戦い
互いに対峙し合う〝瞬間放火〟と〝瞬間凍結〟は殺気を放ちながら両者の動きを見ている。二人共相手を警戒して、自分の強敵と認めているからことの状況。
互いに第三次開放という召喚者の高みに上った二人は古くからの宿敵として戦ってきていた。それは、この二人の先代の先代から始まった戦いで、二人共能力が間逆で、似ているために戦いが行われていたのだ。
〝瞬間放火〟と〝瞬間凍結〟は炎と氷を扱う召喚者では最強の二人。互いに一瞬で全てを燃やし、溶かしてしまう炎と、全てを一瞬で凍結させてしまう氷を使う。手で触れた物を凍らせて、目に映る全てを凍らせる能力と、触れた物を全て燃やし、溶かす能力と、目に映る物全てと燃やし、溶かす能力はあまりに間逆過ぎるのだ。
召喚者は自分と近い者は特別に警戒する。それは自分の能力に近い存在は危険で、自分の命すらも及ぼす可能性があるために警戒するのだ。そして、この二人も同じで、互いを警戒し合うために戦いが行われていたのだ。
「やっと因縁の対決に決着がつけられるな!」
狂気の笑みを浮かべながら楽しそうに居るのは、まさに因縁の対決に決着をつけられるという嬉しさと、目の前に居る強敵の存在が交じり合っているからで、相手と戦うという行為を心から楽しみにしているからだ。
召喚者は危険のために他の召喚者と干渉したくない者と、現代では居ないとされている召喚者を殺すことに快感を抱く者の二者が存在する。基本的には干渉したくない召喚者の方が多いが、たまに〝瞬間凍結〟のそうな召喚者も居る。
そのような召喚者は総じて自分に自信も持ち、負けないという自負がある者だけだ。そして、〝瞬間凍結〟はその自信に見合うだけの力と実績があり、それは水瀬の方も同じで、歴代の〝瞬間放火〟と〝瞬間凍結〟の中では最強の言われている。
召喚者の中でこの二人より強い者など滅多におらず、誰もが戦うことを恐れて、必死で回避しようとするほどの実力。ローとサクが戦争で優勝した先代よりも強いと言ったのは紛れもない事実なのだ。
「ああ……そうだな。ここで因縁の対決をお終いだ」
先代達が一回負けて、一回勝っている状態である二人はこの戦いで三度目の殺し合いになる。三度目の正直……これで負けた方が勝ち越しになるため、自分達の代で決着をつけようとしているのだ。
互いに歴代最強と言われる両者は、相手のことを自分の天敵だと理解している。それは先代達から受け継がれた何かなのか、召喚者の勘なのかは二人には理解出来ないが、全力で殺しあわなければ容易に勝てる相手ではないと全身が叫んでいるのだ。
人間にも僅かに捉えることが出来る第六感は、召喚者にも捉えることが難しい。五感は人間だけではなく、召喚者にも必要不可欠な物で、この全てで相手を見極めることが多い。だが、その五感を超越する第六感は何かを理解するのではなく、感じ取るような感覚になる。
見て攻撃を回避するのではなく、なんとなくだが、どこに攻撃が来るのかが理解出来きて、回避するのとでは全く危険性が違う。目で見ている分では、回避できない攻撃というのは必ず現われる。だが、感覚で回避する分に関しては見えなくてどこから来るのか理解出来て、回避することが可能なのだ。
その第六感などという存在するのかしないのか理解出来ない感覚に自分の命を託すのはか別の話だが、召喚者という命を賭けた戦いをする者で、自分の感覚を信じれないなど言語道断なのだ。
自分の感覚を信じれない者が強くなれるはずも無く、他人の意見に流される奴が社会で上に行けないのと同じで、召喚者は他人の判断よりも自分を信じることが重要なのだ。自分の感覚をいかに信じて、それに命すらも賭ける召喚者は総じて強くなる。
「先代達は馬鹿だ!だって、そうだろ?今まで勝ったり、負けたりしてきているが、これは殺し合いなんだ!!何回も戦うなんて馬鹿げてる!だから!!」
殺し合いというのは一度きりだからこそ殺し合いなのだと考えている〝瞬間凍結〟……フロウは、自分達の戦いがこれで三度目ということに納得が行っていない。なぜ、自分達が一回目ではないのだと不満に思っているのだ。
歴代最強と言われているフロウは、どうして自分達がフロウより弱い先代の負けを拭わなければならないのかと思っているのだ。もし、自分が〝瞬間放火〟の先代と戦っていれば負けることは無かったのにと思わずには居られないのだ。
決して先代が弱かった訳ではない。一瞬で相手を凍らせることが出来る能力に太刀打ち出来る物など多くはない。だが、フロウからすればそれしか出来ないのが先代なのだ。
