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本番

体育祭本番。俺達は暑い中での練習を乗り切ってついに本番を迎えることが出来た。競うのは学年別に点数が表示されて、その点数が一番高かった学年が今年の体育祭の優勝となる。


 前回は今の三年生がトップだったので、今回も三年生が優勝するのではないかと先生達の中では話が上がっているらしい。まぁ、実際に競技をして見なければどこが優勝するかなどは全く予想できないので、別にいいが、担任も三年生が優勝するとか言い始めたのでそれはどうにかしてほしい。


 練習だって手を抜いていた訳ではないし、本番なので出来る限りは力を入れてやる。でも、思いっきりやると勝負にならないので、他の生徒に合わせるような形か、人間だった頃を思い出してやるかの二択だ。


 一年生に負ける訳にはいかないとクラスメイトも言っていたので他の人も少なからず手を抜くことなどはしないだろう。最下位など好きでなりたいもではないからな。


 俺達は、いつも通りに朝食を食べて、体育祭本番なので準備などの関係でいつもより早く登校しなければならない。気合が入っているのだが、朝弱いのは直らずに今日も凜奈に起して貰い、学園に向かいことになった。


 凜奈はクラスの推薦で実行委員会になったので、今日は別行動が多くなるが、昼食は一緒に食べれるからとだけ伝えて実行委員会の本番の動きなどを再確認するための会議に出かけた。


 何もない俺と白雪は並んだ教室に入り、席に座った。そしてチャイムが鳴るまでローネと話をしながら時間を潰して、体操服に着替えるために男女で教室を分かれて、運動場に全校生が集合した。


 入場行進をして開会式をする。


 一年に一度しか体育祭。観客席には生徒の親などこの近辺に住んでいる人などたくさん集まっていた。南坂学園の体育祭は一般の人も入場することができるため、いろいろな人が集まる。まぁ、暇している老人などが興味本位で見に来ているのだ。


 まぁ、盛り上がるから先生達も学園側も誰でも入れるようにしているのだろう。その分、学園側の警備が厳重になったりして大変そうだけど。


「今から、第二十九回、体育祭を開催します」


 行進が終わり、校長のこの言葉で開会式が終わり、体育祭が幕を開けた。


 俺達は自分のクラスのテントの場所に行き、各自自分の競技が来るまで応援をすることになる。競技の応援などで場所移動するクラスメイトに紛れて俺はローネが居る場所に向かった。


 テントの中に居るのだから数秒でローネの場所に着いたが、ローネは肩に力が入り、緊張している様子だった。ローネが参加する玉入れは午前の部の最後だったはずだ。今から緊張するには早すぎるだろう。


「ちょっと肩の力を抜いたらどうだ?」


 ローネの小さな肩に手を置いて話掛けた。いきなり女の子の体に触るのはどうかと思ったが、本当に緊張している様子だったので声を掛けてもきがついてくれるか微妙だったので肩に触れることにした。


「ひゃっ!」


 まぁ、急に肩に手を置かれたら驚いて声を上げることは予想済みだったので、驚きはしなかったがローネは予想より大きな声を上げて驚いている様子だった。可愛らしい声を上げて肩をビクンと震わせてこちらに顔を向けた。


「どうしたんですか……?」


 肩に置いている手を一瞬だけ見たが、直ぐに俺の方に視線を向けた。特に嫌そうな顔はしていなかったが、前みたいに変な誤解されても嫌などの直ぐに手をどけた。


「いや、妙に緊張している様子だったから……」


 競技前ならともかくまだ時間があるのにガチガチなローネ。本来なら体育祭で緊張するのもどうかと思うが。これは勝ち負けも大切だが、本人達が楽しめることが最も重要なはずだ。


しかし、ローネが口にしたのはそんな簡単な話ではなかった。


「私はこう言った行事には参加したことがないので、妙に緊張しているんですよ」


「……中学とかではやらなかった?」


 体育祭など中学でもやるはずだ。体育祭ではなくても小学校などでは運動会といった形でこのような行事には六回は参加するはずだ。義務教育なので体験していないなどおかしい。


