転校
俺達は無事に魔女を倒すことが出来て今は平凡だった日々に戻っている。
朝は凜奈に起されてて学園に向かい、凜奈と二人きりやクラスメイトなどと昼ご飯を食べて放課後になるとたまに出かけたり、俺の部屋に集まって凜奈と話話したりなど召喚者になる前と変らない生活を送っていた。
白雪は無事に魔術蒼石を魔女から奪い、俺達の願いを叶えることに一歩だけ近づいた。だが、魔女は死んでいない。俺達は魔女を殺すことが出来なかった。
しかし、俺達を襲ってくることは二度とない。別に口約束などではなく、魔女だった男は今は普通の人間として社会で生活しているからだ。
召喚者には武器を召喚するための中心角というのか……媒体にするものが存在する。白雪で言えばガントレットについている黄色い球体。俺は首元に掛けられているネックレス。それらは武器を召喚する時には最も必要なもので、普段は敵に見えないようにしているのだが、魔女は俺の魔女狩りに触れて魔力を斬られてしまい見えていたのだ。なのでそこを破壊して召喚者としては活動出来ないようにしたのだ。
それはみんな幸せになってほしいという願いを持っている俺には当たり前のことだった。だって魔女だった男も幸せになってほしいなどという偽善者のようなことを思っていたからだ。白雪は猛反対だったが。
一度召喚者として覚醒してしまえばコアを破壊しても再び同じ召喚者として目覚める可能性が高いらしい。今は人間に戻って生活している魔女も、再び召喚者として覚醒してしまえば記憶は元に戻り、襲ってくる可能性が高いらしい。だが、再び召喚者として目覚める期間にはものすごく個人差があるらしいのだ。例えば一週間ほどで覚醒する人も居れば一年、十年、覚醒しない可能性もある。へたをするとそのまま普通に死んでいく場合もある。だが、それでも普通に死んでいく可能性よりは再び召喚者として覚醒してしまうことの方が可能性が高いらしい。
だから殺せと何回も言われたけど、俺は頑固拒否を続けて白雪は好きにすればと投げ出したのだ。
魔女を倒してから白雪は一週間ほど姿を見せていない。
どこで何をしているのかなど気になることがたくさんあるが、本人が一週間一度も姿を見せていないのだから聞き出せない。また、魔女の時のように無茶はしていないのだろうか?など色々考えるが、結局どれもしっくりこずに自分の中でも答えを出せないままで、モヤモヤした気持ちだけが残っている状態なのだ。
まぁ、もし召喚者と戦うのなら俺も読んでくれるはずだ。俺達は初代勝者した一組の約束と同じ武器を持ち、同じく約束を結んだ二人なのだから。
それに前の錆びた剣とは違い、今の俺は魔力を切り裂くことが出来る伝説の武器、魔女狩りを召喚できるのだから。しかも、一回一人で戦って死に掛けているのでそんな無茶なまねなどしないで俺を呼んでくれると信じてる。
そして今日、魔女を倒してから八日目。俺はいつもの時間に凜奈に起されて、制服に急いで着替えて座布団に座る。そしてテレビをつけるが、目線はテレビに向けずに楽しそうに料理をしている凜奈に向けていた。
魔女を倒した初日に俺は凜奈に第二次開放に至ったことを告げた。初めは驚いていたが、錆びていた武器の正体が魔女狩りだと告げると、なぜだか知らないが納得したようだった。
俺も知識としては知っているのだが、魔女狩りの名前はそれほどまでに有名ですごいものだと感じた。
『当たり前だ。俺を誰だと思っている?』
あ……そういえば忘れてた。第二次開放や、本当の武器の姿になったことなどが原因で、俺のネックレスにもローと同じような自我が生まれて会話できるようになった。強力な武器には自我が宿るとは知っていたが、まさか自分が経験することになるなんて、錆びた剣を召喚した時には想いもしなかっただろう。だが、それが魔女狩りだと当たり前だ。なぜなら伝説クラスの武器なのだから。
『お!わかってるじゃないか』
ちなみに今まで俺が聞いた声や、初めて見た物なのに知っているなどの現象は全てこいつの責任だった。こいつ……サクは俺が召喚者として早く覚醒してほしかったらしい。
なので俺に色々な情報などを流していたらしい。まぁ、そのおかげで助かったこともあったのでありがたい。
「海人?何してるの?」
凜奈の声に反応してそちらを振り向くとエプロンをつけて笑顔で居る凜奈が両手に料理を抱えていた。そういえば先ほどからいい匂いがしていたことを想いだすと急にお腹が空き始めた。
お皿に盛った料理を机の上に置いて、エプロンを外していつもの場所に掛けた凜奈は、箸やコップなどもついでに持ってきてくれた。
そして二十分ほど掛けて料理を食べて、凜奈は女子寮に一旦帰った。
俺はテレビを見ながら時間を潰す。何も考えないでテレビを見ているとサクが話しかけてきた。
『なぁ、相棒』
「どうしたんだ?」
『お前達はまだまだ弱い』
「……急にどうしたんだ?」
弱いことなど知っている。俺達は魔女に二人掛りでやっと倒せるレベルなのだから。しかし、あれは一番厄介といわれる魔女だったからという理由もあるだろう。約束を結び、互いに第二次開放を使える俺達に普通の召喚者はまるで歯が立たないだろう。
『確かに普通の召喚者ならばな。だけど、相手は魔術蒼石に選ばれた召喚者だ。普通の訳がない』
「……どういう意味だ?」
魔術蒼石はランダムで召喚者を選ぶはずだ。選べれたとはどういうことだ?
