休日
俺が百メートル走を走ることになってから初めての休日が訪れた。体育祭の練習などは体育の時間などを使ってやっている。体育祭は好きだが、暑い中でほぼ毎日のように全体練習や個人練習などをやるのはしんどい。
真剣に体育祭の練習をする学校は極めて珍しいが、この学園は生徒の数が多いことと、入学すると寮生活をしなければならないことから、体育祭などとい
った行事には親が多く集まる。その保護者に見せるために体育の時間に練習したり、体育祭の練習が授業として出来る理由だ。
なので、ここでは生徒も手を抜く奴などはなかなか居なく、みんなが真剣に各競技にあたるのだ。
そうして昨日も練習した全体練習のせいで疲れた体をこの休日に癒したいと思っているのだが、今日は転校生であるローネに町の案内をするといった名目の遊びに行くのだ。
今日もいつも通りに凜奈に起して貰い今は白雪と凜奈で朝食を食べている所だ。
いつもおいしいご飯を作ってくれる凜奈には本当に感謝している。あんまり口に出しては言わないが。
「今日、楽しみだね!」
本当に楽しみのような凜奈は子供のような眩しい笑顔を見せている。
「私は行くたくないわ」
一方白雪といえば、遊びに行くのが少し嫌そうな顔をしていた。嫌ではなく単純にめんどくさいだけだと思うが。
「そんなこと言わないで、白雪もいくの!」
「私は別に居ても居なくても一緒じゃない」
「ローネちゃんの案内したくないの?」
「したくない」
つい最近殺しあったのが嘘のように二人は会話をしている。二人とも楽しそうに会話をしている訳ではないが、殺しあったことなど気にならないぐらいに仲良くなってほしいと俺は思っている。
「そんなこと言わないで、行くの。ローネちゃんのあの顔忘れたの?」
「……忘れてないわよ」
「それなら行く以外の選択肢はないでしょ?」
ローネのあの顔というのは、町を案内してほしいと頼まれた時に俺と凜奈は賛成したのだが、白雪は行かないと言い張るのでしまいにローネが涙目になって、上目遣いで頼んだ時の顔だ。あんな顔されたら無条件で賛成してしまいたくなる。
「わかってるわよ。行くわよ」
渋々白雪も行くことを賛成したので俺達は朝食を食べ終わると集合時間まで解散することになった。凜奈は自分の部屋に帰り、白雪は俺の部屋でテレビを見ながらくつろいでいる。
学園に転校してきた扱いになっているのだから、白雪も自分の部屋が女子寮にあるのだが、なぜか帰らずに俺の部屋に居ることが多い。それにどうやって転校してきたかの理由についても、白雪本人からは何も教えてもらえないので謎のままだ。だが、どう考えてもまともな方法ではないだろう。
「それで白雪。何かわかったのか?」
「……主語を入れて話して。何についてかまるで理解できないから」
「ローネのことだよ。油断するなって学園で言ってただろ?」
敵対関係にある召喚者のスパイかもしれないから油断するなと言ったのは白雪だ。たぶん、一人で色々と危険がないかを調べまわっているはずだ。
「何もわからないわ。今のところは普通の転校生。たまたま、召喚者三人と仲良くなった普通の人間っていうレベルよ。魔力を感じないから召喚者ではないと思うけど、安心するには情報が少なすぎるから油断は出来ないわ」
召喚者というのは何もしていないのに一方的に狙われて殺されることがたまにあると白雪が言っていた。そしてそういう風に召喚者を殺す奴は殺す対象のすぐ傍に居る可能性が高いらしい。急に現れて、仲良くなって油断した所を殺されるなど。数は少なくても殺された事例だけは残っている。
「だから前にも言ったけど、仲良くなるのはいいけど油断だけはしないで。私達には叶えたい願いがあって、それを叶えるまでには絶対に殺される訳にはいかないから」
「ああ。そうだな。絶対に叶えたいから」
そこで少しの間沈黙が訪れた。しかし、重い沈黙ではなく話すことが無くなったから沈黙したという感じの空気。テレビの音だけが大きく響き、その音を聞きながら時計に目を向けると、集合時間の二十分前。そろそろ出なければならない時間だった。
「白雪、そろそろ部屋を出るぞ」
リモコンでテレビを消して俺が言った。
「まだ、集合まで二十分ほどあるじゃない。早すぎると思うけど……」
確かに俺達がいつも集合している学園の敷地ないなら早すぎるが、今回の集合場所は町の大きな広場での集合なので少し早めに出ておかないと遅刻してしまう可能性がある。
