表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束(エンゲージ)  作者: 千歳瑠璃
炎氷舞
52/107

停止

 氷と炎がぶつかり合うと同時に二人は地面を蹴り、正面から向かう。目で見つめられたら燃える、凍らせるとこが出来る二人の戦いでは、いかに相手に見つめられないかという部分が鍵になる。直撃すれば死ぬ戦いの中ではいかに相手に隙を作り、そこを突くかが基本的な戦い方になるのだが、二人の場合はそんなこと気にしている場合はない。


 見つめられるだけで終わりの戦い。普通の召喚者ならまず目を潰すことから考えるが、それでは逆効果だ。潰す瞬間に目に映ってしまいそのまま死んでしまう可能性があるためだ。


 だが、召喚者の中で極僅かなのだが、目からの攻撃に誤差があるという事実を知っている。それは召喚者にしても短い時間の誤差……一秒未満の誤差になるのだが、最強クラスの召喚者の中では大きな誤差になる。ましてや、何をされても一撃で死ぬ戦いであれば余計に大きな誤差になるのだ。


 目に映れば相手を燃やしたり、凍らせたりと出来るのは事実なのだが、魔力が無ければどうしようもない。目で見つめただけで、全てが燃えたり、凍ったりするのであれば、二人の周囲の物は全て無くなっている。何を見ても燃えたり、凍ったりするのだから同然だ。


 目に魔力を送ることで始めて発揮する能力なのだが、魔力を送るまでの時間がほんの僅かな隙になるのだ。一秒未満という限りなく短い誤差しか無いのだが、短い時間でも隙は隙に変る。だが、二人とも自分が使う能力なので、自分の欠点ぐらい一番知っている。


 自分に隙を認識出来ない強者など存在する訳ないのだから。


「あぁぁぁぁ!!」


 先ほど水瀬はフロウを誘い込むように作戦に引っ掛けたが、もう同じ手は通用しない。先ほどはフロウも少しだけ手を抜いている状態だったので、引っ掛かっただけで、一度危険を体験したフロウがもう一度同じ手を食らうことなどありえない。


 だからこそ接近したのだ。目での攻撃では少しだけ誤差があることなど当事者が一番詳しい事実で、そこが今の戦いにおいて、一番大きな隙になるとこは水瀬もフロウも自覚しているのだ。だからこそ接近して戦う。


 体術は魔力を送る誤差など存在しないし、何しろ一番自分の実力が試される物だからだ。自分で磨き上げてきた物を詰め込む体術は相手にとって一番脅威になる。なぜらな予想が出来ないからだ。


 強い召喚者は相手の魔力を感じることには長けているが、体術までは探れない。仮に探れたとしても予想外の動きが出来るのが体術で、それと向き合うのには精神的疲労もあるが、何より集中力が非常に高くなければならない。


 相手の予想出来ない攻撃を予想するしかないのだ。体の筋肉の動きなどを見て、次に来るだろう攻撃を予測して戦うしかない中で、集中力が切れた方が負ける。それに、この二人の体術は普通ではない。


 自分の弱点を補うために習得した体術が弱いなどありえなく、お互いは魔力の粘度よりも体術に磨きをかけたのだ。でなければ、自分と同等か、それ以上の存在に出会うと太刀打ち出来ないためだ。相手が強ければ強いほど、こちらの手の内は見透かされる。なので、必然的に体術が必要になるのだ。


 それに、この二人は技をかけたり、殴ったりしなくても触れれば終わらせることが可能なのだ。目で、誤差がある攻撃をするよりも、磨き上げた体術で相手を仕留めた方が効率がよく、危険も少ないのだ。


「ぶち抜け!!」


「っ!」


接近しきって、互いに手が届く範囲に居る二人は相手に触れようとする。フロウは降りかぶった右手で、顔面を殴る軌道に振り抜くが、それを体を捻ることで回避すると同時に、捻った勢いで一回転して回し蹴りを膝辺りに入れようとするが、上に飛び上がることで回避をする。そして、飛び上がると同時にフロウの瞳に魔法陣が浮びあがり、それを見た水瀬は匍匐前進のよう体勢になるまで、体を低くした。


