表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/108

66.悪の手先 アナザー17 君が悪夢を連れてきた

-白く無機質な廊下-


 『ちっ、くそが。勝手に剃り込み入れやがって。


  パンイチだしよ。寒みい。』


 濵口は、右側頭部、髪の毛を失った場所を擦りながら廊下を歩く。


 まだ、頭がボーっとする。薬でも盛られたのか。


 この格好という事は、解剖でもする気だったのか。


 黒連…エグイな。

 

 柊と戦った後、黒い人型に囲まれた。


 数体は、破壊したが、その後、記憶がない。拉致か。


 まぁ、いい。幸い切断された左腕は何事もなく繋がった。


 百鬼夜行(テラーテイル)サマサマだ。


 先程、7人も食べた性か少々、胸焼けはするが、まぁ、大した事じゃない。


 濵口は、右手で左肩を揉みながら、左手を回す。


 ゴキゴキと派手に首を鳴らすと、


 『ヒュィーン…ギュイン!!』


 耳障りな音とともに何かが濵口の左側を通過する。


 『ちっ、外した!』


 振り返ると、来た道の奥に茶髪の少年がいた。


 その少年の左肩には、小さな女?が乗っている。

 

 何だありゃ?なんつーか、昔の船の艦首に着いてる女神というか…


 その小さな女がこちらに腕を向ける。


 『!!!』


 濵口は、直感的に体を反らす。


 『ギュイン!』


 先程と同じ音とともに何かが飛来する。


 一気に頭を戦闘モードに切り替える。


 『百鬼夜行(テラーテイル) 赤マント!』


 濵口は、左手を変形、盾にしながら、少年に向かって走る。


 『ハン!天井(アマイ)!よろしく!』


 少年は叫ぶと、回れ右をして、逃げる。


 『このガキ!逃がすか!!』


 『白蜥蜴(イグアイン)!!』


 少年と入れ違いの形で白い爬虫類が濵口に向かってくる。


 イグアナ…なのか?デカすぎるだろ。


 4m、下らないぞ。猛スピードで地を這いずり近付いてくる。


 『カァアァァァッ!』


 イグアナは、奇声と共に濵口に飛び掛ってくる。


 ”赤マント”で防ぐが、白いイグアナは、左手に噛み付いて離れない。


 乱暴に左腕を振るが、重くて振り落とせない。


 『くそっ、何だ、こいつ!』


 共振がない。俺や柊のような百鬼夜行(テラーテイル)じゃない。


 『Violence. Voltage. Valkyrie.行けぇ!』


 また、茶髪のガキが何かを飛ばしてくる。


 『重てぇ!』


 濵口は、イグアナを引き摺りながら、廊下の柱に身を隠す。


 『チュインッ!』


 何かが柱に刺さる。


 右手で引っかき、取り出してみると潰れた乾電池なのが分かった。


 あいつ、電池を撃ち出してんのかよ。


 差し詰め、電磁砲(レールガン)と言った所か。


 濵口が、乾電池に気を取られていると白い鞭が首を襲う。


 イグアナの尾が絡みついている。


 『ぐっ!』


 左手使用不能。右手で解こうとするも薬か、麻酔がまだ効いているのか握力が出ない。


 『こいつらぁ…』


 『ギュイン!』


 少年の放つ乾電池が濵口をかすめる。


 柱の陰から出ると狙撃される。かと言って、このままじゃ、らちがあかない。


 やりづらい、どうする?


 『百鬼夜行(テラーテイル) 口裂け女!』


 濵口は、能力を切り替える。


 赤マントに噛み付いていたイグアナは対象を失い、地面に落下する。


 『オラァッ!』


 濵口は、鋏でイグアナの頭を突き刺す。


 硬度のある骨を貫通し、内臓物にダメージを与えた感触が左手に伝わる。


 そのまま、前後左右に鋏を揺するとイグアナは、2,3度痙攣し、動かなくなった。


 首に絡み付いていた尾も力を失い、だらしなく垂れる。


 『ぺっ、まずは、一つ!』


 濵口は、白い体を自らの体液で赤く染めたイグアナに唾を吐き、笑う。


 次は、茶髪のガキだ。


 距離を取って、こそこそと狙撃しやがって…不愉快極まりない!


