表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/107

94.悪の手先 アナザー27 トライアングラー

勝屋との戦闘(79.正義の味方 アナザー6 YOU & I 参照)の数日後


 男は目を覚まし、


 『腹が疼く、痛ぇ、あのクソガキ!』


 腹部に幾重にも巻かれた包帯をさすり、毒づく。


 なんだったんだ、勝屋のあの力は?


 あんな土壇場で発現するのか。 


 なぜ、”絶頂楽園(フォビア・ハイ)”の効果がなかったんだ?


 嬲りすぎた性か?


 射撃系と召喚系、明らかに系統の違った能力だ。


 追いつめられると次の能力が発現するようにプログラムされており、


 派生、進化が急激に行われたのか?


 では、なぜ俺には発現しない?危うく死ぬところだったのに!


 分からん、推測の域を出ない。


 くそっ、仕事にしくじるわ。大怪我負うわ、踏んだり蹴ったりだ。


 『くそぉっ!』


 怒りが口から更に零れた。

 

 感情が前面に出るのは、よくない傾向だな。


 自らを省みて、自嘲する。


 『復讐したいのは分かるんだけど、しばらく戦闘は無理だな』


 右目に眼帯をした少年が苦笑しながら病室に入ってくる。


 確か、俺を運んだ少年だ。


 あの時、パニックになっていたが、高速移動したように見えた。


 助けておいて、敵と言う事はなさそうだが。


 こいつも剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)ユーザーか?


 どこまで事情を知っている?

 



 『しっかし、感謝してくれよぉー。絶好のタイミングだったろ。


  マジで神業だったな。後数秒遅かったら死んでたぜ、あんた。


  内臓ぶちまけてな』


 『あぁ、感謝してるよ。ところで、お前、お前たちは?』


 『あんたと同じだよん。あの女に雇われたハンターでっす!』


 眼帯の少年の後ろから、ツンツン頭の少年が更に入ってきた。


 口ぶりから同世代のようだが、この少年の方が幼く見える。


 『えっと、キトウ ショウゴさん?


  早速だが、次の任務です。”陰陽師 新堂 圭太を調査、確保せよ”』


 『キトウじゃねぇ、キフジだ。木藤キフジ 正吾ショウゴだ。


  お前たちは?


  そもそも、この体での戦闘は無理だと君が言ったんだ』


 木藤は枕元のスマートフォンを手に取りながら、眼帯の少年に指摘した。


 その画面には、剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)のアイコンが残っており、


 体力が戻れば、能力の使用には問題がないように思え、口元に笑みがこぼれた。


 『心配無用。これからは俺たち3人で基本的に行動します。


  僕が”D”。神谷だ。”かみやん”と呼んでちょーだい。


  能力は瞬間移動。これであんたを助けた。


  こいつが、”B”、”タッキー”ね。能力はパイロキネシス。


  ぶっちゃけると僕らも怪我人でさ、ガチンコは無理っぽい。


  調査や工作レベルが限界かなと思ってる。


  後、もうちょっとしたら、一人増える予定。


  そいつの能力はまだ良く分からない。』


 『分からない?仲間じゃないのか?』


 『いや、知り合いなんだけど、能力の発現がよく分からない。


  見た事ないんだよな。あの先をさ。』


 『そうそう、移動系や攻撃系、催眠系でもなくて、うまく言えないよね。


  アイツ、HENTAIだからさ』


 『???』


 かみやんとタッキーは二人で話し合っているが、


 一向に的を得ず木藤は顔をしかめるだけだった。


 


 『ところで、あんたの”絶頂楽園(フォビア・ハイ)”。


  本気を出せば、サイコメトリー、心を読めるって聞いたんだけど。


  当てにしていい?』


 『誰から聞いた?』


 木藤は、視線をスマートフォンから外して睨みつけるが、


 『雇い主様から』

 