「私はこの高校が始めて通う学校なんです……家の都合とかで学校には行かなかったので……」


「……」


 ローネの顔はひどく寂しげだった。学校に通ったことがないのならば友達などと遊んだ経験も少ないはずだ。楽しかった思い出なども。


 俺はどんな言葉を掛ければいいのかわからなかったが、一つだけわかることがった。同情の言葉なのではなく、もっとはっきりとした言葉で。


「それなら、今回の体育祭は思いっきり楽しいものにしよう。初めてなんだから楽しい思い出の方がいいだろ?俺もローネと始めての体育祭だから楽しいものにしたいから」


 驚いたように目を丸くしたが、すぐにいつものローネの顔に戻り、満開の笑顔で言った。


「はい!そうですね!」


 先ほどの緊張などなく、体育祭の空気そのものを楽しむような雰囲気になった。


「俺も手伝うから」


「お願いします!」


 俺の手を握ったローネは強く握りしめる。そして今日は思いっきり楽しいものにしようと硬く決心した。


『今から第一競技を始めます。競技に出る人は速やかに集合してください』


 マイク越しから聞こえる凜奈の声で、競技に出る人が一斉に移動を始める。そして、テントの前などに旗を持って応援する生徒達も大きく旗を振る。


 そんな様子を楽しそうに見ているローネに気付かれないように後ろを振り返った。先ほどから話をしている俺達をずっと見ている人の方を向くためだ。振り向いたら白雪が少し睨むような目を俺を見ていた。


 理由は馬鹿な俺にだって理解出来る。白雪はまだローネのことを疑っているのだ。召喚者であるか、その関係者だということを。


 確かにローネが転校してきたタイミングはおかしい。魔女を倒してから一週間ほど経過した時に転校してきたのだから疑うなとは言えない。けど、先ほどのローネが見せた悲しげな顔を見て俺は違うと断言できる。本当に悲しげな顔をしていたからだ。あれが、演技だっていうのならどうしようもないが、俺はそうは思わない。


 それに知っているだろ?俺の願いはみんなに幸せになってほしいことだって。そんなヒーロー染みた願いを叶えるために命を掛けて戦っているという事実を白雪は知っているはずだ。


 なら、わかるだろ?あんな悲しあげな顔を見せれれたら俺は構わずには居られないことを。


 俺がそういう思いを込めて白雪の目を見ていたら、両手を挙げて降参のポーズをした。そして瞳からは勝手にしたら?と感じ取れた。


 ああ。勝手にするさ。でも、もしローネが……万が一召喚者かそれに関係する何かだったら、俺は剣を抜いて戦う。それが俺の願いだからだ。


『第一競技に出る人達が行進します!』


 凜奈の声と同時に行進を始める生徒。こうして始まった体育祭は順調に進み、午前の部、最後の玉入れまで進んだ。


 クラスメイトを可愛らしい声で応援していたローネとずっと席に座ってみていた白雪が出る競技だ。ローネは張り切って集合場所まで駆けて行ったが、白雪は終始つまらなそうな顔をしていたので競技に出るかわからないため、様子を見ていたのだが、俺の方を見た後に立ち上がり、集合場所まで行った。


 白雪はただでさえ、クラスの中では浮いているのだからこう言ったことに参加して仲良くなってほしい。でも、本人が乗り気で仲良く気がないため俺がどれだけ頑張っても無駄だろう。


『それでは入場してください!』


 玉入れに参加する人達は入場を始める。そして玉入れが始まった。


 ローネと白雪は同じクラスなので同じチームだ。ローネは玉を一個いっこ手に取っては可愛らしい投げ方で玉を入れようとするが、まずボールが届いていないため届かない。けど、そんな一生懸命頑張るローネはとても可愛く、見ているクラスメイトは完全に癒されている。


 一方、白雪は地面に落ちている玉を十個ほど一気に集めて、そして軽く上に上げると全ての玉が入る。そんな白雪を見ていたクラスメイトはおおーっと声を上げていた。


 投げた球が全部入るので面白くなさそうにしている白雪は何を思いついたのかわからないが、玉を一つだけ拾うと相手チうームが居る所まで軽く駆ける。クラスメイトやチームのメンバー。そして相手チームさへも一旦動きを止めて白雪を見つめる。