 『百鬼夜行(テラーテイル) 一本だたら!』


 左手を再度変形させ、黒い大砲を少年が隠れた柱に向ける。


 角度良し!風なし!直撃コース!!


 濵口は、左手を右手で支え、体を廊下に固定し、吼える。


 『吹き飛べ!』

 

 『赤口紅(ルージュリッパー)!』


 『ガン!!』


 濵口の大砲が何者かに弾かれる。


 砲身がブレ、放った砲弾は、少年の直上の天井に着弾する。


 施設内のスプリンクラーが作動して、辺りはさながらスコールになる。


 濵口の前に、女が立ちはだかった。


 身長150~160。グレーのスーツを着ている。


 この雨の性で前髪が額に張り付き、ルックス、スタイルは悪くないが不気味だった。


 女の両手の爪が異様に長く、赤く輝いている。


 『3人目かよ、人気者はツライ。』


 大砲を杖代わりに立て、濵口は笑う。


 『勝屋(カツヤ)、ハンが能力代価(フィードバック)で負傷してる。一緒に下がりなさい。』


 女は、濵口から視線は外さず、少年に告げる。


 場慣れ…しているな。濡れた髪をかき上げ、濵口も女を睨む。

 

 『でも…』


 少年が何か言いかけたが、


 『いいから!早く!!』


 女が有無を言わせぬ剣幕で怒鳴る。


 勝屋(カツヤ)と呼ばれた少年は、柱の影から姿を消した。


 『仲間をかばうのか…シビアな組織かと思っていたんだが…


  なかなか、泣かせるじゃないか。』


 『お前には、関係ない。』


 『冷たいな~。こっちは、下着一つだぜ。


  暖めてくれないかね~。そのおっぱいでw。』


 濵口は、右手で揉む仕草をして、軽口を続ける。


 『下衆め。』


 女は、言い捨てると水飛沫を上げながら、濵口に突進してくる。


 『百鬼夜行(テラーテイル) 赤マント!』


 濵口もすぐさま、左手を変形、迎撃体勢に移り、女の初撃を”赤マント”の盾で防ぐ。


 爪による貫通はしない。やられはしないのだが…


 濵口は、軽く舌打ちをする。


 速い。攻撃もだが、爪攻撃後の戻しと体裁きが速い。


 左右に体を振って、大振りではない攻撃を繰り返しやがる。


 うっとうしい。


 革靴を履いているのか、カツカツ、鳴る音もムカつく。


 格闘ゲームの”弱パンチ”でチマチマ削られてる気分だ。


 精神衛生上、好ましくない。


 『邪魔くせぇ!』


 ”赤マント”を強引に振り払うも、女は、バックステップでかわし、


 低い体勢からの踏み込みで濵口の太ももの肉を軽くえぐり、また、距離を取る。


 『いってぇっ!』


 濵口は、右手で太ももの傷を押さえ、女を睨む。


 『大した事ないのね。口だけ?』


 女は、爪に付いた血を払い、軽蔑した眼差しを濵口にむける。


 こ、このアマァ…


 薬か麻酔か、イロイロ盛られてなけりゃあよぉ。


 愚痴っても仕方ないが、このままでは、嬲られる。


 援軍が来たら…、あの黒い人型がわんさか出てきたらマズイ。


 狭い廊下…、時間もねぇ、パワーもねぇ。


 スプリンクラーの水ではなく、冷や汗が濵口の額を滴り落ちる。


 『次は、どこをえぐりましょうか?足?腕?リクエストは?』


 女が目が細め、猛禽類のそれを思わせるその目が妖しく光る。


 舐めやがって…


 『お前の乳から(むし)ってくれるわ!』


 濵口は、自ら女との距離を詰め、左手を突き出す。


 『遅い!』


 女は”赤マント”を右爪で払い、左爪を濵口に向け突き刺そうとする。


 『そうするだろうな。』


 濵口は笑い、”右手”で女の爪を受ける。


 手のひらに爪が深く食い込み、廊下に血が飛び散る。


 『なっ!』


 濵口の行動が予想外だったのだろう、女の顔に恐怖に似た感情が映し出される。


 『!!!』


 女は、すぐに我に返り、身を引こうとするが爪が抜けない。


 『百鬼夜行(テラーテイル) 手長!』


 濵口の左手は、2つに割れ、片方は、女の右手首を、もう一方は首を絞める。


 『おっ、おっごっ!』


 女は、苦痛に顔を歪める。

 

