72.悪の手先 アナザー20 Have A Nice Day
-アピタ 屋上駐車場-
”ヤナ”達、3人が目的地に着いた頃、太陽は落ちており薄暗かった。
田舎の性だろうか、人の姿はほとんど見えない。
『………見っけ!』
”ヤナ”が買ったばかりの双眼鏡を覗きながら報告する。
『どこだ?』
”ヤナ”の肩に手を乗せ、”かみやん”が聞き返す。
『あそこ!セブンイレブンの駐車場、隅っこの青いスポーツカー!!』
”ヤナ”が指差す。
『おっ、RX-7じゃん。あぁ、アイツだ。』
”タッキー”もスマホの写真を確認してうなづく。
”かみやん”、”タッキー”、”ヤナ”は、
そろいのスポーツサングラスを掛けて円陣を組む。
『行けるな?』
『『おう!』』
”かみやん”が確認、二人も即答する。
『『剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)!!』』
『離魂!!』
”かみやん”の掛け声と共に3人の姿は、一瞬で消えた。
『♪~』
鼻歌を口ずさみながら、濵口は、マールボロに火をつけた。
『ふぃ~。なぜか人を喰った後は、無性に煙草が吸いたくなるな。
あんたの癖だったのかな?』
濵口は、煙を空中に吐き出し、自らの左腕に話しかける。
『ご推察の通り、私の生前の癖ですね。
主の成長に伴い、私の癖まで移ったようで。』
”赤マント”が答える。
『まぁ、百鬼夜行だから、肺がん程度じゃ、死にゃあしないだろうし。
問題ねぇよ。』
『問題あるわよ!髪に臭いが付くじゃない!!早く消しなさいよ!』
同じく左腕在住の”口裂け女”から苦情が来る。
入手した時よりは、幾分か会話できるようになったのはいいが、たいてい不平、不満。
まぁ、進歩っちゃー進歩か。
濵口は、やっと生えてきた側頭部の髪を掻きながら、苦笑する。
”赤マント”、”首なしライダー”、”口裂け女”、”注射男”、”一本だたら”
”手長”…随分とウチも大所帯になったもんだ。
『あんた、さっきから見られてるよ。』
”口裂け女”の口調が急に変わる。
『ん?あぁ、なんか視線を感じるな。とは思ってたけど。
人数、方向は?』
濵口は、煙草を捨て、足で火を消す。
『人数は、6。方向は、バラバラ。』
『3人は、固まっているぜ、ダンナ。』
『一番近いのが、その3人の塊ですな。
主の後方、あの大きな建物にいます。』
”口裂け女”、”首なしライダー”、”赤マント”が手早く報告する。
濵口は、駐車場から出て、目の前にある空き地に向けて歩き出す。
『バチィン!』
デカイ静電気のような音に驚き、
濵口が振り返ると少年が目の前にいきなり現れた!
『鬼灯!!』
少年の掛け声とともにその右腕から火炎が噴き出す。
『百鬼夜…』
濵口は、咄嗟に左手を構えるが火炎は瞬く間に、濵口を包み込む。
『なっ!がぁっ!!』
息が…のどが焼ける…こいつ!!
『”かみやん”!!』
少年が叫ぶ。
『位置OK!投下!!』
上方から声が聞こえ、濵口が見上げると赤いポリタンクが降ってきた。
『なっ!?クソ!!』
濵口は、ポリタンクを殴りつけるが、
中から液体が溢れ、更に体が炎に包まれる。
これは…ガソリン!マズイ!
