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読んで下さってありがとうございます!

「ローネちゃん……」


 凜奈は寂しげに呟いた。ローネとは転校してきたと初日から仲良くやれているつもりだった。これからお互いのことをよく知って仲良い友達になれると確信していた相手。だが、それは凜奈の一方的な勘違いで、ローネは初めから〝魔女狩り〟と〝三日月雷鎌ライトニングムーン〟である海人と白雪が目的で接近していただけだったのだ。初めから友情などは存在せずに、ローネは初めから敵として認識して接触てきていた。


 英雄ジークフリードのためだけに転校して海人達に接近したのだ。一度目は凜奈は完全にローネの〝風読み〟が見せる可能性という幸せな夢飲まれてしまった。白雪が夢を壊さなければ間違いなく目覚めることが出来なくなり、夢を見続けていただろう。そして、再び対峙する。


 ローネは前回戦った時よりも強くなっているのは凜奈も対峙しているだけでわかる。発している存在感や、魔力の量が前回とは比べ物にならないものにな

っているからだ。一度夢を壊した白雪には対した効果はないが、今〝風読み〟が見せる夢は前回の海人でも無理だろう。〝魔女狩り〟は魔力の概念を斬る剣なので、魔力で造りだす夢にも強かったが、今は前回の〝魔女狩り〟をも上回っている。それほどに強く洗礼された夢になっているのだ。


「どうしたの?まさか、まだ友達だなんて思ってるの?もし、そうなら……甘いよ」


 ローネは声に殺気が込められているかのように低く、敵意の混じった声を出す。凜奈はローネのことを敵だと認識しているのは間違いない。世界を壊そうと考えている連中を敵と認識しない方が可笑しい。だが、それは一般的な考えで、心の中では敵だとは思えないのだ。それは短い間だってが、一緒に笑ったり話したり遊びに行ったりした記憶が、個人的には敵とは認識してくれない。つまり、凜奈個人的の意見として言えば、あのローネと過ごした日々がもう一度帰ってきてほしいと思っているのだ。もう、そんなこと出来ないのだと理解していながらも、楽しかった時間を強くの望んでしまうのは仕方のないことだろう。故、そこを隙に取られる。


「やっぱりね……凜奈は本当に優しいね……本当に馬鹿みたい」


 足元に浮かぶ魔法陣と共に手には弓道で使うほどの矢が召喚される。前回戦った時と同じ武器なのだるが、形などが異なっている。大きさなどは変化が見られないが、形状が少し変っており、武器から感じる危険な香りも増している。続けて再び魔法陣を足元に展開するローネはいきなり使う。つい数日前に使えるようになった高みを目指す門を開く。


 ローネの周囲からは魔力と共に風が吹いている。足元に展開された魔法陣が回転しながら速度を上げて、淡い輝きを放ちながらローネは詠唱を口ずさむ。夢の世界を強固な世界に変えるために。そして、目の前の元クラスメイトだった凜奈を殺すために第二の扉が開く。


第二次開放セカンドアクセス、開放!!」


 先ほど感じていた魔力よりさらに強い魔力がローネの体から噴出してくる。召喚者でも限られた者にしか使えない第二次開放。それをわずか数週間で使えるようになったローネの夢の世界が広がる。以前に対峙した時に感じていた夢とは全く別次元の強度を持った夢だと凜奈は一瞬で理解した。一度は完全に幸せな夢に飲み込まれてしまった凜奈。海人や白雪のように幸せな夢を夢だと否定出来なかった悔しさは誰にも伝えていないが、胸の中に今でも残っている。


 本当に幸せだった夢。現実だと絶対に叶わない夢だからこそ否定出来なかった。ずっと夢の中で夢を見続けてもいいとさえ考えてしまった凜奈だったが、以前とは全く違う自分に気が付いていない。次、飲みこまれたら終わりだと、不安を抱いている凜奈だが、本人ですら気が付いていない事実……この時のローネも気が付かない。自分の夢の世界が完璧だと疑いを全く持たないのだ。


 完璧ではないのにその事実に気が付かない。そして、今度こそ夢に飲み込んで殺すという決意の裏側にあることにも全く気が付かない。自分のことにすら気が付かない召喚者など論外だ。だが、それがいい方か悪い方かで勝敗が大きく変化する。


 広い空間を侵食していく夢。以前までのローネは矢で体か触れている空気を射なければ誘えなかった夢の世界。しかし、第二次開放セカンドアクセスが使用できるようになり、その制限もなくなった。自身が見せたい相手に好きな時に夢を見せることが可能になったのだ。


「幻影の夢よ。我は夢幻」


 詠唱を言い終わった瞬間に一瞬で夢が広がる。可能性という幸せな夢を見せるローネだったが、今はどんな夢を見せるのかなど知らない。いや、ローネ自体知らないのだ。ローネが見せる夢は相手によって変化する故に本人にすら選ぶ権利はない。だが、どんな夢でも確実にローネは好き勝手改善して夢の中に飲み込まそうとするのは容易に想像が着く。