『今はいい。だけど、初めに魔女と戦ったのは正直正解だ。たぶん、他の選ばれた召喚者は魔女より遥かに強い』
「……魔女って一番厄介な敵じゃなかったのか?」
『厄介と強いは別だ。だから俺は言っているんだ。お前達はまだ弱い。先代の十分の一以下だ』
「……」
『だけど、お前達二人は先代を越す。だけど、まだ弱い。それだけを言いたかった』
「ああ。覚えておくよ……」
時計に目を向けるといつも登校している時間だったので、俺は鞄を持って部屋を出た。そして寮の目の前にある大きな木の下で待っている凜奈と合流して学園に向かった。
下駄箱で靴を履き替えていると、谷崎が登校してきていた。谷崎は俺を見かけると笑顔で近づいてきた。
「先輩!おはようございます!」
「ああ。おはよう」
「相変わらず凜奈先輩と仲いいですね?」
「そんなことないだろ。普通だよ普通」
幼馴染にしては仲がいいと思うけど。
「……それ、他の男の人の前で言わないほうがいいですよ。先輩、殺されますよ?」
冷たい目で見られながら谷崎は靴を履き替えて、一年教室の方に走っていった。
俺と凜奈はそれを見送り、自分たちの教室に向かった。教室にはいるとクラスメイトに「おはよう」と声を掛けて席に座った。
そして、HRが始まるまで少しあるので席に座りボーっとしていると、クラスメイト達が気になる会話をしていた。
「今日、転校生がやってくるらしいぞ。それもめっちゃ可愛い女の子!」
「海外からの留学生っていう噂があるらしい」
「俺達のクラスに転校してくるっていう噂だが……」
俺はものすごく嫌な予感がしていた。。海外からの留学生というキーワードにどうしても最近姿を見せない白雪の姿が被る。そんな召喚者として危険な行動しないと思うが、嫌な予感だけは拭えない。
「俺の聞いた噂では二人の美少女が内のクラスに転校してくるらしいぞ!」
教室の扉を勢いよく入ってきたのは、そういう噂に人一倍詳しいクラスメイトだった。将来は新聞など書きたいらしく、そういう情報収集に長けていくので、そいつの情報は何かと信頼できる。そいつが、二人組みというなら二人組みなのだろう
二人組みと聞いて安心した。一人だったら白雪が転校してくるなどというアニメなどのお決まり展開になりそうだったが、二人組みとなればその可能性はないだろう。
ホットすると同時に教室に先生が入ってきた。相変わらず白衣を着ていて、教卓の前で立ち止まった。
「噂に流れていると思うが、このクラスに転校生が二人入ってくることになった。仲良くしてやってくれ。二人とも留学生だから、日本の生活に困ることもあるから頼むぞ。入れ。」
そう言うとクラスに二人の女の子が入ってきた。一人は亜麻色のショートヘヤーの女の子で、大きさ瞳は蒼い色をしている。身長は白雪より少し大きいぐらいだが、うちの制服を着ていっても高校生には見えない。
もう一人は白い白銀の髪のショートヘヤーの女の子。右手には俺にしか見えないガントレットをつけていて、そこに黄色い球体が嵌められている。俺はその黄色い球体の名前をなぜかしっている。名前はローだ。そしてその女の子の名前も知っている。名前は桜白雪だ……。
俺と凜奈は同時に頭を抱えた。二人組みなので違うと思っていたが、お決まり展開になっていた。白雪はこの一週間ほど転校してくるために動いていたのだろう。いや、転校というよりは入学か?
クラスメイトの男子は言葉を失っていた。可愛い子が転校してくると情報が入ってきていたが、ここまで可愛いとは予想もしていなかったのだろう。まぁ確かに白雪も隣に居る女の子も可愛らしい子だ。
見た目だけならともかく。白雪は召喚者だけど。その事実を知るものはこのクラスに俺と凜奈ぐらいなので別に気にしていないが。
「二人とも自己紹介」
先生のそういわれて教卓の前に立つ二人。身長が似ているので姉妹のようにも見える。
「私の名前は桜白雪よ。これからもよろしくね海人♪」
白雪から俺の名前が出たことで周りの空気が重くなった。周囲の男子からなにやら重い視線を感じる。
だが、もう一人自己紹介が残っているので直ぐに前を向く。
「私の名前はウィン・ローネと言います。気軽にローネと読んでください。これからよろしくお願いします海人さん♪」
再び俺の名前が出たことでさらに重くなった空気。周囲の男子からは『殺す』とでも言いたげな視線が向けられている。だが、驚いているのは俺も同じなのでどうしようもない。
名前は白雪が言ったのでどうでもいいが、どうして俺なのかが理解出来なかった。後ろに居る凜奈に目を向けたが、不思議そうな顔をしていたので、凜奈の知り合いでもない様子だ。
「小学校ではないので、質問は各自にやってくれ。それじゃ、席はどこにしようかな……」
ウィン・ローネは楽しげにこちらに視線を向けている。怪訝そうにウィンさんを見ている白雪。何がどうなっているか理解できない。
だが、俺を楽しげに見つめてるウィンさんの視線からは興味のあるおもちゃを見つめるような感じがする。
そして俺は再び何かが始まりそうな予感がしていた。
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