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約束(エンゲージ)  作者: 千歳瑠璃
炎氷舞
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到着

 三人で買出しに出かけてから五日が経過して、俺達は急遽決まった北海道旅行に向かう日になった。どうして急に北海道に旅行に行くことになったのかなど理由は理解出来ないが、学校側が決めたことに生徒である俺が口を出せることなど一切ない。


 それに、俺が住んでいる町からは北海道など滅多なことがない限り行ける距離ではないので、学校負担でいけるということ事態はかなり嬉しい状況なのだが、急遽決まった北海道旅行なので、生徒側はどこに行って何をするのかなどという情報が一切入ってきていない状態なのだ。もしかすると、学園側も何も全く予定が決まっていない可能性も高い。


 気になることがたくさんあるが、一応学生で通っている俺が心配しても仕方ないので、折角行ける北海道なので楽しむことだけに専念する。戦争という非日常で戦っている俺達なのでからこういった時ぐらい楽しまないと損だろう。


 だが、気を抜くことは絶対にしない。未知の土地に行くということは一切の情報がないままいくということになり、北海道にも召喚者が居ても可笑しくないので、気を抜いて不意打ちなど洒落にならないからだ。


 朝早く凜奈に起して貰い、一度体育館に集合した俺達は三泊四日で行く、北海道旅行についての軽い説明や、注意点などを聞いてから学園にきていたバスに乗り込む。


 着ていたバスは大型のバス四台で、これに乗って空港に向かう。乗るバスはクラスによって決められているが、席までは詳しく決められていないので、空いている席に適当に座ると、その横に当たり前のように白雪が座ってくる。


 転校してきた当初から普通に話していた俺達はクラスメイトから注目を浴びている存在になっているが、今回も白雪があまりに自然に座ってきたためになぜだか見られている。しかし、俺はそのようなことは凜奈と一緒に居たため慣れているが、白雪はそうは行かない。集まっている視線を受けながら、


「何よ?私の顔に何かついてる?」


「いや……何もついてないけど……な?」


 白雪の言葉に戸惑うクラスメイトは助けを求めてくるように俺を見てくるが、首を傾げた。


 別に無視や答えるのが面倒だからではなく、何を気にしているのかが全く理解出来ないのだ。確かに転校してきて時間が経過していないのに仲が良く、隣に座ってくるのは不自然だが、別にただそれだけだろう。


 みんなは知らないが、俺達は転校してくる前から約束エンゲージを結んだパートナーとして〝魔女〟と戦い、勝利している。仲が良く見えるのはそのせいだが、それは仕方が無い。


 召喚者として数々の死線を越えてきた俺達は普通の人間では語ることの出来ないほどの関係だ。命を掛けて戦い、そして、パートナーとして認めているからこそ生まれる関係。理解出来なくて当然だ。


 自分が体験したことは、リアルに話すことなどは可能だが、自分が体験したこがないことをリアルに話すことだけではなく、知った風に話すことなどは決して出来ない。俺達は普通の人間では決して経験することなど出来ない体験をしてきているのだ。他の人に俺達の関係を理解することなど、経験がないから決して出来ない。


 口約束や、物理的な約束ではなく、俺達は魔術というもの……形は無く、誰にもわからずに結ばれた約束エンゲージは共にパートナーと認めて、絆を結ぶ物だ。俺達は既に隣に居ること事態が当たり前に変っているのだ。


「転校当時から思っていたけど、仲良すぎるだろ?普通に話したり、隣に座ったりとか……だから気になって……」


 周囲に確かめるように話すクラスメイトに、周囲はそれを頷きで返す。まぁ、転校当初から普通に話して、仲良くやっていたら不思議に思うのは無理ないことだろう。


「?別に普通だと思うけど?だって私達は結ばれているし」


「おい、白雪……その言い方は……」


 誤解を招くからやめろ、と言おうと思ったが時には既に遅かった。白雪は転校生でありながら容姿は幼いが、可愛いことには違いない。俺や凜奈以外とはあまり話しをしないが、異性として見ている者はさほど少なくないはずだ。それに、高校生などはその手の話は大好物な奴が多いので、白雪が発言した時点で既にお終いだった。


