表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/107

玩具

「出来た!!」


 早朝四時ごろに俺は達成感のあまりに大声を上げてしまった。だが、それほど嬉しい出来事が起こったのだ。


「遅いわよ!どれだけ時間かければ気が済むの?」


「すいません……」


 喜ぶ気持ちに水を指されてしまったが、本当のことなので謝罪をする。俺達が流れを掴む練習を始めてから四日ほど経過した。初日は凜奈だけが成功して終わったが、白雪は凜奈と同じぐら出来るようになってしまい、結局俺は四日目に始めて手に魔力を凝縮して集めることに成功したのだ。


 場所はひと気がない森にある廃墟。周囲には木以外何も無いため、多少魔力を使っても一般人に被害が出ることはまずない。なのでこの場所を練習場所に選んだのは四日前。できるかどうかわからなかったが、人はやれば出来ないことはないと立証された瞬間だったのではないだろうか。


「海人、やっと出来るようになったんだ。おめでとう」


「ありがとう、凜奈は優しいよ……」


 誰よりも凝縮がうまくいった凜奈は既に四日目とは比べ物にならないほどの魔力を凝縮することに成功している。実戦で使うにはまだ早いが、このペースで行けば使えるようになるもの時間の問題だろう。


「なによ?私が優しくないみたいな言い方で少し不愉快だわ。海人が遅かったのは事実でしょ?」


「確かにその通りだけど、頑張った俺に声を掛けてくれ」


「ガンバッタネー」


「あ、ありがとう……」


 棒読みなのは気になるが、それで満足しておく。自分で言うのは何だが、これを成功させるために本当に頑張ったのだ。この四日間、二人と開いた遅れを取り戻そうとほとんど寝ていない。この睡眠大好きの俺が寝ずに何かを真剣に取り組んだのはこれが初めての経験だった。


『けど、相棒は本当に頑張った。いつも近くで見ていた俺が保障する』


 サクが珍しく褒めてくれる。こんなこと今までになかったはずなので、心の底から嬉しい。だが、実戦ではもちろん使えないし、そもそも、四日前の凜奈より遅いのだから話にならないが、成功したという事実は大きな進歩だろう。


「まぁ、確かに頑張ったと思うわ。海人にしてわ」


 四日前には同じスタートラインだった白雪は俺からすれば背中すら見えないほどに先に行っていた。覚えが早いのか要領がいいのかわからないが、俺には無いものを持っているのは確かだった。召喚者になって十年という月日は伊達ではないということだ。


「まだ、時間もあるしもう一回やるか……」


 まだ、心臓の動きが落ち着かないし、汗もかいているが、実戦中はこのような状態で常に出来るようにしなければならない。体力は回復してからなどという甘い考えは捨てなくては英雄ジークフリードになど勝てない。先代が苦戦するレベルの敵……容易に勝てる敵ではない。


 英雄ジークフリードを倒すために燃え上がった炎をさらに燃やし、静かに目を閉じた。そして、魔力の塊から微量の魔力を手に送り込むイメージをしながら集中する。そして大雑把になりそうな魔力を凝縮しながらうまく移動させながら、さらなるイメージをする。


 それは実戦として戦っているイメージ。実際は目を閉じて集中などしている暇はないし、敵も目を閉じた絶好の瞬間を逃すほど、この願いを叶える戦いに参加している召喚者は甘くない。一瞬の隙が命取りになると思わなければいけない。


 敵の攻撃を回避しながら〝魔女狩り〟に凝縮した魔力を流し込むイメージ。そして、流し込んだ魔力を剣先に集め、攻撃するイメージ。そいったシュミレーションをしながら手に魔力を送る。


「っ!」


 魔力を流し込むことに成功した俺はそっと目を開ける。感覚だが、一回目より二回目の方が格段にはやくなっている。やはり、一回成功したという事実を体が覚えているのと、少しだけ感覚をつかめたことが早く出来るようになった理由だろう。


『うむ。二回目の方が遥かによくなっている。その調子でもっと早く出来るようになって、実戦で使えるようになれ。そして、いつも上を目指す意識で魔力を流し込め。イメージや気持ちが召喚者に影響あることは知っているはずだ』


