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準備

そこは暗く広い空間で、周囲には二人以外の誰も居ない状態。声どところか足音すらも響き渡るほど静かな空間で、二人の召喚者……英雄(ジークフリード

)と〝風読み〟の二人が居た。先ほどまで〝小鳥の箱庭〟と〝魔女狩り〟との戦いを見ていた二人は、互いに寄り沿い合っている。邪魔者が存在しない空間で体を重ねるほどの兄弟が無言で戦いの様子を見ていたのだ。


 英雄ジークフリードは初めから〝魔女狩り〟達の勝利を疑っていなかったが、それでも〝小鳥の箱庭〟が操っていた女……アンナが急に人間のように動き、感情を持って召喚者として戦いに参加するなどという展開はまるで予想出来なかった。だが、それが無ければ〝魔女狩り〟が、大切なことに気が付くことがなかったと考えると、アンナという女は充分役に立ったと言えるだろう。


 本来なら死んだ人間を操り人形のようにするとこ自体が異常なことなのに、死んだ人間があの空間だけだったとはいえ、召喚者として再び〝小鳥の箱庭〟と出会えることなどありえないことだ。だが、強い想いが反映する世界ならではと考えると納得出来る、英雄ジークフリードもあの二人の覚悟と想いだけは心の底から信頼しているが故、面白いと感じていた。


 想いというのはこれほどまでに絶大な力を持っていることに気が付き、それを面白いと感じていた。〝魔女狩り〟は自分の願い以外に大切なことに気が付き始めた……その事実は英雄ジークフリードにとって喜ばしい事実だった。絶大な力を持つ想いに気が付き始めたということは、つまり、次戦う時は前回対峙した時よりも強くなっているということなのだから。それに、もし〝三日月雷鎌ライトニングムーン〟すらもその想いに気が付いたとなればさらに成長する。


 あの二人はいずれ世界を代表するような召喚者になるはずだ。それほどの才能を秘めている二人……今は才能を発揮してないとはいえ、そんな怪物と戦えるという事実は英雄ジークフリードにとって心躍る出来事だ。もし負けたとしてもあんな怪物相手に負けたとなればそれだけで、満足だった。〝零世界〟というこの世の怪物すら倒すかもしれない可能性を秘めた二人は……いずれ、戦争に参加している召喚者には最も脅威になる敵だろう。そして、強い者は大概その事実に気が付き、弱い段階で狩ろうとする。才能が発揮などしてしまえば手に負えなくなるからだ。


 強くなった二人と戦うというのも心躍るが、英雄ジークフリードは強くなる前に戦い、狩りたいと思う派だった。弱者を狩るのが趣味などではなく、戦闘中に急激に強くなった方が面白いからだ。悲しみしかないこの世界で人々の解放を願う二人の召喚者は、約束エンゲージという絆以外に、兄弟という血の繋がりまであるが、心の底から願っている願いは別物だった。


 ローネは本当に世界から開放されたいと願っているが、英雄ジークフリードはそうではない。世界という枷から開放されたいのは事実だが、本来、英雄というのは強者との戦いを好むものだ。英雄ジークフリードもそれと同じで、純粋に戦闘がしたいのだ。願いなど、最愛のローネが叶えたいと言っているから目指しているだけで、この戦争自体を利用して強者と戦いたいだけなのだ。


 そして先代が優勝した〝魔女狩り〟と〝三日月雷鎌〟である二人は誰もが認める強者だろう。今は弱くても警戒しない者など存在しないほどの召喚者としては有名な二人。そんな二人と戦えるという事実は英雄ジークフリードにとって何より嬉しい出来事だった。


