買出し
急遽北海道に向かうことになった俺達は報告を聞いてから二日後の、日曜日に買出しをすることにした。なんせ、一週間後に行く場所は北海道で、ここからかなり離れた場所になるため、準備は必要だ。
三泊四日と長い時間滞在するために準備は必要不可欠で、急に言われたために部屋には何一つ無い。修学旅行も先になるため、余計に準備をしていなかった俺達は、三人で街に出る。
本来なら今日は流れの練習に一日使う予定だったが、昼に切り上げてきたのだ。門限が存在するため夜遅くまで街に居ることは出来が、必要な物だけを買えばそう長くは時間はかからないだろう。
街に出た俺達はまずはショッピングモールに向かった。ここはローネが転校してきた時に街案内として連れて行き場所だ。今は、約束を結んだ英雄が死んだ影響で、ローネも死んでしまったが、思い出だけは俺達の中に存在する。学園に居る誰もが忘れていてしまっても召喚者として戦った俺達は覚えている。
短い間で学園に居た時の思い出はあまり無いけれど、ショッピングモールに来て楽しそうだったローネを俺達は知っている。それが、演技だとしても俺が見たローネの笑顔はそんな風には見えなかったから、それでいいのだ。
思い出など事実だけがあればいい。後は自分が思うように改ざんしても誰にも見られることはない。俺の思い出の中のローネは楽しそうにしていた。俺自身もそう感じて、そう見えていたのだから問題など一切ない。
ショッピングモールに入った俺達は洋服売り場に向かう。高校では制服の行動が基本的なのだが、俺達の学園は旅行などは私服でもいいのだ。それも学園の社会に出た時のため……らしいのだが、その辺はどうでもいい。制服より私服の方が動きやすく便利だという利点だけあればいい。
今は季節は夏……とはいえないかも知れが、半袖で行動していても熱いほどだが、北海道は少し寒いらしいので、そのための服を買いにきたのだ。召喚者は魔力を調整することで暑さや寒さを防げるが……周囲の目だけはどうしようもない。
寒い中を半袖で居れば不思議がられるため、服を買いに行くのだ。まぁ、凜奈はこういうイベント事が無ければ服を買うことが少ないから……と言っていたが、俺は買わないので関係ない。
だが、女の子というのは服を買ったりなど好きらしい。凜奈は洋服売り場に入ると楽しそうに服を見ているから様子を見れば好きなのだと直ぐにわかるが、白雪といえば……想像通りで、全く服には興味がないらしく、途中で買った食べ物を食べている。
白雪は他人の目など全く気にしないタイプなのでいいかもしれないが、俺は白雪が可愛い服を着ている姿を見てみたいと思った。容姿は幼いが、白雪が可愛いことは事実で、白雪だからこそ、可愛い服を着ている姿を見てみたいのだ。
いつも、同じ白いドレスのような服か、制服しか着ていないため、他の姿を見ていたい。それに、白雪には英雄との戦いで言葉ではいえないほどの感謝があるので、気に入った服があればお金を出したい。
物で感謝を伝えるのはどうかと思うが、俺にはこれぐらいしか出来ない。白雪は俺に召喚者になり、絶対に叶えられないと思っていた願いを叶える機会をくれた。俺は弱いだけで、何もしてあげられない。守りたいと願っても守ってもらうことしか出来ないのだ。
「白雪は興味のある服ないのか?」
「ないわ。旅行は制服で行く……まぁ、寒くても関係ないから……海人もさすがに魔力調整できるようになったでしょ?」
体育祭の時は魔力調整が出来ずに汗を大量に掻いていた俺と全く汗をかいていなかった白雪。あの頃は流れの練習もしていなかったので、今よりも雑な魔力しか使えなかったが、流れのおかげで、体温調節は出来るようになった。
「確かに出来るようになったが……」
出来るようになったとはいえ、寒い中を半袖で歩く変人をするのとは話しは別だ。確かに、服を着込んだりするのはめんどくさいのは事実なのだが、周囲の目は気にした方がいい。仮にも同じ学園に通う生徒ばかりなのだから気にしなくてもいいと考えてしまうかもしれないが、この学園に俺達以外の召喚者gが居ないと断言するには早すぎる。
召喚者は魔力を存在するため、召喚者同士で魔力を察知して存在を認識することが多いが、英雄や、戦争に参加している召喚者に弱い者など存在しないので、魔力をうまく抑えたり、扱うことが出来る召喚者は、存在を察知できないことが多い。自分の身を最も守ることは強いだけでは意味が無く、どうやって自分より上の存在と戦わずに回避するかということだ。
