなく一番の戦い。互いに見た瞬間に凍らせたり、燃やすことが出来るという能力を持っている者同士の戦いはあまりにすごかった。


 遠くで見ているため、動きが遅く見えるはずにも関わらず、海人と白雪と凜案はほとんどの動きを目で捉えることが出来なかった。ただ、凄まじい魔力が放出されたり、炎や氷が出現する程度しか見えず、まるで別次元の戦いだった。


 そして、先ほどフロウが使った白い霧……細氷ダイヤモンドダストは三人に言葉を失わせたのだ。濃縮された魔力は世界最強クラスであることを強く感じさせ、魔術閉鎖空間内全てが氷ついたにも関わらず、自分達だけは逃してもらった事実。感じたことも無い魔力にこれより上が居るという現実を認めたくなくなる。


 そして、魔術蒼石マテリアルブルーを持っているということはいづれは戦う運命にあるという恐怖が同時に海人と白雪と凜奈に襲い掛かる。しかし、自分の願いを叶えるためには絶対に避けては通れない道。戦争には十三個の魔術蒼石を集める必要があるため、水瀬を倒したフロウと、もしくはフロウを倒した何者かと戦うことが必然なのだ。


「これが、世界最強クラス……」


 白雪は一人で呟いた。白雪は戦争に参加する十年以上前から召喚者として生きてきたため、様々な召喚者と戦い、そして命を奪ってきていたが、ここまで強い召喚者が居るということは知らなかった。戦争に参加するということは命の危険に晒されているという自覚は勿論存在した。願いを叶えるとい戦争には強い召喚者が居るということも知っていた。しかし、


「あんなのどう倒せばいいのよ……」


 白雪は大切な母親を生き返らせるために全てを超越した願いを叶える戦争に勝者として生き残らなければならず、そのことを決して諦める気持ちは微塵も存在しないのだが、水瀬を倒したフロウを倒す術を白雪は知らなかった。自分とは桁違いの魔力を持ち、速度も体術も能力も全て上の敵に格下が勝つ方法など皆無といっても過言ではない。


 召喚者は強く、強く想いが反映する者で、想いが強い者は強いという法則が存在する。白雪だって、母親を生き返らせて命の奪い合いなど関係ない生活を送りたいという想いは誰にも負けているつもりなどなく、強く、強く願っている。しかし、相手は想いはそれ以上に強いのだ。


 第二次開放ダブルアクセスは強い想いを持った召喚者にしか使用することは不可能だ。何か背負い、決して負けたくないという想いは召喚者の高みの扉が開く。だが、相手はその一つ上である第三次解放トリプルアクセスを使用することが出来るのだ。


 召喚者の中では最も高みに上った者にしか使用することは出来ず、使えない者と第二次開放が使える者以上の差が開いている。背負い、負けてくないという思いより遥かに強い想いは、渇望した一つの世界でさへ作ってしまうのだ。それは、無くては生きていけないというレベルの想い。決して、白雪が背負っている想いでは勝つことは不可能だ。


「…………」


 白雪の言葉に海人は返せる言葉が無かった。約束エンゲージを結んだパートナーとして、何か言葉を掛けてやりたいと思っているにも関わらず、白雪が呟いたことに返せる言葉などない。なぜなら、海人自身も感じている言葉だったからだ。


 しかし、海人だって諦めた訳ではない。ヒーローのような幻想の話しを本気で叶えたい強く思ったのだ。そして、それを叶えるために召喚者としての道を歩むことを決め、命を賭けることを決意したのだ。そんな海人が諦めるなどありえない。


 だが、現実は甘くなく、今の自分達など数秒と掛からずに殺せるほどの力を持った召喚者が存在している。まるで、俺達の願いを叶えることなど出来ないと他の誰かが、厳しい運命を与えてくるかのように。


 それは十年間努力してきた白雪すらも遥かに凌ぐ力を持っており、召喚者になってさほど時間が経過していない海人にはどうにかなる相手でもなく、いい案が浮ぶことさえもない。ただ、努力を重ねる以外の方法は存在しないのだ。