先代はフロウのように第三次解放を使えなかった。第三次開放など、使える召喚者はほとんど居ないのにも関わらずに、フロウはそれだけで納得が行っていない。どうして、自分の先代が弱いのかと考えてしまうのだ。
「俺達がここで終わらせよう!!俺がお前を完全に凍らせてやる!」
「やってみろ。お前を完全に燃やしてやる。細胞一つの残さずに」
強烈な殺気と、その場に居るだけで並の召喚者なら恐怖して、震えが止まらないほどの魔力が二人から流れ出る。互いに世界に数人しか居ないほどの召喚者。体内に蓄積されている魔力など全くの未知数。
第三次開放の使い手である二人が対決するなど召喚者同時の戦いでは未だかつて一度も見たことが無い故、どのような結界になるなど誰も予想できない。もちろん、それは本人達にもだ。
水瀬はフロウのことは性格は悪くても実力だけなら認めている。それは逆も然りで、フロウも水瀬のことは消したい存在にも関わらず、相手の実力だけなら知っている。互いに似た能力を持っているからこそ理解出来るかもしれない感覚。
召喚者は先代から何かしら受け継がれている。それは強い召喚者ならなお更で、この二人は互いの宿敵の実力を見極めるというものが受け継がれている。だからこそ感じるし理解出来る。手加減して勝てる相手ではないと。自分の全力を尽くしてようやく勝てるか勝てないかの相手だと二人は理解している。
放出されている魔力は全くの互角。先代から受け継いだ見極める力で見た限り、実力もほとんど互角。歴代最強と言われる二人は同じ時代に最強といわれている。だからこそ、全力でやるしかない。だからこそ、手加減して勝てる相手でなはない。
「だから!全力で殺す!細胞一つも残さずに氷にしてやる」
「やってみろ、フロウ。お前は私には勝てない……」
睨みあう中で、二人は詠唱を唱える。
それは自らの渇望する世界を創造させる召喚者の高みの世界。
世界に数人しか使うことが出来ない第三次開放を使うための詠唱。それを二人は同時に口を開き唱える。
「紅き世界は全てを焼き尽くす……」
「永久凍土の世界で全て停止させ……」
二人は目を閉じて同時に詠唱を唱える。全てを燃やし尽くす世界と、全てを凍らせて停止させる世界の出現。
触れれば全てが終わりに向かう二つの世界は、互いにとって最も脅威のである事実。全てを燃やすと全てを凍らせるという間逆の能力も持つが故に、常に戦い続けていた両者。
歴代最強と言われている〝瞬間放火〟と〝瞬間凍結〟は今までの決着をつけるために世界を創造する。それは、自ら望んだ渇望を世界として表すことが出来る能力。創造する世界は全てが使い手の思い通りになる世界を出現させるために詠唱は続く。
「燃やし尽くし、全てを溶かして広がる世界に、侵入することなど出来る者は存在せず……」
「何もかもを凍結させて、時を止めることすらも可能な世界の中で……」
二人の召喚者の足元には淡く輝いている魔法陣が浮かび上がっている。
互いに宿敵と言われる存在が目の前に居ることによって、世界は粘度の高い物に仕上がっていく。
熱く、熱く、触れた物を全て燃やし尽くす世界を望んでいる。先生として生活していた中でも、常に世界は寒いと感じていた。季節な夏で、人間達は全身に汗をかいて熱いと言っていた理由は理解出来なかった。
どうしてこんな世界が熱いのだろう。どうして、自分はこんな寒い世界に生まれてしまったのだろうと、学園の生徒を教えている時も、買い物をする時もずっと感じていた。
一体自分はどうして寒いのだろう。どうしてこの普通の世界ではなく、灼熱の世界が恋しくなるのだろうとずっと感じていた。終わることが無い暑さが心地がいい世界。自分以外に誰も耐えることが出来ない世界が恋しかった。
周囲に人間がおらず、人の気配が全く無い、自分の隣に誰も居ない世界がずっと恋しかった。
「誰も居ない灼熱の世界に、私は一人で居たい。何もかも無になる世界で……」
だからこそ世界を望む。誰も居ない世界で一人で居るために、強く、強く、強く、強く望んだからこそ。自分が渇望した世界が最も自分が居る場所では心地のいい世界だと理解しているから。
「凍結停止させた世界では時間も止まる。何もかも停止した世界に居たい……」
凍えて、触れた瞬間に全てが凍りつく世界。寒く、寒く、寒い世界は自分を守る箱庭。常に自信があり、自身を強者だと理解しているフロウだが、内心ではそうではない。
置いてかれるのが嫌だった。何かを犠牲にしなければ生きて行けない世界などに居たくは無かった。どうして、自分達は停止することが出来ないのか。