 いつも上を目指す意識。それはやるごとに早く流し込めるようにするということで、回数を重ねると経験地が増えるので少しづつでも上に行こうとする思いは決して裏切らない。何があっても絶対に。


「それでもまだ遅いわ。もっと早く出来るようにならないと」


 約束エンゲージを結び、絶対に叶えたい願うを持つ白雪は自分に対しても俺に対しても絶対に妥協しない。早くなったとはいえ、それは俺達が元から遅かったから早くなっただけで、英雄ジークフリードとかに比べれば止まっているのと同じぐらいだということだ。妥協は成長するのに邪魔だと白雪は理解しているのだ。


「そうだね。せいぜい目を閉じずに出来るようにならないと……」


 そいうって、目を閉じる凜奈。集中して魔力を凝縮しながらイメージを重ねる。どんなイメージをしているのか他の二人のは知らないが、二人共俺と同じように実戦を意識したイメージをしているだろう。


「よっと、出来た……けどまだダメ。もっと頑張ろ」


 約三秒ほどで魔力を凝縮出来るようになった凜奈だが、それでも上を目指そうとしている。一体どんな気持ちでやっているのか俺では理解出来ないが、きっと凜奈にも人にはいえない思いがあるはずだ。小さい頃から一緒にいる幼馴染すら言えない思いが。


「そうね。凜奈も頑張ってるし私も頑張らないといけないわ」


 白雪も凜奈と同じぐらいの早さで魔力を凝縮出来るようになっている。だが、それでも上を目指そうとする。そんな二人を見て頬を叩き、気合を入れなおした。


「俺も頑張るか!」


 ヒーロー染みた願いを……みんなが笑顔で過ごせる世界にするために、負けは許されない。何を賭けてでも魔術蒼石マテリアルブルーを十三個全て集めて願いを叶えてやるその日まで諦めることはしない。





********






 午前六時半になったので俺達はこっそり寮に戻った。そして着替えて俺の部屋に集合してから朝食を取り、学園に出かける。普段と変らぬ時間と変らぬ光景。毎日、毎日同じ光景ばかりだが、完全に一緒の光景など二度と無い。似ているだけでそっくりは無いのだ。


「学園は特別な場所だ」


 誰に聞こえないぐらい小さく呟いた。


 学園は俺達召喚者である三人が普通の高校生として生活出来る数少ない時間。少しでも外に出れば他の召喚者が居ないかなど周囲に警戒したり、今後どうなるのかといった重圧が圧し掛かる。だが、学園に行っている間は見た目だけ高校生としてやっていける。召喚者になるまでは行きたくなかった学園だが、今は面白くはなくても行きたくないとは思わなくなった。



 下駄箱で靴を履き替えて教室に入る。鞄を机の横にかけて黄昏たように窓の外の風景を見る。誰も居ない運動場を見ながら時間を潰し、HRが始めるまで外を見ていた。


 そしてHRが終わり、前半の授業が終わると、俺は久々に購買に行くことにした。いつもは凜奈にお弁当を作ってもらっているが、今日はなぜかわからないが、パンを食べたい気分だったので断った。凜奈は悲しげな顔をしていたので、学園から帰ったらもう一度謝らなければならない。


 廊下をゆっくり歩いていると、楽しげな会話をしている生徒の中を、ダンボールを持った一人の少女が歩いていた。赤のラインが入った一年生の制服を着ているのは最近出会っていなかった谷崎だった。俺は姿が見えると一直線に谷崎の元に向かった。


「久しぶりだな?」


 後ろから声を掛けると、谷崎は振り返った。今日はプリントを持ち歩いているようだった。


「先輩!久しぶりです!会えなくて寂しかったですぅ……」


「思ってもないこと口にするな。それより手伝うよ」


谷崎が持っているダンボールを持ち、横に並んで歩きだす。中にはプリントが入っているので、どこかの教室に持っていく最中だったに違いない。


「それより、先輩は大丈夫ですか?」


 無言で歩いていると急にそんなことを言い出した。一体何について言っているのかわからないかったので、首を小さく傾げると、人差し指を立てながら話し出す。


「だって、この前とてつもない魔力を感じましたよ?それに近くには先輩達三人の魔力を感じることが出来ました。先輩達は巨大な魔力を持っている召喚者と戦っていましたよね?」