 背後は完全に凍りつく、それを確認する時間もないまま、匍匐前進の体勢から顎を目掛けて拳を振り抜くが、首を上にずらすことで回避されると、瞳に魔力を込めて、フロウを見る。だが、それを予想していたフロウは既に瞳に魔力をこめており、見詰め合った二人は至近距離で炎と氷が激突し、煙と共に音が鳴り、二人は距離を取る。


 二人の攻防は約数秒だったが、それだけで次元が違う強さだと理解出来た。相手の攻撃を先に読んで回避したり、相手の動きを確認しながら流れを使う二人は間違いなく最強クラスに相応しい。


どれだけ努力してもここまでに域に達することが出来る召喚者はそうは居ない。歴代最強という素質を持ちながら、高めあう宿敵が居たから自分の強さに慢心せずに磨き続けた結果だ。相手に勝つために磨き続けた結果はあまりにも別次元の戦い。


 バックステップで距離を取った空中で、二人は目に流れを使い、魔力を送る。そして着地すると同時に炎と氷が再びぶつかり合い、相殺されて煙と音が聞こえる前に動き出していた。


 互いに雷を纏う白雪よりも早い速度で動く。接近して拳が飛び交うまでは一秒未満で、再び相手を殺すための殴り合いが始まる。


 水瀬は手より少しリーチが長い回し蹴りを仕掛けるが、フロウの手が回し蹴りしている脚に伸びてきたのを察すると、直ぐに片一方の脚で地面を強く蹴って、空中で一回転しながら相手の背後に降り立つと同時に地面を強く殴った。地面は普通のコンクリートなので、簡単に裂くことが出来、後ろにあるホテルすらも揺らすほどの揺れが起き、フロウが一瞬だけ体勢を崩したが、最強クラスの召喚者であるフロウに対しては隙にはならず。フロウの目に青い魔法陣が浮ぶと同時に先ほど割った地面から一メートルほどのコンクリートを片手で取り、フロウの前に投げる。


 瞳に映っていた水瀬がコンクリートの塊に変ったことで、塊が完全に凍り付き、地面に落ちる瞬間にフロウの視線から死角になる一瞬の場所で瞳に魔力を込めると同時に地面を蹴り、空中で半回転しながらフロウの上に行き、そして、下を見ると同時にフロウに炎が襲い掛かるが、フロウは予想外の行動だったにも関わらず、焦りの一つも見せないで、襲い掛かる炎が直撃しないように氷の盾のような物を上空に展開して防いだが、水瀬はこれだけでは止まらない。


 炎と氷がぶつかりあい、相殺しあったことで煙が出た瞬間に、上に向いていた足から炎を出し、下に居るフロウに拳が襲い掛かる。


「っ!!!」


 予想外に予想外の攻撃に、先ほどは焦りすら感じて居なかったフロウが焦りを感じた。この芸当はフロウには絶対に出来ない攻撃方法なので予想出来なかったのだ。炎には物を動かしたり、などの力が発生するが、氷には足場にする程度しか出来ない。


 普通の召喚者相手ならば足場にしてから蹴って攻撃しても充分に通用する方法なのだが、水瀬が相手では話しは別だ。普通の召喚者などと比べるにも値しないほどの強さはフロウも自覚しているが故にその方法では通用しないと理解しているが、水瀬は足場は出来ないが、炎を出すことで、瞬間的に空中での攻撃が可能になる。


 フロウだって出来ることを知らなかったわけではない。ただ、使ってくるとは予想してなかったのだろうと水瀬は予測した。だからこそ、この局面で炎を噴出して予想を上回ったのだと思い込んだのだ。