 白雪が何をしようとしているのか理解出来た。あいつは近くから投げても確実に入るので、距離を離して投げようとしているのだろう。もちろん、十個一気に投げて全て入るなんて普通の人間には出来ないが、白雪なら簡単に出来る。


『おっとー!何をしようとしているのか!』


 凜奈がマイクで実況を入れる。こんな面白い事を逃すわけにはいかないと思ったのだろう。


 一同が見守り中、白雪は玉を投げた。距離にして二十メートルほど。普通の人ならまず、入らない。けど、白雪は違う。投げた玉は丸で吸い込まれるかのような軌道を描いて籠に入った。


『入ったー!』


 凜奈も入ることなどは承知の上なのだろうが、実行委員としては盛り上がるのでそう言ったのだろう。実際、白雪の玉が入った瞬間、敵、見方、保護関係なく運動場中からおおっーっと声が漏れた。


 ローネは白雪の活躍を楽しそう見ていた。


 結界は俺達のクラスが圧勝。まず、投げた玉が全て入る白雪が居るのだから勝負などしなくてもわかる。俺と凜奈はまぁ、知っているが、他の生徒は白雪がどういいった存在かを知らないのですごいの一言しか出てこないだろう。


 玉入れは一番に終わり、午前の部が終了して一時間ほどのお昼休憩が取られることになった。


『今からお昼休憩を取ります。時間になったら生徒の皆さんは所定の位置に戻ってください。それまでは自由です』


 その言葉で生徒達は持ってきたお弁当を抱えて各自移動する。あるものは久しぶりにあう家族と食べる者や、友達同士で集まって食べる者なども居る。俺達は後者で、ローネに凜奈。そして白雪の三人と集まってお昼を食べる。


 テントで待っていると凜奈が駆けてきた。実行委員本部から走ってきたのだろう。しかし、息は全く乱れていない。


「遅れてごめん!けど、その代わりに今日は腕を振るったから!それにたくさん作ったから食べて」


 生徒が多い場所は避けて、レジャーシートを広げてそこに座る。凜奈が持ってきた割り箸と紙皿を配り、凜奈はお弁当を披露した。三段重ねになっているお弁当はおせちが入っていそうなほど豪華で大きな入れ物に入っている。


 一段目はおにぎりが入っていた。二段目はから揚げなどのおかず。そして一番下である三段目はサンドイッチが入っていた。見た目は色鮮やかで見ただけでもおいしいと判断出来るほどだ。


 普段から作って貰っているのでおいしいなど知っているが、ここまで気合の入ったのを見るのは久々だ。去年の体育祭の時は俺だけだったので普通にお弁当だった。だが、今回は白雪とローネが居るのではりきって作ったのだろう。


「すごいおいしそうです!」


 目を輝かせてお弁当の見るローネ。ローネも料理は出来るみたいだけど自分自身であまりうまく出来ないと言っていた。俺と白雪からすれば、卵焼き以上の物が出来るのならすごいの分類だ。


「少し多いかもしれないけど、食べて」


 そうして俺達は凜奈が作ってくれたお弁当に口をつける。


「うわ!私なんかと比べ物にならない……」


 一口食べただけでそんな言葉を口にした。料理を作る者だからこそ凜奈のすごさがわかるのだろう。こんな優秀な幼馴染を持って俺は幸せだ。


 俺もから揚げを一つ口に掘り込んだ。


「いつ食ってもおしいよ、凜奈が作ると」


 しかも、味付けも完璧に俺好み。十年以上幼馴染をやっているのは伊達じゃないな。


「どうかな?おいしい?」


 少し心配そうに聞く凜奈。先ほどから感想を言わない白雪が気になっている様子だ。


「……まずいわけないわ」


 少しだけ頬を赤く染めて白雪は言った。白雪は感想は言わなかったが、食べ始めてから止まらないように口に入れていた。その理由は一つだ。ここ毎日凜奈の作った物を食べているのだから白雪だっておいしいことなど知っているはずだ。