 事実、一度は飲み込まれた凜奈だったが、自分でも気付かないほど以前の自分とは変化しているとは思いもしなかった。召喚者は強い想いが反映してさらに上を目指せる物で、想いというのは才能などより何倍も大切な物なのだ。強い想いが才能を上回る時など何度もあり、それは召喚者だけによらず人間だって同じだ。


 そして、凜奈は以前にはなかった一つの想いを持っていた。以前までは海人を守りたいや、独り占めしたいなど自己の想いしかもって居なかった凜奈だったが、今は自覚出来ていないが、心は自覚していた。あの二人……海人と白雪の道を作るという想いがあることを自覚できない。それが、とてつもない大きな想いになっていることも。


 広い空間から視界が除々に変化していく。暗い空間は真っ白な光の空間に変化していき、意識がはっきりしなくなってきていた。どんなに強い想いを持っていて上の存在であるローネの夢を回避することなど凜奈には出来ない。出来るとすれば夢に入り、内部から壊してく他方法は存在しない。そんなことなど知っている凜奈は不安な気持ちがありながら笑みを浮べていた。


 理由は簡単で、飲み込まれた時に悔しいと感じた凜奈は再び機会がやってきたのだ。その悔しさを掃うことが出来る機会がめぐり合わせてきたのだ。二人の道になりたい凜奈はもっと上を目指さなくてはならない。悔しさを抱えたまま道になれるはずもない。自覚していない想いが、笑みを作らせていたのだ。


 だが、そんな事実に気が付かないローネは不覚にも夢を見せる。本人にとって最大の幸せになるであろう夢を。


 強い魔力が込められると共に凜奈の意識はなくなった。






**********






 凜奈が目を覚ましたのは自分の部屋だった。生まれてきてからずっと暮らしている自分の家の自分の部屋は見慣れたという言葉すらも超えたほど毎日まいにち見てきて、寝ている部屋だ。綺麗好きの凜奈は良く整理整頓をするので部屋は綺麗で女の子だと思わせるような、明るい色を使った部屋で、ぬいぐるみなども様々な種類が存在する。


 ベットから起き上がり、部屋を出る。一軒家で過ごしている凜奈の部屋は二階に存在するため、急な階段を横にある手すりを使いながら降りて、洗面器に向かい、顔を洗ってリビングに顔を出す。両親は朝早くから仕事のため基本的に朝は家に居ないため誰も居ないリビングも凜奈にとっては見慣れた日常だった。机の上に置いてある母親が作ってくれた料理も見慣れた日常だった。しかし、何か違和感が存在する。今まで一度も感じたことがなかったのに、なぜか明確に〝違う〟という違和感が存在するのだ。


 しかし、何が違うのか理解出来ないため説明することは出来ずに、とりあえず母親が作ってくれた料理を温めている内に、存在した違和感のことも頭の片隅にも残っていなかった。今まで生活してきた日常だと認識するようになっていたのだ。


 朝食が終わり、学園までの時間をテレビなどを見て潰してから制服に着替えるために部屋に戻る。そして着ていた服を脱ぎ、制服が入っているタンスを開けると頭にノイズが流れた。鼓膜を破るような轟音が頭の中で響き、凜奈はそれに耐えられずに頭を押さえた。


 リビングで感じた違和感が再び襲いかかった。先ほどよりも強力に〝違う〟と頭が訴えているのだが、何が違うのか説明出来ない。そもそも見慣れた日常なのに何かが可笑しく見える……いや、今の凜奈にはこの家に居ること事態全てが違和感になっている。自分が住んでいたのは家ではなく、学園の寮だということを訴えているのだ。


「一体どうなっているの……?」


 頭の痛みが引いてきた凜奈は誰も居ない部屋で呟いた。もちろん、誰も居ない部屋なので返事はないと凜奈自身理解していたが、それすらも寂しくなる感覚に襲われる。もっと、いつも誰かが近くに居たはずなのに……という感覚に襲われているのだ。


 完全に痛みが引いた頭だったが、ノイズが流れてから全てが違和感に見えるようになった凜奈は、とりあえず記憶にある学園に向かうことにした。そこは市内で一番高い学力を誇る学校で、進学校となっている有名な学園だ。そこには中学生の時の友達は居らず、同じ中学校の者などれ一人も居ない学園だ。凜奈はそこに入学したと記憶ではなっている。努力して入学した記憶は存在するのにそれも頭は否定する。強い違和感は全く拭えない。


 学園に向かうと、そこは二年間通っている学園その物だった。校舎の造りや色。自分が着ている制服など全てが当たり前の日常のはずなのに〝違う〟という違和感が存在する。どこを見ても全てに対して記憶は存在するのに、自分が居るべき場所はここではないと、迷いも無く否定してしまうのだ。


 教室に入ると、クラスメイトが挨拶をしてくれる。凜奈は学年でも優秀で、人付き合いもいいし、容姿もいいので男女関わらずに人気があるのだ。毎日のように遊びに誘われたりなどされるほどに皆に好かれている。


