表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/107

 〝小鳥の箱庭〟を倒してから一週間が経過した夜、海人は一人でベットで寝ていた。毎日している流れを掴む練習に疲れ、そして学園までも通っている海人はそうとう疲れも溜まっているらしく、寝つきが良い海人はさらに寝るようになった。いくら召喚者だからといえ、人間より疲れにくいが、それでも疲労は蓄積してそれを開放するのには睡眠は必要不可欠だ。


 魔力の回復をさせるためにも睡眠は一番効果的で、疲れを取れると共に魔力も気力も回復できる睡眠は基本孤独である召喚者には毎日するべき必須のことで、奇襲など仕掛けられて戦うことになったとしても大丈夫なように万全の状態で戦うことが出来るように睡眠は基本毎日取るものだ。


 召喚者に必須である睡眠をしている横に一つの小柄な影が存在した。普通、召喚者な知らない魔力などに敏感で、真横になど居られたら一瞬で武器を召喚して戦う物なのだが、海人は隣に召喚者が居るのにも関わらず、目を覚めることはない。それどころか、近くに居るのが当たり前と感じるような安心感を覚えて海人は寝ている。


 事実、海人の隣に居るのは約束エンゲージを結び、互いに願いのためならば全てを捨てる覚悟で戦うことを決意したパートナーの白雪なのだから警戒しないのは無理ないのだが、真横に召喚者が居るという状況でのんびり寝ていられる状況はどうにかしてほしいと考える白雪。学園に転校してきてから自身の部屋を与えられている白雪は海人の部屋でご飯を食べてから寝る頃には帰っている。こうして真夜中に海人の部屋に二人で居る状況は最近滅多に見ないようになっていた。


 白雪は普段海人を見ている目より優しげな目で見ており、時々寝顔を突っついたりなどしているが起きる気配なのまるでない。それほど白雪を信頼しているという証であり、白雪自身もその事実に気が付いているからこそ部屋に居るのだ。そして、こうして白雪自身でも理解できないほどの優しげな顔をしているのだ。


 素直に嬉しいと思う反面、白雪は不安になる。それは海人の期待や信頼に答えられているのかという不安に駆られるのだ。信頼とは相手のことを信じているからこそ起こるもので、相手に答えられていないなどとはありえないと理解していながらも尚不安に駆られる。そして自分に向けられている信頼という言葉をどのように受け取っていいのかわからないのだ。


 白雪は今までずっと一人だった。召喚者になる前は家族などが居たが、それは幼い日のことで信頼などという言葉は知らなかったし、仮に知っていたとしても正しくは理解出来なかっただろう。お母さんのことが好きだったことはもちろん覚えているが、それは信頼とは違う。大好きという言葉と信頼は全く別もので、大好きは全てを包めている言葉なのだろう。


 海人のことは信頼している。約束エンゲージという大切な絆を結んだ相手にそもそも信頼を寄せない方が可笑しいのだが、出会って殺されかけた相手と約束を結ぶなど本来はありえない選択なのだが、海人はただ、願いが叶うから白雪と約束を結んだに過ぎない思っていた。だが、それは違うと一週間前の〝小鳥の箱庭〟との戦いをえて理解したのだ。


 あの時、白雪はアンナに殺されるという覚悟をした。〝影縫い〟に騙され殺されかけた時に白雪は海人に感謝の気持ちを伝えなくてはならないと思った。死にたくないというとこより、海人を別れたくないと感じてしまったのだ。それは本来願いを叶えるために戦いに参加した白雪だが、それよりも約束エンゲージを結んだ海人のことを優先してしまったのだ。


 あの時気付かない振りをしていたが、白雪だってアンナと男の約束エンゲージが光り輝いている理由など容易に想像が付いた。想いが反映される世界で白雪達の願いを叶えるという想いは反映されなかった。それは白雪達の想いが弱かったという訳ではなく、アンナと男の中にある想いが強すぎたのだということも。誰かを守るために全てを捨てる想いと、自分の欲望を叶えるために全てを捨てるという想いは誰がどう聞いても前者の方が正しい。人それぞれ価値観や考え方などは違い、どれが正しいという答えは存在しないが、それでもあの空間では白雪達の……後者である想いは負けてしまったのだ。


 だが、白雪が死を覚悟した時、確かに海人の約束エンゲージを結んだ証である魔法陣が光輝いたのだ。それは海人が白雪を助ける時に願いより白雪を優先したという事実で、それが何より嬉しく、考えるだけでも顔が綻んでしまう。


死ぬ覚悟をした白雪にとって助けに来てくれた海人はまさにかっこよく、そして嬉しかった。今回〝小鳥の箱庭〟に勝利できたのは間違いなく、海人のおかげだと思っている白雪。事実そうであり、白雪一人で戦っていたら間違いなくあそこで死んでいた。そもそも〝魔女〟にすら勝つことが出来なかっただろうと思っている。