「いいから、遅刻するから行くぞ」
「海人の口から遅刻するぞっていう言葉が出てくるとなにやら呆れそうになるわね……凜奈が居なかったら毎日学園遅刻するくせに」
「そのことは今は関係ないから、ほら行くぞ」
俺は白雪の小さく柔らかい手を掴んだ。
「ひゃっ!」
可愛らしい声を上げた白雪と共に部屋を出て、町に向かった。
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ゆっくり歩いて町の広場に着いた。集合時間の五分前行動で出来たのは久々だったので少しだけ嬉しかったが、他のメンバーは既に来ていた。
「おーい!遅れ悪かった!」
小走りで近づいて謝罪をした俺を見て凜奈は驚いた顔をしていた。
「どうしたんだ?」
普通に来ただけなのにそこまで驚かれることが不思議だった。
「海人が遅れたことに対して謝罪をしたことも驚いたけど、白雪と手を握っていることの方がもっと驚いた……」
「え?」
俺はそこで思い出した。部屋を出る時に無理やり連れ出そうとして手を握っていたことに。学園を出た辺りで離そうと思っていたのだが、いつの間にか忘れていた。先ほどから何度も白雪に声を掛けたのに無反応だったのはそれが理由か。
「二人は仲がいいですね?なにやら特別な力で繋がっているみたです」
ローネのその言葉に一度だけ強く手を握り締めた白雪。仄かに頬が赤くなっていることが気になるが、それよりも先ほどのローネの発言だ。確かに俺達は約束という約束で結ばれている。ローネはそれを知っていて先ほどの発言をしたのだろうか?
「もしかして恋人同士ですか?」
ローネの発言に安心した俺。もし約束のことを知っていれば白雪がいっていた可能性が、事実になる。
「違うわよ!」
「違う!」
白雪と凜奈が同時に否定した。かなり大きな声で否定したので周りに居た人達に見なれることになった。そんなことよりもそんなに否定しなくてもいいのに。少しだけ悲しい。
「そうなんですか?それじゃ私にもチャンスがあるんですね?」
「っ!」
その発言に次は俺が驚いてしまった。ローネは笑っているので本音で言っているわけではないと知っているのだが、そんなこと言われたことないので少しだけ動揺してしまった。
「……そんなことよりもう行こうよ!」
「ああ、そうだな!」
凜奈の言葉に乗っかり、この場を逃げようとした。少しだけ気まずい雰囲気だったので、これから遊びに行くのにそんな空気はいらないだろう。
「……はい、わかりました。それじゃお願いしますね?」
俺達四人は話しながら歩き、この町で一番大きな建物に向かった。そこは広場から歩いて十分ほどで着く、大きなショッピングモールだ。ここで買い物をすると大抵は揃いう、便利な場所だ。中にはたくさんのお店からフードコートやゲームセンターなどといったものまである。
小学生の頃は良く、親にもらったお金でゲームセンターなどに行った思い出がある。
ショッピングモールの中に入ると、開店しま間もないのに多くのお客が着ていた。休日なので家族と一緒に来ている者から恋人同士で来ている者。それと俺達と同じく友達同士で来ている者など様々な人が居る。
「わぁー!人がいっぱい居る!それに天井が高いし、物凄く大きい!」
ローネは瞳を輝かせながら周囲を見渡す。
このショッピングモールは三階立ての建物なので天井も高い。奥行きもかなりあって、端から端まではそこそこの距離があるので、全部のお店を見て回るのはかなりの時間が掛かる。なので、俺達は各自見たいお店や紹介したいお店などを回ることに決めた。
店内のどこにお店があるのかなどを詳しく書いたパンフレットのような物を一枚手にとって、行きたい場所を決める。俺は特に行きたい場所や買いたい物などはないのでみんなが行きたいお店についていく形にする。
「私、ここに行きたい!」
ローネが指定した場所は店内で一つしかないペットショップだった。目を輝かせているローネの様子を見るにペットなどの動物が大好きなのだろう。俺も凜奈も動物は嫌いじゃないので反対する理由がない。白雪はどうなのだろうと視線を向けると、パンフレットを一人で見ている白雪はある一点を凝視していた。
そこを覗き込むと、ローネと同様でペットショップを見ていた。しかも、これまたローネと同様で目を輝かせて。
「行く場所決まったね?」