 『もう一丁っ!』


 濵口は、女のみぞおちを蹴る。


 『うげぇっ!』


 女は、胃の中の物を吐き出し、その場に崩れ落ちる。


 『おかわりは、どうだ?』


 濵口は、頭を垂れる女の顔面に膝蹴りで追撃する。


 『ぐっ!』


 赤い花火が散り、女の整った顔に無残な痕が残る。


 『逝っちまいな!』


 濵口が左手に力を込める。


 『うっ、うっ……』


 もはや、抵抗らしい抵抗もできず、女は、白目を剥き、その場で失禁、失神した。


 女が意識を失った為か、赤い爪はその姿を消した。


 『お~、痛て。女は、黙ってんのが一番だぜ。』


 濵口は、動かぬ女を見て、右手を振りながら呟く。

 


 

-施設内 駐車場-


 先程の少年、勝屋(カツヤ)が青のRX-7の運転席に座っている。


 『”ハン”!エンジンかかったけど、僕、無免だし、ぶつけても知らないよ!』


 『パァァン!』


 『!!!』


 破裂音に振り返り、運転席を出ると同時に、


 色白の腕が勝屋(カツヤ)の首と左腕を締める。 


 『かっ、かっ!』


 勝屋(カツヤ)は、自分の足がゆっくりと、地を離れていくのが見えた。  

  

 自らの首を絞める腕の先にいるのは、…濵口だ。


 右手には銃を持っている。

 

 『な、なんで…』


 濵口の足元には、赤い水溜りに沈む”ハン”の姿が見えた。


 『なんで?説明いるか?お前の仲間を倒してココにいる。』


 濵口は、笑いながら動かぬ”ハン”の頭を足蹴にする。


 『Vi…』


 勝屋(カツヤ)は、左手を動かし、何かしようとするが…


 『人の話は、黙って聞く物だ。』


 みしぃっと嫌な音の後、勝屋(カツヤ)の左腕は、人体の構造上、有り得ない方向を向いた。 


 『うぅぅぅぅぅぅ~!』


 首を絞められている為、声にならぬ声が洩れる。


 『本当は、お前らのその”超能力”?とやらに興味があるんだが…、


  スケジュールが詰まっててね。


  今日の所はこれでお暇するよ。


  じゃあな、ラッキーボーイw。』


 濵口は、そう言って、勝屋(カツヤ)を駐車場の端に放り投げる。


 勝屋(カツヤ)は受身も取れず、止めてある車のフロントガラスに叩きつけられた。 


 濵口は、手早くRX-7に乗り込み、シートベルトを締める。


 『レカロ、ターボタイマーも付いてる。悪くねぇ!』


 勝屋(カツヤ)の様子を気にするでもなく、


 濵口は、わざとエンジンを吹かし、RX-7で駐車場を出た。




 『被害者多数!サンプル”L.A”は逃走!極力、京都内で捕捉しろ!』


 黒いスーツ姿の男達が慌しく、駐車場を走る。


 そんな喧騒を他所に、勝屋(カツヤ)は、よろよろと力なく”ハン”の元に歩く。


 『ハン…嘘だよね…大丈夫だよね。天井(アマイ)もすぐ…来るよね…』


 眼に涙を浮かべ、跪き、ハンの顔を見る。


 返事はない。


 『”ハン”の遺体を確認した。回収を頼む。』


 黒いスーツの男が携帯で話しているのが聞こえた。


 『嘘だ…そんな…だって…ハンは、賢くて、お金持ってて、


  RX-7も僕にくれるって…一緒にドライブ行こうって…


  ドリフトも教えてくれるって…天井(アマイ)と3人で…


  うっ、うっ、うっ、うえぇぇー!』


 勝屋(カツヤ)の嗚咽は、後処理に追われる黒連の人間の声に掻き消された。




 『…濵口…殺してやる。僕が必ず…この手で…殺してやる!』


 ハンが握っていたスマホを手に取り、勝屋(カツヤ)はその場を後にした。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