白雪も召喚者として覚醒してから十年という長い月日が経過しているため、俺なんかとは比べ物にならないほど魔力を扱うことが出来るため、圧倒的な格上でなければ気づかれることは少ないだろう。けれど、俺はその領域まで全く達していない。
確かに魔力を使い、体温などの調節はある程度できるようになったとはいえ、それだけしか出来ないのだ。流れの方も白雪や凜奈に遅れを取っていて、魔力を扱うのはさほどうまくない。
普段の生活をしているだけならば体温調節をしていても問題ないが、いざという時には全く反応できなくなってしまうため、俺は体温調節をせずに、上から防寒着を着ることにしたのだ。
「それなら服を買う必要ないわ。体温調節は出来るし、一応学生をやってるんだから制服で行動すれば問題ないし、服を買わなくても困ることなんて一切ないわ」
「それもそうだが……やっぱり女の子なんだから周囲の目はきっちり気にした方がいいぞ?それに俺も……」
普段から来ている白いドレスや、制服ではなく、普通の私服姿を見てみたいと思ったことなど、本人が居る目の前で言うことなど出来る訳がなく。けれど
、見てみたいと思ったら私服姿が妙に気になるようになり……。
「俺も何よ?それより、海人は私服で行くんでしょ?服買わなくていいの?凜奈は楽しそうに服見てるし、一緒に服を選ん上げたら?凜奈ならそれで喜ぶと思うけど……」
「いや、俺は今持ってるので足りるし……」
ここで俺は妙案を思いつく。白雪が先ほど言ったように、白雪の服を選んだらいいのだということに気が付く。さすがに興味が無いとわかっていても、他の人……それも約束を結んだ俺なら受け取ってくれるはずだ。
まだ、知り合って長くは無いが、〝魔女〟や英雄という強敵相手に一緒に戦ってきたので、信頼はしている。それに、ローネの夢の中で魔法陣が光輝いたこともあるので、少なからず互いを思っていることは理解している。
俺が頼み込んだら白雪は絶対に断らないだろうという確信めいた何かが俺の中には存在している。少し、汚い手になるが、俺は白雪の可愛い姿を見てみたいという自分の欲望に素直になり、実行することにした。
「いや、やっぱり服を買うから……白雪が選んでくれないか?」
「……どうしてよ?服なんて全く買ったことないし、そういうの良くわからないわ。だったら、女の子してる凜奈に頼んだ方が絶対にいいと思うわ」
「凜奈には良く選んでもらったから、今度は白雪に選んで欲しい。頼む!」
何かを考えている白雪だったが、俺が頼んでいる姿を見ると、軽く息を吐いた。さすがにここまで露骨に行くと白雪もどうして俺が頼み込んでいるかと言う理由に気が付いたのだろう。実際、逆の立場どとしても俺は気が付かないが、白雪はそういう勘的な物が長年召喚者をやってきて、培われたのだろう。
「わかったわ……汚い手ね?海人に頼まれたら断れないじゃない……仕方ないけど、選んであげるわ」
「ありがとう!俺のが選び終わったら次は白雪のを選んでやるから!」
「ふん。初めからそれが目的でしょ?わかったら……まぁ、一度だけなら仕方ないわ。次からは絶対にしないけどいい?」
「ああ。わかった」
途中で買った食べ物を食べ終えると、再び俺達は洋服売り場に戻る。ここの洋服売り場に来るのは、俺の久々なので、注意してみると、服の並びや配置などが全く変っていたり、昔には無かったようばジャンルの服などが増えていた。
初めは白雪の服を選ぶことになっているので、凜奈が楽しそうに見ている場所に向かうと、凜奈は選らぶのを中断した。
「二人ともどうしたの?さっき、洋服売り場から出て行くのを見えたけど……」
「なんでもないわ。それより、海人。早く選んでよ?折角、選ばせて上げるんだから似合うようによ?」
「ああ。わかった。そういうセンスはあるから大丈夫だ」
「嘘つくのはよくないよ?白雪も注意した方がいいよ?海人は服選びのセンスまるでないから」
凜奈の言葉を聴いて、不満そうに俺を見てくる白雪だったが、何も言わなかった。
「大丈夫だ!きっと今度こそ!」
自分自身でも自覚しているセンスの無さを気にせずに凜奈が居た場所で服を探す。この街は熱いので半袖の服が多いが、北海道に行くための長袖や防寒具を探しているので、数は少ないが、しっかり置いてあった。