 けど、様子から見るに恥ずかしかったから言わないだけだったようだ。


「そっか…良かった」


 それから俺達は午前の部の競技の内容のことなどを話しながらおいしい昼食を食べ終えて、午後の部が開始された。


 午後の部の初めはクラス対抗の綱引きだ。


まぁ、予想はついていると思うが、結果は俺達のクラスが一位だった。そもそも召喚者まほうつかいが三人居る時点で他のクラスには勝ち目がないことは初めから決まっていた。なので、俺と凜奈は手加減をしてほとんど力を入れてなかったのだが、白雪が力を入れるため、余裕で勝ってしまう。


 頑張って力を抜いた俺と凜奈は苦笑いするしかなかった。


 次は凜奈が参加する騎馬戦だった。


 騎馬戦は下の三人で上の一人を支えて、上が相手に帽子を取られれば負け。取れば勝ちだった。前回の騎馬戦は集団戦だったが、今回は勝ち抜き戦だ。


 五グループ一組として数えて、相手と勝ち抜き戦をやる。そしてグループ全部を倒せば勝ちだ。


 各、騎馬が必死に戦っている様子を見ていた。クラスメイトの応援などでこれまでに無い盛り上がりを見せている騎馬戦。そして待っていた凜奈の番がやってきた。


 凜奈は騎馬の上に値する部分だった。ようするに帽子の取り合いをする位置にいた。


『私勝ってくるからね?』


 騎馬戦の召集が掛かった時にそんなことを凜奈は言っていた。


 その宣言通り、凜奈は勝った。そもそも、合図と同時に普通の人には移らない速度で手を伸ばして、相手が動く前に勝負がつくの繰り返しだった。相手はいつ取られたかもわかってないはずだ。凜奈と戦った相手はみんな頭にハテナを浮けべていたからだ。


 騎馬戦が終わり、帰ってきた凜奈は俺にこう言った。


「やりすぎた……」


 本当にその通りだった。


 そしてついに最終競技が始める。俺が参加する百メートル走だ。


 基本は男子参加の競技で、学園側が初めから組を組んでいる。そして、その組から一位と二位が勝ち抜けて次に進める。そして最終的に残った面子でもう一回走り、順位を決めるのだ。


「どうしよっかなぁ……」


 去年までの俺なら悩むことはなかった。特に運動が出来る訳でもなかったので全力で走っても初戦でまけることが確定だった。でも、今は全力など出したら世界新を凌駕するし、軽く走っても高校生が走れる速さではなくなる。


 かといって本当に手を抜いて負けるのもいやだ。今回は凜奈だけでなく、ローネに白雪も見ているのだから。


 初めの一組はスタートした。百メートルなどはずか十秒ほどで終わりだ。直ぐに二組がスタートして三組も走った。そして俺の組である四組がついにやってきた。結論は出ていないがとりあえずここでは負けないことにした。


 クラウチングで構えて、合図と共に駆け出した。だが、全力で走れるはずも無く、一位の奴に速度を合わせて、もうすぐゴールという場面で少しだけ速度を上げて一位でゴールした。


 他の生徒は息を落ち着かせるために深呼吸などしているが、俺は落ち着かせるところか動いた気がしない。百メートルなど何百でも走れる。


 わかってはいたことだが、俺はやっぱり召喚者だということを自覚させられた。昔のような呑気な生活は出来ないことも。


 そして五組は終わり、決勝に出る者が決まった。十人居る決勝はどうしようか悩む。ここで勝てば得点に貢献できるが、必死で走っている生徒の邪魔をするような気分で何か悪い。


 四位ぐらいで妥協しようとして、クラスメイトが居るテントの方に目を向けると、そこには大きく手を振っているローネの姿が目に入った。ローネは体育祭のような行事が初めてといった。そして、俺はそれを楽しく、思い出に残るようにそようと。


