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74.正義の味方 その二十三 姉ちゃんとしようよ!

 白鞘から作戦とは違う集合指示が来た。


 僕と宇梶は、放課後に911号室に向かう。


 学校を出る際、吉野姉妹にガン飛ばされたが…


 なんとか任務だと言ってなだめて聞かす。




 『お疲れ様です。』


 『お疲れ様で~す。』


 僕らが挨拶しながら入ると、


 『陽子ちゃん、お久しぶり。


  おっ、君が噂のスーパーエースね。』


 部屋には見た事のない女性と御門野、新堂が居た。


 セミロング、ウェーブのかかった黒髪、御門野と同世代か、少し若いぐらいか。


 目付きが少しキツク、気の強そうな女性だ。


 スーツを着ているという事は御門野の同僚か何かなのだろうか?


 『あっ、その…初めまして、柊です。』


 僕は、年上の女性に取りあえず頭を下げる。


 『あみが言ってた通り、礼儀正しいわね。


  ますます、いいわ。』


 女性は、僕を見て笑う。


 あみ…?平田とも知り合いなのか?


 『あの…』


 『おっ疲れー!!


  げっ!なんで、姉ちゃん、いんの?』


 僕の疑問は、後から部屋に入ってきた平田が回答してくれた。


 『姉ちゃん?』

 

 僕は、女性に手を向け、聞き返す。


 『そう、私の名前は、平田 (あや)


  あみの姉です。いつも妹がお世話になってます。


  私も白鞘所属の陰陽師です。』


 『あっ、いえ、僕の方こそ、平田さんにはお世話になってます。』


 『そんな謙遜しなくていいわ。


  あみ、馬鹿だからすぐ突っ込んで怪我するでしょ?』


 平田 綾は、笑って手を振る。


 『馬鹿言わんといて!』


 『で?今日は、私の部屋まで来てなんなの?』


 御門野がお茶を飲みながら、話を振る。


 『白鞘の特命で、柊君を貸して頂きます。』


 『はぁっ?聞いてないわよ。』


 御門野がみけんにしわを寄せる。


 『これ、指示書です。取りあえず、一日。


  もしかすると、私の右腕になってもらうかもしれませんけどね。』


 綾は、御門野に白い封筒を渡す。


 『イキナリ、部下を貸せ!


  はい、どーぞ♪


  なんて言う訳ないでしょ。


  ウチの看板なんだけど。』


 御門野は、封筒の中身を一瞥し、綾に返す。


 『御門野さんもご存知の通り、


  柊君は、術者として、日々”信じられない”スピードで成長しています。


  白鞘という組織としても、大切に、


  そして、経験を着実に積んでもらいたいと考えています。


  彼は、あなたの部下で終わらせるにはあまりに惜しい人材です。


  白鞘本部の意向としては、部隊長を経験してもらい成果を挙げ、


  本部栄転後、しかるべき”縁組”をと。』


 『えっ?』


 僕は目が点になる。


 話についていけなかったが、最後の言葉が引っかかった。


 『縁組?』


 改めて聞きなおす。


 『ちょっと、どういう事なんですか!?御門野さん!』


 『知らないわよ!私だって今、知ったんだから!』


 『姉ちゃん、イキナリなんなん!』


 御門野に噛み付く宇梶、突っぱねる御門野、姉に怒鳴る平田妹…あみ。


 新堂は、ボーゼンとしている。


 『うるさいっ!


  当たり前でしょ!


  今までの陰陽師の血統、家系から完全に”独立”した類稀なる逸材なのよ。


  柊君はもちろんの事、彼に流れる”血”、その”力”を絶やすなんて愚の骨頂。


  白鞘本部で縁談”絶賛”検討中じゃあっ!』


 平田姉…綾は、キレ気味に言い返す。


 『そ、そんな、柊君の意思はどうなるんですか!』


 『新堂さん、意思を組む為に数十人からなる花嫁を選別しているのよ。


  優れた人間が多くの子孫を残す事は、日本、人類にとっても有意義でしょ?』


 新堂の反論に綾は、優しく言い返す。


 日本?人類?


 話があまりにも飛びすぎて頭がついて行かない。僕…の話だよね?


