73.悪の手先 アナザー21 Devil's Got A New Disguise.
”ヤナ”は、一人、通学路を歩く。
僕達、3人は、 濵口に敗北した。
あの乱入者が来た時、”かみやん”の最後の力でなんとか離脱できたけど。
”かみやん”は、右目を失明、入院中。
”タッキー”は、集中治療室、絶対安静。
更に、誰かが警察に連絡してて、なぜか”僕ら”とチンピラの喧嘩になっていた。
手際がいい事に、すぐに学校にもバレて、吊るし上げられた。
2人は、病院から出れないので、僕だけ呼ばれて”停学通告”でフィニッシュ。
『くそっ、何が柳井君、君自身の人生に悪い事、
気をつけて下さい。だよ!
マスコミに叩かれるのが嫌なだけだろぉが!』
”ヤナ”は愚痴りながら、家に向かう。
スマホをいじると、
”剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)”の指令が来ていた。
中を確認すると、濵口の暗殺指令が中止と記載されている。
中止…僕らの他にも被害者が出たのだろうか…
まぁ、今更、どうでもいいが。
ポカリとエロ本でも買って、2人の見舞いに行くか…
『コァン!コァン!』
派手なマフラー音を撒き散らし、”ヤナ”の前に青のRX-7が止まる。
”ヤナ”が顔をしかめていると、車の窓がゆっくりと開く。
『よぉ、先日は、世話になったな。』
濵口が運転席から顔を覗かせ、笑う。
『な、なんで?』
”ヤナ”は、驚きの余り、その場に立ち尽くす。
『あんだけ派手に暴れたんだ。
ニュースにもなったろ?
ニュースになりゃ、大抵は情報が出回る。
お前達の事は、名前、顔、学校、全部曝されてるぜ。
停学だって?ご愁傷様♪』
”ヤナ”は、全く歯が立たない事を痛感していた、下を向いて呟く。
『ぼ、ぼ、僕を殺しにきたのか…』
『殺してもいいんだが…いくつか知りたい事があってね。』
濵口は、口の端を歪める。悪意がまるで透けて見える。
後ずさる”ヤナ”。
『逃げてもいいが、滝澤君と、えぇっと、神谷君か。
あいつらが先に死ぬ。その後で、お前を殺しに行く。』
濵口は、スマホを眺めながら釘を刺す。
『…………』
『君が協力してくれるのなら、あとの二人には手を出さないでおこう。
もちろん、リベンジマッチがしたいなら今からでもいいぜ。
まぁ、戦闘タイプには見えんが。』
濵口の手招きする左手がどす黒く光っている。
切断されたはずの右手もある。
『………何をすればいい?』
”ヤナ”は、降伏する。
『OK。立ち話もなんだしな、乗れよ。
ここらへんにスタバってあるかな?』
『国道1号線にある。そこの先を右、でかい交差点を左。』
助手席に乗り、”ヤナ”が指示する。
『へいへ~い。僕の名前は、濵口だ。よろしくな。』
『知ってますよ。』
-スターバックス-
2人は、店内の窓側、隅に座る。
『まず、君の、君たちのか。超能力について知りたい。
どうやって入手、もしくは習得した?
僕にも使えるようになるものかな?』
注文したキャラメル フラペチーノにハチミツとガムシロップをぶち込み、
チョコレートソースでコーティングした液体をすすりながら、
濵口は切り出した。
信じられない味覚をしている化物を前に”ヤナ”は絶句する。
『ん?どした?飲みながらでいいぜ。急いでるわけじゃない。』
『あ、…どうも。』
キャラメルマキアートをすすり、一息入れて、”ヤナ”は話しだす。
一通り、”剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)”の説明を受けた後、
濵口は、自分のスマホでアプリ起動を試みるが、
『エラー。』
『エラー。』
『エラー。』
何度試しても起動すらしない。
『なんでだ?』
濵口は、”ヤナ”を睨む。
『理由は、分からない、です。
僕とあの二人は発現したけど、まわりには、発現しない、
起動すらしない人もいた。
あなたは、デタラメな”力”を持っているから、
”力”通しが反発しているんじゃないの。』
『そうか…残念。ちっと、面白そうだったのによ。
まぁ、いいや、では、次だ。
君とあとの二人の能力を教えてくれないか。』
神谷
能力名 : 離魂
Lv : 23
生息地 : オーナー両肩部
攻撃性 : なし
本能 : オーナー及びオーナーと接触している物を瞬間移動させる。
移動先は、オーナーの視界、もしくは、滞在した事がある場所
に限定される。
移動可能距離もあるが、”ヤナ”は厳密な距離まで知らない。
攻撃手段: なし