 教室もクラスメイトの皆、見慣れた光景なのに違和感が存在する凜奈は、ある人物を探して教室を見渡す。だが、その人物はどこにも存在しない。顔も覚えていないのが、凜奈は二人の男女を探していた。一人は転校生でもう一人は幼馴染の男の子……。


「おはよう、凜奈」


 後ろから肩を叩かれたので振り返る凜奈に満面の笑みを浮べている女は……一瞬、凜奈は目の前に居る女の正体がわからなかったが、すぐに頭が思い出したように誰かと思い出す。目の前に居るのは凜奈の幼馴染だ。元気だが、大雑把な幼馴染は小学校が始める前からの知り合いで、家が近所だったので昔から仲がよかった女の子だ。


(あれ……どうして一瞬だけ幼馴染が男の子だと思ったんだろ?)


 ずっと続いている違和感がより強くなったように感じた凜奈。何か一番大切なことを忘れているのではないかという想いに駆られる。だが、その大切なことは全く思い出せない。記憶にノイズが掛かった感じに見えないのだ。意図的に隠されているとしか思えないほどに。


 見えない記憶の中で、一番光り輝いている記憶は大切な幼馴染との記憶。霧が掛かり見えなくなってしまっても光り輝いているのは理解出来る。誰が何を言おうとその幼馴染と過ごした思い出に幸せではない瞬間なんて存在しなかった。凜奈が自然体で傍に居られる大切な存在で、幼馴染に勉強を教えたのも一緒の学園に入学したこともそうだ。


 意図的に見えなくされていた記憶が強く光り輝く。ローネが完璧だと思った世界で唯一の欠点。その欠点はたった一つで、普通ならあまり世界に影響のない欠点なのだが、それをしたためにローネは完璧ではなくなり、凜奈を世界に引きずり込むことが出来ない。


(どういうことなの?どうして夢に引きずりこめないの?どこが悪いの!)


 尚、完璧だと自負しているローネは世界にある唯一の欠点の存在に気が付くことが出来ない。いや、そもそも普通なら気付かないほどの欠点なのだが、この場合は大きな意味を持つ欠点。


 夢というのは想いが強く反映されるものなのだ。夢の世界で……特にローネが見せる夢というのは相手に干渉して見せる夢なので、想いというのは必然的に世界に込められるのだ。凜奈が幸せな夢を描くには一人の存在が足りない。ローネはその欠点を必要ないと剥いでしまったのだ。絶対に必要な要素だと知らずに世界から除外してしまった。幼い頃から傍に居た海人を除外してしまったために凜奈は夢に飲み込まれない。


 召喚者というものを捨てて普通の高校生活は確かに幸せだろう。傍には優しい両親が居て、学校に行けば楽しいクラスメイトが居る。そして、異性ではなく同姓の幼馴染が居る世界は普通の人ならば幸せになれる夢だ。しかし、凜奈には海人という絶対的な存在が足りていなかった……いや、海人だけではない、殺されかけた白雪だって今の凜奈には大切な存在だった。


 二人が約束エンゲージを結んだ時はあれだったが、今の凜奈は心の底から二人を応援している。理由は簡単で、二人が戦争に賭ける想いが本物だということは傍に居た凜奈が知っているからだ。勝つために色々練習など努力をしてきた二人を知っているから。


「どうしたの凜奈?」


声を掛けてくる幼馴染は既に悟った顔をしているが、それでも普段の日常通りに笑顔を向けてくるが、既に意味などなかった。凜奈は霧が掛かった記憶を思い出して、何が大切だったか、ここがどこだとか、自分は一体何を望んでいるのかなど全て理解していた。凜奈は戦争に勝利して願いを叶える二人の道になると決意を決めていたのだ。夢に入るまでは自覚をしていなかったが、今はしっかり自覚している。以前より練度が上がった世界で、常に違和感を持ち続けていたのは足りなかったからだ。


 凜奈にとって幸せになるための要素がこの世界にない故に違和感を持ち続けていたのだ。そして、要素がない世界で幸せになることなど絶対に不可能であり、いくら改善しても既に遅い。ローネは完璧である世界で、完璧ではなかったのだ。


 完璧だと自負していたからこそ凜奈の心を読まなかった。読んでいればこのような結果にはならなかったはずなのに。


「もういいよ。私の幼馴染は海人だけだから」


 その言葉に目の前に居る幼馴染の顔が歪む。先ほどまであった違和感は完璧になくなり、ゆっくりと世界の崩壊が始める。夢は可能性を見せるもので、押し付けると意味がなくなる。ローネは凜奈がこう思っているだとうという想いを勝手に決めて押し付けただけなのだ。


「私は二人の道を作る。今は弱くて明確な物は一つ見えてないけど、あなたは……ローネちゃんは〝敵〟だよ」


 視界は白く染まり、世界は完全に崩壊した。









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