 『適性、相性もあると思うけど…


  みんなも知っての通り、私達は普通の人間とは違う。


  特別な血統を持ち、教育、訓練を経て、


  選ばれた異性と結び、子を育んでいく。


  それは、今も昔も変わらないわ。


  御門野さん見たく、放棄する人も中にはいるけど。』


 『ほっとけ!』


 御門野は、一言、言い返し舌打ちをする。


 『柊、彼女、おんねんで!!』


 『『『!!!』』』 


 あみの発言に、御門野、宇梶、新堂は僕を見る。


 『それで?


  別に”今”、”誰”と付き合っていようが、


  所詮は子供のママゴト。


  適齢期になってからの物とは、話が違うわ。』


 綾は、鼻で笑う。


 『”うち”と付き合っとんねん!!』


 『うぉいっ!』


 僕は、思わず突っ込む。


 『なら話が早いわ。


  適応者…花嫁が選別されるまでは彼女のフリをしてなさい。


  その後は…分かるわね。』


 『嫌や!』


 『あみ、あなた、聞き分けなさい。』


 綾は、ため息をつく。


 『うち等、真剣に付き合ってんねん!


  ちゃんと未来の事も考えてますぅ~!!


  ウチが柊の子供を産みます!』


 『!!』


 おい、勢いで凄まじい事、ぶっ放してんじゃねぇ…


 僕は思わず天を仰ぐ。


 『まぁ、それならそれでもいいけど。


  柊君には白鞘で選別した花嫁とも子供を儲けてもらうわ。


  あなたは夫婦のフリをしてなさい。』


 『………』


 『ちょっ、イキナリで酷すぎませんか!』


 僕はなんとか間に入る。


 『僕にだってその…気持ちがあります。


  そんな”力”の為だけの結婚や子供は嫌だ!』


 『あら、最近の子にしては珍しいわね。


  育児等の心配はしなくていいのよ。


  一生、衣食住も”全て”保障するわよ。』


 『そういう問題じゃなくて。


  出世のお誘いは有り難いですけど、


  自分の未来は自分で決めます。


  何よりこのチームが好きなんです。』


 『将来をよく考えて。


  白鞘本部の方が環境も待遇も整っているのよ。


  件の大蛇の時みたいに、死にそうになる事もないのよ?』


 駄々っ子をあやす様に、綾が話し掛けてくる。


 『客観的に見たらそうかもしれませんけど。


  僕は僕。良いか悪いかも僕が決めます。


  僕の居場所はここです。』


 『あなたは、こんな場所にいるべきじゃないわ。』

 

 『”こんな場所”で僕は術者として歩き始め、


  今の僕があります。


  ここじゃなきゃダメなんです!』


 『…意思は固いわけね。勧誘に来るのが遅かったかぁ~。』


 綾が折れて、舌を出す。


 『ふふ~ん♪』


 御門野が満足気に笑った。


 『そ・れ・と・も。


  御門野さんやこの子達に”弱味”でも握られているのかしら?』


 綾は、即座に立ち直り、鋭い口撃を仕掛けてくる!


 こいつ、強い!!

 

 僕は、一瞬、顔が引き()る。


 『もしくは、本当にこの中に彼女がいるの?』


 『ご想像にお任せします。』


 僕は、綾から視線を外し、そっぽを向く。


 『ほら、用は済んだでしょ?とっとと帰っちゃれい!


  ゲララヒア(Get out here!)』


 御門野は、綾に中指を立てる。


 『そんな下品だから、行き遅れるんですよ。


  伝統ある御門野家、筆頭面汚し、自称アラサー先輩w。


  ご両親、泣いてますよ。』

 

 『ほぉ~、吹くじゃねぇか。ワカメ女。


  表出ろ。久々にキレちまったよ。』


 御門野がこめかみに青筋を立て、霊槍 コガラシを肩に担ぐ。


 『かわいい部下の前で見栄張りたいのは分かりますけど…


  私、現役な・ん・で・す・よ・ね~。』


 綾も、いつの間にか薙刀を出現させる。


 ビシィッ!