「これが……世界最強クラス……」


 凜奈は願いを叶える戦争に参加していたいため、そうそうに逃げ差ってもいい立場なのだが、逃げようとはしない。それも、海人と白雪が願いを叶えるために頑張っているという事実を知っているためだ。だが、二人を応援している凜奈でさへ、圧倒的な力の差の前に海人と白雪に掛ける言葉が見当たらない。


 何を言っても全て皮肉にしか聞こえないだろう。当然、白雪や海人より弱い凜奈に出来ことなどたかが知れているが、これからも一生懸命やるつもりで居た矢先にこの実力差。


 全てがあまりにかけ離れているため、出来ることはど海人と同じで努力しか浮ばないが、どう努力しても勝てるビジョンが浮んでこない。何をやっても殺される光景しか浮んでこないのだ。


 完全に凍り付いた水瀬は全く動かない。第三次開放トリプルアクセスも完全に消えて、今は全て氷に覆われている。まさしく、フロウの完全な勝利で水瀬は負けたのだ。


 フロウは水瀬に近づいていく、そして目の前で立ち止まり、魔力を込めて放った。






********







 水瀬が始めて召喚者として覚醒したのは自身が僅か七歳の時だった。元気で明るかった水瀬は入学したばかりの小学校でも多くの友達を作っており、クラスの人気者だった。


 家の近くにある小学校に通い、友達と遊んで、家に帰ってくる。放課後も多くの友達と遊び、家に帰ると優しい父親と母親が笑顔で迎えてくれる極ありふれた幸せな家庭で水瀬は裕福な生活をしていた。


 母親は専業主婦で家の家事を何でもこなし、父親は大手の企業で部長をしているため裕福な生活を送ってた水瀬は、両親のことが大好きだった。何をする時も両親の手を繋いで歩き、両親も水瀬と手を繋いで笑顔で居た。


 近所では仲のいい家族と言われ、三人共それを否定することも、否定出来る者を居ない仲良し家族として一軒屋に住んでいた。将来は父親と結婚するまで言っていた水瀬だが、ある出来事がきっかけで人生が大きく変化する。


 水瀬はいつも通りの時間に大好きな母親に起されて朝を迎えた。昨日は日曜だったため、友達と遊び疲れ果てた水瀬だったが、七歳という若さ故か、一日寝ただけで元気が有り余っていた。


「由美ー。ご飯出来てるから早く準備してー」


「はーい」


 水瀬はパジャマを脱いで、用意されていた服を着て、リビングに向かう。リビングには大きな木のテーブルがあり、そこには新聞を読みながら珈琲を飲んでいる父親の姿。キッチンには白いエプロンを着て料理をしている母親の姿。どこにでも居るような家庭で、幸せな光景。これは水瀬家の朝の光景だった。


 椅子に座り、朝のニュースを見ていると、普段とは違う光景が流れた。それは、水瀬が住んでいる近所で、小学生が巨大な鎌のような物で、頭から真っ二つにされたという残酷なニュースだった。事件現場はブルーシートに覆われており、警察官や救急車などは居るが、即死とニュースキャスターは言う。


「由美もしっかり注意しなきゃダメだぞ?今日はたくさんの友達と一緒に帰りなさい」


「いつもたくさんの友達と帰っているよ?」


 水瀬が住んでいる住宅地は、小学校から近いためたくさんの生徒が住んでいる。元気が良く、クラスの中でも人気が高い水瀬は下校の時でも男女問わずに囲まれていた。


「そうだけど、何かあってからでは遅いから注意しなきゃダメよ?」


 リビングに料理を入れたお皿を抱えながら来たのは水瀬の母親で、その笑顔は水瀬にそっくりで、親子だと誰もが理解出来るだろう。


「わかっている!それよりご飯!!」


 テーブルの上に置いてある箸を持ち、元気な声で言う水瀬は空腹だった。昨日は疲れて何も食べない内に眠ってしまったために腹の中には何も入っていない状態なのだ。


「あー。はいはい。本当に食べることが好きね……」


「将来太らなければいいがね」


 両親は元気な水瀬の様子を見て幸せそうに笑う。そして、水瀬も二人が幸せそうに笑っている光景が本当に大好きで、勝手に笑顔になってしまう。大好きな人が笑顔になるだけで、嬉しいのだ。