「全く……いつまで寝ているのよ?」


 微笑を浮べながら声を掛けるが、起きる気配はまるでなかく規則正しく息を吐いたり吸ったりしている。自分がどれだけ感謝しているのかもしらないで呑気に寝ている海人に少し不満を抱きながら、決して目を離さない。


 白雪が海人の部屋に来てから一時間ほどが経過していた。別に気配を消している訳でもないのにここまで寝ていられることは、信頼など関係なく心底呆れているが、それでもなお、見つめることをやめない。


 白雪は母親が大好きだった。今なら間違いなく愛しているといえる唯一の存在で、母親が一番で何よりも何よりも大好きで大切で、白雪個人より大事なのは変らずに、死んでしまって十年経過しているのにまだ追い続ける存在。命より大切で世界なんてどうでも良くて、ただ母親が生きている隣に自分が居られたらそれだけで良かった白雪に出来た、約束エンゲージを結んだ、戦争を共に戦ってくれるパートナー。海人は白雪の特別な何かになったのは間違ない。


 それが母親より特別になったか、と問いかけられると首を傾げるが、それでも心の何割かは秘めていた。それは紛れもない事実で……。


「さすがに私も眠くなってきたわ……」


 今日も魔力を使ったりしたので睡魔が襲う。召喚者である白雪は人間でも五分も掛からないほどの距離にある寮に数秒で着くことが出来る。しかし、今は帰る気分ではなく、何かの暖かさに触れたい気分だった。


「失礼……」


 爆睡している海人の布団にこっそり入り、近づいた。そこは白雪が十年前に失った暖かさがあり、不意に母親と過ごした記憶を思い出して泣きそうになりながらも心は居心地が良かった。


「おやすみ……」


 白雪はそっと目を閉じる。失った暖かさと居心地の良さと疲れにより、一瞬で意識を失ってしまった。隣で寝ている海人の存在は、心の中にある母親と過ごした時間より、暖かくなりつつあることに白雪は気が付かない。それが、召喚者にはよく、強者になるためには必須のことだとも。






*********








 目覚めると俺は町の中に居た。町の中で最も人が集まる場所で、そこのベンチに座っていたのだ。自分のベットで寝た記憶が存在するのに町に居るのが当たり前のように感じる俺は周囲を見渡し、状況を整理しようとするが、特に可笑しな部分はなく太陽も昇っていて人で賑わっている町の中心部。俺が生まれてずっと住んでいる町その物だったが、不自然なほどに違和感を覚えている。


 周囲は記憶にある通りいつも通りなのだが、記憶と全てが同じ状態なのだ。例えば、少し先に居る双子の兄弟が風船を持ちながら手を繋いで居る光景があるのだが、それは以前、ローネに町の案内をした時に同じ光景を見たのだ。それ以外も、時間軸は違うといえど記憶の中にある光景ばかりで、始めてみる光景が一つもない町だったのだ。


 本来そのようなことなどありえない。仮に同じ服を着ていても行動には誤差が出るはずだ。召喚者といえど以前と全く同じ動きをするなど出来る訳なく、同じにしようと思えば時間を巻き戻すか、あるいは俺の記憶の中にある光景をそのまま見せられているとしか考えられない。


 召喚者になったことにより人間の時より記憶なども繊細に思い出せるようになった俺が、全く同じ行動をしている人達に気付かない訳などなく、仮にコンマ数秒のズレがあったとしても同じような動きを無意識にするなどありえない。


 ベンチから立ち上がり、不思議に思いながらも町を歩く。俺の目に映る人々はこの町に生まれてからどこかで見たことがある光景、動きをしており、その事実がここがどこなのかを察することが出来た。


 ここは現実の町などではなく、どこかか似ている別の空間なのだろう。だが、〝小鳥の箱庭〟のように機械を使った訳でも、記憶通りだとしても召喚者以外の存在が居るということは魔術閉鎖空間イージスではないだろう。この二つが消去されたということはもう、選択肢など一つしか残ってなく、俺には心当たり……そんなことを出来る召喚者を知ってる。


「そこに居るんだろ?」


 俺の声に反応する町の人など居なく、別の世界に切り離されている感覚を覚えるが、似たようなものなので気にせづにある確信を持って背後を向き、声を掛けた。


「こんな世界を見せられる奴は俺の知っている限りでは一人しかいない……ローネ……いや、〝風読み〟と呼んだ方がいいか?」


 周りの人々が一瞬に消えて、誰も居なかった場所から一人の少女が現われる。英雄ジークフリードの妹で、世界という枷から人々を解放させようとしている英雄派の一人であるローネ。短い間だけだったけど、同じクラスメイトとして仲良くできていたはずだった存在。今は完全に敵同士となってしまった元クラスメイトだ。