「ああ。そうだけど……」


 確か谷崎は凜奈が殺されそうになった時も魔力に反応できていた。確かその時は召喚者ではないと言っていたが、魔術閉鎖空間を張っていたのに魔力を感じるということはそれなりにすごいことだ。なのに、俺から見るに召喚者の反応はしない不思議な存在だ。


「まぁ、でも先輩達なら勝てますよ」


 笑顔で口にする谷崎は心の底からそう思っているような顔をする。実際はほとんど勝てる見込みがないことは谷崎も知っているはずなのに、それでも俺達が負けることなど考慮に入れていないみたいだった。どうしてか気になるが、話したくなかったら無理に聞き出すのは凜奈の時にお世話になった恩は返せない。


「ありがとう……絶対に勝つよ」


 叶えたい願いがあればどんなことだってすると決めたのだ。この決断は決しで口だけではなく、有限実行としてみせる。俺の願いは誰かに言えば、素晴らしいと言う人も居るし、ありえないとか言う人も居るだろう。けど、他人の意見など関係ないのだ。自分がそういう風に選択したのならばそれが答えになってしまうのだ。


「はい……ところで、先輩は世界で一番強いと言われている召喚者が誰か知っていますか?」


「いや……聞いたことない」


 召喚者は俺にとって願いを叶えるための存在だと言ってもいい。戦争に勝つためには自分が強くなれなくてはいけないことは知っていたしが、誰が一番強いとかは正直興味がなかった。願いのためならば何でもすると……誰でも倒すと決めていたからだ。


「〝零世界〟と呼ばれる召喚者が世界で一番強いとされています……いえ、間違いなく世界で最強と言っても問題ないです」


「〝零世界〟……」


「そうです。バチカンのトップに居る召喚者です。先輩達の先代達も〝零世界〟には勝てないと口を揃えたほどに強い召喚者。ここ何百年は彼に喧嘩を売るような愚か者は居ません……売っても勝てないのに喧嘩を売る馬鹿は居ませんよね?」


 谷崎はまるで目の前で〝零世界〟を見たかのように話す。そんな風に感じられた。


「〝零世界〟は様々な……っ!」


 突如頭を抱え始めた谷崎は痛みに耐えるような声を漏らす。俺はダンボールを投げるように置いて谷崎の肩を持った。息を荒くして瞳に涙を溜めているのに俺に笑顔を向けていた。心配させてくないなどといった馬鹿の事を考えているに違いない。


 とりあえず、頭を抱えている状態の谷崎を廊下の壁にもたれさせてた。周囲に居る生徒が何事かといいたげな目で見ているが、誰も谷崎に声をかけようとしないのが無償に腹が立ったが、痛がる谷崎より優先することなど今はなく、俺は周囲の目を気にしないようにして話掛ける。


「先輩……ありがとうございます……まさか、能力を言おうとしただけなのに……」


「話さなくてもいいから……」


「すいません……」


 それから谷崎は頭を抱えて痛がっていたが、十分ほど経過すると、まるで演技だったかのように、急に立ち上がり、頭痛に苦しんでいた様子など全くなかった。一体何がどうなっているのかは理解出来ないが、頭痛な治まったみたいなので安心した。


「大丈夫か?」


「はい……けど、授業には出れそうにもないので、保険室に行きます……」


「ああ……わかった……」


 一緒に行こうかと思ったが、谷崎の瞳が一緒に来るなと訴えているように見えて言えなかった。そんな訳ないのにそう思わずには居られなかったと不思議な感覚だけが、胸の中にあった。


「これ……どこにもっていけばいいんだ?」


 ダンボールを持ち上げると誰も居ない廊下で呟いた。






**********







 放課後になり、凜奈は先生に用事を頼まれて帰るのが遅れるということなので、白雪と二人で帰っていた。横に並び特に会話など無かったが、俺は居心地の悪さなど感じずにむしろ、居心地が良かった。白雪も同じなのかわからないが、思ったことは口に出すタイプなので居心地は悪くはないのだろうと思っている。