 きっとローネは俺が一位を取ると喜ぶだろう。そう考えるともう迷いわなかった。


 スタート地点にたった俺はクラウチングで構えた。そして合図と共に俺は駆け出した。


 もちろん本気で走ることなどは出来ない。なので、予選のように余裕な感じで走るのではなく、我武者羅に走っているフリをしてスタートからゴールまで一位で駆け抜けた。


 もちろん、全然疲れていなかったが、ちゃんと息を荒くしてローネに手を振った。するとローネもマ満開の笑みで手を振り替えしてくれた。


 俺も少しは思い出作りにやくだったかぁ、などと考えながらテントに戻った。


 戻るとクラスメイト達からおめでとうなどと色々言われた。これが本当に自分の実力なら嬉しかったのだろが、心のそこからは嬉しがれ無かった。


 そして応援してくれていたローネの所に向かい、笑顔を浮べた。


「やりましたね!優勝ですよ!!」


「ああ。そうだな。優勝だ」


 ローネは満開の笑みだった。俺はその笑みを見れただけでも一位になってよかったと心の底から感じた。願わくば、世界中のみんながそう笑顔になってほしいと、そんなことを考えていた。


『ただいまより、開会式を行いますので開会式の隊形に並んでください』


 マイク越しに聞こえる凜奈の声で一斉に生徒が動き出す。ローネも動き出し、俺は後を追うに歩きだしたが、不意に背中を叩かれて振り返った。そこには白雪が笑顔で居た。


「海人の走り方おもしろかったわよ。もしかしたらお笑い芸人とか目指せるんじゃない?」


 それだけを言い終わると白雪は走り去った。


「……一体どうしたんだ?」


 訳がわからなかったが、白雪の機嫌いいことだけは理解出来た。理由は簡単で笑顔が可愛かったから。ただ、それだけだ。







*********






 開会式の隊形に並び終わると校長が前に立った。そして今日の感想を言い、優秀選手の発表があった。


 なんと白雪がそれに選ばれたのだ。選ばれた理由は玉入れの時に見せた十個の玉を一気に籠に入れたのと、離れた距離から玉を投げて入れたことが評価されてのことらしい。


 そしてついに順位発表が始める。


 三学年で争った体育祭の最終イベント。ローネの思い出を作るためには一位になりたいが、こればっかりはわからない。


 校長が三位よ読み上げた。三位は今年入学して来た一年生だった。


 一年生は三位という順位を聞いた瞬間、大声を上げたり拍手をしたりと、体育祭自体を楽しんだので順位はあまり関係ない見たいだった。


 そして二位の発表。二位が発表されれば自動的に一位が決まる。三年と二年の間で静けさが走る。今日、みんな真剣に競技をやったから負けたくなにのだろう。


 もちろん俺も負けたくなかった。ローネに初めての体育祭の思い出を作って貰うために。


 校長が口を開く。俺はその瞬間、ローネの方に目を向けた。ローネは俺の視線し気付き、そして狂気のような笑みで笑った。


「え?」


 見たことがない顔に声を上げた瞬間、体が包まれるような感覚がした。それを感じとった瞬間、この場に居る召喚者以外の存在が完璧に消えた。


 俺は周囲に警戒をしながら見渡すが、なじみ深い凜奈と白雪しかいなかった。二人共、状況は把握している様子だ。


魔術閉鎖空間イージス……一体誰が?」


 凜奈のその言葉に白雪はローネが座っていた場所に目を向けた。しかし、そこにローネの姿はなく、俺は安心のあまり大きな息を吐いた。


「わからない……予想がはずれたわ」


 視線を戻し、三人集まった瞬間、誰も居ない場所から弓道などで使うほどの大きさの矢が飛んできた。すぐさま反応した俺達は、直ぐに詠唱を唱えて武器を召喚した。

 

 しかし、近づいてくる矢を剣で弾こうとした瞬間、俺と白雪は普通の矢ではないことに気が付いた。


「凜奈、避けろ!」


 俺の言葉と同時に三人はばらばらに避ける。矢は地面に刺さった瞬間に姿を消し、俺達は人の気配がする方に視線を向ける。


 そこには、亜麻色の髪に幼い顔。俺達に見せていたものと何もかわらない笑みを浮けべていたローネの姿があった。


「ようこそ、私の世界へ」


 可愛らしい笑みが魔術閉鎖空間イージスに入る前に見た狂気に満ちた笑みに変った。


 その瞬間、世界は変化した。






 



 

 

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