過去 崩壊
更新がかなり遅くなってしまいました。途中から忙しくなったことも理由なのですが、急激に続きが書けなくなってしまい、スランプ状態でした。
本当に申し訳ありません。
リーシャが未来予知ができるという事実が発覚してから一年近い月日が経過した。
一年前に五年後の村の様子を視て、五年という年を取ったリーシャの変化に気が付かない村人が居るわけも無く、大騒ぎになった。マルクやパリスはなるべくリーシャを外に出さないようにしていたが、限界があり村人に見られてしまい、広がった。
結局、大勢の村人がマルクの家に押しかけて、全てを話す以外の選択肢が無くなり、打ち明けた。勿論、色々な声が飛び交ったが、リーシャが急成長している姿を見ては信じる以外になかったのだろう。
天気が分かるという力だと思っていた村人達は、未来予知という力がどれほど強力な力なのか直ぐに理解することが出来た。
未来予知は全てを変えることが出来る力なのだ。勿論、人間が出来る範囲など高が知れているが、普通の人間が暮らしていくにあたって、未来予知が出来れば裕福な生活が出来るのは言うまでもない。
まず、宝くじや、賭け事に対しては絶対的な力を持つのは言うまでもないだろう。当選番号を知ることが可能なのは言うまうまでもなく、競馬や競艇などでは順位が全て知ることが可能だ。
一位になる所に大金を賭ければ全て戻ってくるという仕組みに変化する。たった、それだけで仕事せずにお金が手に入り、遊んで暮らせるようになる。一部の人間は仕事を生きがいにしている者も居るが、大多数大勢は前者の方法で生活していくようになるだろう。
他に危機回避などにも役に立つ。危機回避に関してはお金を儲けるより効果は薄いが、大きな力を発揮するだろう。どこかに遊びに出かける時に視るだけで、どこが危ないか、もし怪我をしたらその場所を回避するなどに使用することが出来るだろう。
他にも多くの事に使える未来予知という力……悪にも善にも使用することが出来る力は強力な力という他ないだろう。人の身で可能なことであれば全てを知るが出来るのだ。
自分が進む未来や、これから進んでいく社会など全てが個人的に知ることが可能になる能力……そんな強大な力を持った人間が、村に居るという事は当然、恐怖を抱かれる対象になっても可笑しくない。
だが、この村に限っては一部だけだった。ほんの数人だけが、恐怖を抱いき、力の強大さと危険さにいち早く気づいたが、大勢はそれに気が付かなかった。ただ、漠然とすごい力、便利な力程度しか理解出来ていなかったのだ。
結果、この村でリーシャはまるで神様のように祭られた。
人間は自分に持たない力がある存在を上に見てしまうことが多くある。たかが、小学生であるリーシャを、未来予知があるというだけで神様のような扱いにしてしまったのはそのためだ。
今まで通りに接して普通の女の子の扱いにしてあげればいいと問う者も居ることには居るだろう。しかし、大多数の人間はそのような考えは持たない。特に森に囲まれた小さな村では特に持つ者は居ない。
規則や掟……そういった物は村には存在していないが、やはり神様を信じる人は多く居る。村に一つだけある寺に毎日お祈りを捧げている人も決して少なくはないのだ。
だからこそ、パリスとマルクの家には毎日、毎日のようにお供え物が置かれるようになった。
「これ……どうしましょ…」
パリスは隣に居るマルクに聞こえるように呟いた。視線の先には最近毎日のように村人から供えられる食料などが大量に並んでいた。
「今日もたくさんあるな……」
誰からこのような事を始めたか二人にも村人にも分かっては居ないが、パリスとマルクからすればいい迷惑であった。無料で食料などが大量に送られてくる状態が迷惑というもの贅沢な事だと思う者も居るかもしれないが、二人には迷惑だったのだ。
「リーシャは神様でもなんでもない。普通の女の子で私達の家族よ……」
「ああ、こんな風に神様のような扱いされるのはリーシャも望んでいない……俺達もだ」
生活には困っては居ない。今はほとんど外にも出ていないリーシャは、何も言わないが外に出たがっているに決まっている。朝から夜まで家の中で過ごすことが好きな子供など存在しないとマルクは思っている。
世間にはたくさん居るが、少なくともこの平和な村ではそのような子供は今までに見たことが無い。今も昔も子供は外で元気に遊ぶ者だと二人は考えているのだ。
「リーシャは絶対に俺達で守ろう。親である俺達だけはあの子を普通の子供のように扱ってやらないとな……」