 テーブルに広げたれた朝食を食べることには残酷なニュースは天気予報に変っていた。今日の天気予報は午後から曇る予定だと天気予報士が言うのを聞きながら三人は料理を食べる。昨日の出来事や今日行う学校の事などを話しながら笑顔になる。三人は近所殺された少女の話など他人事のように考えていた。


 自分の身内が死ななければ人間は感情を動かされない。他人が死んで悲しむことが出来る人間は聖人か異常者だといえ、他人が死んだことで悲しむなど辛い人生でしかないだろう。


 殺人などは毎日のように起きている。ニュースには必ずといっていいほど殺人の話題が上げられ、そのたびに聖人は死んだ人のことを想い、悲しむのだから辛い訳がない。だからこそ人間には感情が与えられた。


 虫を踏んで殺して何も思わないように、近所の人の子供が死んでも、身内が死んだ時以上の悲しみに襲われることなどありえない。そうしなければ人間など簡単に壊れてしまう。心が悲しみを抑えきれないからだ。


 そして、そう言った大切な人を失う悲しみなどは絶対に当事者にならなければ理解など出来ない。なぜならそれは体験していないからで、体験していないことを理解することなど到底出来ないためだ。


 だから、三人は気に留めただけで、忘れたしまう。人は死ぬことを重さも知らずに。


母親の手作り料理を食べ終わると、父親は仕事に出かけ、水瀬は小学校に向かうために準備を進める。成績も良い水瀬は配られた宿題はしっかりやってから遊びに行ったりするほどまじめで、いつもは前日にランドセルの中身を用意しておくのだが、昨日は寝てしまったために用意をしておらず、朝食を食べた今用意しているのだ。


 普段から早い行動をすることを教えられている水瀬は普通の小学生より少し早い時間に起きているため、準備する時間はあり、ゆっくりと準備をしてからリビングに再び戻った。


 リビングに戻った水瀬は適当に時間を潰し、友達と待ち合わせしている時間になると同時に家を出て、待ち合わせ場所に向かった。そこは家から徒歩二分ほどで到着する公園前で、学校に通り道にある場所だった。水瀬が行った頃には待ち合わせしている友達は半数以上揃っており、挨拶だけし、数分するとz全員が揃って学校に向かう。


 学校までは十分ほどで付き、人通りが多い場所を通るので安全だ。しかし、何かあってはいけないので近所の人が見ていてくれたりし、子供の安全を守っているのだ。


 学校に着くと友達と別れた水瀬は二階にある廊下の一番奥にある教室に向かう。そこが水瀬のクラスで、初めて小学校に通い始めた教室だった。教室の中には木の椅子と机が置いてあり、クラスメイトは三十人のクラスが三クラスある。


 席に座り、HRを担任が行い授業に移る。いつも通りの朝で、小学校に入学してから何十回も繰り返している光景。初めは緊張していた水瀬だったが、周囲の友達が増えていくに連れて緊張も無くなり、人気者になっていた。


 普段通りの有り触れた光景。誰もが一度は経験したことがある光景で、皆が幸せで平和な日常と呼ぶ光景。だが、平和で日常な光景など直ぐに壊れてしまうことなど、小学生の水瀬が知るわけもない。


 事件が起こったのはその日の帰り道だった。両親から言われた通りに大勢の友達を連れて帰ってきた水瀬は家に付くと、今日配られた宿題を終えると、近所にある公園に遊びに向かった。


 友達と約束はしていないが、家が近いため、公園に行けば誰か居るのだが、その日は誰一人も居ない状況だったが、水瀬は特に無いも感じずに公園内に入った瞬間、不思議な感覚に襲われた。