 約束エンゲージを結んだ者達は家族のような絆で結ばれるため、それが原因かも知れないが、そんなことどうでも良かった。今が居心地は良ければ原因など関係ない……終わり良ければ全て良しだ。


 夕日が照らす中を歩く二人……設定的には恋人ぽく見えるだろうが、実際はそれよりも遥かに大切な相手で、俺は白雪が居なければこうして学園に通うことも、普通の生活を送ることも絶対に出来なかった。それに〝魔女〟や〝風読み〟にも勝てなかっただろう。


 俺は白雪と大切な絆で結ばれているが、まだ約束エンゲージ通りに白雪と助けたりなどは出来ずに、助けて貰ってばかりだが、それでも結んだ約束はある。そればっかりは事実で、どうしようもないが、男なので女の子に助けて貰ってばかりなど情けないので、いつかは背中を合わせて互いを助け合いながら戦って行きたい。


「ねぇ、海人?」


「どうした?」


 呼びかけられて視線だけ白雪に向ける。身長が小さので見下ろす形になっているが、さすがにこれも慣れた。初めは隣に立つたびに小さいと思っていたが今はあまり思わない。


「私たち……英雄ジークフリードに勝てるかな?」


 普段は言わないような弱気な声。英雄ジークフリードは本当に強いし、今の俺達では役者不足なのは自覚しているが、それでも負けるとは思わなかった。


「勝つか負けるかなんて関係ない。絶対に勝つんだ」


 言葉は意思を持っている。弱気な発言などしていたら意思を持った言葉が本当にその通りにしてしまう。なので、心が弱気でも表面だけは強気で居なければならない。それに言葉などにしなくても心は決まっている。


「勝つしかないだろ?」


 勝つために毎朝、流れをうまく掴む練習をしているのだ。実戦で使えるまではまだまだレベルが足りないが、それでも少しづつ成長していっている。努力は嘘を付かないというが、本当は違う。本物の努力を出来るのは天才だけだ。だから努力は嘘を付かないのだ。


 天才であるがために溺れてしまうのではなく、天才であるからさらに上を目指すために努力を重ねるから努力は嘘を付かない。そんな一握りの天才のために努力という言葉が存在するのだ。


 俺達は天才などではいが、努力を続ける。天才にしか嘘を付かない努力だが、長く続ける力……継続にはれっきとした力がある。それは天才ではなくても嘘を付かないことだ。だが、それ故に伸びが小さい。続けられる人は強い心や思いを持った人達だ。俺達は天才ではなが、誰にも譲れない思いが存在するため継続で力を伸ばす。


「ええ。違いないわ」


 優しく微笑む白雪は夕日に照らされてとても綺麗だった。子供のような幼い表情も今だけは大人びて見えるような気がする。


 学園から五分ほど歩き、寮の目の前にやってきた。どうせ、夜に凜奈の夕食を食べに俺の部屋に来る白雪は今日は珍しく、一旦部屋に帰ると言い出し、男子寮と女子寮の中間で分けれて各自寮に入った。


 廊下を歩き、白雪も海人も同時に部屋のドアを開けた瞬間、世界が一変した。


 ドアの先は普段通りの部屋ではなく、赤黒い空間。入ってきたドアの消えて、たた赤黒い空に赤黒い地面。周囲には人の気配もなくただ、赤黒いだけの空間になった。


「一体どうなってるんだ?」


 ここがどこなのか理解出来ないが、一つだけ理解出来ることがあった。それは平穏な日常が終わり、召喚者として戦う時間が来たということ。魔術閉鎖空間イージスではないが、魔術的空間であることはかわらないが……まぜか魔力を感じない。


 あたりを見渡すが、やはり赤黒い空間が広がっているだけだったが……突如、赤黒い中に小さな電球ほどの光が差し込む。それが段々広くなって視界全てを光で染められて、数秒すると光がなくなり周囲を見渡すと赤黒い空間ではなく別の空間になっていた。