 空間が歪むように出現したローネと対峙した瞬間、初めて戦った時より強くなっていることが一瞬で理解出来た。サクやローが言っていた通り、ローネは短時間で強くなったのだ。以前は使うことが出来なかった高みへ上る第二次開放セカンドアクセスも今は普通に使えるようになっているだろう。召喚者として圧倒的な強さを誇る英雄ジークフリードと血の繋がった兄弟。召喚者としての素質は問題ないのだ。それが、強くなるための努力をすれば強くなるのは当たり前で、そのことが理解出来ているからこそ対峙しても驚きを表に出すことなどない。


「声に出さなくても感じるけどね?」


 俺は一瞬ローネが何を言っているのか理解出来なかった。ただ、魔術的な発動は感じられなかったから魔法を使われた訳ではないのだが、ローネは考えていたことに返事をするように言葉を発した。それが、偶然などではないとしたらローネは心を読んだということになる。


「その通りよ。私は心を読めるようになった……とまでは言わないけど夢の扱いがうまくなったのは事実ね」


 〝風読み〟というのは相手の可能性という幸せな夢を見せることが出来る魔法だ。以前のローネは過去に囚われていたために幸せな夢しか見せることが出来ずに負けた。だが、夢の扱いがうまくなったというとこは、幸せな夢を見せるだけではなく、可能性という悪い夢も見せることが出来るようになったということなのだろうか。


「違うわ……単純にここは私の世界なの。私の魔力で作った私だけの世界。そんな場所に他の人も入れているのだから入っている相手のことなど読むことは簡単よ。この世界では私基準で全てが回っているんだから」


 ローネはクラスメイトとして仲良くなった当時と同じ笑顔を浮けべて居る。だが、それは上辺の笑顔だけで、目からは明確に敵意という殺気が込められていて、もうあの頃には戻れないということをさらに強める。敵同士互いが望んだことを叶えるために俺達は戦うことでしか交わることが出来ないのだ。それが運命だと言われれば、言えなくもないが、俺達が選んで選択は運命などではなく自分自身の心で選んだのだ。運命なんていう借り物で言い表せる言葉ではない。


 それに俺の胸にはその願い以外にも他の強い想いが宿っている。それを自覚したのは最近で〝小鳥の箱庭〟と戦っている時に白雪に死んでほしくないという約束エンゲージを結んだのだから感じて当たり前の想いを強く抱いている。絆を結ぶ約束をした俺達はもはや二人で一つの存在だ。


「あっそ……それはよかった……けど、もうおしまい。世界という枷は〝明日〟をもって破壊されるわ。私達によって……」


 それだけを言い終わると、再び空間歪むように消えていったローネだが、それと同時にローネが造った夢の世界も歪み始める。造った本人が世界から消えたことによって支えきれなくなってしまったのだろう。


 歪み世界がゆっくりと見えなくなると、俺は寮のベットに居た。隣にはなぜだか知らないが白雪の甘い香りが残っており、体を起すと白雪が窓の外を見ていることに気が付いた瞬間、異変に気が付く。


 ここはローネが造った夢の世界でもなく、現実だというのに今までに感じたことのない魔力が漂っている。英雄ジークフリードから感じた魔力など取るに足らないほどの量の魔力が現実世界に漂っているのだ。


 ベットから急いで立ち上がり、白雪が見ている外を見てみると、そこには今まで見慣れていた光景に一つだけ異常な光景が混じっていた。黒く、雲の上まで伸びている長い塔が存在していた。外装は石のように見えるがどうだかわからない。ただ、わかることは空気中に漂っことている魔力はそこから流れているものだということだけだ。


「まさか、夢の中でローネが言っていたことはこれのことだったのか……」


 〝明日〟には破壊されるとローネは俺に言ったのだ。つまり、これ魔力を流しているのも英雄派ということになる。そうでなければローネが知っている訳ないのだから。英雄ジークフリードが考えたのであろうこの塔は一体何だ。何のために存在しているのかまるでわからない。


『相棒、あれは古代の兵器だ』


『うむ。あそこまで巨大な物を見るのは初めてだが、見た感じそれ以外ありえない』


 サクとローが同時に同じ答えを発した。


「古代の兵器?」


『ああ。誰が作ったのかわからないが、古代の兵器だろう。どんな物なのかは知らないが、このまま放置していれば厄介なことなど軽く超えた事態になるかもしれない』


 古代の兵器……それは大昔の人類がどういって造ったのかわからない兵器のことだ。ほとんどの物は使えない物など、使い道がない物ばかりだが、強力な効果を持っている兵器だ。人類が造ったことすらも罪になるほどの強大な効果が出る。


 俺と白雪は塔を見つめていた。体が疼くほどの強大な魔力を感じながら、全貌を見るために雲の上まで伸びている頂上を見るために目を凝らした。頂上先端部分には蒼く輝いている石が嵌めこまれている。それは戦争において十三個集めると全てを超越することが出来る大魔術を発動するために必要な石。魔術蒼石マテリアルブルーだ。


「一体どういうことだ……」


 刹那、塔が一瞬光輝き、町全体に伝わるほどの揺れが発生した。


















 読んで下さってありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitterやつまているので、よろしければフォローお願いします!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