「ええそうね……私達がどうにかしなければ」
家で笑っているリーシャの姿を見ながら決意を固める二人。
だが、二人の決意も虚しくさらに事態は加速していく。未来予知があるという事実はこの平和だった村をさらに可笑しくさせていく。もう、二人の手でどうこう出来る問題ではなくなっていた。
***********
さらに二ヶ月ほど時間が流れると、事態はさらに悪化していた。
パリスとマルクがリーシャを見ている内は大丈夫だった二ヶ月前とは違い、ずっと家に閉じ込められるように過ごしてきていたリーシャが、二人に黙って外に出ることが多くなった。
ほんの少しだけ目を離した内に村に出て、近くで遊んでいる子供達に混じって遊んでいるのだ。見た目は既に高校生に見える段階まで来ていた。だが、年はまだ七歳だ。外で遊びたがる時期……閉じ込められていたら外に出たがるのは当然と言えるだろう。
普通の子であれば親も少し叱るぐらいで済むことだが、未来予知という能力を持つリーシャは普通に遊んでいる事が問題だった。いや、遊ぶことに関しては特にマルク達も言うことはなかった。
見た目は高校生だが、中身は七歳の子供だ。近くの子供達と遊びたいという気持ちは理解できない訳ではない。自分達もそうであったから余計に否定出来るものではない。だが、この村に居るのは子供だけではない。
小さい村で村人全員と交流がある村であっても、心の中では自分達の事しか考えていない大人など大勢居る。どこでも同じことであり、未来予知という能力を持って生まれてきたリーシャをその対象にしようとするのは不思議な事ではない。
遊んでいたら子供達の数倍の人数がリーシャを囲み、明日の天気や、数十日後の事などを沢山リーシャに答えさそうとする。七歳と言う子供のリーシャは質問を全て答えたりすることも多くあった。
一日目を離すだけで外見の変化が大きくあったことも何度も経験した。後、このペースだと後一ヶ月もしない内にマルクやパリスと変らない外見になることは言うまでもなく、リーシャの老化を止めることなど、たった二人では出来る事ではなかった。
「どうすればいいんだ……」
仕事から帰ってきたマルクは深刻そうな声で呟いた。
「わからないわ……私達に出来ることなんて……」
布団で寝ているリーシャを確認してから、二人は起さないように小声で話しを続ける。内容は他の誰でもないリーシャのことだった。
「俺も仕事を休もうか??タケシに相談すればどうにかなるだろうし……」
パリス一人ではどうしても家事をしている最中に目を離してしまい、リーシャが外に行く事が出来る時間を与えてしまうのだった。24時間ずっとリーシャを見張っていることなど出来る訳がない。
トイレなどで目を離した隙に居なくなることもこれまで何度もあった。一人ではどうしても限界があるのだ。
「それは駄目よ。流石に迷惑かけられないわ。これは私達家族の問題なのだし……」
パリスの自分一人ではリーシャを見るのは限界があることなど充分に理解していた。これまで何度も外に出ているリーシャを連れ戻したりしたパリスは、今の現状が悪い方向に向かっていることも理解していた。
「それもそうだが……」
このまま年を取り続けるとどうなるかなど、誰が考えても理解出来ることだ。未来予知が出来るからといって、人間の寿命が延びることなど決して無い。何一つ分からないマルクやパリスにだったそれは充分理解していた。
このペースで行くと、おそらく後、三年程度でリーシャはマルク達の二倍ほどの年を取ってしまうと考えられる。中身は子供でも、体は老人になれば、必然的に死は早くやってくるに違いない。
「タケシには頼らずに頑張ってみましょう」
「それが、最悪の結果になったとしてもか??」
「ええ……」
二人は親友であるタケシに頼らずに、自分達でどうにかすることに決めた。その結果、二人が想像している未来に直面する日が来たとしても。
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それから月日はさらに流れる。
リーシャは予想通り、マルクとパリスの年齢は大幅に超え、髪の毛は白髪になり、顔には皺が多く目立つようになった。見た目の年齢は六十歳後半から七十歳前半といえるほどまでになった。
家の外に出さないようにと奮闘していたマルク達だったが、そんな努力も虚しく、リーシャは未来予知で多くの村人の助けになったということで、村の神様として崇められることになった。