 水瀬がその作戦に出た時、フロウは驚きや焦りなどではなく笑みを浮かべていた。決定的ば場面で、自分の危険にも関わらずに笑みを浮かべるフロウを見た瞬間に、水瀬は自分の失態を悟った。そして、フロウに見事やられたという思いを抱いた。


 フロウも水瀬と同じで誘い込んだのだ。水瀬が地面から塊を投げた時からフロウはこの局面を作るために動いていた。塊を凍らせて、自分から死角になるように位置を取り、そして、避けられる攻撃を氷の盾で防いだ。そして、そのまま次の攻撃に来るか、そのまま炎を吹き出してくるか、という二択にフロウは後者を選んで、この局面を作った。


 フロウと水瀬の距離は五メートルほどしか無く、噴出した炎を止めて、距離を取る時間もない。そして、水瀬は相手が予想できない攻撃をしたつもりだったのが、間逆になり、焦りを覚えた。


「氷は確かに足場がしか作れないし、炎は物を動かす力がある。けれど、氷は足場を作るだけでない!」


 内に魔力を溜めていたフロウは上から突撃してくる水瀬を見ずに言った。そして、この言葉で水瀬はフロウが何が言いたいのは理解出来た。確かに炎は噴出すだけで、物を動かす力が働くが、氷は働かない代わりに作ることが出来る。


「昔から氷は造形として司ってきた。物を氷で作ることが出来るんだよ!!」


 瞬間に、フロウの体から大量の魔力が放出され、足元には巨大な魔法陣が浮かび上がる。その範囲は半径二十メートルほどの大きさまで巨大かし、魔法陣の回転が止まると同時に魔法陣から無数の氷の柱が出現する。


 伸びた無数の氷の柱は上から来る水瀬を串刺しにしようと上まで伸びる。そして、水瀬は回避することは出来ない。


「終わりだ!!くたばれ、クソがぁ!!」


「っ!!!!!!!!」


 水瀬は直感で自分が死んだということを理解出来た。両者最強クラスの召喚者で、長年の宿敵同士と言われている〝瞬間放火〟と〝瞬間凍結〟の戦いはここで終わりで、三世代に渡る戦いは〝瞬間放火〟の負けだと理解した。


 死ぬことを完全に自覚し、認めた水瀬はそっと目を閉じた瞬間、ある一人の顔が浮んできた。それは、まだ幼く、五歳程度と見られる小さな体で、太陽すらも霞んで見えるほどの笑顔をした小さな少年の笑み。


 その笑みが死が近づくに連れてだんだんと遠ざかっていくのを感じ、水瀬は咄嗟に手を伸ばした。けれど、その手は決して少年に届くことはなく離れていく一方。なんど呼びかけても笑ったまま離れていく。


 それはずっと追い続けた笑顔。昔に失くしてしまった守りたい者。それが死が近づくに連れて遠ざかっていく。まるで、あの時のように……。


(私は何のために戦っていたんだろう……)


 自分に問いかけた問いはあまりに簡単過ぎる問いだった。どうして人は呼吸をすることが出来るのかと問いかけられた方がまだ難しいだろう。


(決まっているだろ……そんなの……)


 あの日失くして、追い続けていた笑顔を取り戻すため……。


(やるべきことはなんだ……)


 あの日失くし、そして再び取り返せる希望が舞い込んできた……。


(ああ。そんなこと簡単だろ……)


 追い続ける笑顔を取り戻すために、やることは一つ。


「まだ終わる訳には行かない!!」


目を開き、そして体を強く、強く捻じ曲げる。上半身を捻じ曲げ、下半身は大きく開き、そして、氷の柱の隙間を落ちる。突き刺さることなく落ちた瞬間に、氷に触れている部分が氷だすが、広げた脚を前に倒すようにすると、脚の裏から炎を放出させて、周囲にある氷を全て溶かす。だが、そんな大きな隙をフロウが見逃すはずが無い。