『ボンッ!』
破裂音と共に
炎は、更に大きく膨れ上がり、爆ぜた。
濵口から距離を取った所で観察していた”かみやん”は、
炎が鎮火し始めたのを確認して話しだす。
『もう、良い頃合か?』
『鬼灯も解除するよん。”ヤナ”、オペ開始。』
”タッキー”が自分のスマホを操作する。
『あいよ~。つーか、臭いきつい。
焼きすぎじゃね?左手残ってる?』
ノコギリを肩に担ぎ、黒い塊に”ヤナ”は近づく。
『これ、黒すぎ。どっちが左手だよ。見分けつかねー。』
”ヤナ”が後ろから近付いてくる二人に振り返り、尋ねる。
『こっちが左?』
『…右だ。』
黒い塊が動き、”ヤナ”の首を掴む。
『うっ!』
”ヤナ”は、そのまま地面に叩きつけられ、ノコギリを落としてしまう。
『『”ヤナ”!!』』
”かみやん”と”タッキー”が叫ぶ。
『剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)! 鬼』
『剥がれよ現世の仮面(フェイス/オフ)! 離』
『百鬼夜行 手長!!』
黒い塊…濵口は、”左”の二本の腕を展開、
一つは、”タッキー”の頭を鷲掴みにし、側の電柱に叩き付け、
一つは、”かみやん”の目を貫き、潰す。
『ぐっ!』
『ぎゃぁぁっ!』
二人が悲鳴あげる。
『ごのやろう…のどがいでぇよ。』
3人を同時に組み伏せ、濵口は笑う。
濵口は、あの一瞬、”赤マント”を展開、全身を覆い、
炎が鎮火、チャンスが来るのを伺っていた。
『こいつら…陰陽術っぽくないんだが…
こないだも変なのに喧嘩売られたし、あっちの同類か?』
濵口は、徐々に体が治癒するのを感じ、
右手で締めている少年”ヤナ”にささやく。
『少年、”ヤナ”だっけ?やってくれたな。
煙草は吸うが、ここまで煙が好きな訳じゃあないんだ。
ところで、君たちは何モンだ?黒連か?白鞘か?』
『お、お前、なんで手が…なんで死な…がぁっ!』
”ヤナ”は、百鬼夜行の力を目の当たりにし、疑問を口にするが、
濵口は、右手に力を込めて言い放つ。
『質問しているのは、俺だ。質問に質問で返すなよ。』
”ヤナ”の頭に血が溜まり、顔がみるみる真っ赤になる。
『お友達が先か?お前が先か?順番が違えど、逝く所は一緒だぜ。』
”ヤナ”は、”かみやん”と”タッキー”の方に目を向ける。
二人とも動かない。
『………』
『だんまりか。まぁ、あと二人いる。アイツらに聞くわ。じゃあな。』
『がっ…あっ…かっかっ…』
”ヤナ”はもがくが、濵口はビクともしない。
”ヤナ”の意識が半分、飛び始めた時、
『ギュイン!』
耳障りな音の後、急に”ヤナ”は開放された。
正確には、首に濵口の右手は繋がったままだが、肘から先がなかった。
『新手か…ん?お前、どっかで見たな。』
右手を失ったにも関わらず、濵口は冷静に立ち上がり、
”手長”を解除して、新たな敵を見る。
『”ハン”の屈辱、ここで晴らさせてもらう。』
茶髪の前髪に少しウェーブがかかった全身黒尽くめの少年。
”勝屋”が静かに答える。
濵口と勝屋が睨み合う中、
”ヤナ”は、自分の首からぶらさがった濵口の右手を払い、
”かみやん”と”タッキー”の元に走る。
『”かみやん”!!、”タッキー”!!。』
2人からの返事はない。
誰か、誰か…助けて…
『Violence.Voltage.Valkyrie.行けぇ!』
勝屋の能力、乾電池が耳障りな音と共に濵口を襲う。
『ふん。お前のネタはもう割れてんだよ。
”百鬼夜行 赤マント”!!』
濵口は、赤い左腕を盾にして防御、
軽い衝撃が左手を通して伝わってくる。
『このまま、蜂の巣にしてやる。』
勝屋の声と共に衝撃の間隔が狭まる。
確かに以前より、連射速度は上がっている。
『だが、この程度では、この左腕は砕けんよ。
前回は、100%じゃあ”ない”んだからな。』
濵口はほくそ笑み、被弾しながらも強引に勝屋との距離を詰める。
『パチンコ玉じゃあ、死ねねぇぞ。オラァ!』
『ちっ!』
左右に体を振って、攻撃はかわすものの、
勝屋は、濵口の左腕硬度、強引な攻撃に舌打ちする。
『どしたっ!そんなんじゃあ、あの韓国人みたいに死んじまうぜぇ~!』
『殺す!』
濵口の挑発に対し、
勝屋は、更に連射速度を上げて答える。
弾丸は、確実に当たっている、赤黒く邪悪な左腕に当たっている。
しかし、濵口は止まらない。
意に介する事もなく突進してくる。
必死になって、攻撃を回避し、連射し続ける勝屋を嘲笑うように。
そして、被弾してもすぐに傷が”その場”で治癒を開始する。
なんなんだ、こいつは…
勝屋の脳裏に黒い影が浮かぶ。
そして、それは次第に大きくなっていく。
1,2,3,4,5発…確実に当たっているんだ。
なんで死なないんだ!
こいつ…不死身…死なない…もしかして…勝てな…
必死に中距離を保持、連射し続ける勝屋に終幕が訪れた。
『プシュン!』
空気が抜けたような音と共に勝屋の連射が止まったのだ。
『しまっ!』
『遅いっ!』
ゴッ!