当然そうなると、親だからという理由で、一緒に住むことは出来なくなってしまい、リーシャはマルク達の下から引き剥がされてしまう。勿論、抵抗したマルクとパリスだったが、二人では何も出来ずに、リーシャは神様になった。
生きている人物を神様として崇めることは異様なとだが、誰もがその能力が未来予知ということで否定するものなどおらず、むしろこれからいつでも未来の事を聞くことが可能になったことに歓喜していた。
それからのリーシャの老化は凄まじいペースだった。老化する事は村人全員が知っているので、一人一ヶ月に一回という決まりが定められていたが、それでも村人が毎日のように未来を視て貰うとなれば、老化が進むのは仕方ないことだろう。
中身はまだ子供なのに、見た目は七十近い老婆に見える我が子の姿を見て、マルクとパリスは恨み以外の感情を持たなかったのは言うまでもない。自分達の大切な子供が生まれ育った村の人達に殺されようとしているのだ。
殺意など多くの感情も入り混じっていたのは言うまでもないだろう。
しかし、リーシャが後少しで死ぬことなど村人全員が理解していた事実だった。それに、一ヶ月に一度ではあったが、未来を分かる便利さを知ってしまった村人は神様であるリーシャを失うことを恐れていた。
だが、そればかりは仕方ないと割り切っていた村人だったが、ここで親友だと思っていたタケシから村人への提案で状況が変化する。
「リーシャが死んで、未来予知が出来なくなるのなら、もう一度未来予知が出来る子供を生めばいいではないか」
低く、冷たい声で発せられたタケシの視線の先には、パリスの姿が映っていた。
「連れて行け」
雨が降らなかった時に、多くの者を助けたタケシの命令に逆らえる者など存在しなかった。それに、リーシャを失うことを恐れていた村人達はタケシの案はとても名案に見えたのだ。
「何しようとしてるんだとタケシ!!!!!」
マルクはタケシがパリスにしようとしていることが、理解出来ていた。パリスにリーシャの代わりを生ませる気であるのだと察していた。
「黙れ」
だが、マルク一人では村人を相手に出来るほどの力はなく、押さえられてしまう。泣いて、わめいて連れて行かれるパリスの名を叫ぶこと以外できなかった。
タケシはここに来て、ずっとパリスに向けていた淡い恋愛感情が、歪んだ形になっていることに気がついたが、自分一人の物に出来ればさほど問題ではないと考え、毎日親友だったマルクの妻であるパリスを犯し続けた。
それから、数日後に神様と崇められていたリーシャが、未来予知の途中に息を引取ったと村全土に駆け巡った。勿論、未来予知の道具としてしか見ていなかったリーシャの死など誰の悲しまず、パリスが新たな未来予知の能力を持つ子供を生んでくれると信じていた。
だが、普通に考えればそのような強力な能力を持つ者が同じ母体から生まれることなど決してありえない。まさに何一つ普通なパリスから生まれたこと事態が奇跡に近いと誰も思っていなかったのだ。
そんな中、最愛の妻も子供を失ったマルクは生きる目的を失っていた。ただ、胸に渦巻くのは恨みと憎しみ、そして村人全員に抱く殺意だけだった。タケシに抱く殺意は特に強かった。
「どうしてこうなったんだ……」
三人で幸せな暮らしを求めていたはずなのに、気が付けば一人きりになってたマルクは泣きながら呟いた。
「俺が悪かったのか??パリスと結婚して、子供を作って幸せを願ってしまったから……??」
皆が求める当たり前の幸せ。人は誰もがその幸せを求めて生きていくものだと信じているマルク。人それぞれ違っても、求めるのが幸せだということは変化ないと今でも疑わない。
「何がいけないんだ!幸せを願って!!」
大層な幸せじゃない。普通の幸せを願って、このようなことになってしまったのだ。
「こんな村もう……」
村が寝静まった夜、マルクは行動に出る。
一人ゆっくりと家を出て、タケシの家に火をつける。タケシの家だけじゃない、マッチで近くの家にも火をつける。何度も何度も火をつけて、村全体が真っ赤に燃え上がる。
山の中にある村……それも皆が寝静まった時間滞に火をつけたのだ。対応できる者など存在しなかった。
真っ赤に燃える村の中で、叫び声と、悲鳴、そして笑い声マルクの声が聞こえる。
「燃えろ!!全部燃えろ!!!ハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして、この日村は全て燃える。
そして、この日はリーシャが予知した五年後だったのだ。