 部屋に凄まじい圧力がかかる。


 怖えぇぇぇ。


 なんだよ、このプレッシャー…


 宇梶、新堂、あみも誰一人として動かない、つーか、動けない。


 


『ちょっ、ちょっと待って下さい。僕との合流が任務なんですよね?』


 僕は、意を決して2人の間に割って入る。


 『命拾いしたわね。』


 『上司思いのいい部下をお持ちで。』


 御門野、綾は、互いに捨て台詞を吐く。


 『じゃあ、柊君、行きましょう。』


 綾は、強引に僕の手を取り、部屋を出ようとする。


 『おいっ!まだ、柊君、渡す気ないんだけど。


  彼もここへの残留を望んでいるでしょ?』


 『所属を今すぐ変える気はありません。


  今日は、彼の”力”を確認したいんですよ。


  水道局で結構、心配ならついてきます?』


 『そうさせてもらうわ。』


 『私の車、柊君しか乗らないんで。


  御門野先輩、車出して下さいね。』


 『いちいち、嫌味な女。


  それなら、”私のグループ”全員で私の車に乗せるわ。』

 

 『柊君は、二人きりで話したいので、私の”Z”で。』


 『あぁん?』


 また、御門野、綾が睨み合う。


 話が進まない。僕は、小さくため息をつく。


 先輩…上司通しの喧嘩の為か、宇梶達は一切、口を挟まない。


 『分かりました。


  僕は、綾さんの車に乗りますので水道局で合流しましょう。』


 『じゃあねぇ~。』


 綾は、御門野に投げキッスの仕草をする。


 いちいち、喧嘩を売らないでほしい。


 御門野の部屋を出て、綾の後をついていく。


 マンションの入り口にオレンジ色のフェアレディZが止まっていた。


 几帳面な性格なのかきれいな車だった。


 『アレよ。乗って。』


 キーレスのスイッチを押しながら、綾が促す。


 『お邪魔します。』


 勝手な思い込みだが、女性にしては珍しくマニュアル仕様。


 綾は、ギアを1速に入れて、ゆっくりと車を出す。


 先程の御門野とのやり取りとは違い、丁寧な運転をする。


 水道局には、何度も足を運んでいるが、車が変わると見る景色も違って、


 何か新鮮だった。


 窓の外に見とれていると不意に綾が話し掛けてくる。


 『柊君、御門野さんの所で術を学び始めたのよね?』


 『えっ?あっ、はい。そうです。


  その前に、宇梶さんが化け犬と戦っているところをこっそり見ちゃって。


  それで目を付けられて、資質がありそうなんで…という感じで誘われました。』


 『術はどうやって?』


 『最初は、新堂さんに。その後は、独学です。』


 『ご両親の事、少し調べさせてもらいました。


  ごく普通の一般人。あなただけみたいね。資質持ちは。』


 『そうなんですか。


  まぁ、この仕事を相談した事もないんですけど。』


 僕は、苦笑しながら答える。


 『柊君の意思はなるべく尊重したいけれど。


  さっき話した縁談の件は白鞘で進んでいます。


  いずれ、柊君…


  もしくは、我々、白鞘からご両親に話さなければいけなくなるわ。』


 『そう、ですか…


  まだ、ピンと来ないですけど。


  (黒連にも早めに相談しないとマズイ事になりそうだな)』


 僕は、頭を掻いてはぐらかす。

 

 『ウチの場合、平田家の場合ね。

 

  元々、そういう家系だったから。みんな考えもしないの。


  そうするものって感じなんだけど。』


 『代々、継承された名門、名家ですか?』


 『”元”名門よ。』


 綾が苦笑し、訂正する。


 『柊君には少し早いかもしれないけれど、


  知っておいてほしいから話すわね。


  今、現在、白鞘には名門と呼ばれる名家が5つあります。


  安倍、賀茂、御門野、御堂、九条。


  これがTOP5。


  私やあみは、平田家。正確には”(たいら)”の分家。


  昔は、名門だったらしいわ。私が生まれた頃にはもう落ち目だったけど。』


 『安倍って、あの安倍ですよね?』


 『恐らく間違ってないわ。”超”有名でしょ?