「そうだな……白雪が動物好きなのは驚いたけど……」
「確かに……白雪もちゃんと女の子なんだね?」
召喚者である白雪は何人もの召喚者を殺したはずだ。そんな白雪が動物が好きなことに安心した様子の凜奈。この二人は時期に仲の良い友達同士になっていそうだと安心する。
俺達が居る一回の一番奥にあるペットショップまで歩き、十分ほど経過すると到着した。俺もこのショッピングモールには何回も来た事があるが、ここのペットショップに来たのは初めてだ。
入り口付近には可愛らしい犬と猫の置物が置いてあり、外層も可愛らしい色をしている。そこまで大きくはないが、狭いわけでもない。人もあまり居ないので四人揃って見るには最適かもしれない。
中に入ると、犬や猫以外にも様々な動物が居た。普段テレビなどで見るメジャーな動物から、たまにしか見ない珍しい動物まで様々な種類が存在する。
俺達はペットショップで可愛らしい動物を三十分ほど体験して、ペットショップを出た。それから凜奈が行きたいと言った有名な服やで試着をしたり、などをして時刻はお昼を指した。
俺はまだお腹は空いてなかったが、ローネのお腹が可愛らしい音を鳴らしたので、フードコートに移動することになった。
フードコートは二階にある。エスカレーターで二階に上がり、フードコートに着くとたくさんの人が居た。お昼時のこの時間、しかも今日は休日なので人が多いのは仕方ないことなどだが、ぱっと見ても四人が一緒に座れる場所などなかった。
「……人がいっぱいで座れそうな場所はないね」
「……そうだな。この時間滞は仕方ないか」
俺達は少し歩いたが、座れる場所はなかった。どうしようか悩んでいると、「あそこでいいと思うけど」っと白雪が指を刺した場所は店内から出たベランダのような場所だった。そこに少しだけ椅子と机が置いてあり、見る限り四人座れそうだった。
「俺が席取ってるから三人は何か買ってきていいよ」
「そんなの悪いです。海人さんを食べるんですか?私買って来ます!」
「いいのか?」
「はい!任せてください!」
小さな胸を張るローネは妙に可愛かったし、張り切ってるので頼むことにした。
「それじゃ、俺はヤックでいいよ。凜奈が俺の好きなの知ってるからお願い」
それだけを言って俺は財布を渡し、急いで席を取りに行った。ベランダに出ると涼しかった店内とは別世界のように暑い日差しが襲い掛かった。魔力を調節すれば防げるのだが、俺はまだへたくそなどであまりしない方がいいと白雪に言われたのでしない。
四人座れる席を取り、暑い中一人で待っていると十五分ほど経過すると三人は戻ってきた。
「暑いです……」
「店内は涼しかったのに」
普通の人であるローネと俺と同じく調節がへたくそな凜奈は暑そうにしているが、完璧に調節できる白雪は店内に居た頃と同じく、涼しい顔をしている。
「海人さん、ヤックですよ」
「ありがとう」
ヤックと財布を受け取った俺は四人で机を囲んで朝食を食べ始める。お腹は空いてなかったのだが、食べ始めるとすぐに無くなってしまった。そして、四人が食べ終わると皿などを返して、次の場所に向かうことにした。
ショッピングモールを出た俺達はこの町のお気に入りを案内していく。それと、少しマニアックな物が売っている場所や生活するためには覚えていた方がいい場所などを話ながら紹介していき、気が付くと夕暮れになっていた。
「そろそろ時間ですね……」
辺りが暗くなるとローネが呟いた。少し悲しそうな顔をしているにはきっと今日が楽しかったからだろう。
「そうね。そろそろお腹空いたわ」
昼食を山ほど食べていたにも関わらず白雪がそう呟いた。
「そうだね。夕食の準備をしなくちゃいけないし」
町を案内している途中に安く売っているスーパーに寄って買った買い物袋をぶら下げなら凜奈が呟いた。
「そうだな。そろそろ帰るか……」
そうして俺達が学園に帰った。女子寮も前で別れて一人で部屋に戻った。
こうしてローネの町案内は終わりを迎えた。
これからもローネとは友達として仲良くできると確信した時だった。
この時は本当にそう思っていたんだ。
読んでくださってありがとうございます!
スクフェスのことりちゃんのイベントが終わってしまいました!覚醒できるといいなぁ……。
後、新しい小説は書きたくなったので、もしかしたら書くかもしれません。そうなったら読んでくれると嬉しいです!