人々は日々前に進んでいく。それは絶対で、日にちを跨ぐ度に先に進んでいく。自分だけを置いて、周囲は先に進んでいく。歩くペースが遅い自分は絶対に周囲と同じ速度を歩めない。
だから止めることにした。全てを停止させると自分以外は全て歩みをやめるから。そして、歩みが遅い自分は先に行った者達を停止させて、追いつくことが出来るから。
だからこそ望んだ世界。強く、強く、強く渇望して、全てを停止させる世界を望んだ。時間を止める訳ではなく、全ての物体や、人の歩みなどを止めるために望んだ。時間を止めると、自分すらも歩めなくなってしまうから。
「私を以外を全て燃やし尽くす世界に一人で居たい!」
「凍れ、そして全て停止しろ!」
足元に光輝く魔法陣が停止すると同時に、魔術閉鎖空間全体に行き渡るような強大な魔力が放出されると同時に世界が流れ出る。そして、結界内に居ない召喚者にも魔力を感じる者も居るほどの魔力。
共に最強クラス召喚者である事実は誰一人疑えないであろう魔力の量はさらに大きくなる。さらに、第三次開放という召喚者の高みに上った者同士。
人間よりは圧倒的に少ない数しか居ないとはいえ、全ての召喚者の中で第三次開放を使える者は極僅かしか居ない。世界に数十人しか居ない召喚者の中で、強い二人の戦いはまさしく想像が付かないレベルの戦いになるだろう。
「第三次開放、開放!!」
「第三次開放、開放!!」
同時に叫ぶと、魔術閉鎖空間の中に濃密な魔力が漂う。互いに召喚者になってから経験したことが無い魔力を感じているにも関わらず、互いに恐怖や動揺の色はまるで無い。
互いに強いということは理解していたし、歴代最強と言われるほどの実力があることも承知の上で戦うことを決めた。今までに経験したことがない魔力だとしても屈することなど一つも無く、戸惑う必要など皆無なのだ。
第三次開放は何か強い思いが無ければ扱うことが出来ない。そして、両者とも戦争に参加している故に二人には譲れない何かが存在するのだ。それが、胸の中にある限り、恐怖など感じている暇はない。だた、自分の胸にある強い思いを背よって戦う以外の方法はないのだ。
「殺してやるよ!」
「出来る物ならね……」
二人は完全に互い以外視界に入らなくなる。互いに実力が均等しているが故に集中力を切らすことなど出来ず、一瞬の判断の迷いや、選択が死に繋がる戦いなのだ。
手加減など出来ない……いや、互いに手加減などするつもりは全く皆無。初めから全力でかかり、相手を殺すこと以外に考えていない二人は、睨みあい、全身が死にたくなるような殺気が飛び交っている。
普通の人間ならこの殺気を浴びただけでも、細胞一つひとつが死にたくなるような感覚に襲われ、そのまま自殺してしまうほどの殺気。並の召喚者であっても、この殺気に恐怖し、震え上がり、立つことさえ出来ない。
両者はそんな殺気を受け流すのではなく、全て受け止める。受け流してはどこに危険が来るか理解出来ない状況になり、死に近づく危険性が存在するためである。最強クラスの召喚者は相手の殺気で攻撃場所を特定して、それを利用して回避するもとなど出来て当たり前なのだ。逆に出来なければ、均等している実力同士……さらに第三次解放まで使えるとなるとまともに戦うことなど出来ない。
「万物全て停止しろ!」
「全て燃やしつくせ!」
叫ぶように言った瞬間、フロウの背後は煉獄の世界に変化し、水瀬の背後は全て氷の世界に変化する。そして、それを確認する前に、両者は素早い動きで動き出す。
速度は完全に見えない。それは白雪よりも早く、そして触れただけで全てを終わらせることが出来る両者の戦い。
先に懐に入ったのはフロウのほうだった。体を低くして、まるで子供がおもちゃに触るような感じで、触ろうとしただけで、水瀬は咄嗟に回避をした。足で地面を強く蹴って回避した水瀬だが、フロウはそれに合わせて地面を蹴り、一瞬で加速する。その速度は水瀬の目には完全に捉えきれななかったが、フロウが身に放っている殺気だけを頼りに勘で右に飛び込むように回避する。
回避途中に水瀬はフロウを睨みつけると同時に一瞬だけ瞳に紅い魔法陣が浮び上がると同時にフロウは力強く地面を蹴り、バックステップで回避するが、水瀬は逃がさない。
フロウが居た場所には煉獄の炎が上がっているが、水瀬はそれを魔力で操り、蛇のように細く、雷のように早い動きで炎はフロウを襲う。その間に水瀬は地面を蹴り、高速で移動し、向かう炎の死角に移動する。