  普段は、安倍と名乗らず、偽名使っているけど。』


 綾は、超の所に一際、アクセントをつけて話す。


 『ついたわ。訓練場に行きましょう。』


 綾は、駐車場に車をバックで止め、足早に進む。




-水道局 訓練場-


 『柊君、新しい”赤銅の篭手”よ。


  予備というか、今回からは、両手に装備して頂戴。』


 綾が置いてあったアタッシュケースから、篭手を出し僕に渡す。


 『前回となんか違いますね。』


 両手にはめた後、少し違和感を感じ、僕は綾に尋ねる。


 『気付く?流石ね。篭手の構成材質を少し変えたそうよ。


  柊君の”雷吼鞭”にも耐えうるように。


  さしずめ、”改”ってところ?専用品よ。』


 綾がウインクする。


 『専用品…いい響き。』


 僕は、篭手を撫でながら呟く。


 『柊君、ちょっと着て。』


 遅れて到着した御門野が僕を手招きする。


 『なんです?』


 近づくと、御門野は、僕に耳打ちする。


 『分かってると思うけど、”プレパ・レイド”、”百鬼夜行(テラーテイル)”。


  この二つは、見せちゃダメよ。』


 『もちろんです。』


 『なぁ~に?隠し事は感じ悪いんだけど。』


 綾が笑って、こちらに近付いてくる。


 『別に。”雷吼鞭”を直撃させてやれって言っただけよ。』


 御門野は、綾に手を払いながら言い放つ。

 

 『未来の上司なんですけど。』


 『そんなの私、認めてないし。この子達も反対してるし。』


 御門野の子供のような反論に後ろに居る宇梶、新堂、あみがうなづく。


 『まぁ、いいわ。じゃあ、柊君、まず、”炎刃”から見せてもらえる?


  薬あるから、力の残量、気にしなくていいわよ。』


 綾が、ポケットから小瓶を出し、振りながら話す。


 『あんま、薬に頼りたくないんですけど。』


 僕は、笑い、射撃の位置に着く。


 深呼吸を一つ、右手を構える。


 『じゃあ、行きます。


  紅紡ぎ、貫け我が剣、炎刃!』


 ゴッ!ゴゥッ!


 熱風を辺りにばら撒き、火柱が前方に2つ上がる。


 『おぉっ~。』


 綾が目を開き、驚く。


 『柊、更に強くなってない?』


 少し離れた位置で見ているあみが疑問を口にする。


 『えぇ、今までは、火柱は、一つでしたし、火力、射程も伸びてます。』


 新堂も驚きながら話す。


 『成長速度が速すぎるわね。怖いぐらい。


  戦闘回数に”比例”どころじゃあない。』


 御門野は目を細め、冷静に観察する。


 『サイ○人みたいやね。死にそうになればなるほど強くなるみたいな?』


 『異常すぎますよ。』


 あみの連想に、宇梶が突っ込む。


 僕は、深呼吸をし、息を整えてから、ギャラリーの方を見る。


 皆、驚いているようだ。


 彼らは知らないだろうが、最近も黒連サイドの事情で死線を潜ってきたんだ。


 ”篭手”の効果も多少あるだろうが、僕は成長している。


 右手を強く握り締める。


 『噂以上だわ。そのまま、”雷吼鞭”使える?薬…』


 『結構です。撃てます。』


 綾の言葉を遮り、僕は、再度射撃の位置に着く。


 『ふぅ~、はぁ~。』


 深呼吸を一つ。


 右手に力を込めて、集中する。


 『流れる白光、薙ぎ払え、雷吼鞭!』


 !!


 轟音、雷撃が雄たけびを上げる。


 白い光の鞭は、射撃場の的を消し飛ばし、壁に大きな黒痕を刻んだ。


 パァン!