「やっぱり二人は付き合ってたんだね!?」


 一つ後ろの席に座っているクラスメイトが大声で発言すると、大型のバスとは言え、声は全体に通り、波のように情報が流れる。そして、周囲で話しを聞いていたクラスメイトは口々に言う。


「俺もそうだと思ってたんだよ!なんか、二人の間には他の人が入れない雰囲気があったし」


「それわかる!それに桜さんって、霧沢君以外と話しているところあまり見ないし、お互いを信頼している風にも見えたし……」


 さすがに転校してきて俺達以外とほとんど会話をしていない白雪はクラスの中でも目立っていた。別に周囲を避けているわけではなく、話しかけられたりすると会話している姿を見たりするが、自分から話しかけるのは俺と凜奈のみ。白雪のことを召喚者だと知っている俺達だけなのだ。


 なので、周囲からは目立っている。目立っているということは白雪はクラスメイトから良く見られているという事実に繋がるため、俺達が話している光景などは良く見られていて、間に流れている雰囲気すらも伝わっているらしい。


「二人はどんな風に知り合って、結ばれたの!?」


 この発言により、バスの中が沈黙になる。そして、白雪はここに来て自身の発言の問題性に気が付いたらしく、視線をこちらに向けて来たが、俺は首を傾げる。自分で蒔いた種は自分でどうにかしてくれ、という意味合いを込めて。


 それを理解した様子の白雪は、目を鋭くするが、自分に向けられている数多くの視線をどうにかするために、顎に手を立てて考え始めた。そして、二秒ほど経過したら白雪は口を開いた。


「特に面白い出会いではないけど……海人って困っている人を助けたりしているでしょ?」


「確かに……桜さんも助けて貰ったの?」


「ええ。転校初日に融通が聞かないことや、校内の地理など理解していなかったから……この学園広いでしょ?だから迷ってたら色々教えてくれたりしてくれて……それが出会いよ」


 俺は良くも二秒という時間で言い訳を考えたと関心していた。召喚者には二秒という時間は長く、大きな隙になる時間だが、人間であるクラスメイト達にしたら二秒は限りなく短い。


 白雪が二秒間で色々考えていたことは瞬時に理解出来たが、クラスメイトにはそのようには見えない。誰も二秒という時間に考え出したという考えは排除しているのだ。なので、嘘を並べても誰もが本当のように聞こえる。


「さすが霧沢君……凜奈だけではなく桜さんまでも……あ、噂で聞いたことあるけど一年生の女の子とも仲がいいっていう噂を聞いたことある……手伝っている風景は見たことないけど……」


 それは谷崎のことを言っているのだと瞬時に理解出来た。確かに今まで一番谷崎を手伝った回数が多いが、それは谷崎が良く一人で大きなダンボールなどを持っているからだ。俺からすればどうして誰も手伝わないのかと問いかけたいが、それを問いかけるのは何か違ったような気がするのでやらない。


「それで実際のところどうなんだ?」


「別に何もないよ……お前達が思っているような展開は」


 俺の答えに静かだったバスの中に活気が戻り、クラスメイトの男子が安心した様子でため息を吐いた。


「よかった……夏目に桜さんとか両手に花状態じゃなくて……」


「本当だよな!危うく霧沢を殺しそうになったぜ……」


「なんでだよ……」


 お前達が思って居る展開ではないけれど、それよりもって深い関係だとは絶対に口が避けても居えない。まぁ、言った所で召喚者や約束エンゲージのことなんて信じてくれる奴な谷崎以外この学園には居ないが……変な目で見られるよりはマシだろう。


 各自席に座り、バスが発車するまで話しをしていると、クラスの担任である水瀬先生がバスに乗り込んできた。慌てた様子で来たのに汗一つ流れておらず

、腰より下まで白衣を着ている。


 そして、荷物を自分の席に置いて、全体が見えるように立ち、


「全員揃ってるか?準備はいいな?これから旅行として北海道に向かう!」


 何やら一番北海道に行くことを楽しみにしているのは先生のように見えてあれだが、俺達も楽しみなことは変らないので、何も言えない。一度も行った事がない土地ならなお更だ。