女の子の服など選んだことがない俺だったが、白雪に似合いそうな服の柄を選んで、見せた。普段着ているドレスと同じ、白を基調とした服なのだが、可愛らしい熊の刺繍が入った服だ。
「これなんかどうだ!」
自慢げに見せて見せたが、服のセンスが無いことを知っている凜奈はジト目で見てきていたが、俺は凜奈の服を選んでいるのではなく、白雪の服を選んでいるのでそこは気にしないようにする。
本人の白雪はその熊の刺繍を見ると、一瞬で目を輝かせた。その女の子のような様子に少し驚いたが、俺は服を白雪に渡して、ためしに着替えてくるように言った。
白雪は確かに服などに興味がなく、普通の女の子とは比べもにならないほどの過去があるとしても、やはり女の子だということを実感した。母親が殺されて、召喚者になった白雪とて、十年前は普通の人間と同じだったのだ。
普通にご飯を食べて、幼稚園などに通って友達と遊んでは寝て……といった普通の生活を送っていたのだ。その中で母親の愛を受けていたのならば、似合う服など可愛いぬいぐるみなどを買ってもらっていたに違いない。そして、そういった物で喜んでいた時期が確かにあるのだ。
「白雪、着替え終わったか?」
「着替え終わったけど……まぁ、見せた方が早いから開けるわ」
カーテンを開けると、そには俺が選んだ服を着た白雪が立っていて、肝心の服は大きさが全く合わず、ぶかぶかになっていた。
「大きさが合ってないか……まぁ、凜奈が選んでいた場所だったから少し大きかっただけだろう。もう少し小さいのを探せば何かいいのがあるかのしれないし……」
「もういいわ。なんか、少しだけ現実を見たような気がしたから」
そういい、カーテンを閉める白雪は少し寂しそうだった。
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必要な物をあらかた買い終わっると、俺達は昼ご飯を食べることにした。凜奈は部屋に帰って食べればいいといっていたが、毎日作ってくれてお礼があるので、今日は二人分を奢ることにした。
そして、食べ終わったら、俺はトイレに向かうと見せかけて、洋服売り場に戻ってきた。理由は簡単で、カーテンを閉める時の白雪が寂しそうだった光景が頭から離れないからだ。
俺は少し小さな服が売っているコーナーに入り、トイレにしては少し長い時間である二十分ほど探していると、熊に刺繍が入った服より、さらに白雪に似合いそうな服を見つけたため、それを迷わず購入した。
予算的にはかなり厳しい値段だったが、普段の感謝を考えれば迷うことなどなく、むしろ、このような形でしか返せないことに少しだけ申し訳なく思いながらも二人の場所に戻り、長かったトイレを誤魔化して学園の寮に戻ってきた。
そして、各自の部屋で準備をする途中に白雪を部屋に呼び出した。俺の方から行くことが出来ないので、呼び出す形になったが、それでも文句も言わないで直ぐに来てくれることが嬉しく思いながら、俺は買った服を渡す。
「何これ?」
「開けたらわかるって」
持った物だからか、丁寧に袋を開けていく白雪は、それが服だということに気が付くと目を丸くした。
「寂しそうだったから買ってきた」
「けど、別にプレゼントしてくれなくても……」
「それは別にいいんだ。日頃の感謝の気持ちを込めて」
〝魔女〟と戦った時、そして英雄と言った強敵と戦い、そして勝てたのは間違いなく白雪が一緒に居たからだ。約束を結び、召喚者として一緒に戦ってきたのは間違いなく、白雪でその感謝を言葉では表すことなど到底出来ない。
「だから受け取ってくれ。絶対に白雪に似合うから」
俺が選んだ服は、普段着ているドレスと同じ白を基調とした服だ。正面には桜の花びらが舞った絵柄で、後ろは桜の木が描かれている。白い服に桜という組み合わせは間違いなく桜白雪という女の子のためにある服だった。
「うん!ありがとう……大事にするから……」
感謝の気持ちを伝えるのに物では失礼だと思っていたが、感謝が強すぎると言葉などでは表せなくなる。そして、毎回命を懸けて一緒に戦ってくれる小さな女の子はそれに値する存在で、守りたいと思う大切な存在だった。
服を眺めながら笑顔で居る白雪を見てそう思った。
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