バックステップという一瞬だけ空中に浮く回避方法で逃げたフロウは炎の蛇を回避することが出来ない。だが、最強クラスの召喚者であるフロウが、まともに食らう可能性は皆無と言っていい。だから回避する方法と方向を予測して、フロウは迫り来る炎を利用して死角から回避すると読んだのだ。水瀬はそれに合わせて、死角に移動した。だが、
「そんな物!当たるわけないだろっ!!」
「っ!!」
水瀬は体全体が発する警戒に従って、死角から行くのを停止し、それと同時に目には紅い魔法陣が浮びあがる。だが、フロウは水瀬より一歩だけ早やく行動していた。
迫り来る炎を回避せずに、フロウの目には青い魔法陣が浮ぶと同時に迫り来る炎が完全に凍りつく。それだけに収まらず、水瀬も凍らせて停止させようとするが、目に魔法陣を浮けべながら体を大きく捻じ曲げた。
「永久に停止しろ!!」
フロウは狂気のような笑みを浮けべながらそう叫んだが、簡単に水瀬が負けるはずが無かった。水瀬は体をねじ曲げると同時に瞳は自分の足元に向けていた。そして、自分の足元にある地面を煉獄の炎で溶かし、フロウの氷から回避する。
「へっ!これながどうだ!!」
下を向いていた水瀬は突然動き出したフロウの動きに耐用することは出来なかった。フロウはまるで、新幹線のように一直線で水瀬の元に向かい、完全に凍りつかせようとしたのだが、フロウはミスを悟った。
「こんな致命的なミスをするわけがないだろう」
フロウが悟った時には既に水瀬の作戦は動き出していた。水瀬は足元を溶かしてフロウの攻撃を回避するのとは別にもう一つ足元を溶かした目的が存在したのだ。
攻撃を回避するもの目的だったとはいえ、半分以上は攻撃にするためだったのだ。水瀬はフロウが接近してくることを読んでいた。接近して、手で触れてくるという流れは水瀬が作りだしたものなのだから。
フロウは接近するのを停止して、回避しようとするが、地面を溶かした煉獄は既に止まることはない。吹き上がる炎は触れれば全てが溶けてなくなってしまうほどの炎。動きを止めたフロウには回避する方法がないと思うわれたが……。
「くたばってたまるかっ!!」
瞬間。
まさしく炎が襲うよりも早い時間の中で、フロウの魔力は爆発的に上がった。水瀬はそれを感じ取ったと同時に地面を強く蹴り、上に上がった。まさしく召喚者の感覚で飛び上がったようなもの。地面からは鋭く尖った氷の刃が水瀬が居た場所全体に襲い掛かったのだ。
上に飛び上がったことで回避できた水瀬は、氷の刃を炎で燃やし、自分が一番得意としている距離まで、離れる。
「今のを良く回避した……と言いたいところだが、その前からの行動の方が評価できるな……」
「…………」
「まさか、死角から攻撃した方が良かったなんて考えなかったよ。完全に嵌められた!!」
水瀬の作戦はバックステップしたフロウに炎が襲い掛かった場所から既に始まっていたのだ。フロウが死角から攻撃してくると踏んだのは嘘で、そうフロウに思わせる行動をして、氷で襲わせたのだ。
水瀬はフロウから炎で死角になっている場所に移動して、攻撃しようとしている風に見せて、誘導していたのだ。すると、自然と自分に氷が襲い掛かり、何とかして回避して、予想を上回る攻撃が出来ると踏んだからだ。
「まぁ、嵌った俺が悪いか……」
フロウの目が鋭くなる。水瀬はフロウの予想を上回る攻撃をしてみせたが、それでも傷を負わせることが出来なかったので結果的に言えば失敗だったといえるだろう。それにもう同じ手は使えない。
一度嵌められた攻撃をもう一度受けるようでは、最強クラスの召喚者など言われはしない。
「当たり前だ。これは殺し合いで、殺そうとした私が悪い訳がないだろ」
「違いねぇ……殺し合いでは殺された方が悪い。だから死んでも恨むなよ?」
「私は死ぬことなど絶対にしないから問題ない。それこそ、私に殺されても恨むなよ?」
「当たり前だ……さっきので、目が覚めたしな……」
そういうと不敵に笑うフロウ。それを鋭い目で見つめながら水瀬は相手の動きを見る。絶対に集中力を切らしてはいけない戦いでは、相手の動きをいかに正確に判断して、見極めることが出来るかどうかが鍵になってくるからだ。
「準備運動はもう終わっただろ?次からは本気だ」
「ああ。構わん。本気でかかってこい」
水瀬とフロウは同時に瞳に魔法陣を受けべる。そして二人の中間で、全てを停止させる氷と、全てを燃やす炎がぶつかりあう。
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