「それじゃ、行くぞ!準備はいいな!」


「おう!!」


 拳を上に上げて言う先生に合わせて拳を上に上げるクラスメイト。それを苦笑いして見ているバスの運転手や、クラスの副担任の先生。ここには俺が望んでいる平和な日常の光景があり、戦争などという非日常はどこにも存在しなかった。


 唯一、非日常があるというのなら俺達三人のことになるが、それ以外は特に何もない日常光景だった。今、この瞬間、このバスの中だけだとしても、誰もが楽しく、楽しみにしているという光景が広がっていることが嬉しい。


 戦争という非日常に飛び込んだ……召喚者として覚醒して白雪と約束エンゲージを結び、戦争に参加したのは、このバスの中にある誰もが楽しく、幸せである光景を世界に広げるという普通では不可能なことをするためだ。


今、この目の前に広がる光景を見て、俺は白雪と絶対に戦争の勝者となると決意をする。隣に座っている白雪に視線を向けると、白雪も俺の方を見ていて

、視線があうと桜が咲いたような笑顔に変り、俺も笑顔になった。


「そこ!二人だけの世界に入るな!」


「そうだ!二人で笑いあうな!一人の俺達が悲しいだろ!」


「お前達本当は付き合ってるだろ!」


 再び標的にされた俺達は苦笑いを浮けつつ決して嫌ではなかった。白雪はどうかは知らないが、俺は平和な世界を望んでいて、この風景は俺が望んでいる風景の縮小版だからだ。これこそが普通の日常だと思えるからだ。


「それじゃ!行くぞ!!準備はいいな!霧沢!桜!」


 名指しで呼べれ、先生の方に視線を向けると背筋に悪寒が走った。水瀬先生から向けられている視線には恐怖があり、それは召喚者である俺すらも恐怖しるほどで、英雄ジークフリードより強い物だったからだ。


 隣に座っている白雪も目を鋭くし、額には冷や汗が浮かんでいた。俺と同様に白雪も恐怖を感じているようで、これは明らかに以上な出来事だった。なんせ、英雄ジークフリードより強い恐怖感など未だかつて経験したことなどなく、普通の人間に対してそう思えるなど以上以外の何でもない。


 しばらくの間、水瀬先生から向けられる視線に耐え切ると、先生が視線を外すと同時に背筋に悪寒が走るほどの恐怖は無くなった。そして水瀬先生はそっと笑顔を浮けべて、


「準備はいいみたいだな!では行くぞ!」


 他のクラスメイトは水瀬先生の以上さに気が付かなく、俺が見ていた光景は一瞬にして崩壊したように感じられた。俺、凜奈、白雪が、この空間で非日常だと思っていたが、もう一人以上な人間が居ることを思い知った。





**********







 バスが空港に到着すると、俺達は持ってきた荷物を空港に預けて、飛行機に乗った。俺は街からほとんど出たことがないので飛行機など初めて乗ったので周囲を見渡していた。同様にクラスメイトや凜奈も飛行機には乗る機会が少ないため、空港の中を見渡したり、近くで見れる飛行機に興奮したりと、高校生ではないようだった。


 バスの中で感じた恐怖感は水瀬先生からは感じられず、同様に着ていた先生達と今後の予定やなどを話している様子だ。しかし、先生は俺が見ていることを知っているようで、たまに視線を向けてくる。


 凜奈にも聞いてみたが、水瀬先生から放たれた恐怖感は感じなかったといっていたので、あの場で恐怖感は俺達二人だけに感じるように放ったのだろう。もちろんそんなこと出来る人間などおらず、召喚者という筋も考えたが、これだけ毎日傍に居て気が付かないなどありえないので、その線は省いたのだが、視線に気が付いしているのでまだ安心はできない。


 そして、少し警戒しながら俺達は飛行機に乗り込み、三時間ほどかけて北海道に向かうことになった。どうやって一週間という短時間で一学年分の飛行機を予約したのかは理解出来ないが、学園側がどうにかしたのだろう。