鈍い音と衝撃が勝屋の頭蓋を襲った。
『弾切れたぁ、あっけない幕切れだったな。』
濵口は、殴り飛ばされ痙攣する勝屋を見ながら、満足そうに笑う。
『さて、僕のお手てはどこかな~。おっ、あったあった。』
無事、右手は見つけたが、
いつの間にか、チンピラ3人組は姿を消していた。
『逃げ足は、速いな。”百鬼夜行 首なしライダー”!』
濵口は、左手からワイヤーを射出、右手を縫合する。
『神経再接続までは、ちっと時間かかるか。』
満足には動かぬ右手を見ながら一人呟くと、爆音が聞こえた。
『コァンコアン!』
『ん?』
ドゴォッ!!
振り返る瞬間、濵口はバイクに跳ねられて5,6m先まで転がる。
『痛ってなぁ、おいっ!』
顔を上げると、バイクのライダーが勝屋を抱えている。
『いずれ、決着をつけてやるわ。』
ライダーは一言だけ残し、濵口に背を向け、バイクで走り去った。
『やれやれ、ツイテル一日だな。』
濵口は、体中の砂を払いながら笑った。
『なんで来たんだよ!』
勝屋が、苛立ちをライダー、”天井”にぶちまける。
『あなた、何考えているの!』
勝屋に負けずと、天井も怒鳴り返す。
『あと少しで倒せたんだ!』
『なんの根拠があって言ってんのよ!
私が来なければ、あなた、死んでたのよ!分かってんの!?』
『”ハン”を捨てて、黒連に寝返ったくせに!』
『寝返ってないでしょ!変な言いがかりつけないで!』
『だって、”ハン”は死んじゃって…天井も連絡取れなくて…う、う、うぇぇ。』
勝屋は、感極まって泣き出す。
『………ごめんなさい。私もすぐには動けなくて。
黒連に身を寄せるしかなくて。
スマホも変えざるを得なくて、勝屋に連絡が取れなくて…ごめんね。』
天井は、泣きじゃくる勝屋の頭を撫でながら、なだめる。
『うぅぅぅ……ごめんなさい…ごめんなさい。』
『いいのよ。あなたは生きててくれたんだから。いいの。』
『ふぇっ、ふぇぇぇえぇん。』
そこには、先程とは打って変わり、年相応、少し幼い勝屋の姿があった。
復讐者など似合わない、
”ハン”について来た人懐っこい優しい子だ。
『大丈夫、もう、大丈夫だから。』
天井は、勝屋の涙を拭いながら、優しく話す。
『うっ、うっ。ごめんね。』
『もう、大丈夫よ。私の家においで。
少し、休みましょう。
でも、濵口は、私達の手で必ず決着をつけるわよ。』
『……うん。』
『ブブブブ…』
天井のスマホが振動する。
『はい、天井です。』
『光田だ。お前、今、どこにいる?
柊がまた、揉め事になる。配置につけ。』
『すみません。勝屋を、チームメイトを探してました。』
『こちらでも調査していると言ったはずだが…
独断で動かれると困るんだがな。』
『もう大丈夫です。無事、保護しました。
これから、そちらに戻ります。』
『そうか、無事で何よりだ。
勝屋の処遇については、俺は何も聞いていないし、言うつもりもない。
下手に暴走されては困るが、天井が面倒みるんだな?』
『はい。そうさせて下さい。』
『分かった。勝屋の捜査は打ち切るよう、上に話は通しておこう。
勝屋の治療、通学等の偽装が必要なら言え。俺が動く。
お前は、任務に戻れ。』
『ありがとうございます。了解です。』
電話は切れた。
『天井、黒連で仕事するの?』
勝屋が腫れた目で心配そうに天井を見る。
『大丈夫。今度は、命の危険はない監視程度よ。
勝屋は、まず体調を整えて、訓練し直しましょう。
濵口を倒す為には、私達強くならないと。』
『うん、僕、強くなるよ、頑張る。』
-マイナーな掲示板の一つ AZ速報クオンタム-
Z:『今、いい?』
A:『オケ』
Z:『#17速報。B,D,G,Vが惨敗。』
A:『早っ!』
Z:『しかも、Dは大破。Bは、再起不能くさい。』
A:『orz。B,Dは、これから伸び盛りだったのに…
G,Vは?』
Z:『G,Vはなんとか逃走。』
A:『作戦中止。』
Z:『ですよねー。』
A:『回復するのを期待するけど…B,Dの次期候補は?』
Z:『\ ⊂[J( 'ー`)し
\/ (⌒マ´
(⌒ヽrヘJつ
> _)、
し' \_) ヽヾ\
丶_n.__
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 ̄ (⌒
⌒Y⌒ 』
A:『検討します』
Z:『メンバーもだけど、指令も熟慮よろ。
”依頼”をそのまま、横流しではもうキツイものがある。
少し頭使えこの・・・(ry』
A:『………(ログアウトしました)』