「良く生き残ったが、これで終わりだ!!」


 水瀬はフロウの全身から先ほどよりも強烈な殺気と魔力の流れを感じた。フロウの周囲には白い霧が浮びあがり、そして白い霧は光の反射で光り輝いており、だんだんと輝きを大きくなり、霧の範囲は増える。それと同時に感じる魔力も上昇し、肌を刺すように感じる。


漂うのは白い光のような雪。それは水瀬の脱出できる範囲より大きく広がって行く。脚元に浮ぶ魔法陣は青い光を放ちながら回転しており、その速度は加速していく。


 無理な体勢で危機を回避した水瀬だったが、周囲に漂う白い霧は先ほどよりも危険だと理解している。だが、なんとか回避した体は氷の柱を回避するために取った行動故に僅かに反応が遅れる。召喚者にとって僅かな行動の遅れは死に繋がる可能性が非常に高くなる。なお、実力が均等し、強者であるもの同士の戦いでは特に隙は死に繋がる可能性が高い。


 フロウの脚元に浮ぶ魔法陣は強い輝きを放って停止する。それと同時に周囲の霧はさらに濃度を増し、水瀬はさらに危険を察知するが、無理な体勢のため間に合わない。


「はははは!!!これで終わりだ!!楽しかったよ!」


 濃密な魔力が放たれると同時に水瀬の世界が白く染まった。白い霧は眩い光を放ちながら魔力を増加させて、周囲にある物は一瞬で凍結する。それはまるで、世界の終焉のような光景で、魔術閉鎖空間の中にある全てが凍結する。もちろんそれは建物などだけではなく水瀬も同じく完全に凍結して、時が止まったかのように動かなくなり停止した。


 

 細氷ダイアモンドダストは本来は大気中の水蒸気が昇華してできた、ごく小さな氷晶が降ることを指す言葉だ。本来の細氷であれば、光が反射して光り輝き、綺麗に見える現象なのだが、フロウの細氷はそうではない。


 魔力と共に込められた殺気共に光り輝き、発動までは綺麗に見えるのだが、その全貌は周囲を一瞬で凍結させることが可能である技なのだ。自分が認知する空間内であれば完全に凍結することが可能であり、それを防ぐ術はどこにも存在しない。


 自分が認知する空間といえば、何しろ見えている空間でけではない。文字通り、知っている空間であれば全て凍結させることが可能であるが故に、体内の干渉すらも可能なのだ。水瀬がいかに強力な召喚者だとしても、自身の体内から炎を吹き出し、細氷ダイアモンドダストを防ぐことなど不可能に近いのだ。


 空間を扱うことが出来る召喚者であれば回避出来ることは出来るのだが、フロウの知る限り、空間を操ることが出来る召喚者は一人しか存在しない。水瀬は細氷を回避することは不可能という訳になるのだ。


 体内からも干渉できるという大技だけあって、発動までの時間が長いのが欠点だが、無理な体勢で氷の柱を回避してくれたことからフロウは使うことが出来たのだ。たった一秒ほどの時間だとしても発動までに潰されることが多いのだが、今回は成功した。


 周囲には水瀬が発動した第三次開放トリプルアクセスの世界は完全に停止し、周囲は氷河期のように全て氷で覆われ、フロウ以外に時を進めている物は魔術閉鎖空間には海人と白雪を除いて存在しない。フロウは行為的に二人を逃したのだ。


「〝瞬間放火ゼロファイア〟……お前の負けだ。お前は完全に氷つき、死んだ……、まぁ、安心してくれ、お前が逃がそうとした〝魔女狩り〟は逃がしてやったから。俺は弱い相手に興味はない」


 そう呟くフロウだが、水瀬は氷つき、声を出す所か身動き一つも出来ない。完全に時が停止して、水瀬の世界は崩壊している。


「ぞれじゃ……最後の仕上げといこうとするか……」


 フロウは氷ついている水瀬に近づき、右手に魔力を込め、そして放った。


 





 読んでくださってありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitterやつまているので、よろしければフォローお願いします!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