「どうしたんですか、お兄様?笑顔なんて浮べて」


 戦うことを想像していた英雄ジークフリードは楽しみのあまり顔に出ていた。ローネからは笑っているように見えているが、他の者が見えれば狂気に満ちた笑みを浮べている。


「なんでない……それよりどうだ?見た感想は」


「特にはありません……ただ、以前より強くなっていますね……まだ雑ですけど魔力の移動が前よりうまくなったように見えます」


「そうだな……それに動きも鋭くなったという印象も覚えた」


 〝小鳥の箱庭〟とアンナに気付かれないようにカメラのような物をつけていた二人は映像を見た感想を言い合う。召喚者というのは持っている情報で相手との戦い方を学ぶことが出来るため、弱点などは見せてはいけないのだが、二人は監視されている。それが、どれだけ今後の戦いに影響するかも知らないまま色々見せていたのだ。


 相手の行動の分析や弱点などは戦闘の状況によって変化するが、本人の意思とは別に無意識の動きなどは解析されてしまうと隙だらけになる。回避しようとする場所など咄嗟の防御の位置、隙など本人は意識していない。それすらも意識して相手に隙を作らせることなどは出来るが、並大抵のことではなく、英雄ジークフリードにすら出来ることではない。


 さらに上に居る召喚者などは出来る者も居るが、そういう召喚者はそんな隙など作らないで、完全な防御をされた上からでも瞬殺で殺すことが出来るため

する理由などはないが、実力が均等した相手ならば用いることもある。そしてそれを罠だと気付くことが出来なければ殺されるだけの話だ。


「まぁ……実際に戦ってみないと理解出来ない部分もあるだろうが……」


 映像などは相手の弱点などを観察することが出来るが、相手の雰囲気までは観察することや、感じることは出来ない。例えば、映像では罠だと直ぐに気が付くことが出来ても、実際に対峙した時の雰囲気が本当など感じさせるものであれば、その罠に引っかかることなどあるということだ。動きなども映像ではわかりにくく、実際どう動くかは本人達の頭の中にある物で、つまり予想しか立てなれないということだ。


 映像を消し、二人の視線はある巨大な機械に行く。暗闇の中でその機械を見れる者は召喚者しか存在せず、そして召喚者である二人は機械の巨大、造りなどは細部まで見れるが、二人にも機械がどうやって造られているかなど理解出来なかった。しかし、造りなど理解出来なくても使い方さえ理解していれば何の問題もない。知りたいのは使い方ではなく、これを使うことによって世界がなるのかなのだ。


「準備の方は進んでいるか?」


「はい……一週間後には起動できそうです……」


「そうか……まぁ、頼んだよ。これはローネにしか出来ないことだから」


「はい。わかっています。必ずしも願いを叶えて見せます……」


 機械の中には魔術蒼石マテリアルブルーが一つだけ存在している。十三個集めれば全てを超越した大魔術により願いを叶えることが出来る石だが、一つでは大魔術を発動させる魔力がない。だが、その一つだけでも召喚者など理解の外のような魔力が込められていて、世界で最強と言われている召喚者である〝零世界〟ほどの魔力が込められている。これだけで〝零世界〟がどれだけ異常かなど他の召喚者からすれば容易に想像できるのだ。


「それじゃ、一週間後に始める……楽しみだな」


 英雄ジークフリードはあの二人と戦えることを思い出すと再び狂気に満ちた笑顔に変る。強者と戦うことに感じる喜びはもはや異常で、自分の命が奪われる可能性が存在するにも関わらず楽しみなのだ。否、自分の命が脅かされるからこそ楽しいのだろう。


「それのことですが……本当に来るでしょうか?」


「ああ。間違いない。あの二人はこの世界に幸せを抱いている。ならばそこ幸せを壊そうとする俺達が行動を起すのなから来るに決まっている。俺達を殺しにな……」


 不安など一切ないような自信の言葉。本当にそう思っているのだと容易に理解出来、そして英雄ジークフリードは〝魔女狩り〟達を信じていた。再び戦うことが出来ると……。










読んでくださりありがとうございます!


 用事が入るため、更新ペースが少し落ちるかもしれません

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