 電撃は、備え付けの照明を割り、床にガラスとともにオブジェと化し、

 

 僕の前方にだけ、黒い筋が出来る。


 『以上です。』


 僕は、綾に向きなおす。


 『これが、単体、個人の戦闘力なの…まぁ、頼もしくもあるけど…。』


 壁の焼け焦げ、剥げたコンクリート、落ちた照明を順に見て綾が感想を口にする。


 『ありがとうございます。(まぁ、更に隠し玉があるわけですけど)』


 僕は、綾に頭を下げつつ、心の中で呟く。


 『是非、是が非でもウチにほしいわ。』


 『やらないって言ってるでしょ。』


 御門野が僕の後ろに立ち、肩に手を置いて綾に言う。


 『では…、体術はどうかしらっ?』


 綾は、いきなり僕に向かって突進してくる。


 『マジかよっ!鋭針装!!』


 僕は、術ともに右に、御門野は、後方に飛ぶ。


 『続けるわよ!長太刀 時雨!』


 手に薙刀を携え、綾は、横に払うモーションを取る。 

  

 『(速いが…)見えてる!』


 薙刀の一撃を体を逸らし、なんとか、かわす。


 『やるぅっ!』

 

 僕に攻撃をかわされたにも関わらず、綾は余裕たっぷりに笑う。


 体を捻った!次…上段からか!?


 『はっ!』


 『ちっ!!』


 綾の振り下ろしを、体を半分ひねりかわす。


 『お見事♪』


 綾は、微笑んだまま、後ろに一歩下がる。


 初物の相手、薙刀…射程が微妙にやっかいだな。


 素手の僕では、届かない。術を使うには距離が近すぎる。


 ”プレパ・レイド”からのカウンター…今回、禁止。


 百鬼夜行(テラーテイル)も…今回は禁止。


 どうしたものか…


 『さて、手詰まりかしら?』


 絶妙な距離を保ちつつ、綾が笑う。


 『まさかっ!』


 今度は、僕から距離を詰める。


 『踏み込みが浅いっ!』


 綾は、下がりつつ、薙刀の柄で僕を払おうとする。


 『(そいつだ!)…紫音!』


 僕は、柄を握り、術を放つ。


 『きゃっ!』


 伝導した電撃に驚き、綾が薙刀から手を離す。


 『もらった!』


 僕は、左足を大きく踏み込み、


 綾の左肩に手刀を放つ。


 『バカッ!』


 後ろで御門野が叫ぶのが聞こえた。


 『よっ!』


 綾は、苦もなく僕の手を掴み、そのまま地面に組み伏せる。


 『ウゲッ!』


 地面に肩から着地し、なさけない悲鳴が僕から漏れる。


 ガッ!


 倒れる僕の目の前に綾の薙刀が刺さる。


 『火力は凄まじいの一言だけど、体術は、中の”下”かしら。


  途中の機転も”込み”で及第点。』


 僕の右手を極めたまま、綾が満面の笑みで僕を見る。


 『いててて、そりゃ、どうも、いててて。放してくれません?』


 『あぁ~あ。』


 僕の醜態を見て、宇梶達、メンバーがため息をつく。


 頑張ったんですよ。これでも…




 『柊君の実力、しかと拝見させて頂きました。


  体術に課題はありますが、稀代の術者です。


  本部にも改めて、推薦させて頂きます。』


 僕達を前に、綾は報告する。


 『渡さないって言ってるでしょ。


  あんた、頭だけじゃなくて、耳も悪いんじゃないの?』


 『いえいえ。すぐに、あなたの管轄を離れますよ。


  落ちこぼれ組では可愛そうですし。』


 相変わらず、喧嘩腰の御門野と綾。

 

 『まぁ、いずれ結論は出るでしょうし。』


 綾は、そっと僕に近づき、耳打ちする。


 『縁談の話、私も候補なの。


  子供の名前、考えておいてね。ア・ナ・タ♪』


 『!!!』 

 

 不意の”口撃”で僕は、顔が赤くなる。


 『じゃあね~。』


 綾は、手を振りながら訓練場を後にする。


 『どうしたん、柊、何言われたっ!』


 あみが近づいてきて問いただす。


 『いや、あの…なんでもないって。』


 僕は、顔を逸らす。


 『すごい怪しいんですけど。』


 顔は笑っているが、目が笑っていない新堂が僕を見る。


 『あの…ほんと…大丈夫です。』


 『柊君…、もうちょっと、嘘のつき方、学ぼうか。』


 御門野が僕の肩を叩きながら、囁く。

  

 『………はい。』


 僕は、下を向いたまま返事をする。

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