「ここは一体どこ……?」


 声が聞こえた方を向くとそこには寮前で別れた白雪が立っていた。ドアノブを持つように止まっているので、俺と同じく部屋に入ろうとしたら謎の空間に居たのだろう。


 赤黒い色はなくなるとそこは暗闇だった。しかし、真っ暗ではなく、召喚者である俺達には昼間のように見える。見た感想で言えばこの部屋はかなり広いということがわかった。壁は俺の目で見ても全く見えることはなく、どこまで続いているのか検討ところか予想すら立てられない。


「やっぱりな……」


 この空間には凜奈は居ない。ということはここは魔術閉鎖空間イージスではないということだ。もし魔術閉鎖空間ならば凜奈も巻き込まれるはずなので居ないとなとなればここはそうではない別の空間ということになる。


「魔術の反応がない……この空間どうやって作ってるのよ」


 白雪が反応がないといっているのでまず間違いはないはずだ。そいうことはここはローネが使う〝風読み〟の能力と同じように夢を見せる能力なのか?別のそういう系統の能力と考えても可笑しくないが、それでは魔力反応がないことの説明がつかない。この空間は魔力無しで出来ているため、一体どうやったのかなどは一切わからない


「教えてやるよ」


『っ!』


 同時に声をした方に視線を向けると警戒を強めた。突如二人以外の乱入者は間違いなくこの空間を作った本人になる。目の前に居る男からは魔力反応があるので召喚者で間違いない。


「この空間がどうやって作られたのか知りたいんだろ?だったら教えてやる……」


 男が指を鳴らすと霧が晴れるように明るくなり、その周囲には様々な機械が設置されていた。俺達の目には映らなかった機械は音を立てる訳でもなくただ静かに何かするであろうと思わせるような機械だ。


 大きさはマンション三階ほどの大きさに周囲には様々な小さな機械が埋め込めれていてその全てが巨大な機械を支えているのだろう。


「この世界はそこにある機械で作った……魔術閉鎖空間イージスではお前達以外の召喚者も着いてくるから、この機械を使わせてもらった」


 男は嘘を言っているようには見えなかったがにわかには信じられなかった。確かに巨大で複雑な機械なのだろうが、それでこの空間を作っているなどそんなこと出来るのだろうか。しかし、そんなこと関係なかった。この世界を壊す方法があり、世界を作っている物が目の前にあるのだから壊せばいいだけの話だ。


 バレないように細心を気遣いながら右足を踏み込んで、潰そうとした瞬間、足元に忍者が使うクナイ三本刺さり、俺の動きを止めた。それはまるで幽霊のように急に現われた。ふらりと空中に浮かんでいるのは白いドレスのようなものを着た女の人。表情に人間味はなく、死んでいるかのような顔をしていた。


「そんなことさせると思うか?」


 男が指を鳴らすときに僅かに視線がそれた瞬間、俺は全力で駆け出した。男は完全に反応が遅れたため、巨大な機械……この世界の中心にあると思われる機械に突撃をかけて召喚した剣を振り被ろうとした瞬間、俺は着地した脚を重心を少し傾けて、男目掛けて加速した。反応できずに終わると想いながら剣を振るうと……男には直撃しなかった。


 黄色い魔法陣のようなバリアが男を守っていた。しかし、バリアだといっても魔女が使っていたものとはまるで別次元のものだ。普通に攻撃するだけでは絶対このバリアは抜けないと直感でわかった。


「馬鹿め。通る訳ない」


 その言葉と共に女が猛スピードで突進してくる。俺はそれを回避して再び攻撃をしかけるが、やはり黄色いバリアに防がれてしまう。〝魔女狩り〟という魔力の概念を斬る剣なのに切れない。それは単純に粘度問題だ。


「なるほどね……」


 今まで黙っていた白雪が突然言い始めた。


「どういうことだ?」


「そこに居る男は機械で生きていた女を操っている。まるで玩具のように取り付けるだけで自由に操れるはず。そしてさっきのバリアは〝小鳥の箱庭〟と言われる魔法……厄介ね」


 白雪が静かに呟くと男は楽しげに笑う。

読んでくださってありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitterやつまているので、よろしければフォローお願いします!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