 かみやんはそんな視線に臆することなく、隻眼でウィンクする。


 『正確に言えば、”心を読む”訳ではない。


  サイコメトリーではないんだ。


  ”絶頂楽園(フォビア・ハイ)”をフル稼働させ、


  一時的な混乱、催眠状態に落とした後で本人に聞くんだ。直接な』


 『なにかデメリットが?同じじゃないんすか?』


 タッキーは缶コーヒーをすすりながら、眉をひそめて聞き返す。


 『……』


 『これからはチームなんすよ。隠し事はなしでいきましょーよ』


 サングラスを拭きながら、かみやんは苦笑する。


 ナメたガキ達だが、能力保有者である事は確定。


 こっちのタッキーとやらはパイロキネシス、直接攻撃能力。


 分が悪い。更に、今、俺個人では満足に動く事すらかなわない。


 一時的とはいえ、協力しておくべきか。


 木藤は、表情は変えず、頭の中でそろばんを叩く。


 『まぁ、正確な定義かどうかは分からん。


  確認のしようもないしな。あくまで俺の定義だ。


  ”心を読む”と言うのは、


  その本人と同じ時、同じ場所で同じ経験をしたという事だ。


  脳内情報の記憶にアクセスし、記憶を検索、追体験ができると考えてくれ。


  ”俺の場合”は、あくまで本人に聞くんだ。


  本人からの言葉でのみ、回答、情報を入手する事ができる。


  情報の量、密度、精度が数段劣り、更に主観が混じる。


  こいつも厄介でな。欲しい情報ではない、”思い”が混じりすぎる。


  読み物として捉えれば、面白いのかもしれんがね』


 『下位互換?』


 『言い方は気に食わんが、乱暴に要約するとそうなる』


 木藤は、こめかみを数mm上げ、タッキーに同意した。


 『本人からの回答って事は……、もし本人が忘れたりしたら?』


 『おっ?かみやん。


  君は鋭いな!その通り。


  あくまで、本人が今、現在覚えている情報のみだ。


  試したことはないが、ジジイやババア、老害にはほとんど役に立たないだろう。


  逆の幼すぎる子供も回答能力に劣る分、同じだと推測するね』


 『使用条件が限られてくる訳ね』


 ”君は”というキーワードにタッキーが反応したのを確認した上で、


 木藤はかみやんに向き直り、話を続ける。


 『チームメイトとして、更に開示しよう。


  この力は、通常の範囲催眠攻撃である”絶頂楽園(フォビア・ハイ)”を


  単体に指定する必要がある。消耗も激しく、俺は無防備になる。


  戦闘中に使えるものではない。


  対象を束縛、安全を確保した上でのみの使用としてくれ』


 『了解』


 サングラスをかけ直し、うなづくかみやん。




 『なぜ、サイコメトリーの話を?』


 『新堂 圭太なんですけどね、データ上は39。嫁死亡。娘一人。


  公式記録は去年に死亡だが、最近目撃情報が出たんすよ。


  元・白鞘の陰陽師。


  そんな訳で足取りを掴む為に、娘を使って、新堂 圭太を調べようかな。と』


 資料をパラパラめくり、かみやんは木藤に写真を見せつける。

 

 『その娘は父親が生きている事を知っているのか?

 

  知っているのなら、話が早いが。


  データ上、死亡ならば、娘も死んだと認識していないか?


  あと、思春期の女か……さっき話した主観が混じりやすいのがこのタイプだ。


  オススメはせんな』


 木藤は写真を一瞥した後、すぐに写真を返した。


 『まぁ、娘は現役の陰陽師、且つチームで活動しているみたいだしな。


  やめとこうぜ。狙うは新堂 圭太本人だ』


 『居場所は分かるのか?』


 『滋賀県北部の山中で目撃情報、周辺に長老教会があるらしいんで、亡命したのかも』


 『長老教会に喧嘩を売るのか?それも賢いとは言えんな』


 『ですよねー』


 隻眼では目が乾くのか、かみやんはやたらと瞬きをしている。


 いつ左目を失ったのか?


 能力の発現と同タイミングであれば、付け入る隙もありそうだが、


 チンピラみたいな風貌とは裏腹に人の話をよく聞き、


 思慮深い点は気を付けなくてはならない。


 攻撃する際のタイミングは要注意か。


 タッキーとやらは、落ち着きがなく指遊びをしている。


 説明をかみやんがするという事は、流れを自分でつくる事はしない。


 かみやんの指示に従うのだろう。


 倒すならば、”神谷”、お前からだ。


 もう一人とやらは、今は情報不足。まぁ、体の回復を今は待つか。


 木藤は顔色を変えず、新しい同僚を観察する。


 


 『まぁ、下見も兼ねて現地に行きますか?


  決行する際は、短期決戦でさ。


  基本的には、木藤さんの”絶頂楽園(フォビア・ハイ)”+


  タッキーの”鬼灯(ブレイズ・オブ・グローリー)”のダブルパンチで攻撃、


  対象が混乱、弱らせた隙に、俺が拘束、拉致しようかと思ってます』


 『濵口の時のコンボ使えば?』


 タッキーは指を鳴らし、名案とばかりに提案するが、


 『あれ使うと死んでしまわないか?


  タッキーの火力も上がってるしさ。弱火で行ける?』


 『うーん、調整むずいんよねー』


 タッキーが右手から出した種火は呼吸するかのように、鼓動し、その姿を変えた。


 それは、蛇のように主人の手の周りを踊る。


 おい、病室で火を扱うんじゃない。


 『雇い主はなんか新堂 圭太から情報を聞き出す予定みたいな事言ってたんだけど、


  木藤さんの”絶頂楽園(フォビア・ハイ)”、


  死体から事情聴取はできませんよね?』


 『当たり前だ!』


 木藤は即答しつつ、目の前の少年達が自分以上に場馴れしている事に驚く。


 最近のゆとりはどーなっているんだ?

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