 体を包み込むような感覚。プールや海に入っているような感覚が全身を覆い、まるで時が止まったように人の気配が完全に消えてしまう。


「どうなってるの……?」


 水瀬は入った瞬間にこの空間が召喚者という人間にとっては未知の生物が生み出した空間……魔術閉鎖空間イージスであることを理解し、自分が召喚者として覚醒前である事実を理解した。


 これは極一部……才能がある召喚者にしか起こらない先代から感覚。水瀬は七歳という幼い体で、その全てを受け止めて、頭を働かし、今の状況を全て理解していく。


「召喚者……」


 そして、この空間に入ってしまった意味も同時に理解する。


「これは可愛いお客さんだね?」


「っ!!」


 水瀬は声がした方を見てみると、そこには一人の男が立っていた。男は薄気味悪い笑みを浮かべながら水瀬にゆっくり歩いて接近し、自分の得意の距離になると立ち止まった。


 男を目の前にして水瀬は先ほどの情報を照らし合わせて、目の前に居る男がこの空間作り、自分を殺そうとしているという事実を瞬時に思いつくが、一つだけ理解出来ないことがあった。


 それは、この目の前に居る男ではどうやっても自分を殺すことが出来ないという確証。それは誰から教えて貰った訳でもなく、召喚者として覚醒している訳でもない。けれど、水瀬は負ける気がしなかった。


 男は三十代のように見えるため、普通なら力の差で勝てる見込みなど皆無に等しいのだが、召喚者に関しては年齢などはまるで関係なく、能力といかに実戦を踏んで強くなったかに限り、筋力の差ではない。


 それすらも理解している水瀬は、自分に勝てると思っている男の事がまるで理解出来ない。どうして雑魚が、私に勝てると思い上がっているのか理解が出来ないのだ。


「今から楽しいことをしようね!」


 男の足元から魔法陣が浮ぶと同時に出現するのは鎌だった。黒く、鉄のような鎌は男が召喚した魔法だと理解出来た。しかし、弱い。あまりにも弱く水瀬には感じる。まるで木の棒を持った子供のように見える。


 男は召喚したと同時に腰を低くして、鎌を構える。そして、気味が悪い笑みを受けべると同時に地面を強く蹴った男だが、水瀬にはまるで止まっているかのように見える。召喚者としての覚醒が近いためだ。


 普通の人間ならこの時点で男の動きを見ることが出来ずに一瞬で殺されてしまうのだが、水瀬は簡単に右足を少し重心を傾けるだけで、容易に回避してしまった。避けられると思っていなかった男はそのままの勢いで回転し、空中に飛びかかと落としをしてきたが、止まって見える動きを回避できない訳がなかく、少しの動きで回避される。


「どうなってやがる!!」


 二度も回避された男は鎌に魔力を込めるが、行動が遅かった。水瀬は既に召喚者の魔力の流れ肉眼で見えるため、魔力を込めて何をしても容易に回避される。だが、このままでは回避できても攻撃をやめさすことは出来ないと理解して水瀬は、振るってきた鎌を素手で止めた。


 魔力をこめた武器を素手で止めることなど普通は無謀過ぎて誰もしないことなのだが、この時点で既に水瀬と男の実力差は天と地ほどの差があった。


「馬鹿な!!」


 魔力を込めて、力も込めて押し切ろうとするが、水瀬は涼しい顔でそれを受け止める。当の本人はまるで力をこめていないというのに、男は全力でやっても動かない。


 攻撃をやめさそうとして止めたのに、やめない男に少し苛立ちが増し、男がやっていた見たいに瞳に魔力を込めてみた。それは単純に気まぐれで、頭の中で流れている情報も関係なかった。ただ、瞳に魔力をこめただけで、男は燃え上がった。


 それはほんの一瞬で、男は声を上げる暇もなく原型を溶かした。そして、自分の能力が〝瞬間放火ゼロファイア〟という強力な能力だとしり、自身がいつも間にか召喚者になっていたことに気が付いた。


 これが、歴代最強と言われる〝瞬間放火〟が初めて召喚者となった日の出来事で、この日を境に水瀬の日常は変化する。




 














読んで下さってありがとうございます!!

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