腕力 : 瞬間移動最大積載量があるが、”ヤナ”は知らない。
個体数 : 1(両肩の一対でカウントする)
成長 : ”ヤナ”は知らない。
繁殖 : ”ヤナ”は知らない。
外観は、薄く黒いマントのようだった。
滝澤
能力名 : 鬼灯
Lv : 17
生息地 : オーナー右手の掌から距離○○m程度。”ヤナ”は厳密な距離まで知らない。
攻撃性 : オーナーの空腹度に比例して凶暴化する。満腹時は、主に寝ている。
本能 : オーナー右手の掌から炎の蛇が発生。
オーナーの意思がない場合、可燃物を優先して追尾、攻撃する。
攻撃手段: 炎撃
腕力 : オーナーに準ずる。
個体数 : 1
成長 : ”ヤナ”は知らない。
繁殖 : ”ヤナ”は知らない。
柳井
能力名 : 初花
Lv : 5
生息地 : オーナー右腕部
攻撃性 : オーナーに準ずる。
本能 : 初潮を迎えた処女の下腹部に打ち込む事で受胎。
出産をもって、力の還元をする。
出産までの期間は、オーナーと相手の相性による。
攻撃手段: 触覚
腕力 : オーナーに準ずる。
個体数 : 1
成長 : あと一人の出産。または、30,000円
繁殖 : Lv.10にて1体追加
外観は、カブトガニに似ている。
『神谷は、移動系、瞬間移動は便利だな。潰したのは、失敗だった。
滝澤は、攻撃系、だが、精密な攻撃、炎の拡大が困難な為、ガソリンか…
考えたな。
しかし、柳井君、なんでそんな能力に…w。』
濵口は、口元を押さえ、笑いをこらえながら質問する。
『能力は、自分では決められない。
説明したように、勝手に決定されて、与えられる。』
むちゃくちゃな化物にまで馬鹿にされ、
窓の外を見ながら”ヤナ”は答える。
『オーケー、オーケー。
次な。なんで僕を狙った?居場所、現在地をどうやって知った?』
『剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)の指令で、
あんたの暗殺があったんだ。それで狙った。』
『そのメール、見れるか?』
『これ。』
ヤナは、自分のスマホを操作し、濵口に手渡す。
『すげぇな。顔、居場所までご丁寧にリンク付きか…
ん?”Close”になっているのはなんでだ?
僕、死んでないぞ。』
『あんたがめちゃくちゃ強かったからじゃないの?
”かみやん”、”タッキー”、僕。多分、あの茶髪も倒したんでしょ?
それで、指令が取り下げられた。』
『ん?そうか…
(このAという人物は、僕の事を知らず、指令を発行したのか…)』
濵口は、少し考え込む。
『あと、この宛先のメンバーで知っているヤツいるかい?』
『”かみやん”と”タッキー”しか知らない。』
『あれ、勝屋は?途中で乱入してきた茶髪は?』
『あの時、初めて会った。』
『ふーん。そうか…』
濵口は、残ったキャラメル フラペチーノを一気に飲み干す。
『恐らく、”V”が勝屋。ルージュ…あの女が”R”か。
アルファベット順と考えて、MAXで26人。
現在、”B”,”D”が脱落。
いや、黒連の施設で会ったイグアイン…”I”、
この間、いちゃもん付けてきた男がスネイクなんちゃら…”S”か。
こいつらを含めると4人脱落。
あと、22人か。
他のメンバーと匿名で連絡が取れるか?』
『取れない。その”A”のメールに返信してもエラーになる。』
『そうか…残り23人。
全員殺す必要はないんだが、位置特定の能力者だけは、殺しておきたいな。』
『僕が知っているのはこのぐらいです。』
飲み終えたコップを置き、”ヤナ”が区切る。
『なるほど、ね。一つ、興味本位で聞くんだが…』
濵口は、”ヤナ”のスマホを返しながら話す。
『なんです?』
『初花を使った事は?』
『まだ、発現させた事はないです。レベルは課金で上げた。』
『ふぅ~ん。是非、見てみたいな。今から行こうぜ。』
濵口が立ち上がり、”ヤナ”を手招きする。
『今から?どうやって?』
『どうやっても何も…適当にJC、JK襲えばいいだろ?』
濵口が窓の外を歩く学生達を指差す。
『こんな昼間から?』
『意外に臆病モンだな。』
濵口が肩をすくめて笑う。
『僕の”力”は知ってるな?
そこらへんの”人間”なんぞ赤子にもならねぇ。
そんでもって、恐らく僕は、もう”人間”ですらない。
やりたい事をやりたいようにするだけだ。
”ヤナ”、お前も自分の”力”を見てみたいだろ?』
濵口は、”ヤナ”の肩に手を回し囁いた。
『僕の”力”…』
”ヤナ”は、右手をスマホを見て呟く。