 バスとは違い、さすがに席は指定されているため、白雪はと離れてしまったが、今度は偶然凜奈が隣になった。バスでは少し離れた場所に居たので話すことが出来なかったのでちょうど良かった。


『凜奈本当にバスの中で何も感じなかったのか?』


 俺は飛行機の中に居る水瀬先生に聞こえないように、紙に書いて凜奈に聞く。召喚者は人間と体の出来が違うので、人には聞こえない音なども耳に入れることが出来る。例えば、普通なら聞こえない場所での音や小さな音、そして動物や魚類が発する超音波のような物も聞き取ることが出来る。だが、さすがに紙に書けば内容は理解出来ないだろう。


『特に何もなかったよ?そんだけすごかったの?』


 意図を読んだであろう凜奈も同様に紙に文字を書いてくれる。綺麗な字で書かれる文字は俺のと違って非常に読みやすく、書くときにもほとんど音が出ないので読まれることはまずないだろう。


『ああ……英雄ジークフリードよりすごかった……』


『水瀬先生も召喚者なの?』


『俺達も考えたが、その説は無いと思う。毎日のように顔を合わせるのに召喚者だと気が付かないのは可笑しいだろ……』


 ローネの時も気が付かなかったが、あれは英雄ジークフリードとローネの能力である〝風読み〟が合わさったためである。それにローネは一緒に居たとはいえ、水瀬先生には遠く及ばない。一年の時もあわせると約一年半ほど学校で毎日見ているのだ。気が付かない訳ではない。


 後、谷崎のような存在も考えたが、それも違いような気がするので外した。なので、一体何がどうなっているのか俺達は理解が出来ないのだ。


『それもそうか……だったら考えようがないじゃない。海人は何だと思うの?』


『わからない……けど、今までお世話になってきたから何であっても敵ではないと思う……』


 思うではなく信じたいだけだ。一年半という月日を担任としてお世話してくれたのだから敵になるとどうしようもない。なので、単純にそう信じたいだけだと自覚している。


『そうあって欲しいけど……注意は必要ね』


『ああ。例えお世話になった水瀬先生だろうと……』


 俺達は戦う、とは続けられなかった。もちろん凜奈も俺や白雪の覚悟を知って居るのでそう書いても何も言わないだろうが、俺自身がその展開を望んでいないからだ。


 白雪と出会い、約束エンゲージを結ぶ時に願いを叶えるためならば何でもすると誓った俺だが、出来ることなら戦いたくはない。どうしたって戦うことでしか得られない勝利なので仕方ないが、好き好んで……人を傷つけたり殺したりするのは不快以外何でも無く。そのことは胸に奥に残り続ける。


甘いことは考えてなど居ない。人を……例え召喚者であろうと殺すことはしたくない。しかし、この願いを叶える戦争が殺さずに勝者になれるほど簡単ではないことは英雄ジークフリードで思い知った。


 初めて人の首を切る感覚。切り終わってから殺したという自覚。それらは良い物ではないが、自分の願いを叶えるため、そして、白雪を守るためには仕方がないことだ。


 人間の命は他者によって重さが違うように、俺からしても身近な人の方が重さは重い。みんなが幸せになればいいとか考えている癖して、やはり身近な人を優先してしまうのは感情があるため仕方が無い。


 俺の召喚者として覚醒させてくれ、約束エンゲージを結びパートナーとして戦う白雪と、幼馴染で毎日お世話になった凜奈。その二人が危なくなった時は俺は間違いなく相手を殺す。これが、覚悟とは違う心の奥にある物だ。


『そうだね……それは仕方が無いと思う……』


 凜奈がそう書くとそれっきり書くのが止まり、俺達に沈黙が訪れる。そして、飛行機の中はクラスメイト達の声で盛り上がってたが、俺達の場所だけは静かな場所……別の世界に居るような感覚を受けた。


 そして、飛行機が出発してから三時間。俺達はついに北海道に到着した。






 









読んでくださりありがとうございます!

 次の更新は用事のため少し遅くなります。すいません……

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